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05 魔力を増幅「それが神界の魔道具」

「ふう。なかなか骨の折れる作業だな。──地道の積み重ねが大切だ。この広さなら森がいくつか再生されることだろう。さて、お次は湿地帯を造る工程に取り掛かるとしまひょ!」


 湿地製造用の魔道具も既に準備しておいた。水魔法も注いでおいた。

 先ほどの潅水機の傍に配置してから電力注入だ。速攻で結果が出だす。


「みるみる沼地が広がってく~。早い、早い。こりゃ爽快だな! しかし、

 魔法具に属性魔力を注いだうえに電気ないと動かんのは不便やな」


 潅水機は水を取り込む必要があって、さらに電力が必要。

 だが魔法具に注入した属性魔力は特殊なシステム上、中で増幅されるため、延々と水が散布される。水魔法だけでは動力源にならず。装置起動には電源が必須。


 川沿いをほぼ沼地に変えて行き、この湿地帯を多く取り入れて置きたい所だ。

 これで湿地帯は充分だ、と判断した所で湿地帯の再生は打ち切る。

 次は残った草原地帯に森を生み出すために急成長している高木に虫や鳥を棲まわせる工程へと移る。


「次は受粉で草花の分布を拡大する育成に入る。鳥と蜂どっちが正確だ? 風を起こしてもいいけど魔力の自然回復に時間を要するな。まあ蜂が優秀か……」


 そこからレンジは即決した。

 収納から新たに取り出したハチの巣を木々に与えた。

 途端に蜂の巣から蜂が飛び出していき、受粉して花粉は運ばれ、 胚珠が種子に、子房が果実に、植物は種子を残して子孫繁栄を繰り返す。


「おお、周囲がみるみる草花に覆われて行ったぞ! 魔道具はどんどん時間を進めているから、もう枯葉までついてきた」


 様々な草と花が楽園には欠かせない。緑葉の絨毯を広げる様に大草原に光の速さで草木が敷き詰められていく。

 多くの植物で彩られた大自然の緑豊かな景色が顔を覗かせている。


「まあ、でも見事な景色だ。あの薄汚れた土地に草花が群生して広がっている。しかもこんなに短時間で! 地球に居た頃は温暖化でクソ暑くてこんなの想像したこともない」


 手を額に添え、庇を作り、周囲を見渡す。

 深呼吸をして気分を整えた後、さらに次の工程に移っていく。次は野焼きだ。


「この草花たちに火を入れていくのか、なんか勿体ない気もするが」


 火入れが植物の成長を促し、治水機能の維持にも効果があるとして火入れをするのだ。

 新種の草花も誕生し、より生命力が強化されていく。

 

 造形したばかりの名もなき草花たちに火入れをする工程だ。

 惜しんでいても仕事が捗らない。


「草花に火を放っても沼地までは燃え広がることはない。沼地は多めに造っておいたから山火事みたいに次々と燃え移り、すべてを台無しにされることはない。体験学習をやっといて良かった──あの時は沼地が小規模すぎてほぼ全焼だった」


 失敗は成功の基。

 火入れを実行すると、湿地帯を残して火は燃え広がり黒焦げた大地が所々に完成した。焼けた土壌には大量の「灰」が生成された。


「灰が新生植物の肥料になるんだったな。やっと、これで草原を造れたか。どれぐらい広げよっかなぁ」


 灰を肥料とすると草花の新しい芽の成長を促せる。


 定期的な火入れで草原環境を保つ。

 火入れによって木々の芽を焼くことで草原が森林に変わるのを防ぐ効果もある。

 広大な草原環境を維持するための人類の英知だ。


「草原は半分ぐらいでいいか。あとは受粉工程だけで自然と森林に変わってくれるはずだしな」


 何をどこまで、どの範囲というのはレンジの気分で造っている様だ。

 ほぼ、目分量で適当に広げているから区画ごとに、川の長さや幅、沼地の場所や大きさ箇所などがまちまちである。


「森の広さは生態系の割合に繋がるんだっけ。ちょいと上空から見て、バランス調整を入れとかにゃならんな。絨毯ホバーに風を注入して上昇しますか」


 上空から俯瞰するための魔道具を採り出した。絨毯だ。広大な土地に降り立って無計画に耕すのは無謀だと知っている。彼は絨毯に乗り、風魔法で上昇気流を生んで空高く昇った。


 レンジの環境再生には森林も必要。

 腐敗した領土を半日も掛けず、緑化させた。これが彼のするべき仕事だ。

 

 人知れず、偉業を成した。

 200キロメートル四方の土地の緑化作業を終わらせる。空を見上げると快晴で、その抜けるような青い空が彼の生前の鬱蒼とした気持ちを爽やかなものに変えていく様だ。


「はあぁっ!」と、両手を上げ上体を少し反らし、思い切り伸びをした。


 一気に疲労が回復した。


「仕事のあとは冷えたビールに限るな!」


 レンジは五体満足で夢を追いかけていた、あの頃の目の輝きを取り戻しつつあった。

 

「今日の仕事はこれでおしまいだ。仕事道具の片づけをしとくか」


 出していた魔道具をすべて回収して収納に仕舞っていく。


「1区画分でもそこしかないなら仕事をしたと言えるわけだから、俺は良く働いたはずだ。ノルマはないからな。これより何もせずとも月給は入って来るんや、のんびりスローライフでええ」


 レンジはそういうと収納から札束を取り出し、眺める。


「家族の最後の言葉……「頑張った、偉いぞ」。それを胸のどこかで女神に期待して張り切り過ぎたかな。かといって全く何もしなくて契約切れたら嫌だから。荒れた地は見つけ次第やっておくか」


 手には自在に拡縮できる世界地図を持ち、広げてすぐ閉じた。

 瞬時に次の目的地を決めた様だ。

 仕事は契約制だから神界からの俸給が途切れない程度に精を出す、そんなのんびりペースのスローライフを生き方に選んだ様だ。


 ちらっと空を見上げる。太陽が中天に昇っている。

 地上1日目の大地をしっかりと踏みしめ、そして歩き出す。




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