第144話 公爵令嬢 Ⅱ
パーティーを組んだ俺達は出張所を出て、ダンジョンヘ向かう。
9階層に到着した俺達は、なぜかおっさんた達に囲まれている。
「アイリーンの知り合いか?」
「そんなわけ無いだろ! こんな奴らは知らん!」
その囲んでる中で1人だけピカピカの鎧が立っていて、その鎧がなんと、喋り始めた。
「ぐふふ、アイリーン、逢いたかったよ~ぐふふ」
えっと、こう言うのなんだったかな······せや! リビングアーマーや!
「アイリーン、お前の知り合いのリビングアーマーさんのようだぞ」
「私にはリビングアーマーの知り合いなどおらん! 私をなんだと思っておるのだ、言っておくが友達は······・・・・」
「な、なんかごめん······」
「ぐふぅ、何を言ってる、我はリビングアーマーではない! ゼハーゼハー」
「じゃあ、デュラハン? にしては首があるしなぁ」
「ゼハーゼハー、我が分からんのか! ゼハーゼハー」
ゼハゼハうるさいな、おっ、兜を脱ぐようだ
「ゼハーゼハー、ふぬぬぬぬ、ぬけん! おい、兜を引っ張ってくれ、ゼハーゼハー」
1人では脱げなかったのか、隣にいたおっさんに引っ張ってもらい
ズポン
ぷよぷよな顔が出てきた······兜の容量を超えてるよね! 入ってたの? 押し込んでいた? 今の顔って兜より大きくない?
「我だ!」
「ゲッ、ゴライアス」
アイリーンが、物凄く嫌なものを見る顔になった。
確かに、カエルとかなら愛嬌のある顔なのかもしれないが······正面から見ると首もないし。
「やっぱり知り合いやん」
「ゴライアス・ガエール男爵だ、こんなダンジョンにまで来るとは」
「ゼハー、ここで待っておれば、アイリーン、お前が来ることは分かっておったのでな、ぐふふ」
「あの話はきっぱり断ったぞ! それでもなお付きまとうか! ゴライアス・ガエール男爵、お主との結婚などあり得ん、私はこの者に総てを捧げたからな!」
おい! 俺は何にもしてない! よね?
『ちゅ、は?』
あれはされただけやん! 油断してたけど、俺からやってないやん!
『うふふ、ゴライアスガエルが、喋りますよ♪』
ゴライアスガエルって世界最大のカエルやん! ん? あはははははははは! カエル男爵やね、あははははは!
『笑いすぎですよ、声が出てますから(笑)』
「あはははははははは! ごめんごめん」
「貴様! 我の計画を! 殺れ! その小僧さえいなければ良いのだ!」
「はっ!」×35
ゴライアスガエル男爵ぷぷっ、に命令されぷはっ、たおっさん達が、ぶはっ、剣を抜き襲いかかっ、あははははは! て来た!
シュ
ドドドぷぷ
ドドドドドドドドぷふっ
合わせて35名
シュ
ドサッ×35
「はあー! なぜ倒れるのだ! なぜ裸なのだ!」
「きゃ」
アイリーンは手で顔を覆い見ないようにしている。
大丈夫だよ~パンツは残ってますよ(笑)
「剣を抜かれたので反撃させてもらったんやけど、良いよね?」
「う、うむ、大丈夫だぞ」
「大丈夫ではないわ! 貴様! 憶えておれ! 魔道具発動!」
パッ
「転移の魔道具! ゴライアスめ、その魔道具は王に献上せねばならん魔道具だぞ!」
「そうなんや、で、コイツらどうする?」
「ん? きゃ」
また顔を手で覆ってしまった。
ナビ、ゴライアスガエル男爵はポイントしてある?
『はい、魔道具を沢山持っていましたので、バッチリです』
じゃあ、お宝セットで(笑)
『は~い♪』
収納! 転移!
『完璧です、どさくさに紛れてこのおっさん達もいかがですか、ポイントしますね』
ありがと、転移!
パッ
顔を覆っていたので見ていなかった(笑)
「アイリーン、もう皆さんいなくなったから大丈夫だよ」
「え、ほんと?」
「大丈夫、ほらほらオークが来てるからやっつけちゃおう」
「ぬ、オークか、行くぞ!」
元気になったアイリーンと、オークを全滅させ、10階層のボス部屋にやってきた。
「今日こそは勝つ! 行くぞ!」
「は~い」
ギィー
扉を開け中に入ると、そこにはオークリーダーが1匹、アイリーンは、刀を構え走り込む!
オークリーダーの横をすれ違いざまに刀を振り抜いた!
シュパ
ドサッ
「ん? 切れた?」
走り抜け、アイリーンは振り向き、オークリーダーが消え、オークリーダーがいたはずの所に宝箱がドロップしていた。
「やった、やった~! 階層ボスをたおしたぞ~!」
ぴょんぴょん跳ね、大喜びだ。
一応、神眼! よしよし罠も無いね。
俺はアイリーンに歩みより声をかける。
「おめでとう、良かったね」
「うむ、3ヶ月かかったが、階層ボスのオークリーダーを倒せた、この刀のお陰だ、素晴らしい切れ味、ありがとう」
「あはは、良かったね、宝箱は開けないの? 罠もないし開けてみたら?」
「そうだ! では開けるぞ、おりゃ!」
パカッ
「アクセサリーだな、鑑定! ふむ、毒耐性極小か、中々良いのが出たな」
「え? 極小で、中々良いの? 俺の造った物は全部完全耐性付けてあるよ」
「ヘ? か、鑑定······」
『フリーズしましたね、ちなみにここは30240階層なので良い深さですよ、走りますか』
「虎鉄、頼める?」
「は~い♪ ほいっと!」
「ありがと、浮遊!」
アイリーンを虎鉄に固定して、走り出した。
『中々起きませんね、既に神様ですよ(笑)』
「あはは、それも皇神やし」
「ううん、ふあぁ~、おはよう?」
「起きたね、おはよう、ごはんあるから食べようか」
「うむ、そうだな、お腹は減っているようだ」
「じゃあこっちおいで、テーブル出すから、ほいっと!」
テーブルと椅子、オムレツとウインナー、サラダはポテトサラダ、コンソメスープでクルミ入りのパンにした。
食事が済み、アイリーンに、ダンジョンマスターになってもらい、身体を慣らすためにもう一周して、ダンジョンを出た。
「ユタ、本当に私が攻略したと言うことで良いのか?」
「良いに決まってる、この国の公爵令嬢が攻略ってことになった方が、盛り上がりそうだろ」
「確かにそうではあるがな?」
「ほらほら、メイドさんも馬車で待ってるし行くよ」
「うむ、分かった、行くぞ」
「本当にユタは別の世界から来たのか!」
「そうだぞ、さっき練習した転移でな」
「でも私はユタの世界には行けないのでしょ、寂しいですよ」
アイリーンの言葉遣いが変わった。
「俺はいつでも来れるから」
なでなで
「本当に?」
「ああ、ほらほら、メイドさんが見てるよ」
「寝室のご用意が出来てますが」
「うん」
「アイリーン寝るの?」
「クスクス、お二人でごゆっくり(笑)」
「そんなのしやんから!」
「「ぶ~」」
「ぶ~言わない!」
コンコン
「もうすぐ街に着きます、ご用意をお願いします」
「は~い♪」
はぁ~なんとか添い寝だけで終わらせました。
冒険者ギルドに入り、受け付けカウンターに向かう。
アイリーンは、まっすぐ昨日のお姉さんのところに行き、声をかけた。
「依頼の報告に来た、頼む」
「アイリーン様、お帰りなさいませ、ギルドコインをお預かりします」
魔道具にコインを置くと、お姉さんが止まった!
ユタの言う通りだな、この後はえぇぇぇぇぇ~! となるのであったな。
そうだぞ、そろそろだ、3.2.1.
「えぇぇぇぇぇぇ~!」
来たぁぁぁぁぁぁ~!×2
人は少なくない人数がギルド内にいる、お姉さんの叫び声に皆の注目が集まる。
「ア、ア、アイリーン様! ダンジョン攻略されてますよ! 完全攻略ですよ!」
ギルド内に歓声があがる!
うぉぉぉぉぉぉ~!
おめでとぉぉぉぉぉぉ~!
アイリーン様ぁぁぁぁぁぁ~!
「むふふ、どうだ、私も中々やるだろう」
「はい! 冒険者ギルド始まって以来の快挙ですよ! "わーるどじゃんぷ" ですね、ユタ君とパーティーを組まれていますね、ギルドマスター! ダンジョン攻略報酬です! お願いします!」
「・・」
おい、ギルドマスターが、舌打ちしたよな。
『はい、金庫の中に偽装の魔道具がありますよ』
神眼! 無いぞ、どういう事だ?
『ギルドマスターに触ってください』
了解!
シュ
カウンターを飛び越えギルドマスターにタッチ
シュ
『お屋敷に住んでますよ、お屋敷ごとお宝セットしました、物凄く貯めてますよ、ギルドのお金のほとんどを差し替えているようですね』
はぁ~収納! 転移!
『屋敷にいた人も着地しましたね』
ありがと
ユタ今の話は本当か!
ああ、悪いやっちゃでこのギルドマスター
どうするのだ?
そりゃ、悪いことしたら、償わないと(笑)
『戻ってきましたよ(笑)』
ユタに任せるぞ(笑)
ユタ、腹パンか?
いなば! そうか、いなばは来れるよな(笑)
ユタ、その可愛い子は?
いなばだ、俺の奥さんだ。
いなばだ、よろしくね♪
アイリーンだ、こちらこそよろしくお願いいたします!
挨拶していたらギルドマスターが木箱を持って到着した。
「報酬だ、持っていけ」
「ありがとうございます、開けて見せてもらえますか? 受け取る前に確認したいので」
「チッ、ほらよ」
パカッ
シャッ
「あははははは、ギルドマスターは中々冗談が上手いですね、そう思いますよねお姉さん」
お姉さんにふる。
「うふふ、ギルドマスターがこんな冗談を、偽物まで用意してたなんて」
「何! そんな! 偽装が解けてる、はっ!」
「ギルドマスター、偽装ですか? あなたは偽装の黒貨を渡す気だったのですか! 今すぐ本物を出してもらえませんか!」
「こ、こんなはずは、少し待て」
ギルドマスターが机に向かって走っていく。
『机にもう1セットありますね』
まあ、ここには無いんやから偽物を出すわな(笑)
ギルドマスターは机から偽物の黒貨を出して、こちらに戻ってくる。
「ほらよ」
「開けて、見せてくださいよ」
パカッ
シャッ
「これで良いだろ、さっさと持って帰れ」
「ギルドマスター、どういうおつもりですか? 二度にわたり偽物の黒貨、そもそも偽物の黒貨を用意している方がおかしいですよね」
「そ、そんなもの、冗談をやろうとしただけじゃないか」
「ふ~ん、じゃあ本物は?」
「も、もちろんあるとも、こ、ここではなく俺の家で保管してある」
「ふ~ん、お姉さん、そう言うのって普通なの?」
「いえ、決して、そんなことをすれば、ギルドマスターの職を剥奪、犯罪奴隷になります」
「そ、それも冗談だ、あはは」
「じゃあ本物は?」
職員達も、冒険者達もこちらを見ている。
『隣の人の銀貨も、金貨も、偽物ですね』
あはは、神眼! 銅貨以外は偽物やん!
『さあ、勇大様、やっちゃって下さい!』
は~い♪
「お姉さん、その銀貨に見えるのも偽物じゃないですか? 偽装されてるならナイフか何かでキズを付ければ分かりますよね?」
「これも?」
お姉さんはナイフを出して、銀貨にキズを付けた。
「嘘っ! 偽物! こっちの金貨も! 報酬の管理はギルドマスターですよ! サブマスター、金庫内を調べて下さい! 冒険者の皆様、職員の皆は手元の貨幣を調べて下さい!」
「そ、そんなことをされれば俺は、クソ! 止めろ止めるんだ!」
皆はそんなことでは止まらず、確認をして、怒声があがり始め、アイリーンも自分の財布から貨幣を出して調べている。
「なんと! 私の物も偽物ではないか!」
「金庫の中もほぼ偽物です!」
「ギルドマスターを拘束!」
アイリーンがそう言い、近くにいた男性職員が、ギルドマスターをロープで素早く縛り上げた。
「サブマスター、衛兵を呼んでください!」
「分かった」
さてさて、ここまで大がかりに貨幣の差し替えがやれているって事は、個人では無理だよなあ······
いつも読んでくれて本当にありがとうございます。
これからも読んでもらえるように頑張ります。




