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9 闇魔法

「副団長達を倒した後、王宮へと戻って行きました」


 流石は騎士団長、あの程度では相手にもならなかったようだ。


「とは言っても誰が敵か味方かわからないので、おおっぴらに聞いて回る事も出来ません」


 そこで使用人達の詰所に向かうと数人が立ち話をしているのに出くわしたという。


 そこでは騎士団長が謀反を働き、国王夫妻を殺して王子を連れ去ったらしいという話をしていたそうだ。


「はあっ? 何でそんな馬鹿な話が通るのですか! 謀反を起こしたのは宰相でしょう!」


 アレクシスが怒りのあまり、ドンとテーブルを叩く。


 僕もそれに同意だ。


 大体、騎士団長が謀反を起こす理由がない。


「まあ落ち着け。皆がその話を信じている訳ではない。既にグレイが国王となった以上、嘘だと言えるはずがない。実際に国王夫妻は亡くなり、王子と私の行方がわからない以上、その話を受け入れるしかないんだ」


「でも、父上‥‥」


 アレクシスが悔しそうに唇を噛み締める。


 ただ、副団長達がどうして無条件でグレイの話を受け入れているのかわからないと言う。


「そう言えば、副団長達の周りに黒いモヤみたいな物が見えたけど、あれは何だったんだろう?」


 僕の言葉にジェイクは考え込んでいるが、何か心当たりがあるんだろうか。


 じっと答えを待っていると意を決したように口を開く。


「グレイは闇魔法を使ったのかも知れません」


 闇魔法?


 初めて聞く言葉だ。


「私も祖父から伝え聞いただけですが、その昔グレイの祖母が闇魔法を使っているのではという噂が立ったそうです。王宮に呼び出して問いただそうとした矢先、亡くなられたとかで有耶無耶になったそうです」


 噂になる時点でかなり信憑性がある話じゃないかと思うけど、敵対する令嬢がいたらしく、嫌がらせではという事で収まったらしい。


「でも実際に闇魔法はあります。人を呪ったり操ったりする魔法だそうです。私には黒いモヤは見えませんでした。操られているのなら、無闇に接触出来ないと言う事ですね。王子がいれば大丈夫でしょうか?」


 今のところ、僕だけが見えるのだから、陰から観察してモヤがあるかどうか確認してから話かけないといけない。


 でも操られていないからといって、皆が味方とは限らないけど。


「そう言えば、二人は何事もなくここに来れたのか?」


 問われてアレクシスが今までの出来事を話す。カインに斬りつけられたと聞いてジェイクはびっくりしていた。


「カインが王子を? 怪我は大丈夫なんですか?」


 ジェイクに背中を見せながら大丈夫だと告げる。


 血が付いていたらしく、渋い顔でクリーンをかけられた。見えないからわからなかったよ。


「グレイが命令したとも思えないが‥‥。グレイが王になった以上、次の王はカインになります。自分達の地位を盤石の物にするために王子を排除しようとしたのかもしれません」


 ジェイクもアレクシスもグレイの命令ではないと言う。何か根拠があるのだろうか?


「ねぇ、何故宰相が命令しないと言えるの?」


 ジェイクは散々迷った挙げ句、ため息をついた。隠し事をしないと言ったのはジェイクだ。


「グレイはマリエル様と結婚するはずだったんです」


 え? グレイが母上と?


 あまりの驚きに言葉が出て来ない。


「ユリウスはソフィア、つまりグレイの妻ですが、彼女と結婚する予定だったんです」


 王族の血を増やすために父上と母上はそれぞれ別の人と結婚する事が決まっていたそうだ。


 しかし、婚約発表前に突然、父上と母上は強硬手段に出たらしい。


 所謂、婚前交渉って言うやつね。


 流石に5才児には言えないよね。僕も知らないフリをしよう。


 グレイは本当に母上が好きだったらしい。


 でも隣国の王女であるソフィア様のために彼女と結婚したとか。


 グレイの母上を見る目を思い出す。


 確かにそういう熱い視線だった。


 父上を恨んでいても無理はないよね。


 てか、基本王族って自由恋愛出来ないんじゃなかった? ホントに二人共何やってくれちゃってんの!


「つまり、グレイはマリエルとその息子であるフェリクス王子には手を出さないはずなんです」


 でも母上は殺されてしまった。


 そこにはグレイにとって予想外の事が起きたのだろうとジェイクは言う。


「それより、これからどうされますか?」


 王宮に戻ってもどういう扱いを受けるかわからない以上、このまま逃げるしかないだろう。


「とりあえず今は生き延びるために逃げる。ジェイク達はどうするんだ」


「王族殺しの罪を着せられた以上、捕まれば死刑でしょう。アレクシスもこのままこの国に置いていく訳にはいかないし。一緒に行きましょう」


 こうして僕達は王都を出る事を決意した。



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