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第77話 開墾

 受け付けお姉さんと、虎鉄&タマが帰って来たのは日も完全に山に隠れてしばらくしてからだった。


 丸半日やん! 朝バーベキューの筈やん! 浅漬けは収納やから大丈夫やけど······。まあ、頑張ったみたいやし


「「お疲れ様!」」

「中々良くなったにゃ」

「加減もしっかり覚えて、38回目で全階層を1人で走り終えました」

「厳しい修行でしたが、やりきりました!」


 タマを頭に、虎鉄を肩に乗せ受け付けお姉さんは、晴れやかな顔で


 くきゅるる~


 顔が真っ赤になる。


 あはは、お腹空いてるんやね。


「可愛い音も鳴ったし、バーベキューにします!」


 俺は早速、材料を収納から出して焼き始める。


「頑張りましたね、種族も農業神になってますし(笑)」


 まりあが、サラダとスープを俺とお姉さんの前に置く。


「皆お仲間ですね!」

「そうにゃ! 新神様誕生祭り開催にゃ!」

「頑張りすぎて学校サボっちゃいました(苦笑)!」


 そういや学校って言ってたね、神眼!


「ぶはっ! マジか! 18才くらいかと思ってたけど」

「ユタさん、お肉焼きながらお茶吹き出さない! お行儀悪いですよ! ね、ルナちゃん」

「ユタさん、どうかしたのですか?」

「いや、ごめんなさい、お姉さんってずっと言ってたけど同い年やね、ルナちゃん」

「私は知ってて言ってると思って、ユタさんに合わせてたのですよ」

「はわわ! 私の年齢ですか! むふふ、9歳でこのボディは自慢ですよ! 学年で1番背は高いんですよ! おっぱいは小さいんで、下の方ですけど······」

「おっぱい言うな!」

「お母さんは、バインキュッバインだからこれからです! お父さんがエルフだから不安はありますが······」

「てか、お父さんと、お母さんに連絡しやんと! 昨日から帰ってやんし!」

「ベルでコンシェルジュのおっちゃん呼びましょう! 今日は遅いですからね、もう1日泊まるって連絡してもらうの」

「確かに今から移動するのは常識外れになりそうやし、そうしようか、ルナちゃんはお肉食べてて!」


 俺はすぐに立ち上がり、壁に設置されているベルを鳴らす。


 セバスやセレスさんみたいにはいかないが、数分で屋上にやって来た。


 コンシェルジュさんに事情を話した。


「では、そのお二方をお連れしましょうか?」

「それなら、こっちから行った方が良くないですか?」

「必ずしもそうではありませんね、今回はルナさんがまだ9歳ですので、この時間に出歩くのは良くありません、しかもお客様お二人も、お若くて同じ理由が成り立ちます。この場合、私共が送る場合もこの時間に出歩かせるのかと、お叱りを受けてしまうでしょう」

「では、こちらに来ていただく様に、手配をお願いします」


 俺は納得し頭を下げた。


(うけたまわ)りました」


 コンシェルジュさんは軽く頭を下げ、流れるように身体の向きを変え屋上から出て行った。


「ルナちゃんごねんな、今、コンシェルジュさんがお父さんとお母さんを、呼びに行ってくれたから、来てくれるまで、ごはん食べて待ってよう」

「ユタさんちゃんとご挨拶ですよ! 大事な子を預かってしまってたのですからね(笑)」

「大丈夫ですよ、ギルドのお仕事で遅くなっても迎えに来てくれてましたし! あっ! 学校もだけどギルドもサボっちゃいました! お給料がぁ~!」

「大丈夫!」

「収納を確認するにゃ!」

「収納? な、何ですか! し、食材がぁ~! あふあふしてますよ!」

「40回近く、ダンジョン巡ったらいっぱいあるよな、それに、田んぼは俺達が広げるから、種籾の用意が大変かもですね」

「ついでに村も開拓しちゃう? 魔獣の森壁で囲っちゃって」

「開拓はその仕事を取っちゃダメだよ、それに囲っちゃうと冒険者達の仕事が無くなっちゃうよ、防壁をしっかりしたやつ造るくらいかな」

「そっかぁ、なら扉をつけて行き来出来る様にすれば? 適当な間隔開けてとか」

「なるほど、田んぼとかも踏み荒らされないし、それは良さげかな」

「でしょう、万里の長城風!」

「それはカッコいいかも! 採用! ついでにこの国1周しちゃう!」

「最強の国になっちゃう! ルナちゃんいるし既に最強!」


 リリン リリン


「あっ! お父さんとお母さん来てくれたみたいやね、お出迎えに行かんとね皆で行こう」

「「は~い!」」


 俺達は空中庭園の出口側へ歩いていく。


 足元が魔道具で照らされていて、段差なども見落とすことは無い。


 屋上入口からコンシェルジュと、エルフのお父さん······いわゆるショタさんとお母さん、バインキュッバインはホントだった。


 まずは俺から


「こんばんは、初めまして、ユタです、よろしくお願いします、夜分にお呼びしてしまい、申し訳ないです」


 次に、まりあが


「こんばんは、初めまして、まりあと言います、ルナちゃんと仲良くさせてもらってます、よろしくお願いします」


 そしてルナちゃんが


「お父さん、お母さん昨日はごめんね、今日もサボっちゃったし、ごめんなさい」


 るなは頭を下げる


「心配したんだぞ、親方に聞いてなかったら街中探していたぞ」

「同い年くらいの子達と一緒だと聞いたからまだしも」


 俺が話さないとな


「本当に申し訳ないです、俺達が無理を言って、鍛冶屋に案内を頼んだのが始まりですので、怒らないであげてください」

「今日も私達のわがままに付き合ってもらっただけですから、ルナちゃんは悪くないのです」

「ユタさん、まりあちゃん、違うよ、私が虎鉄師匠と、タマ師匠に鍛えてもらってたからだよ、なんだってチョンで勝てるようになったし、私以外悪くないからね」

「ん~、まぁ、無事で良かったよ、ところでルナ」

「何? お父さん」

「ここではなんですから、座れる場所はありますか?」

「すいません、気がきかず! こちらに部屋があります、コンシェルジュさんありがとうございます、後は俺達がやりますので」

「では、こちらのお茶をお持ちください」


 そう言って、アイテムボックスからお茶のセットを出してくれた。


「ありがとうございます」


 俺は受け取り収納


「では」


 コンシェルジュさんは出口へ向かい、俺達は空中庭園を通り家の方へ。


 ルナのお父さんと、お母さんを案内したのは大きなリビング、ソファーに並んで座ってもらい、対面は俺とまりあ、もう1つのソファーにルナが、俺はお茶を用意し、まりあが葉月作のお菓子を用意し俺達もソファーへ座った。


 お父さんが話を始めた。


「ます、ルナ、そのステータスは? 職業が農業神になってますね」

「頑張ったから!」


 頑張ったけど、答えでもあるのか?


「ふむ、それに、あなた方も」

『偽装し直してませんね(苦笑)』


 あぁぁぁぁぁ~!×2


 やらかした! 完全に忘れてたやん! あきまへんわ······


「お二方とも創星神と」


 言い訳出来やん! しゃ~ない、バラすよ。

 は~い。


「あの場で言わずにいて下さって、ありがとうございます、私達は元々はこの世界の者ではありません、トラブルにより、ここの近くにある魔獣の森に転移させられ、近くの街、ここで、この街で帰るための起点にしようと考えギルドで登録、その時の担当がルナさんでした。その後、開拓村のスタンピードのため、冒険者達が出発する所でルナさんと再会、そこで意気投合しました」


 俺は虎鉄とタマを見て、虎鉄とタマは頷いた。


「こんばんはにゃ、タマですにゃ」

「こんばんは、虎鉄と言います」

「「よろしくお願いします」」

「「なっ! 猫が!」」

「ステータスを見て下さい」

「「ステータス?鑑定! 猫神!」」

「虎鉄とタマがルナさんを気に入った様で、強くしたいと、そのため俺が武器を打つための鍛冶屋の紹介、そこでルナさんの専用武器を打ち、その足でダンジョンの修行へ、レベル1000の壁を超え亜神に、さらにレベルが上がり神へ、その上の職業が神になるまでレベルが上がり、農業神になりました」


 お父さんとお母さんは静かに話を聞いてくれた。


「それと、言いにくいのですが、ルナさんの年齢を確認していなかったのも原因です」


 お母さんが


「ルナは、ギルドの受け付けに座っていても違和感が無いですからね、夫は農閑期に何度か、鑑定が出来ますので座った事があるのですが、うふふ」

「それは、はぁ、ルナは冒険者になりたいのか?」

「田んぼに来る魔物をやっつけたかったから虎鉄師匠と、タマ師匠に力を貸してもらって頑張っただけだよ、冒険者には別になりたいとは思ってないよ、そうだ! 魔物の食材が、あふあふするほどあるんだよ! これ売れば、田んぼを大きく出来るね!」

「ルナさんそれは俺達がやっちゃうから、大丈夫だよ」

「任せたら、とてつもなく大きい田んぼが出来るにゃよ」


 おい! タマ、確かに大きいのは造るつもりやけど!


「この街から開拓村までの土地が、全て田んぼに変わりますね」


 それはもちろん、そうするつもりやけどね。


「やるつもりだよ、用水路とか魔物が来ないようにする計画もありますし、でも種まきも稲刈りも一瞬って凄いですね」


 それは俺もそう思う。


「は? そのサイズは流石に」

「大丈夫! 私がやればすぐだよ、お父さんとお母さんは、種籾の用意をしないと植えられないよ」

「すぐには無理だぞ、どれだけの量が」

『勇大様、種籾ありますよ、"やまひかり" という銘柄ですが、ポイントしますね』

「あの、これは使えますか?」


 ドスッ

 たぶん1俵かな俵で出てきた。


「種籾にですか?」

「はい、見て下さい」


 お父さんとお母さんが俵から少量つまみ見ている。


「発芽させてみないとなんとも言えませんが種籾として使えると思います、これが沢山あると?」


 どれくらいあるの?


『1000トンほどですね、どこかの倉庫ごと来てそうです(苦笑)』


 ダメダメやん! 農家の皆さんすいません、農協さんも本当にごめんなさい!


 気を取り直し。


「1000トンほどですね」

「確かに、私の田から開拓村の所まで田になっても賄える量ですね、本当に田が出来るのですか?」

「はい、明日にでもお見せ出来るかと思います」

「それならば、明日に」

「はい、今日はお詫びに、この部屋で家族3人で泊まって下さい」

「はい、遠慮なさらずそうして下さい、ルナちゃん、タマと虎鉄ちゃんは連れて行くけど楽しんでね」

「良いのですか? 修行してもらったのに、さらにこんな」

「エエよ、俺達はこれから、やっちゃって来るから(笑)」

「明日には素晴らしい物をお見せしますね(笑)」

「でも、ご心配させてしまい本当に」

「ごめんなさい! 転移!」×4

 パッ


「「消えた!」」

「転移だよ、でも内緒にしてね、あの神様達は目立つのが嫌だって言って、新ダンジョン2つ見つけて、そのダンジョン2つとも攻略したのに、それを内緒にしてと頼んで来るくらいだから(笑)」

「「それで良いのか?」」

「本人達が、こっそり作戦って言ってた」

「「こっそり作戦ねぇ~」」

「その内バラす計画もあるらしいけどね」

「楽しんでるのね、うふふ」

「困った神様だ、はは」








「浮遊!」×4

「はぁ~何とかなったかな?」


 虎鉄をフードに入れる。


「うふふ、何とかね」


 タマをフードに入れる。


「まりあは万里の長城風をタマと、田んぼは俺と虎鉄がでオッケー?」

「い~よ~、最初だけ虎鉄ちゃん助けて、煮干しに魔獣の森全域に範囲結界()展開してもらいたいんだ、魔物は最初に作った結界と、後から作る結界の間しか移動出来ないようにして欲しいの」

「なるほど、壁はフェイクで本命は結界、なんやね」

「お願い出来る?」

「は~い! 転移!」

 パッ


「よ~し! つくるぞ~! ナビさん範囲だけ表示してもらえますか?」

『良いですよ、表示しますね』

「ふむふむ、ぐるりと1周しちゃいます! 土魔法! 万里の長城風っぽいかもしれない物を! ほいっと!」


 高さは今、見えている所で40メートル程だろうか上は馬車が余裕を持ってすれ違う事が出来る程の幅があり、幅も1メートル程の厚み、高さは1.2メートル程の壁があって落下防止になるだろう。


 それが数キロの長さで造られる、見た目はレンガみたい。


「ユタさんでは行ってきます! の、ちゅ」


 ちゅ


「えへへ、やるぞ~! 飛翔!」


 元気に飛んで行った。


 俺は


「ある程度地形のアップダウン残してやろうか? 街から開拓の村までの高低差は?」

『1番差がある所で10メートルですね高低差が無いと川からの水路が水流れないですよ、私が補助しますので、がっつり魔力を頼みますね(笑)』

「助かるよ! んじゃ街道の整備もついでに! 街から開拓の村まで、開墾! 土魔法! ほいっと!」


 一気に水路が出来て、田んぼの区画も畦道(あぜみち)が造られ、田んぼは、100×50メートルサイズで土をおこし緑が茶色に変わる。ん? 夜なのに見えてない? 神眼! くらいのにはっきり見えるし!

「こんだけ見えたら作業しやすいな、集中解くと······はは、普通の夜やん! これダンジョンでも光要らず?」

『あった方がリアリティあって楽しく無いですか?』

「それはあるな、冒険してるぞ感がそっちのが良いね、それはそれで、開墾やっちゃいましょう!」



 調子にのって街道の途中に元々あった休憩場に、水場を作ったり、東屋をあちこちに建てたり、ソーラー発電の街灯を街道に設置したり、田んぼばかりじゃ、街道の行き来がつまらないと思い、桜や銀杏(いちょう)金木犀(きんもくせい)などの街路樹を植えたり、意味もなく奇岩を設置してみたり······


 辺りが薄明かるくなってきた頃、まりあも1周してきたのか、向かった方とは逆から帰ってきた。


「おかえり!」

「ただいま~! ストーンヘンジっぽいのがありますね」

「あはは、田園風景だけだと殺風景で、つい」

「分かる気がします、私も必要無いのに壁に模様着けたり、屋根のある箇所を造ったり(笑)」

「お互い様やね、んじゃ合流したし開拓村行っちゃおうか!」

「は~い! 転移!」

 パッ


「まりあ、透明ローブ羽織っておこう!」

「Sir Yes sir(了解)!」


 高い位置から見下ろしてはいるが、明るくなりかけているので見付かってもつまらないしね。


「こうして見ると開拓の村狭いね、開拓したてなん?」

「居住区を、壁で囲ってるだけですしねぇ~ここは城塞都市っぽくしちゃいます?」

「良いねぇ~とりあえず囲って、水路が田んぼみたいに街中を通して、東西南北に広場を造って噴水も良いなぁ、真ん中にお城設置して町並みは網の目に通りを、お城の中の物は回収して建物だけね(笑)、せ~の、ほいっと!」


 どこの小国のお城かは解らんがデンッとお城が出現、今まであった開拓の村にくっつく形で城塞が出来た。


 半径が10キロくらいある、円形の城塞都市が完成手前。


 家は建ってないが道はある(笑)


「はへ~! 大きいね! でもユタさんお家無いよ?」

「それは開拓しに来てる人に任せようよ、やりすぎはあかんて」

「これでもか! ってくらいやり過ぎですけどね(笑)、見張りの人達騒ぎだしてるよ!」

「まぁ、一夜城ならぬ一夜都市やからね」

「絶対、えぇぇぇぇぇ~! が大量発生してますね」

「やろね」

「やっぱりやり過ぎました」

「自重をしらないにゃ」


 大混乱の開拓村→()()()()()城塞都市を見ながら、遠くの山から日が昇り始めるのを見た。


 俺達は転移でルナちゃんちの田んぼ (元々あった場所) へ飛び、3人が来るのを朝ごはん食べながら待つことにした。


 3人がやって来たのは、それから3時間後てした。


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