第74話 こっそり作戦!
「大変だ! スタンピードだ!」
冒険者ギルドに駆け込んで来た、若い男性の冒険者が、ギルド内に響く大声で叫んだ。
その後
「魔獣の森からスタンピードです!」
2人目の、若い女性の冒険者が、肩で息をし床に膝をつきながら叫んだ!
2人目の登場で場がざわめきだす。
ガッガガガガガガ!
冒険者ギルドの外で大きな音が鳴る。
「早くしろ!」
や、
「急げ!」
などの声が聴こえて来る。
2人の若い男性と、1人の若い女性がギルドに駆け込んで叫ぶ!
「開拓の村に、スタンピードが来る!」
一気にギルド内の雰囲気がガラリと変わる。
昼過ぎのまったりした空気が緊張感帯びた空気に変わり騒ぎだす。
そこへ6人目が勢い良く入って来た、若い男性冒険者が
「至急ギルドマスターに取り次いでくれ! 開拓村でスタンピードだ! 魔獣の森の外縁部に魔物が集まりだした! 万近くの魔物の集まりだ!」
そこへスキンヘッドの厳つい顔をした男が、買い取りカウンター横の扉を乱暴に開け出て来た。
「スタンピードだと!」
「ああ! 開拓村の北! 魔獣の森外縁部に、10キロ程入った所のゴブリンの村だ! 今まで見たこと無い数のゴブリンが集まって来ていた!
Cランクのパーティーはさらに奥のオークの集落で、オークが集まって来ているのを確認している! 確認したのが1日前の今ぐらいだ! まだ動き出す兆候が無かったがいつ動き出すかわからん!」
「チッ! サブマスター! 領主へ連絡! Bランク以上は開拓村で防衛の緊急依頼! あそこの砦で迎え撃つ! CランクDランクは任意だが助けてくれ! Eランクは街の中にはなるが、多少の魔物集団が開拓村を抜ける筈だ! 街の兵達に協力してくれ!」
ギルドマスターがテキパキと動きを割り振る。
そこに領主へ連絡していたサブマスターが
「領主が馬車15台を冒険者ギルドへ回してくれます! 兵士2000名は、準備出来次第出発! 今夜には出ます! 街の防衛3000名、2交代で街壁に着きます! 辺境伯騎士10000名の内半分の、5000名が開拓村へ訓練の為向かっていました! そのまま開拓村へ合流、明日の昼過ぎの到着予定!」
「よし! それだけの兵が居るなら俺達も間に合う。馬車を持ち向かえる者は余裕があるなら同乗し村へ向かってもらう! 依頼からまだ戻ってない者達も順次! 馬車に乗れなかったものは、ギルドが馬車を用意する! 集合場所はここ、冒険者ギルドだ! まずは皆に知らせてくれ!」
その言葉の後、ギルド内にいた冒険者達は急ぎギルドを出ていく。
そしてギルドマスターは
「村人達の避難は」
「村人は、残ったパーティー達が誘導しているはずだ、Aランクパーティーの辺境の狩人が主体だから間違いは無いだろう、昨日の夕方には村を出てる筈だ、ここに着くのは明日になる!」
「あのパーティーは開拓村出身だからな、解ったお前達は?」
「俺達はCランクだが防衛に参加する、が馬が潰れる1歩手前だ、休ませないと走らせられない、馬車は提供出来ますので馬の手配を、2頭引き荷物無しなら無理すれば20人は乗れる大きさです!」
「助かる、サブマスター馬の手配を、この者達の馬は厩舎で水と飼い葉を! 馬車を借りる、割符の準備を」
「はい! では馬車まで案内お願いします」
サブマスターと、スタンピードを知らせに来たパーティーは、一旦ギルドを出ていった。
「依頼を受ける状況じゃ無いね」
「その様ですね、宿に行ってみますか?」
「やな、まだ時間はあるようやし、依頼はお預け、魔物が来たらお手伝いやってその後!」
「ですね、でも稼がないとダメな時はどうしたら良いのでしょうか?」
静かになったギルドで、俺達の話し声が聴こえたのかギルドマスターが話しかけて来た。
「お前達はEランクか?」
「はい、今日登録しました」
「そうか、それならば仕方がないな、その持っている依頼はダンジョンだな?」
「はい」
「魔物がこの街に攻め込んで来るまでは、E·D·Cランクの街に残る者達はいつも通りで構わないぞ、日々の暮らしがままならないからな、防衛に出る事になれば、日別に報酬が出るから心配は無いぞ」
「では、ダンジョンでの採取は大丈夫ですね、助かります」
「うむ、受付でダンジョンカードを発行して貰いなさい。おっと、ようこそ冒険者ギルドへ、あなた達の活躍を期待してます」
と、スキンヘッドの厳つい顔をしたギルドマスターが、怖い笑顔で笑った。
シュパッ!
まりあがやる気の様だ。
シュパッ!
「目立たない様に、えぇぇぇぇぇぇ~! な(笑)」
「はい! むふふ、こっそり作戦! 解る人だけに解る様に、私達がこの街を離れてから気付く作戦です! 葉月ちゃんや他の皆さんがやっている時からイメージトレーニングしてましたので、任せて下さい!」
あはは、前の時はとりあえず楽しく、バカ騒ぎになる様に皆がやってたからね。
応援しておこう(笑)。
で、受け付けカウンターに到着。
「お姉さんこれお願いします!」
「うふふ、聞いてましたよ」
いきなりバレてるやん!
「内緒にしておきますね、うふふ」
まりあはカウンターに寄り掛かり、orzにはならなかった。
「ありがとうお姉さん、これをお願いします」
まりあは力なく、木札をお姉さん渡す。
「はい、ダンジョン攻略の依頼ですね、ギルドカードをお願いします」
まりあは
ひょろ
力なくギルドカードを出す。
「お預かりしますね」
魔道具にギルドカードを通し、ダンジョンカードも通した。
「お待たせしました。頑張って下さいね、こちらはこの国内のどのダンジョンでも階層や、ダンジョンの位置がわかるように記録される、ダンジョンカードです、失くさない様に気を付けて下さいね、そうだ、新ダンジョン見つける作戦はどうですか?」
最後は小さな声で囁いてくれた。
ガシッ!
まりあがお姉さんの手を握り。
こくこくこくこく
頷き、お姉さんは、にっこり。
「では、難しい依頼ですが頑張って下さいね」
「「はい!」」
俺達はカウンターを離れ、冒険者ギルドから出て。
ナビさん! 未発見のダンジョンありますか!
『うふふ、ありますよこの国にも2ヶ所! 王都近くの湖の小島と、最初の森の奥に』
じゃあ! Eじゃ森に行けないよ~
なぁ、まりあ······こっそり作戦
それです! ついでにスタンピードも解決しちゃいましょう!
まりあ、それたぶん解決済み。
へあ?
いっぱい倒してきたよね、近くに居ないくらい。
倒してきましたorz
『まだ地龍がゆっくり近づいてますから活躍出来ますよ、明日には魔物も復活してるでしょうし、奥からの強い魔物は出て来ませんが、1万くらいのスタンピードは起こりますから』
そうです!
まりあが立ち上がった!
「私のターンはこれからです!」
肩幅より少し大きく足を広げ左手を腰に、右手は空に浮かぶ雲かな? を、指差しポーズを決めてる。
道行く人達が注目しているので、俺はそっとまりあの腰に手を添え歩く様に促し、冒険者ギルドと商人ギルドの間の道に誘い、大通りから逃げ出す事にした。
路地を抜けると、そこもまた大きな通りで、お店が建ち並ぶ賑やかな通り。
横を見ると、まりあの向こう側に豪華なエントランス。
俺達の泊まる宿? ホテルやね。
エントランスの低い2段の段差を上り入口も大きなガラスの入った扉、魔道具になっている様で自動で開く。
大きなホールで、貴族っぽい人達が立派なソファーで、······良さげなソファーやん! 柔らかそうに見えて、あのゴツいおっちゃんのお尻が沈みきってない所を見ると、そこそこの固さもありそうや! 欲しい! 収納しちゃあかんし、受け付けさんに聞こう!
歩みが速くなるのを我慢しながら、脳内で地龍と戦っているのかたまに、ピクッとする、まりあを操縦しカウンターへ。
「すいません、泊まりに来ました」
「失礼ですが、お名前を伺っても宜しいでしょうか」
「ユタです」
「ユタ様お待ちしておりました。お部屋に案内いたしますので少々お待ち下さい」
「はい」
カウンターの小さなベルを
チン
本当に小さな音なのに、カウンター奥の扉から1人黒服さんが出てくる。
目配せをしただけで出て来た黒服さんはカウンターに、呼んだ黒服さんがカウンターから出てくる。
「お待たせしました。これよりお部屋までご案内致します」
そこに
「なぜ最上階が空いておらん!」
カウンターの黒服さんが対応する。
「既に本日はチェックインされております」
「チッ! 使えん! 責任者を呼べ!」
カウンターの黒服さんが、俺達を案内しようとしてる黒服さんをチラッと見た。
このおっちゃんが責任者かな?
俺は
「困っているようですし、助けなくても良いのですか?」
「ご配慮、ありがとうございます、少しお時間を、悪い様にはいたしません」
「はい、早く行ってあげてください」
「失礼します」
おっちゃんが、スッと離れ相手に近づいて行った。
「お客様お待たせ致しました、当宿の責任者になります。いかがなさいましたか?」
「ふんっ! 最上階の部屋が空いておらんと言うのでな、すぐに開けよ! 子爵ある私が最上階以外に留まれる訳が無い! 案内せよ!」
おっちゃんは軽く会釈をし
「はい、では、貴方が案内して差し上げて下さい」
「はい」
そしてカウンターの小さなベルを、すぐに別の少し若いかな? おっちゃんが出て来てカウンターに。
「子爵様、私はこちらの方を案内している最中であります。そちらのコンシェルジュが子爵様をご案内致しますが宜しいでしょうか?」
「うむ、構わん、ここの昇降魔道具は大きいから同乗も構わんぞ」
「ご配慮ありがとうございます、では、参りましょう」
そうして俺達3人と、子爵はお供連れの5人。
前を俺達が案内する形でエレベーターヘ。
エレベーター前の黒服さんが▲ボタンを押し、エレベーターが到着している状態だ。
俺達が奥に入り、子爵は後から乗り込んでくる。
「上に参ります」
1番上のボタンを押すと、扉が締まり上昇。
チン
音がなり扉が開く
「最上階になります」
「うむ、ご苦労」
子爵達が降りた。
「では、上に参ります」
コンシェルジュさんはそう聞こえる様に言った。
子爵は
「は? 上?」
その時、エレベーターの扉が閉まりきり上昇しすぐに止まる。
扉が開くと底には庭園、空中庭園!
「はわわ!」
まりあ覚醒!
「ここは?」
「こちらは特別なお客様しか入れず、泊まれないお部屋があります」
「特別? 良いの? 子爵怒んない?」
「クスクス、案内させた者に屋上の見学に行ったと伝えなさい、なんて事を命令致しました」
「ぶはっ! おっちゃん最高!」
「えっと、どんな状況?」
俺達は屋上に建つこれまた豪華な家やな、そこに向かいながら、まりあに説明。
「うふふ、では、子爵さんに感謝しないといけませんね(笑)」
「そや! 子爵のさんのおかげで、俺達はこんなエエとこ泊まれるんやもんな(笑)」
「そうでございますね、ここは王族の方しかまだ泊まった事はございませんので」
「「マジすか!」」
「クスクス、マジでございます」
それから使い方など教えてもらい、コンシェルジュさんはロビーヘ戻って行った。
「はぁ~! スゴい部屋ですね~王妃様気分です!」
「俺は王様やな(笑)」
「そうですわ! 王、今日の晩餐はエスコート宜しくて!」
「うむ、王妃よ任せるが良い」
「「ぶはっ! 似合わない!」」
「困った2人にゃ」
「私達がしっかりしないとね(苦笑)」
「って、本当に王様の指輪と王妃様の指輪はめてますし!」
「ほんまや! 流石に左手の薬指やなくて人差し指のが似合うか?」
俺は外そうとして······
「ユタさん?」
「王様の指輪が外れなくてな······」
まりあもやってみるようだ。
「外れないですね、神眼! ああ! 永遠に愛があるかぎり外れない呪いが! って、今の無し! 祝福が掛かってます!」
呪いて
「じゃあ、問題ないね」
「問題無いですね、愛はいっぱいありますから!」
「あはは、俺もな、よし! 冒険者スタイル止めて夕食の為のちょっと良い服着ちゃおう!」
「賛成! 卵さんはどうします?」
「小さいルーム作ってその時だけ入っててもらうつもり、ルーム!」
30センチ四方のルームを作り卵を入れ······
「ルームもダメやん!」
「いっそいつもの服にいつものパーカーにしましょうか、良い服は私も肩が凝りそうです」
「すまんなぁ、よし! 着替えよう!」
「タマと虎鉄ちゃんには蝶ネクタイですね!」
着替え終わったが、タマと虎鉄は黒い蝶ネクタイを、着けさせられている。可愛いけど(笑)
俺達は少し速いが1階のロビーへ降りていくと
「ユタ様お出掛けでしょうか?」
コンシェルジュさんが話しかけて来た。
「いえ、あそこのソファーが気になっていたので、座って良ければ買いたいから、お店を教えてもらおうかと」
「クスクス、それはお目が高い、ご案内致します」
今は、誰も座ってないソファーヘ案内してくれる。
俺は、ぽすっ
「おお~柔らかさの中にも芯があり沈み込み過ぎない!」
「ほわ~ほんとだ! 少し弾むから立つ時も楽々だよ! 良いソファーです!」
「クスクス、そうでございましょう。一流の職人が造った物ですので」
「だろうな、買いだな! どこで買えますか?」
「ユタさん! どうせならセットでこんなテーブルもあれば最高ですよ!」
「だな、素材にエルダートレントか、世界樹に貰った枝使って貰おうか!」
「世界樹の素材なら最高級!」
「エルダートレントか、世界樹の素材ですか!?」
「ダメかな?」
「すぐに兄を呼びます、失礼します」
何とかこらえたし、消えた! セバスや、セレスさんの技!
「あのコンシェルジュさんの、お兄さん作みたいですね」
現れるコンシェルジュと、ハンマーと鑿を持ったおっちゃん。
「お待たせしました」
「「早っ!」」
「いきなりなんだ?」
「こちらのお客様がソファーをご所望です、素材に世界樹が提供されます」
「なっ!世界樹だと! どこかの世界で生まれたと頭に響いたあれか!」
こっちにも届いてたんやね。
そんな感じですね。
「そうですよ、入手元は開かせませんが」
「最高のソファーを造る、任せておけ革はどうする、そのソファーはビッグボアだから手に入らんが」
「私持ってますよ、1頭分あれば大丈夫ですか?」
まりあが持ってたみたいやね、俺のは鞣し革にするため浸けたまんまやん!
「あるのか! なら問題無い、素材はアイテムボックスか?」
「移すね、ほいっと!」
「俺も、ほいっと!」
「はっ! マジもんだ、俺は戻って作業に入る、革の都合で2週間時間をくれ」
「はい、お願いします!」
コンシェルジュのお兄さんは、ハンマーと鑿を、アイテムボックスにしまい足早に去っていった。
俺達は宿泊延長し宿泊費を先払いして、夕食の場に案内された。
なんとも場違い感がありすぎて、前菜からデザート、食後の紅茶をいただいたのだが、······味なんか解らんかったよ! まるで結婚式に出席したのに
"普段着で何しに来たんや!"
言われるくらいの場違いでした。
無言のまま部屋に戻りキッチンを見つけ······
「明日から自炊やな」
「何食べたか記憶が無いですね、ははは」
俺達はそのまま虎鉄とタマに舐めて綺麗にされて寝てしまいました。




