第133話 寄り道
冒険者ギルドを出た俺達はナビの案内で奴隷商に向かっている。
「ナビ、何か動きは?」
『特には、不正入手の奴隷についてのリスト、奴隷商のギルド員名簿、不正取引の顧客リスト、不正奴隷の持ち込み者のリストなどがあします、燃やそうとしてましたので、見た目をそっくりに作った本と入れ替えておいたくらいでしょうか』
「じゃあ不正奴隷にされた人達のポイントと、持ち込み者の所にいる人達もやね、何人くらい居るかな?」
『3097名います』
「マジか! 一旦どこかへ集めるか······。砂漠はどこかの国の物なの?」
『いえ、あまりにも何も無さすぎて、どこの国も手を出しませんね、そこを一時避難場所にしますか』
「せやね、整備してすぐに集めてしまおう、レト、友達探しは少しだけ待ってくれるか?」
「はい、私は良いですよ、そんなに沢山の方が苦しんでいるかも知れないから」
「ありがと、よし、そこの路地裏に」
路地裏に入り転移しようとすると
「お待たせ! もうあの子達は大丈夫ですよ! クシナダちゃん達に任せてきました!」
まりあが転移してきてくれた。
「まりあ、助かるよ、今から3000人ちょいの人助けするから」
「おお~スゴい人数ですね、どうやるのですか?」
「まずは······」
砂漠の、どこの国からも1番離れた場所に湖を造り、なんと地下には豊富な水源があった、こんこんと水がわき出て少しの間に水が溜まり、あふれ出そうになったので海に続く川を造った程だ。
その周りを草原にしたり森にして、とりあえず完成。
「んじゃ、虎鉄、タマ、レト、ヘレが奴隷にされた人達をこの場に転移させて、俺が奴隷解除、まりあが怪我を負ったりした人の回復、まりあ、1人で大丈夫か?」
「むふふ、肉体的、精神的にも拐われた時より良くなるように再生させるのですよ! 任せて下さい!」
「あはは、一応俺達の出番が終わったら、そっちに入るから、ナビも奴隷の腕輪以外の要らん魔道具も勝手に収納お願いね」
『は~い♪ 任せて下さい♪』
「行くぞ!」
「せ~の!」
「転移!」×4
パッ
「解除!」
『勝手に収納!』
「ふるぱわー再生!」
「再生!」×5
15秒ほどでホントに再生が完了した。
俺はすかさず念話で
王命である! 慌てず騒がず俺達の言うことを聞いて下さい! 俺達の事をどんな方法を使っても他者にもらさないで下さい。
ザワザワしていた3097名の人達が、浮遊している俺達の方に注目している。
「良く聞いて欲しい!」
「奴隷になっていた所に帰りたい者は手をあげてください!」
誰1人手をあげる者は居ない。
「帰る場所が無い者は手をあげてください!」
『137名ですポイントしました』
ありがと
「その人達はこのオアシスを仮の住まいとしてもらいます、その場で座って待っていて下さい!」
137名が腰を下ろす。
「次は自分の帰る場所があるが帰らない、冒険者するんだ、とか思っている人はいますか、いたら手をあげてください!」
『2名です、ポイントもしました』
「お2人は私達の近くに来てください」
「残りの方達は今から各々の町や村へ送ります」
139名を除き、片っ端から転移させ帰していく。
残った人達は、仮の家で休んでもらった。
皆の転移が終わり、残った人達の事をまりあ達に見てもらって俺は、とある奴隷商の近くの路地裏に転移した。
全ての国の王様にお願いをして、1時間後にリストにあった者を捕縛するように頼んできた。
追加で見つけたリストも一緒に。
「もう少しで兵が来るね」
『はい』
「ここの誘拐のギルドみたいな本拠地を潰せばオッケーなんやけど、転移者が居るとはね」
『借金奴隷ですがね、あのスキルは見たことが無いですね、緊縛ですか』
「縛るのが上手いんやろね、職も緊縛士やし、傷とか着けないように、捕縛したりするために居る感じかな、俺もぐるぐる巻きじゃない綺麗な結び方教えてもらおうかな」
『セレスさんも、ぐるぐる巻きしてましたよ(笑)』
「ま、この子だけでも救い出しておこうか」
『は~い♪ 普通に買いに入るのですか?』
「一応ね、どんなとこかは見ておきたいかな、よし、行くぞ」
店の中に入り、受け付けさんに
「こんにちは、奴隷を見に来たのですが、今からって大丈夫ですか?」
「はい、ご予算は」
おう、品定めしてますよ~って顔はニコニコやけど目が俺の上から下までじろじろ見てるやん(笑)
ここは黒貨ちゃんの出番やね。
「これくらいは持ってるね」
革袋に入れられた10枚黒貨をドスドスっとカウンターに置いていく
置いていってる最中におっさんは1つの口を開け
「こ、黒貨! お、お客様、す、すぐにご案内致します」
「そう? まだちょっと出しただけだよ」
この星の黒貨はまだあんまり持ってないから、おっさんの近くの革袋だけがこの星の物で、残りは元々持ってたものだ(笑)
「まあ、じゃあしまうね、収納!」
なんでしまうんや! みたいな顔しやがった(笑)
「どう行った奴隷をお探しでしょうか、少しトラブルがあり数が減っておりまして、次の入荷まではお時間がかかります」
「トラブル? 逃げられたとか? 犯罪奴隷が逃げたら怖いやん」
「いえいえ、犯罪奴隷は逃げられない様に魔法がかかっておりますので大丈夫ですよ、この部屋にどうぞ」
中はそれはもう豪華な作りで金もふんだんに使われて、ソファーも見るとビッグボアの革やし!
座って出てきた睡眠薬入りのお茶も、薬が入ってなければ美味しそうな高級品だ。
「まずはおすすめの奴隷からお見せしますね」
チリン
手元のベルを鳴らすと
カチャ
扉が開き裸の女性が5名入ってきたぁ~!
ちゃ、ちゃんと水着みたいなのは来ていますよ!
それを連れてきたのが緊縛の人、高校生くらいかな?
「よろしい、君もここにいたまえ」
ペコリ
緊縛さんは喋らず頭を下げただけだ、それも魔法で縛られている様だ。
「犯罪奴隷の中でも美しい者ばかりを集めております」
「ほお、そちらの連れてきた女の子が俺好みなんだけど、奴隷みたいだし、その子にするよ」
「は? その子は売り物では無くてですね」
ドス
革袋をテーブルの上に出す。
「足りるでしょ?」
ナビ、確認した後鉄屑に入れ替えるから(笑)
革袋の口を開き10枚入っているのを確認させ袋にしまい、テーブルの上に置いておく
「もちろんでございます」
「じゃあ、手続きを頼むね」
書類が持ってこられ、奴隷魔法で、緊縛さんが俺の奴隷になったのをステータスで確認した後
睡眠薬入りのお茶を飲み干した。
おっさんはニヤリと笑い
「くっくっくっ、あははははは! 飲みやがったな、睡眠薬入りだバカめ! 貴様の懐は全て俺もの物だ! ひゃはははははは!」
「ふ~ん、いつもこんなことしてんの?」
「ああ、一見の金持ちはな、この街の者じゃなきゃな、睡眠薬を飲ませてそのまま俺達の商品に成り変わるってもんだ」
「へ~」
「貴様が買った娘も先日買いに来た所を変わったスキルだったからな、それに中々の容姿だから飼う事にしたんだよ、この商売はな、勝手に商品にが寄ってくる良い商売ってもんだ、あははははは!」
「でも、俺には睡眠薬は効かないよ? そんなこと喋っちゃって良いの(笑)」
「は?」
「俺って耐性がついてるから毒とか薬効かないんだよ、残念やね、せやね、お姉さん喋って良いよ、俺の予想では借金してここに奴隷を買いに来たのかな?」
「はい、友達が2人拐われて、ここに入ったのが、私のスキルで分かったから」
「ほお、そんなことまで分かるんや」
「はい、今は遠くに居るようです、繋がっていますので方向は分かります」
「たぶんあの2人やね、エルフとドワーフの女の子達でしょ」
「え? そうですがなぜ」
「俺が保護したからね、拐われて奴隷になったのを助けて回ったから、お姉さんはその後にここに来て、借金してたから借金奴隷になったのか」
「半ば無理矢理ですが、私の代わりに冒険者ギルドに返せないから奴隷になりますと手紙を書かされました」
「なるほどね、おっさんは申し開きあるかな?」
「こうなったら、お前達! その小僧を取り押さえろ!」
5人の美人さん達が俺に襲いかかるが
シュ
ドドドドドド
シュ
ドサッ×5
気絶させた。
「おっさん、真面目に商売してれば良かったね、ほら、足跡が聞こえるでしょ?」
ダダダダダ
バタンッ
「ギルドマスター! 兵士が取り囲んでます!」
「なんだと!」
ダダダダダ
「犯罪者の名前を読み上げてます! 我々のギルド員の名前をです! ヤバいですよ! 逃げましょう!」
ダダダダダ
「地下道も押さえられてます! 逃げられないですよ! ギルマス!」
「あははははは! タイミングバッチリやね」
「何が?」
「通報したの俺やしなぁ~あはは」
「な、何て事を!」
「そうそう、燃やした筈の顧客リストとかギルド員の名簿とかも全て、国王クラスの人に渡したから大陸全土で捕縛作戦が実行中だよん」
「そんな、それでは俺様のギルドが壊滅ではないか······」
「そうそうもう1つ、拐う人達のリストなんかも渡してあるから、そっちも壊滅やろね」
「は? 弟のギルドもか······」
「弟なんや、まぁ~良いか、来たみたいやし」
ダダダダダダダダダダ
「そこを動くな!」
10名の兵士がなだれ込んできた。
俺は緊縛さんの近くに寄り添い、おとなしくしている。
奴隷の契約書を持って。
「君はここの人間か?」
「いえ、ほら借金奴隷を買いに来た者です」
契約書と冒険者ギルドカードを見せる。
「ふむ、間違いないな」
「でしょ」
「ああ、よし、お前達は帰ってもらってかまわない、1人つけるから外まで案内させよう」
「助かります、勝手に俺達だけで行ったら捕まりますもんね」
「くくっ、その通りだな、よし、お前が案内して差し上げろ」
「はっ! こちらへ」
「ありがとうございます」
その時おっさん達は服を脱がされ魔道具なども全部没収されたみたいでパンツだけになっている。
ナビ、弟とこのおっさんに王命やるからポイントしてね。
『は~い♪』
王命である! 取り調べで全ての罪やその罪に荷担した者達の事も全て話しその資料のありかも全て吐き出せ!
『完了ですね、これで無理やり借金奴隷にされた人達も助け出されますね』
やね、酷い扱いされてなきゃ良いけどね。
『そうですね』
俺と緊縛さんは、お兄さんの兵士に先導され商館から出たのであった。
商館を離れてから
「えっと、転移者だよね?」
「え? そうですが君も?」
「いや、俺は召喚者だね」
「うわぁ~王様とかに会うパターンですね、それとも森の深くでしょうか?」
「王様にやね、そこは皆で逃亡しちゃったけどね」
「あはは、こんな物語にしか無い様な経験しちゃったけれど、帰りたいとは思わないの? 私はこっちに仲間を見つけたから帰りたくないけれど」
帰らない方やね(苦笑)
「俺も良く似た感じかな、親とかには顔ぐらいは見せたいけどね」
「あはは、奴隷になっちゃったし、その時は私も一時帰国しようかしら」
「せや! 解除!」
ボトッ
「へ? 腕輪外れたよ! 鑑定でも外れないって書いてあったのに!」
「あはは、じゃあ行くよ、そこの路地裏まで」
「え? 何? 襲われちゃうの? 君にはもう少し早いと思うよ! 私もだけど! そう言うのはもっとゆっくりじっくり2人の仲を深めてからにしない?」
ぺしっ
「痛ぁ~デコピンは酷いよダーリン」
ぺしっ
「誰がダーリンやねん!」
「ううぅ~おでこから角みたいなコブ出来るよ~」
「出来ません! ほら早く仲間に会いたいんやろ?」
「それはそうだけれど」
「ならついてきて」
俺は先に路地裏に入り、周りを確認して、緊縛さんが入ってきたところで
「転移!」
パッ
「到着、ほら行くよ」
「へ? テレポーテーションだ! ダーリンのスキル?」
「転移だ! それにダーリンやない!」
「ぶ~ちょっとくらい良いじゃんかぁ~」
「ほらそこの家の中に居るから早く行くぞ! まったく、最近の若いやつは」
「あははははは、おっちゃんみたいだよその言い方」
「俺は49歳になったおっちゃんや! 召喚でちびっ子になっただけやもん!」
「いやいや、おっちゃんは、 "もん" 言っちゃダメ(笑)」
「はあ~もうどっかに捨ててこようかな······」
「はへ? うそうそ嘘なんです! 私の愛がそうさせたのです! 愛LOVEダーリンですから! 捨てちゃダメですから!」
「ユタさんがまた奥さん拾って来たみたい(笑)」
「ユタさんが独り歩きすると奥さんが増えるってホントにホントだったのですね(笑)」
「ううぅ~おっぱいありますね、敵認定しても良いですか?」
『ユキちゃんだ! ユキちゃんも来てたのかぁ』
シロシロ? 知り合いか?
いつも読んでくれて本当にありがとうございます。
これからも読んでもらえるように頑張ります。




