愛嬌のある女性
霧の中、私の紫の瞳が揺れる水面に映るのは、灰色に溶ける空と揺らめく木々だけ――のはずだった。だが、その白い靄の向こうに、小さな光が差し込むように、鮮やかな存在が現れた。緑色の髪が風に揺れ、肩まで柔らかく落ちる。その髪は光を受けるたびに微かに黄金色の光を帯び、霧の白さと対照的に目を引く。
瞳は大きく、澄んだ水色と翡翠色が混ざり合ったような輝きで、私の紫の瞳と交錯する。まるで、霧の中で唯一の鮮やかな色彩が形を成したかのようだ。小さな唇は紅く、笑うと頬に淡い赤が差し、無邪気な笑顔が溢れる。身体は細く小柄だが、手足の先まで生き生きとしていて、まるで霧の中で踊るように軽やかだ。
「こんにちは!アミットって呼んでね!」
その声は小さくも、確かな存在感を持つ。震えることも、怯えることもない。霧に包まれた私の世界に、これほどの生命力を放つ者がいるとは思わなかった。白い肌は透き通るようで、霧の冷たさすら反射して温度を持つように見える。
私の手元で小さく波立つ水面を眺めながら、彼女は一歩前に踏み出す。長いスカートはわずかに湿気を含み、歩くたびに霧の中で柔らかく揺れる。その動きは無意識のうちに私を挑発しているかのようで、私は眉をひそめながらも、心の奥で興味を抑えきれない。
「……愚かだ、人間はいつだってこうして、無防備に飛び込んでくる」
冷たく呟く。だがその声に反して、心の奥では、少しの期待と好奇心が芽生える。人間というものの滑稽さに笑う自分と、こんな無防備な生命力に心が揺れる自分が同居しているのだ。
霧が揺れ、私の存在を知らせる小さな波が足元に広がる。しかしアミットは恐れることなく立ち続ける。その瞳の輝きは、霧の奥に潜む私の影さえも明るく照らすようで、初めて人間の純粋さに触れた瞬間のように胸がざわめく。
「えへへ、楽しいよ、ここ!」
無邪気な声が霧を溶かす。私の存在は圧倒的で、全てを支配しているはずなのに、なぜか心の奥が微かに温かくなる。霧の奥で、紫の瞳がアミットの水色と翡翠の瞳に映り込み、初めて私も心の奥で少しだけ、動揺を覚えた。
今日もまた、私の霧の世界に新しい色が差し込む――小さな存在が、圧倒的な孤独の中で微かに光を放っているのを、私は確かに感じた。
次回もお楽しみに!




