12 冒険者ギルド
冒険者ギルドの中に入ると、正面の奥にカウンターがあった。
あちこちに人の姿があるが、見慣れない僕達に皆の視線が集まる。
カウンターへ行くとキレイなお姉さんがにこやかに出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「冒険者登録を頼む。私と上の子は剣士、下の子はテイマーだ」
お姉さんはにっこり笑ってシオンに目を向けた。
「従魔は‥‥。フェンリルですか?」
ちょっとびっくりしてる。やっぱり珍しいのかな。
後ろの引き出しから書類を出して父さんに記入をお願いすると、一旦奥に引っ込んだ。
やがてカードを3枚持って来ると、
「こちらのカードにそれぞれ血を1滴ずつお願いします」
と、これもまた父さんに差し出してきた。
あ、やっぱり血を登録するんだ。
父さんと兄さんはそれぞれナイフを出してチョンと自分の指先を指して血を付けていた。
僕は、というかまずカウンターに手が届かない。
登録し終えた父さんが、僕を抱き上げてくれる。
僕も自分のナイフで指先をちょんと突いたが地味に痛い。
その血をカードに押し付けると、ピカッとカードが光った。これで登録出来たという事だろう。
下に降ろされて血を止めようとしたら、シオンがペロペロと舐めてきた。
あれ?
「シオン、ちょっと大きくなった?」
『あ、ホントだ。フェリクスの血を舐めたからかな』
「何で血を舐めて大きくなるの?」
『フェリクスの魔力を吸収したからじゃない?』
シオンも今ひとつ良くわかってないみたいだ。首を傾げてるけど、その姿がかわいい。
「登録は以上で終わりです。それと従魔には装身具を付けていただく事になります」
従魔契約をしているのが、他の人にもわかるようにしないといけないんだって。
確かに間違って攻撃されないようにしないとね。また万が一暴れた場合でも、責任者をはっきりさせておかないといけないしね。
お姉さんが僕に装身具を見せてくれる。
色んな種類があるんだな。
首輪はシオンには似合わないかな?
どうしようと悩んでいると、ペンダントが目に入った。
金色でキラキラと輝いている。
魔導具だから成長に合わせて大きさが変わるんだって。便利だな。
「シオン、これでいい?」
『もちろん!』
シオンも気に入ったみたいで、付けてやると嬉しそうにしっぽを振る。
あまりの可愛さに思わず抱きついちゃった。
ちょっと大きくなったから、さっきまでと抱き心地が違う。
無事に登録も終わり、ようやくギルドの中を見渡す余裕が出来た。
一角に喫茶コーナーみたいな場所がある。
ここで他の冒険者と交渉したり、情報収集するらしい。
今も何人かの冒険者が座ってる。
中にはじっと僕達を見てる人もいる。
やっぱり小さい子供は珍しいのかな。
まさか、バレてる訳じゃないよね。
反対の壁には依頼書が貼ってあって、ランク毎に分かれている。
僕達は登録したばかりだからFランクだそうだ。
ランクアップの為の模擬戦も受けられるらしいけど、悪目立ちしたくないので、受けないって父さんが告げた。
地道に上げていくしかないよね。
でもFランクは植物採集がほとんどなんだよね。
採集する物を確認して、とりあえず腹ごしらえをする事にする。
冒険者専用の従魔を連れて入れる食堂があるんだって。
ギルドを出て、少し歩いた所にその食堂はあった。
前世の大衆食堂みたいな感じだ。
中も割と賑わってる。
席に着くとやって来た店員さんに父さんがメニューから何かを注文していた。
やがて出された料理に僕は目を丸くした。
これは、ハンバーガー?
「こうやって、両手で持ってかぶり付くんだよ」
固まって動かない僕を別の意味の解釈をした兄さんが、食べ方を教えてくれる。
確かに王宮じゃ、カトラリーを使って食べる料理しか出されなかったからね。
「兄さんは食べた事あるの?」
「父さんとお忍びで町に出た時にね」
そう言って美味しそうにかぶり付く。
小さい手じゃ持ちにくいな、と思いつつ両手で持ち上げてかぶり付く。
うわぁ~、久しぶりのハンバーガー、美味すぎる!
正面に座った父さんが僕の顔を見て吹き出す。
「ほっぺたにケチャップが付いてるぞ」
口も小さいからしょうがないんだよ。
横にいる兄さんがナプキンで僕のほっぺたを拭ってくれた。何か恥ずかしい。
シオンは我関せずとテーブルの下でお肉を堪能していた。
こんな風に父上と母上とも過ごしたかったな。




