追加ダメージで撃ち抜いてあげる!
※本作品は作者が誕生日だからと言って書きたいシチュを描いたものです。本編には関わるかもしれませんが『バレッティーナだけ』を描いた短編ではなくなっちゃいました。その点をご了承の上お読みくださいネ。ちなみに世界観はもちろん『固定ダメージで挽き殺します!』(ひきころ)と同じです。この作品が初めての方はぜひ読んでくださいね。とりあえず主人公が泣くところまで。
「『出張版ラウンド・チャンネル』へようこそ」
>!?
>公式SNSから
>シークレット配信って何かと思えば
>マジか
>待って待って待って
>\[バレ様!!!!!!!!!!!!!]/
配信画面に映るはシンプルな会議室。ホワイトボードに可愛くも綺麗に記されているのは『出張版』の文字と、企業のロゴ。
>待ってた
>最高!!!!!!!!!!!!!
>[バレ様〜〜!]
>期待
>突発は企業chだと珍しいな
「第5回VR五輪跳弾部門金メダル連覇、忍者バトルロイヤル[シノビクロス]公式大会ソロの部優勝、5on5タクティカルシューター[バークナイト]W-P-GSET優勝、チーム『産業革命』所属──」
他にはチームの象徴。回る歯車を中心に雪の狙撃銃、花の自動小銃、そしてシンプルな二丁拳銃が並べられ、彼女達を表している。
>ヒュー!
>ガンスピンがえっち
>同意
>ホットパンツはいいぞ……
>コメントが速えww
それから芸術的なガンスピン。フォロフォロフォロフォロと風を斬る速さで、チャキチャキ音を鳴らして。とある山猫にも劣らぬガンプレイ。違う点は彼女がマシンピストルの愛好家という点か。
「──Bang Bang バレッティーナよ」」
最後。決めポーズとセリフを吐いて、発砲。乾いた破裂音と共にカラースモークが焚かれる。そしてしばらく残心。ここスクショタイム。
>Bang Bang!
>"本物"の女王は違うな
>せやろか
>実はポンコツ説のあるバレ様好き
>バレ様は完璧超人!!異論は認める
>優しい
>認めるのか…
「……ん。見ての通り、今日は私一人だけ。そして出張版、いわゆる公式配信ではないから注意して」
両手の拳銃を納筒。今日のバレッティーナはホットパンツにデニムジーンズ、ゲーミングに光るスニーカーと金髪の映えるサイパーパンクコーデ。なお全て提供付き。どこかの自費でモデルやらを買い漁ったり自作で変なアクセサリを作ったりする変態とは違うのだ。
>はーい
>つまりシェリーの時と一緒?
>まさかの親友バレというね…
>バレ様の交友関係がバレった
>審議中
>死刑 即刻射殺求ム
>ヤダーッ!
「そう。シェリーの配信に出ていた事から私にも個人配信の許可が出たの。しかも機材は事務所持ち。少し呆れた」
セリフに反しバレッティーナの顔は嬉しそうに微笑んでいる。髪も揺れるしご機嫌なのは一目瞭然。一部ファンは発狂して嬉死んで残機が減った。
>カワイイ
>やったぜ。
>バレ様の姿をもっと見れるんですか!?
>社会福祉たすかる
>これで今日も熟睡できる……
>爆弾魔居るな
「けど、見ての通りこの配信には"プロモーション"が含まれてる。それでもいいならよろしく」
自分の左下を指差し確認を促す。合同配信ではない案件配信には一応表記必須の法律がある為だ。シェリーが自費でやりまくってたのはこれが理由でもある。
>ふーん どこのプロモーション?
>バレ様の宣伝ならよし
>大丈夫
>ちゃんと言ってくれるの好き
>大丈夫だ、問題ない
>はよ はよ
「それは見たほうが早いかな」
パチンと指を鳴らせばホワイトボードが回転。裏面に貼られていたテクスチャはとあるゲームのタイトル。
「『Battle World 21XX』。MMOVRFPSの金字塔シリーズの最新作。発売日は少し前かな、興味はあったけど遊ぶ機会がなかったから嬉しい」
>BWかー
>久々にノンフィクションエンジン以外のやつ見た
>もっと他エンジン見て
>見る配信ジャンルが限られてるとね…
>それはわかる
>ノンフィクは魔法とかがパラメータで入ってんのが強いがファンタジー以外だと並
>そうなんか サンガツ
>配信者はともかくプロゲーマーしか見てない人はBW見ないものねぇ
>割と納得 嬉しい
「今回遊ぶのは昔からあるクイックモードじゃなくて新しいスクラッチモードのコンクエスト。これはスポンサー側の希望。私もこっちの方が都合がいい」
BWはプレイヤースキルがモノを言う硬派な戦争風MMOFPSシリーズ。というのも兵科と装備のみを変更可能であり、プレイヤー達に性能差がない事が特徴だった。けれど最近の流行はキャラメイクを行い戦うアクションRPG。人数減少を憂んだ運営は『ボディ』から性能をカスタム可能なスクラッチモードを実装したのだ。お陰で売り上げは倍になったとかなんとか。
>スクラッチかー
>クイックの方が好きなんだけどな
>キャラメイクが面倒だからクイック
>クイックだと二丁拳銃できないししかたないね
>へぇ
「個人的な感想だと、メイキングはバークナイトよりは簡単。単純に項目が少ないし」
5on5であるバークナイトは最大でも同時に動くのは10名。それに対し20XXは128人もの大人数が一つのマッチで同時にプレイ可能なのだ。故にカスタムも単純かつ合理にする必要がある。
「今作の舞台は私たちの今よりもさらに未来の22世紀なの。国家は企業になってずっと争ってる。そして戦うのは数のクローン兵と質のサイバネ兵。とはいえサイバネ兵も"製品"だから画一化されてる」
>ザッケンナコラー!
>一瞬で処されそう
>あれ噛ませになってるけど一般人よりよっぽど強いからな…?
>普通に俺たちだと勝てない
>なんか理解したわ
つまりボディで選べるのは部位ごとに取り付ける『パーツ』。そして『キルストリーク』と『アルティメット』。何処かのポリゴンレベルでキャラメイク可能なド変態御用達格闘ゲームとは違う、大衆向けなものになっている。
「だから初心者にもおすすめ。沢山人がいるし自分一人が弱くたってなんとかなる。きっと」
>芋砂こわい
>人ってな、頭に鉛玉入ると死ぬねん
>ダイナマーイツ
>C4バギー特攻は青春
>巨大飛行船とか列車砲とかワクワクしたなぁ
断言はしない。自分が強すぎる事を知っているから。狙撃は予測して避ければいいし剣は射程外から撃てばいい。そんな絵空事を続け勝っているのになぜ弱いと言えようか。
「──雑談はこの辺りでいっか。そろそろ始めよう」
>wktk
>はよ
>楽しみすぎて眠くなってきた
>寝不足ニキはよ寝ろ
>遠足の日の俺じゃん久しぶり
回る視聴者カウンターが5桁を超え6桁に迫ろうとしているのを確認。浮かぶゲームアイコン。狙い澄まして「Bang」と一発。
>さすばれ
>凝ってるよなぁ
>どうしてこういう演出ができるかわからない
>俺も知らん
>調べた上で言うのは労力がめんどいって事だ
抜かれたアイコンは塵となり、同じくシンプルな会議室ごとバレッティーナも消えていく。そして再出現した彼女の姿は──
>おい癖
>誰だよこれ作ったのwww
>ヌッ!?
>あーけしからん
>唆るぜ、これは………
>メカメカメカメカメカメカ
>網膜焼き焦げた
>網膜炎上ニキは入院して
>新しい表現きたな
>たまんねぇなぁ!この
──ブロンドのロングヘアーはそのままに。目に見えてプロポーションがよくなった身体はあちこちが義体になっていて。人工強化内外骨格が服を着ているのにチラ見え、服のようについた装甲はメカメカしい脇腹を隠そうともせず。靴は形状こそ似ているがブースターがついて別物。そして顔はサイバー感あふれるマスクで隠されている。先程の名残といえば他にはホットパンツとジャケット、そして二丁拳銃くらいだろうか。まるで見違えるほどの別人、けれど『バレッティーナ』だと認識できる造詣……並の手腕ではない。
「えっと……シェリーがくれたレシピ通りに作ったら こうなった かな……性能は私が決めたけど」
流れるコメントに少しチラ見えする頬を赤くしながら告白。犯人は親友。ヤツの顔にピンときたら110番は正しい。つい性癖が出るとこうなってしまうから。
>納得
>はい
>そりゃそうだ
>こんな見た目の装備あったか?
>性能のカスタムは少ないけど見た目のカスタムは多いよ
>ふざけんなwww
>ファンシースペースオンラインもそんなんだったろ
>見た目装備が多いゲームは良ゲー
>ほんまか?
>見た目だけだから重くない!
>せやろか?
>たまにガチコスプレがいて笑う
>こわ……
「もう、いいから……こほん。始めるよ」
高速で流れるコメント欄を払い除けるようにしてルールを選択。指定はスクラッチモードのコンクエスト。マップはランダム。
>今回は野良なのか?
>ソロ配信だしそうかも
>BWって分隊システムあったよな
>あるよ 5人まで行ける
>ならエキシビショントーナメントのメンツ呼べば…
>出演料高そう
>そもそもシェリーが首を縦に振らないでしょ
>確かに
「そう。案件配信だけど野良マッチ。ウチの事務所には撮影班なんて存在しないから」
>うーん切実
>全員プロ──☆
>ラウンドチャンネルの面子は中々にクセ強いしな…
>ガバの女王に勝てないイキリ王好き
>ちゃうねん 競技シーンやと強いねん 初配信が同日同レギュ同タイトルでタイムが10分差だっただけで
>それは完敗なのでは?
>んまぁ…そう……
企業勢、特にラウンドチャンネルに所属する"プロゲーマー"は特に選手としての側面が強く試合以外での配信は滅多に行わない。一応個人配信を行う者もいるが練習を兼ねた雑談動画であったり関係ない趣味を流しがち。同じ"ゲーム“でも配信と試合は違いますのでとはスターシャの談。
「初配信か。その時のシェリーは縛りプレイだったはず」
>ドレイク縛りは鬼に金棒では?
>ドレイクとかいうキャラ
>約1名のせいで開拓されまくってる…
>バレットパリィって何?
>縛りプレイの相手に負ける雷光の王(笑)
>バグかと思ったら魔法を撃ち抜いて消せるのが仕様なの笑った
それはそれとして配信に生きている者でも腕前がおかしい人は散見される。比較しようない才能が突出しているだけかもしれないが、目立たないだけで野生の奇人変人名人は市井には相当数存在している。某国の格闘ゲーム界隈が世界的に見ても最強な蠱毒になっていたように。
<サーバーが見つかりました ゲームに参加します>
「マッチングできた。そろそろ気合い入れていくよ」
>そろそろ音量下げとくか…
>なんでやねん
>割と油断してると大音量飛んでくるからな
>いやいやそんなわけないだろ
>危険人物いないし、バレ様静かだし。
>ねー
<空いている分隊へ編入されます──>
「フラグを建てないで。私の配信はそんな事はないから」
<──分隊[ダブルナイン]へ編入されました>
>それはもう前振りなのよ
>全てを理解した
>じゃあ音量0にしておくから
>コンビニ行ってくる
>ファミチキ買ってきて
>タル振って耳栓作ったわ
<生存中の味方の位置へ出現します>
『BAAAAAAAAAN!!!!!!』
「!?」
>お"っ"
>死んだわ
>[愉快]
>あっ
>凸←おれのおばか
叫びと共に弾け飛ぶ街の一角。燃える拳を巻き取り装填するエルフ耳の^_^少女が目前にいた。バレッティーナよりもロボらしいパワードスーツに身を包んでいて、まるでヒーローのよう。
>すご…
>映画にいそう
>米国っぽい
>エルフ耳…?イマドキ珍しいな
>凝った見た目してるな…
>挙動的に内蔵武装パーツが基礎っぽい
>追加弾倉ならではの突起なくない…?
「ヒュウ、やるじゃんミリア!」
それに駆け寄っていく長身の緑銀髪の女。サイバー世界に生きるサムライがいるのならこうだろう、という和洋折衷の双刀使い。ポニーテールが誘発された爆風に靡く。
>うお…サァムライ……
>えっちだ
>そうそうこういうのでいいんだよこういうので
>乳でっか
>あ〜いい、埋もれたい
>なぜかバブみを感じた
>初対面なのに!?
「流石だナ……ッと、新メンバーは撮影中なのカ。ハローハロー、今見えてんノカ?」
それと瓜二つな顔を持つ黒髪の女は駆け寄るかと思えばバレッティーナの方を見て、手を振り駆け寄ってくる。声が所々ラグいけれど許容範囲。視覚以外の判別法があるのは良い事。咄嗟の時にわかりやすい。
>双子かな?
>キャラrpなのかもしれない
>三人分隊なのに三つ子じゃないんだ(
>姉妹揃って友達なのかもしれない
>なるほどね
「配信中……一応確認するけど問題ない、よね?」
ゲーム世界では珍しく、自分の事を知らずぐいぐい近づいてくる人に少し物怖じしつつも聞いてみる。
「あァ問題なイゼ。オレハ工兵のダムだ。オレにそックりなのがシルで援護兵ダ。そシテちっマイノがミリアだ。ミリアは突撃兵だカラ、オマエが偵察兵なのは助かル」
兵科が四種揃うといいことがあったり、なかったり。少なくともバランスがいいことは間違いない。
「ありがとう。それじゃあ皆、よろしく」
挨拶と共に二丁拳銃をホルスターから抜いて周囲を警戒。大規模な攻撃を行った為敵に位置がバレているだろうと思ってのこと。実際、遠くからの戦闘音は鳴り止んでいない。バトルロイヤルでさえ、終盤でもなければ一息つけるこのタイミングでも 狙われれば簡単に死ぬことだろう。BWはそういうゲームだ。
>いえーい
>両手に花どころか周りに花
>素晴らしく美しいな
>つよつよ
>BWいいな…
>スクラッチモードやりたくなってきた
>お前ら見た目に釣られすぎw
「っ…と、いつの間にか野良さんが来ていたのですね。初めましてバレッティーナさん。配信者なんですね」
慣れているのだろうか。ストリート・サイバー・サムライな姿で自然と繰り出される従者然とした所作。ギャップがすごい。オフの日なのにオンの日が抜けていないらしい。
>あっカワイイ
>さっきまで気安いおねーさんだったのに他人が来たら急に行儀良く
>いいなこのギャップ………
>閃いた
>次の幕張の出展が決まった
>はえーよホセ
「もうシル、今日は休みでしょ。私といる時はそれやめてって言ってるよね」
頬を膨らませるエルフ耳のロリっ娘。かわいい、けれどそのボディは全身義体。機械に置き換わった身体と、生身の顔のギャップが特徴的。3人とも今のバレッティーナに負けるとも劣らぬ凝ったビジュアルをしている。偶然ながら気合の入った分隊に合流したようだ。
>コーデ名は"自然破壊"かな…
>森に追われたエルフが機械文明に囚われて改造手術を受けたが逃げ出して傭兵になった
>それだけで一本書けそう
>幕張に運ぶ本が重くなったわ
>先生さっさと描いてくれ
「………」
これ公式配信だけど、という目をコメント欄に向けるが言っても仕方ないので流す。
>おっバレ様のその目好き
>カワイイ…
>素晴らしい
>たすかる
>ちょっと描いてきます
>FA楽しみ
「それじゃあ……近い拠点を狙おう」
<フラッグDへの攻撃が指示されました>
分隊長であるミリアが指差したのは超高層ビル。この街の象徴とも言える大きな建物の屋上にフラッグDは存在している。
「えっと……どう登るの?」
>階段ダッシュだろ
>エレベーター使え
>壁面上り
>皮付きを発見した…
>人口の悪夢おるな
>悪夢たん…
>グラップルで登れ
>ジップラインとかないの?
>そんなものはないことはない
>あるのか…
>自分で設置しないとない
>理解
視界に流れていくたくさんの択。単純な上り方から変わり種、道具の利用が主だろうか。確かにそれが合理、あるいは当然。普通のFPSならば何かの"登る"手段を選ぶだろう。けれど。
「あァ、今かラ壊スかラ安心しロ」
ダムは左手を顳顬に、右手を前に差し出し銃のジェスチャーを取る。自分と似た仕草にピクリと反応するバレッティーナだが誰にもバレれることはなかった。
>何が始まるんです?
>第五次世界大戦だ
>うわっ…地球人戦争し過ぎ…?
>こわ…
>ねーよw
>現代って平和なんだなって思った
>本当になー
「この辺りカ──」
引き金を引く。必要な動作はそれだけで。要請を受けた本丸より、武勲への褒章が送られる。その名は『最高の芸術』。
「──Dawn」
それは破壊特化のキルストリーク。顔面から弾道ミサイルがぶつけられたソレはド派手な音を立てて崩れ落ちる。それは神の裁きを受けたかのバベルの塔が如く。
>たーまやー
>完璧な回答だァ…
>登るのが嫌なら崩せばいいじゃない
>ゴールがこい
>サッカーかな?
>サッカーはサッカーでも超次元定期
>エクスプロージョンをビルにぶつけるのはダメだろww
>火柱がデカあい
>見ろ!人がゴミのようだ!
>クイックモードだとなかなか壊れないのになあ…
>戦車で集中砲火したら壊れるからまぁ
積み重なる瓦礫は山のよう。その頂点に聳え立つ敵の旗。嬉しいことに、他の奴らは崩壊の余波で再生産行きになっている。
「お〜、派手にぶッ壊れタナ!」
「ダム!被害がデカいし使うなら事前に言って!前も言ったよね!?」
>双子のこういうところ好き
>私が私を見つめてました?
>髪色と服装と武器以外そっくりだな…
>それは……別人なのでは?
>そうかな?そうかも…
>草
「いーダロ、手間が省ケタ。つーカ新規さんにャ言ッてル」
「すっご……」
「見惚れてないで走るよ、他の奴らがくる前に!」
ミリアは足元のスラスタを噴かし発進。ダムはフックショットで説教から離脱、一歩遅れてシルはまだ終わってないと叫びながら強化された脚力で走っていく。
「わー……」
>バレ様引いてる
>移動が多種多様だねぇ
>ちなみにバレ様はどんな構成なの?
>そういや聞いてないな
>参加したの戦闘終わったタイミングだったからな(
>まぁハンドガンだろとは思うが
「……あ、うん。私は二丁自動拳銃。キルストリークとアルティメットは使う時に解説よろしく」
足先にエネルギーを集中、斥力フィールドを利用して跳ねるように駆けていく。これは多少の瓦礫は無視できる上、閉所では跳ねながらの三次元戦闘が可能となるため変態に好まれている。つまりバレッティーナも──閑話休題。
<フラッグDを確保しました>
「制圧完了〜!」
>大日本帝国の勝利である
>違うが
>この企業日本国相当だから
>ここをキャンプ地とする!
疎に襲ってくる敵らを集中砲火で倒し潰しているうちにフラッグは完全に入れ替わった。味方も徐々に集まってきているから、ここの守りは比較的硬くはなっただろう。ただし。
「戦況不利はまだ覆らないか」
チケット差はまだ埋まらない。1:4が2:3になっただけで、他の戦線では未だ敗北中。こんなのブチ破るしかないじゃない。
「ミリア、Cに行ケタ」
「OK、バレッティーナさんもそれでいい?」
「問題ない」
幸いにも彼女のキルストリークは最大まで溜まっている。"魅せ"るには十分なくらいに。
>特攻の時間
>なんだか いける気がする
>できるできる気持ちの問題だどうしてそこで諦めるんだ
>まだなんもやってねえよww
<フラッグCへの攻撃が指示されました>
「攻撃に行くならこれ使ってくだせー」
ポンと設置された『死地直行便』。通りすがりの紫髪ロリ提供。礼を言う前に彼女は周囲の瓦礫を防衛兵器に変える作業に戻って行った。
「助かる助かる!それじゃカッ飛んで行こっか!」
>わぁ カタパルトだ…
>なにこれ
>どこでも設置できる発射装置だよ
>楽しいやつ
>とっても愉快
>笑う
>名前物騒なのなんで?
>知らんのか?
「え」
素知らぬ四人は平気で乗り込んでしまった。バレッティーナだけがコメント欄の異変に気づく。
>落下ダメージ軽減がない
>草
>草
>草
>マジで死ぬやつやんけ
>終わりです
>おいおい自殺だよ
「鳥になって来い」
ナイス愉悦。チラリと見えた紫髪ロリから送られたのは綺麗なサムズアップ。このように、ゲームにおいて無知は死因足りうる。
「まっ──きゃぁぁぁぁぁ〜〜〜!!??」
「Foooo〜〜!!」
「気持ちぃ〜!」
「やっほーーいっ!」
>楽しそう
>きららジャンプ
>この後死ぬんだよね…
>いやどうにかなるかもしれないだろ?
>ハハハ
四者四様で吹き飛んでいくサイボーグ達。ビビって悲鳴をあげたり、サングラスをかけてノリノリで飛んでいたり、刀を振り回して迎撃の銃弾を切り裂いたり、腕を伸ばし狙いを定めていたり。目標の商店街にまもなく着弾する。
「発動──『遊びは終わりだ』!」
>うわでた
>妙にゴツいと思ったら
>何このアルティメット
>一時的に遠距離武器が弾薬無限+自動リロード、近距離武器の威力アップ
>これは私の推測になるのですが 全部のパーツを武装パーツにしてます
>ただの脳筋ですね…
>機械神かな?
>自分を材料にしてそう
ミリアが正面で拳を打合せる。アルティメットが発動し、同時に全身から雷鳴を発せられる。するとボディ全体の兵器パーツに弾薬が装填されて──
「裂打重砲ッ!」
──地面が爆ぜる。必要だったのは一発の殴打。落下ダメージは衝撃ダメージに変換された。ガコンと二の腕から排出される極大の散弾莢。そして雷鳴が生成した新たな弾薬が入る。
>でっっっか
>こっから先は通行止めだ
>地獄への一方通行になります
>ややこしいなお前ら
>どっちだよ
>リロードが唆る
>ありゃ堪らん
>メカ好きワイ、新たな性癖が生まれた
>カワイイカワイイ
同時に。
「よ、ッと」
>スタイリッシュだね
>素晴らしい
>あー……いい
>お?何するんだろ
>芸術と相性いいものってなんだ…?
>多分この人たち浪漫中毒だから推測は難しいと思う
フックショットを利用し華麗に着地したダムは吹き飛んだ残骸瓦礫死体を展開したワイヤーでかき集め、ヒトの形を作っていく。告げるは命令。
「起きロ、ゴミ共──『兵共が夢の跡』」
>マジか
>うわ出た
>操作難易度カスすぎる
>あぁ……
>キルストが簡単な代わりにウルトが難しいやつなのね
>そりゃフックショット使うわ
>発動前提だからな(
起き上がるヒトガタに重なるホログラム。それらはダムと同じ見た目を貼り付けられた死機兵達。ダムの操り人形として周囲の敵をサーチアンドデストロイ。重なっていくキルは芸術の糧となっていく。
「ぁぁーーっ!!」
斥力フィールドを展開、するもテンパってガワが剥がれたバレッティーナは地面に激突。落下死してしまう。
>えぇ…
>バレ様?
>死んじゃった…
>なんかシェリーが移ってない?
>シェリーは病原体だった…?
>少なくともガバは蔓延してると思う
>感染性ガバガバ症候群
「ああもう、嘘でしょ…!?」
>夢じゃありません
>現実なんだよなぁ…
>カワイイ
>お前カワイイしか言わねえな
>その通りだから仕方ない
壁を蹴っての連続三角跳びで衝撃を殺し、最小限のダメージに抑えたシルはバレッティーナの残骸に向かって叫ぶ。
「起き上がって、『蘇生!」
>重いやつを…
>流石援護兵
>殺して仲間を救う。それでこそ我らが生命線や!
>つーかこのお姉さん蘇生できるくらい殺してt……
>はい
>気にしてはいけない
>そうだね
「……っ、ぅ……」
ナノマシンにより即修復されたバレッティーナが起き上がる。ひび割れていたマスクも元通り。
「あの子……愉快犯すぎる……」
>そっすね
>俺もそう思うな
>わかるよ
>可愛いけど邪悪の類じゃないかなあれ
>生粋の愉快犯
>愉快と浪漫は紙一重
>同座標だろ……
どこからともなく『そんなことねーでごぜーますよー』なんてご機嫌な幻聴が聞こえるくらい芸術的な死を他所に戦いは進行している。
「散爆徹杭ッ!」
敵の装甲車へ貫手、その先から爆弾をばら撒いて内部から爆破。
>バカですね…
>無限弾薬で笑う
>性能の代償が消費でそれを無限化したらこうなるよね
>これ弾の補充大変なんだよな
>弾薬パックで回復しないからねぇ
>ボックスの前でしばらく正座しないと補充されんのよな
「突撃陣形ダ」
何人ものダムが陣形を組み、一糸乱れぬ動きで敵の分隊を各個撃破していく。
>こわい
>スリラー
>同じ顔の兵とかいう恐怖な
>国落とししそう
>このままぶっ壊そうぜ
「戦える?」
「大丈夫。行ける」
>バレ様のいいとこ見てみたい!
>バレ様〜!
>やっぱPS強いとプレイが映える
>圧倒的ではないか
稼働。足先から放たれる斥力がバレッティーナに推進力を与え、滑るように地を往かせる。まるでミニ四駆。
「キモっ!」「低すぎるんだが」「対応無理です」
「「「ぎゃぁーっ!!」」」
トリプルヘッドショット。ハンドガンの特徴は有効射程が短い代わりに、貫通力と連射力に優れている事。マシンピストルならば尚のこと。
>うわつよい
>シンプルかつ最短
>素晴らしく強い
>的確に脳天狙えるならハンドガン強いよなぁ…
>派手さはないけどね
>技術の神
「凄いじゃないですか──!」
シルも二振りの超振動刃を振り回し、並ぶ首を腕を足を連続で斬り捨てて行く。動きに澱みはなく、流れるような型で。けれど視聴者の中に優れたバーチャル視力をお持ちの者が居ればわかることだろう。その武術は『超人的身体能力』を前提としたモノだ。とはいえここには関わりない事であるし。ここでは、普通の事だ。
「っ──!?」
>えっ
>死んだー!?
>やっぱBWこえーわ
>いくら強くてもねぇ…
>体力自体は低いからこうなる
>エクスプロージョンはリーサルすぎるしな……w
超高速で飛来する対物狙撃銃がシルの脳天を貫く。全く間のない三発の即死攻撃を、二つの腕では防げる訳がない。点灯する死亡マーカー。斃れる身体。いかに耐久に優れた性能をしていても、死ぬ時は死ぬ。ここはそういう世界だ。
「──『強制再起動』……私はまだ、戦える!」
>あー強い
>本人が強い時はそれが最適解だよな
>うん
>面白みはないな…
>普通に強い
>わかる
だからこそ保険というのも存在している。斃れると同時に地に手をついて、跳躍。キルログから逆算した位置に向けてサイドアームを発砲、賢い弾丸が芋砂を返り討ち。
>……
>反撃が無慈悲
>それは死ぬる
>あーあまたキルログが増えちゃったよ
>lol
>あーれ弱点にブッ刺さってくるから嫌い
>死ゾ
「斬刃飛柱──!」
全身から噴き出す炎でカッ飛ぶミリアは光の刃で何もかもを切り裂いて。
「ッと時間切れカ。自爆命令ナ」
ホログラムがジジジと揺らぐ。揺らぐ。操り人形の糸が解ける前に、使い捨てる。当然のように、自分を。自分の姿をした兵士たちを。Dawn Dawn Dawn──。爆発は止むことを知らない。
>ひぇっ…
>爆発し過ぎでは?
>これどうなってんの
>サイバネの動力炉をオーバロードしてる
>心臓を奪った上に爆弾にするなんて…!
>流石です、ご友人…♡
>おいドーザーは焼かれろ
「アッハッハッハ!楽しイナァ…殺すってヨ…!」
「ダァムゥ!」
<フラッグCを確保しました>
「楽しィかラ仕方ねェ!ありガトよミリア!」
「こちらこそ、付き合ってくれてありがと!バレッティーナさん、そちらは任せる!」
「了解」
フラッグCを取り返さんと迫り来る機甲隊に歩兵達。チケット差は残り僅か。ここで彼女らを倒さねば、形勢は逆転される事だろう。故に本気の総攻撃。初手は挨拶代わりの『大爆笑』。彼女らを嘲笑わんと多量の爆弾が降り注ぐ。
>殺意が高い
>敵さんを怒らせたようだな
>一瞬で要塞化した拠点が吹き飛びましたからね
>俺これされたら逃げられないんだけどどうやって生き残んの?
>バリアを貼る
>地下に潜る
>爆風を抜ける
>迎撃する
「それ、採用」
バレッティーナは空へ銃を向ける。二つの銃口で、数多の爆弾を相手にしようというのだ。
>無茶だろ
>あの数を相手に!?
>できらぁ!
>バレ様なら行けるだろ
>そうだよ
>こっから跳弾でなんとかしてくれるはず
「私の必殺技は──」
人差し指に力が入る。彼女一人から放たれる弾丸は、二四八十六三十二六十四百八の炸裂弾。瞬きの間に増えゆく
「──『弾丸による死』!」
>こっわ
>草
>笑うしかない
>栗饅頭かな?
>絵面が宇宙なのよ
>マジで迎撃してる…w
>一人で事足りちゃったよ
彼女の名前戴くをアルティメットは名に違わぬ働きをした。一つ残らず破裂した爆弾は、見事な煙幕になって身を隠す蓑となる。誰も視認できない……視認は。
「そこ、聞こえてる」
>ひぇっ
>みられてる
>ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
>バレ様になら殺されたいかな…
>今のバレ様悪の組織っぽい
>やめろ
>ちょっと興奮するじゃないか…♤
>帰れ
バレッティーナの放った弾丸は跳ね返る。それは必然。故に天上へ"打ち上げた"弾丸は地表へと"降り注ぐ"。これも自然。そして落ちた先の様子は音を聞けばわかる。当然の結論。
「何処だ!」
同じ者がいた。強化した周囲を識って煙の中でも今の状況を理解しているようだ。けれどバレッティーナは"足音がしない"。だって、浮いているから。
「遅い」
「グワーッ!」
>うーん無能兵
>気付いても見つけられなきゃ意味ないんだよなぁ
>全員殺せばステルス
>それ本当の戦場でも言えんのか?
>実際してるしな…
>親友と同じことしてる
>そうかも?
>こわ…
自動拳銃は先程も言ったように連射力が高い代わりに基礎威力が低い。バレッティーナの持つソレはその特徴が顕著に表れており、確かにトップクラスの倍率を持つが素のままでは火力不足なのは否めない。けれど──腕の弾丸追撃、瞳の弱点時追撃、足の隠密時追撃、脊椎の高速移動時追撃──沢山の打点上昇で支え高キルBPMを維持している。タンクでもなければ「そこ「終わり」ぁーっ!」秒針も必要ない。
「喰らえ──ッ!」
とはいえ相手もただの雑魚ではない。一矢は報いるとシルの持つものと同じ、対象を追尾する"賢い弾丸"がバレッティーナの首元を狙い放たれる。煙の中でも関係なく追尾できるこれは、問題なく着弾する。その一瞬前。
「それは『残像』」
それは次に迎えるはずの1秒を0秒に短縮するキルストリーク。時間を跳んだ身体には追いつけず地に突き刺さる賢い弾丸。そして射手は返り討ち。
>避けれるんだソレ
>マジかぁ
>ブリンク、強いけどしくじると簡単に埋まるから難しい
>俺使っても何も起こらないんだか何故?
>A,飛ばす1秒間で自分が何をするかちゃんと思い描きながら発動しろ
>??????
>これがわからないなら普通に他のやつ使ったほうがいい
>な
「シェリーと同じこと言うね」
天然の煙幕が晴れていく。そこに立っているのはただ一人。バレッティーナだけ。新たに捨てられたマガジンが孤独にカランと音を鳴らす。秒単位で次に何をするか組み立て時間単位で続けてしまう変態ならどうするだろう、なんてふと考えてクスリと笑う。
>悪の組織の幹部が笑うやつ
>光堕ちフラグさん!?
>追加戦士になるの好き
>わからなくはない
>あっ……懐かしい
>何人いるんだろうね愛の戦士
「もウ片付けタカ。ヤるナ、バレッティーナ」
墜ちていく戦闘機を背にダムが隣に立つ。先程フックショットをスリングのようにしてプラズマグレネードを投げつけたらしい。本人はソレを誇ることもなく笑っているが。
「勿論。私は、コレで生きてるから」
>そうだねぇ
>俺の生涯収入より稼いでそう
>もっと働いて
>涙拭けよ
>ひーん><
>可愛くねえわ 死刑
>草
>ハイパー無慈悲
それはバレッティーナも同じ。この程度はできて当然の技術。専業とは成功し続けるからこそ生業足り得る。メダルも、トロフィーも、事実に比べれば些細なことだ。
「同ジ、だナ」
「そうかも」
内容は違えど同業者の香りを感じた二人は笑って握手。新たな友人になった。
>ユウジョウ!
>ユウジョウ!
>ムラハチすんぞ
>ひぇっ
>ごめんて
>眩しいからちょっと現実逃避したくて…
「ふー、終わった終わった〜」
「ほんっとうに……ミリア、無茶しないで。蘇生できるからいいけど……」
「ごめんごめん、シルを信じてるからついね」
>甘い
>┌(┌^o^)┐ユリィ…
>亜種かな?
>多分殺されるから沼におかえり
>森じゃないのかよ
>あんな綺麗な場所に住めるかよ
>そうかな…そうかも…
逆方面の攻勢を抑えていたミリアとシルも合流。チケット差は完全に逆転し、この戦乱の終わりももう直ぐ訪れることだろう。彼女らに戦力が集中したおかげで1:4は4:1にまで返ったし。
「でもさー、暴れ足りないなぁ」
「あれだけ倒したのに?」
「痛みが少ないからさ、やる気がね」
>お前らのスコア絶対おかしいよ
>俺たちが見始める前から暴れてたはずなんですがあの
>うーん、強い
>アリサちゃんと同類だ…
>あれはほら 抑える気がないから
>全員的──!
>サンドバッグだろ
戦闘狂は如何の世も変わらない。血湧き肉躍る戦いの中でしか生きられない。香る硝煙の匂いを。散らばった血肉の色を。流れゆく生命の感覚を。脳髄が求めて求めて仕方ないのだ。
「私も。この程度の数は準備運動にしかならない」
「オーおー、なラも一回殺るカ。いツでモいーゼ」
「わかった──
指さすは遠くに見ゆる発電所。敵本丸前の最終防衛戦。生産ラインに帰した敵が再度造られ待ち構えていることだろう。だからこそ、破り甲斐がある。
「──分隊[ダブルナイン]全軍突撃ーッ!」
<フラッグAへの攻撃が指示されました>
「「「イェーーイ!!!」」」
>イェーイ!
>イェーイ!
>突っ込むぞ掴まれ!
>行け!行け!
>GOGOGOGO!!!
>走れェェ!!
>天皇陛下万歳!!
>ぶおぉぉ!!
>敵の潜水艦を発見!
>駄目だ!
>駄目だ!
>駄目だ!
上がる拳。進む足。飛ぶ弾丸に回る刃。最短距離を最強戦力で突き進む。ダブルナインを止められるものは何もない。
「隙ありィ!」
空からの奇襲。
「甘いよ!」
一歩踏み込んでのアッパーカットで反撃。
>K.O.
>かわいそう
>吹き飛んでますね……
>笑う
>お星様になったw
「勝った──」
超速度で肉薄してくる命知らず。
「『残像』」
何よりも短い零によって返り討ち。
>蹴りで草
>ドゴォ!
>痛そう
>そっかぁ、1.001秒後に攻撃が当たるようにしたら0.001秒の攻撃になるのかぁ
>ちょっと何言ってるかわかるな…
>わかるのかよ
『終わりだァ……!!』
果てはヘリまでやってきた。立ち向かうは二人だけ。
>勝てる訳がないヨ
>ふざけんなwww
>あからさまに近接職なのに
>殺意たっか
「掴まレ」
シルの手を握り、ダムはフックショットを放った。
「お願い!」
見事スキッドに掛かったワイヤーを勢いよく巻き取りダムらは遠心力で空へ。
「行ッてこイ!」
最高点でシルは翻って、刃を抜き、回る。回る。回る。
>三半規管が死にそう
>せやなww
>VR世界の人類、大概人外
>そっちの方が楽しいからな…w
>サイボーグになればできるか?
>無理だろ
「うんっ──」
展く第三の刃。時計が如く回って回って回って三回転。
「──斬り咲け、楓葉朔刻ッ!」
三重なる斬撃はブレードをすり抜けローターを貫いて。
『ウッソだろお〜!?』
二つに分かたれ、制御不能になったコクピットが地面に落ちる。やはり爆発する。
>哀れ也……
>目立ったら殺されるに決まってんだよなぁ
>なお例外
>目立ってるのに死んでないヤツには近づくな
>本当にそう
「カッこイーぜ、シィ〜ル♪」
「もう……」
「可愛いのはそうだけど気を抜かないで。バレッティーナ、お願い!」
「…ん」
フラッグAへ辿り着くまであと少し。分隊長の言葉で斥力フィールド全力展開、空へ跳んだ。勿論宣告するはこの言葉。
「『弾丸による死』」
弾倉より放たれた弾丸が倍算されるアルティメットを受け、広がるソレは炸裂弾。弾が跳ねぬが代わりに人々が強制的に跳ねていく。
「オマケも付ケるゼ、『最高の芸術』」
そして空模様は炸裂弾の後弾道ミサイル。時々──
「『遊びは終わりだ』、反理長銃!」
>え
>出たよ理不尽兵器
>防御不可なんだけどソレ
>掠ったら死亡!グレイズで重症!
>1、2、3、死でリスポーン!
>あっ^ちょっと逝く^
──反物質。着弾する毎周囲を巻き込んで消えていくソレは理不尽な死を振り撒く。間も無くチケットは尽きるだろう。ならば、せめて。
「これで、終わりッ!」
美女の介錯で、死にたいものだ。
<ヴォルコフ・コーポレーションのチケットが0になりました>
<オオイヌ社の勝利です>
「勝った。ぶい」
>ぶいっ
>ぶいぶーい
>流石可愛い
>あざといな……
>おめ
>うわバレ様つよい
「お疲れ様。視聴者さん達の反応はどう?」
>綺麗でした
>君可愛いね、配信やらない?
>エアチャンネル登録したわ
>もっとメディア露出して
>プロになれ恭次郎
「……このまま一緒に戦ってほしいってさ」
>逃げたぞ
>言葉はちゃんと伝えろ
>事務所に誘え
>さっきいい雰囲気だったろ
無視である。当然。リザルトに目がいってコメント欄なんて見えてないから。本当に。ちなみに分隊スコアは一位だったとも付け加えておく。
「いィぜ。よロシくナ、バレッティーナ!」
「配信終わるまで付き合うから、一緒に楽しもう!」
>やったぜ
>もうちょっと分析させてほしい
>野生の強キャラの動きを参考にしたい
>こういう人の動画もっとみたいんだけどなあ…
>配信だからじっくりとできないのがもどかしい所よね
<次のマッチを準備中です──>
「うん……今日はよろしくね。みんな」
手を差し出したバレッティーナは、緊張が解れ心置けた微笑みを浮かべていたのだった。
今回の即席分隊になった奴らが誰かって?
……私の作品を知ってたらわかるんじゃないでしょうか。そういうヤツです。