美女連環の刑 起の巻 (美女連環編)
美女連環の刑 起の巻
司徒王允は漢王朝をないがしろにする董卓の専横に深い憤りを抱いていた。
ある夜、王允は歌妓・貂蝉を招いた。
王允邸密会
「そなたのことは娘同然に思い育ててきた……。 しかし、天下の人民のためつらい思いを強いることを、許してくれ」
「王允様への恩返しができるのであればこの命さえ惜しみはしません。どうぞ、何なりとお申し付けつけください」
「よくぞ申してくれた。 国賊董卓とその片腕たる呂布あやつらを討てるのはそなたしかおらぬ」
後日、王允は呂布を招き、宴席を設けた。
王允が呂布を褒めそやし呂布が上機嫌となっていた頃。
「実は呂布殿に是非お引き合わせしたいものがおりましてな」
「ほう、遠慮はいらぬ呼ぶがよい」
「ありがとう存じます。 貂蝉、ここへ」
宴席の主である王允が合図をすると
貂蝉が艶やかな出で立ちで現れた。その美貌に呂布は瞬時に目を奪われた。
「王允殿、こちらは」
「我が娘。貂蝉でございます。 さあ貂蝉、呂布殿に舞いなどご覧に入れなさい」
「はい、義父上。 呂布様、お目汚しとは存じますが」
そして呂布は貂蝉の虜となった……。
「呂布殿、もしご迷惑でなければ、我が娘を呂布殿のおそばにおいていただきたいのですが」
「なに、貂蝉をか! まことによいのだな!?」
「天下無双と名高い呂布様にお仕えできれば何よりの幸せです。どうか、おそばに置いてくださいませ」
「迷惑などであるはずがなかろうが!喜んで貂蝉を我がもとに迎えよう!」
「ありがたき幸せ。それでは吉日を選んで送り届けますゆえ、しばしお待ちくださいませ」
呂布は上機嫌で帰っていった
その姿を見送り、王允と貂蝉は強くうなずく
そして、さらに後日王允は、董卓を招き
「わしのためにかような宴席を設けるとは殊勝な心がけぞ、王允」
「もったいなきお言葉、 董卓様はいずれ天子に昇られるお方。 お迎えできて、望外の幸せでございます」
「ふふ、滅多なことを申すな。 だが、時来たらば、そなたの功には報いよう」
「これは褒美をねだるような真似をしてしまいました。 無粋のお詫びに我が娘の歌舞を献じましょう」
「ほうそなたの娘とな」
「では、さっそく。 貂蝉、これへ」
「お目にかかれて光栄です、董卓様つたない舞いでございますが」
再び貂蝉が舞い今度は董卓を虜にするのです。
「なんと美しい! 舞う様はまるで花のよう。歌う声はまるで鈴がなるようじゃな」
「よい、よい。 それよりもっと近くに寄らぬか。 その美しい姿をわしによく見せてくれい」
「お気に召されたようですな。 もし董卓様さえよろしければ、この貂蝉をおそばに置いていただきたいのですが・」
「なんと!それは願ってもないこと。 では、さっそく連れ帰るぞ!」
「はい、どうぞお連れください。 貂蝉、しっかりとお仕えするのだぞ」
「はい、お義父様必ずや」
しばらくすると、呂布が血相を変えて王允のもとへ怒鳴り込んできた。
「王允! 貴様、この俺をたばかったな!」
「呂布殿、何事です。 敬愛する呂布殿をそれがしががたばかるなど」
「ええい、黙れ!ならばなぜ貂蝉を養父・董卓に差し出した!?」
「そのことにはお詫びの言葉もありませぬ。 貂蝉は呂布殿と言い交わした仲と董卓様にはご容赦を願い出たのですが」
「なに。では養父が無理矢理貂蝉を連れて行ったと申すか」
「そうでなくば、どうしてそれがしが呂布殿との約束を違えましょう。 董卓様もあまりにご無体な」
「そうであったか! ええい、おのれ、董卓!」
鳳儀亭にて
王允邸での出会い以来呂布は、日を増すごとに貂蝉への想いを募らせていた。
やがて想い極まった呂布はついに董卓の目を盗み貂蝉のいる鳳儀亭に忍び込んだ。
「貂蝉、ああ、貂蝉!」
「奉先様、お会いしとうございました」
「俺もだ、貂蝉!」
「奉先様、あなたのお側へいける日をを心待ちにしておりましたのにこのようなことに」
呂布と貂蝉が密会していると董卓が姿を現したのです。
「むっ?そこに誰かいるのか! 何をしておる!!」
「くっ、貂蝉よ、いずれまた」
董卓の姿を見て呂布は急いで逃げ出したのです。
「今のは呂布か? いや、そんなことより貂蝉よ無事か?」
「ああ、太師様、 助かりました」
「一体何があったというのだ!」
「庭でお花を愛でていたところ、突然呂布が現われて、私に言い寄ってきたのです。
私は逃げることも出来ず、太師様が来て下さなければ……」
「なんだと!呂布の奴め、わしの女に手を出すとは絶対に許さんぞ!」
こっそりその様子を見るものがいた。
それは李儒、董卓一派の知恵袋であり切れ者だった。
(……これは董卓様と呂布を裂く計略か、董卓様に進言してもこじれるのみ。 ならばあの女を暗殺するとするか)
李儒にバレていたので間者の手により貂蝉は暗殺された。
貂蝉の1回忌
李儒に暗殺されたが、呂布と董卓も貂蝉のことを忘れることが出来なかったのです。
参列してその死を悼んでいたのですが……。
「ホウセンサマー!」
そこには腐り果てた貂蝉だったものが居たのです……。
「誰だ貴様は!」
「ホウセンサマ!ワスレテシマッタノデスカ、ワタクシチョウセンノコトヲ」
「なんだと貂蝉だと、ワシでもでもゾンビはごめんだ」
董卓は拒むが
「セイゼンノウラミ」
ソレはもの凄い速度で王允を鯖折りで背骨をへし折り、董卓にバックドロップを決めて頭蓋骨を陥没させたのです。
「コレデジャマモノハイナクナッタデスワ」
貂蝉が呂布に迫るのですが
「うわー助けてくれー」
呂布は愛馬赤兎馬で元貂蝉から逃げ出したのでした。
三国志の中で貂蝉は王允の侍女説、死体を組み合わせた人造人間説もあります。
只の養女説、酒場の歌姫を引き取った説、遊郭の遊女だった説など、まだまともな物もあれば、シルクロードを渡ってきた欧州美女説や中には神医華陀が美女の死体の良い所を繋ぎ合わせて作った人造人間説等と言う荒唐無稽なものもある。
意表をついて人造人間説+ゾンビ説を採用してみました。
ちなみにこの小説は全4話で展開しています。