第137話 孤児院ですか?
「グエッ! な、何が?」
「え~と、弥生ちゃんだったかな、決闘は俺達の勝ちで終わったんやけど、その事は理解出来てる?」
弥生ちゃんは倒れた自分と、周りを見渡し倒れている仲間を目にして息を飲んだ。
「ひっ! 嘘よ、私達が負けた······」
「理解出来たようやね、でだ、既にギルドに預けている物以外は、もらったんけど、他に何か弥生ちゃん達の持ち物ってあるかな?」
『屋敷がありますね、そこで使っているメイドさんと執事さん、その他、屋敷にいる全ての方達は奴隷ですので、持ち物って事ですね』
ん~人を持ち物って考えは好きじゃないけど、犯罪奴隷ならまだ仕方がないのか、借金奴隷の方達は違うかな、短期? 長期もあるかもやけど、従業員って感じかな、まあ、それなら俺が雇うって感じかな。
『そうですね、それならしっくり来ますね』
まあ、正直に話してくれるんなら、屋敷くらいは残してあげても良いか。
『女性ですからね、あまり放り出すのも可哀想に思えますし、レトちゃんにやったことは許せませんが』
それは同感、王命で縛って自ら人助けをするように持ってくよ。
「無いわ、今持っていた物だけよ」
おい! 俺の優しさを返せ! まったく、しゃ~ないよね。
「ふ~ん、じゃあ後は弥生ちゃん達をどうするかだけだよね、ギルドマスター、奴隷にするのは、奴隷商の人にしてもらうのかな?」
「そうなるな、奴隷の腕輪の仕様許可が無ければ、それは犯罪になる」
「そっか、人拐いと一緒になっちゃうか」
「その通りだな、奴隷にするなら俺は許可を得ているぞ、ギルドマスターの就任から、退任までの期間限定だがな」
「駄目よ! そんなこと許されないわ!」
「え? なぜ? 弥生ちゃん達の全ては俺達の勝利の時点で、既に俺達のものだよ」
「出鱈目よ! 無効よ! 私は子爵、他の子も男爵よ! 貴族にそんなことをすれば不敬罪で重罪よ!」
「ギルドマスター、こう言ってますが、ダメなのですかね」
「いや、決闘の書類をギルドが受理した時点で、たとえ国王であろうとそれを覆す事は出来ん、であれば奴隷にするにしても、今の状態なら売れないが、娼館に売るにしても勝者の自由だな」
「だそうですよ」
「そんな······、そ、そうよ! 不正があったに違いないわ! Aランクの私達が、Eに負けるなんてあり得ないもの! さぁ! 白状しなさい!」
「それは無いぞ、ここにいる皆が証人だ、この2人が動いたと思ったらお前達が倒れた、それが真実だ、おい! 誰か鏡を持っていないか!」
「ん? ああ、見せてあげるんや、俺が持ってるよ、ほいっと!」
そこそこの大きさの鏡を出して、弥生ちゃん達の前に置いた。
「は?」×6
フリーズ寸前やね(笑)
レト画伯の力作は中々の物で、皆の眉毛は繋げられ、おでこにはシワ、鼻の下に、ちょび髭が描かれている。
実は、身体のあちこちに、おっぱいとか、ぷぷよぷよおなかとか→ホクロとか色々書かれている。
『背中には、"夜露死苦" とか、"特攻隊" とか、"不倶戴天" これは弥生ちゃんに書かれてますね』
あはは、そこまでか(苦笑)
「嫌よ、なによこれ! 取れないじゃないの! どうなってるのよ! 服まで違う物に変わっているじゃない!」
「ん? ああ、戦いが始まってすぐに腹パンして、服を脱がせ、落書きして、その服を着せたんやけど、分からなかったの?」
「え? そ、そんな一瞬で、そこまで出来るの······」
「ああ、修行して強くなったからね」
「じゃあ、本当に私達より遥かに強い。······」
「実力的にはSSSランクオーバーだろうな、俺は現役の時、SSランクだったのだが、その2人の動きは動き出しの察知は出来たが、後は見えなかった」
「おお、ギルドマスターすげ~やん!」
「君達に比べればEランクも変わらんさ、でどうする?」
「ん~一旦お願いします」
「分かった、ではこれを手首に着け、奴隷魔法を発動させれば良い」
そう言い、奴隷の腕輪を6人分渡してくれた。
「それは俺達がやっても良いの?」
「構わん、許可者の前でなら許されている」
「ま、待つのよ! や、屋敷もあげるわ! 貴族街の1番大きな屋敷よ! だからすぐにこの落書きを消して終わりにしましょう!」
「いやいや、その屋敷は既に俺の物だよね、そこで働く奴隷達も、弥生ちゃん達も」
「それじゃあ······、どうなっちゃうの」
「弥生! あなたが言い出したのだから責任とってよね!」
「なによ! あなたが武器と防具がって言わなければ、こんなことにはならなかったのよ!」
「もう! 2人のせいじゃない! 2人で奴隷にでも何でもなって、私達は解放するように言ってよ!」
「そうよ! こんなのってあんまりよ!」
後の2人はフリーズしているね。
「じゃあ、奴隷はやめておくけど」
王命である! 今この時より俺達の言うことを聞き、嘘を付かず、良いことだけをやり生きて行け! 悪いことはするな! 今までの過ちを償え! 永続である!
「まずは場所を移そうか、君達の屋敷に案内してくれ」
「はい!」×6
「ん? 急におとなしくなったな」
「奴隷にならなくて、よくなったからじゃないの、腕輪は返すね」
「ああ、まあ、正直にミレニアムはこの街でも上位のパーティーだから奴隷にでもなれば、これまでのようには依頼を回せないから助かるな」
「依頼は真面目に受けるんや」
「受けるが、クレームはSSSランクだな(苦笑)」
「あはは、そんな感じやね、じゃあ失礼、皆は先導してね」
そう言うと立ち上がり俺達を先導するため外に向けて歩き出した。
冒険者ギルドを出て大通りの端を歩く俺達、まあ、あの顔では、堂々と道の真ん中を歩くのは抵抗あるやろうしね。
徐々に街並みが綺麗になってきて、豪邸がポツポツと見えてくる。
さらに進むと豪邸だらけになり、その中でも大きな豪邸、お城に近い建物に向かっている。
え? マジあれなの?
『はい、ここの領主の館より大きいですね、相当この方達は儲けていたのでしょうね』
領主さんより大きい建物はあかんやろ!
『うふふ、隣が領主の館ですね(笑)』
うわぁ~領主の館の隣にんなデカいの建てたらあかんて! 面目丸潰れですやん!
そしてお屋敷に到着した。
門番と少しトラブルはあったが屋敷に入り、大きなリビングを話し合いの場所に指定して、今、ソファーに俺達は腰を下ろした。
「さて、君達に聞きたいんやけど、この世界に来てどれくらい立つの?」
弥生ちゃんが話し出す。
「2年目になるわ」
「どうやって2年弱でこの屋敷が持てるの?」
「元々は隣に住んでる領主の館だったものを決闘で手に入れたわ」
「決闘か、それは正式に? 今日みたいに書類を書いたりしたの?」
「ええ、その通りよ」
「じゃあこの屋敷は犯罪を犯して盗ったとかではないから良いか、もしかして隣の屋敷は領主の別邸とかやったんかな?」
「いえ、住んでいた人を借金まみれにして奪ったそうよ、私達はその奪われた人達に雇われ、この屋敷をもらうために決闘して、私達はこの屋敷を手に入れたの、その人達は元の屋敷を取り返したのだけと、その後で屋敷を奪うために私達が領主に雇われ、隣の人を追い出したの」
「あはは、ややこしいけど、まぁ領主が悪者か」
「その内この屋敷も狙われるでしょうね、私達は旅に出るつもりでしたから、適当に安売りする予定でだったので、嫌がらせも気にしてはいませんでしたが」
「旅に?」
「多分、彼氏達でしょう」
レトはそう言う。
「そうよ、この世界に転移した時に同じ場所にいたの、もしかしたらこの世界に来ていると思ったから······」
「選択肢をあげるよ、この世界で彼氏を探し善行を行いながら旅をするか、元の世界で殺人者として罪を償うか、ちなみに落書きは消させてもらうよ、少し話し合いしてからでも良いよ」
「はい、少し時間を下さい」
出ていくんかぁ~ここの管理人にしようかと思ったんやけどなぁ。
『そんなことを考えてたのですか?』
ん? せっかくもらったし何かに使いたいやん! それで壁に結界張って、ここもめっちゃ広いし、ゆっくり出来る所をキープや! って思ったからね。
たとえば、ここでもタイラントカウさんを飼うとか?
ユタさん、タイラントカウを飼っているのですか?
飼ってる? 放牧しただけやね、いっぱいいるよ。庭の草が伸びすぎないように、食べてくれるって言ってたな。
『うふふ、孤児達を住まわせるなんてどうですか? これだけ大きな街ですから、孤児院に入れない子達が沢山いると思いますよ』
私それに賛成です。それくらいはこの街に貢献してもらわないと。
その話で進めてみるか。
30分ほどたっただろうか、話し合いは終わったみたいやね。
「この世界に残りたいと思います」
「そうか、まずは錬金! ほいっと!」
落書き用の墨を分解、女の子達の落書きが消えた。
「さて、落書きは消したけど、ここで働いている方達はどうするつもり?」
「ここに来た奴隷達は全て借金奴隷ですので、奴隷商に引き取ってもらうのが最善かと思いますが」
「せやね、ここは放っていくつもりやろ、安く売って、いくらなの?」
「黒貨2枚くらいが相場ですから、それ以下ですね、旅を続けても、それだけあれば何でも出来ますから、依頼を受ければなんとでもなります」
「ん~、この街を拠点にして捜索活動は無理かな? Aランクの冒険者がいることは、この街のギルドにとっても良いことだし、まぁ、大陸を探し回るとなると難しいか」
「いえ、固定の場所が、邪魔になりますので売ると考えただけですので、ここに帰らないと言うわけでは無いです」
「なるほど、なら良いかな、この屋敷を孤児院として解放します。管理運営は君達、彼氏を探しに出かけるのはオッケー、この街の依頼も受けること」
「出来るだけやってみます」
「なら、君達の武器と防具は今から造るよ、造っている間に転移の魔法の本を読んでおいて」
そう言い古代魔法の本を、6冊テーブルの上に出した。
もちろんコピーだ(笑)。
「すぐに出来ないけど、この後パワーレベリングしに行くから頭に入れておくだけで良いよ」
『うふふ、やっぱり優しいですね』
しゃ~ないやん! 王命で縛ったし良いやん!
そんな話をしながら6人分の武器と防具を造っていきました。
いつも読んでくれて本当にありがとうございます。
これからも読んでもらえるように頑張ります。




