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7 守護神

 何だろう?


 背中がジンジンする。


 痛みに呻いていると


「フェリクス王子、大丈夫ですか?」


 目を開けると心配そうなアレクシスの顔が僕を覗き込んている。


 途端にさっきの出来事を思い出した。そうだ、カインに斬りつけられたんだ。


「大丈夫‥‥、痛っ!」


 横向きに寝かせられている状態から起き上がろうとして、背中に痛みが走る。

 

 アレクシスが支えてくれてようやく体を起こす事が出来た。


「すみません。私は治癒魔法が得意ではなくて。とりあえず出血は止められたんですが…」


 確かに傷は塞がっているみたいだが、痛みはそのままだ。


「大丈夫、自分で出来るよ」


 痛みをこらえつつ、手のひらを背中に向けてヒールをかける。


 ついでに破れた衣服も元通りにした。


 痛みがなくなったのでようやく周囲を見る余裕が出来た。


「ところでここは何処だ?」


 キョロキョロと辺りを見回す。 


「私も先ほど気がついたばかりで良くわかりません。どうやら森の奥らしいのですが‥‥」


 確かにまわりはうっそうと木が生い茂っていて、僕達がいる所は少し拓けた草地になっている。


 それよりも‥‥


「父上と母上は無事だろうか‥‥」


 僕の言葉にアレクシスははっとして口ごもった。どう返事をしていいのか迷っているのがわかる。


 あの時、副団長は必要ないと言った。つまりもう生きてはいないという事だろう。


 たった5年しか一緒にいられなかったが、それでもやはり僕の親だ。ツッと頬を涙が伝う。


 アレクシスがそっと抱きしめてくれて、その温もりに更に涙がこみ上げてくる。


 ひとしきり泣いてようやく落ち着いた。


「ありがとう、アレクシス」


「いいえ。それより、これから‥‥」


 アレクシスが言いかけた時、突然目の前がまばゆく光った。


「うわっ、何だ?」


 誰かが立っている。


「やあ、フィリップ久しぶり。あれ? しばらく見ないうちに縮んだ?」


 何だ? この軽いノリ。


 って言うか、フィリップって誰?


「僕はフィリップじゃなくてフェリクスって言います。それよりあなたは誰ですか?」


 まじまじと声をかけてきた人物を見つめる。


 真っ白な長いストレートヘアに瞳は金色?


 いかにも人外って雰囲気だ。

 

 すると、いきなりヒョイと抱き上げられて顔を覗き込まれた。


「え? フェリクス? あ、ホントだ目の色が違う。あいつは確か赤だったな」


 そのままギュッと抱きしめられて頬をスリスリしてくる。


「フィリップの子供バージョンって感じでかわいい~」


 だからフィリップって誰だよ~!


 あれ? そう言えば‥‥。


「僕の祖先にフィリップって方がいました。あなたは誰ですか?」


「え? 祖先? フィリップ死んじゃったの? いつ?」


「フィリップ王の統治はもう300年くらい前です」


 それを聞いた彼は非常にびっくりしている。


 てか、抱きあげられたままなんだけど、いつ下ろしてくれるんだ?


「300年? もうそんなに経つのか?」 


 あっさり300年って言うところ、やっぱりこの人は人間じゃないんだ。


「私はオーギュ。フィリップとはこの森で出会って、意気投合してね。この国の守護神になったんだ。その手の紋章はその証だよ」


 そう言われて紋章をよく見てみると、ドラゴン?


「あなたはドラゴンなんですか?」


「今はこうして人化しているけどね」


 にっこり微笑まれるが、この人も美形だな。


 そこでようやく抱っこから開放された。

 

 その時、突然空が光った。


「えっ 何?」


 見上げると光の柱が立っている。


「あれは王宮から光が立っているんだよ。新王が即位した印だ」


 オーギュが説明してくれる。


 新王という事はやはり父上は‥‥。


 また涙が出そうになり、ぐっと唇を噛み締める。


 オーギュはガラリと雰囲気を変えて真っ直ぐに僕を見つめる。


「フェリクス。この国では十八歳にならないと王位には就けない。フィリップとそういう取り決めをしたんだ。それに私はこの国の守護神ではあっても誰か個人を手助けするわけじゃない。だからお前が王位を奪い返すのを手伝ってはやれない」


 つまり僕が王位に就くには自力でやらなければならないという事か。

 

 僕はぐっと顔を上げてオーギュを見つめる。


「わかりました。でも今は王位の事は考えられません。でもこの先、王になりたいと思ったら僕はこの手で王位を取り戻します」


 オーギュはわしわしと僕の頭を撫でた。


「年の割に聡いな。中身がアレだからかな? まぁ、頑張れ。せめて森の出口まで送ってやろう」


 また目の前が光ったと思ったら、僕達は別の場所に立っていた。

 

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