第123話 魔王の初めての友達
屋台で買い物をして、スラムが無い方の路地裏に入る。
「ちっ! 運の無い奴らだ、すまないがここを見られてしまったのでな、少し付き合ってもらえるか? 冒険者のようだが、子供達に手荒な真似はしない事を約束する」
なんや、いなば出動やと思ったのに。
『来ちゃいましたよ、皆の後ろにいますね』
「ユタ、出番?」
「あはは、まだだよ、このお兄さん達がちょっと一緒に来ないかってね」
「ん? 別に良いよ、今日はまだ何するか決めてなかったから」
「ありがとな」
なでなで
「にゅふふ」
「あ~とりあえず中に入るぞ」
路地裏の壁が外されており、中に入れるようになっている。
『革命軍ですが、まともな方に見えますね』
だよなぁ、称号に出てるし、この人達が偶々良い人で他の人が悪いのか。
『普通なら拘束しますよね』
ぐるぐる巻かれるのぉ~ぐるぐる~×2
あはは、こんな狭いところで回ってるとぶつかるよ。
は~い♪×2
『まぁ、確かめてからで良いですね』
ああ、もしかしたら国の方が帝国に傘下賛成で、革命軍がそれを阻止しようとしているのかもしてないしね
『逆張りですね』
ユタ、流石に国をあげてそんなことはあり得ませんよ(笑)
ユタさん、私はそっちの方が面白そうなので賛成で(笑)
帝国やっつけるぅ~♪ シュパッ!
ウインドアロ~♪ シュパッ!
ん? 腹パンは帝国なの? シュパッ!
あはははは、そうだな1番悪い奴をやっつけよう! シュパッ!
うふふ、それは良い考えです。シュパッ!
うんうん賛成! シュパッ!
「す、すまないがおとなしく付いてきてくれると助かる」
俺達が、シュパッ! で遊んでるとなんだこいつらみたいな顔で見てくる。
「ああ、すまない、この状況に少し興奮してな」
「ごめんなさい」×4
「騒いでごめんね、おとなしくするよ」
「た、頼む、もう着くから」
地下に下り、薄暗い通路を歩いている。
真っ暗ぁ~♪
私も真っ暗ぁ~♪
いやいや、クシナダの手を握り目を閉じて歩いている。
ん? 楽しいのか? ユタ手を頼みます。
いなばも俺の手を握り、リュートも反対側をスッと握り。
おお~! 真っ暗闇~♪
ほお! 中々スリルがあります♪
『うふふ、おっちゃん達がまた見てますよ』
「あ~、はぁ~まあ良いか」
半分諦めたような顔になってます。
「お前達普通ならこんなところに連れてこられたらもう少し違った反応になると思うのだが、変わった奴らだな(苦笑)」
「ああ、俺が帝国の奴らにこんなところに連れてこられたらビクビクだぜ」
「言えてる、しかし国王は何で帝国に下るんだ?」
「そんなの私が知るわけ無いでしょ! 王様に聞きなさいよ!」
『あらあら、勇大様の逆張りが(笑)』
当たり~×5
冗談のつもりが(苦笑)
「おい、お喋りはその辺で、着くぞ」
階段を上がり
「はっ、開けます」
カチャ
戸を開けると
「「お外だぁ~♪ 明るいね~♪」」
「ちょっとまぶしいですね」
「スラムなのか?」
少しボロっちい家が建ち並んでいる。
「ああ、今は国軍がここを包囲してるからな、あんな狭い所を通らないと出れないし入れないからな」
「ふ~ん、さっき言ってた帝国がどうとかのせいか?」
「そうだな、帝国の属国になるのに反対の者がこのスラムに集まってきている」
「それで他の町や村から来てくれる者をこっそり集めるのにあの隠し通路があって、見付かると不味いんだよ」
「だから君達にはここに居てもらって、外に情報が漏れない様にしてもらう」
「なるほど、理由は分かったよ、俺達もこのスラムに用事があったからな、孤児院跡って分かるかな?」
「なんだ? 昨年取り壊された孤児院出身か?」
「違うよ、行きたいだけってのもあるかな? でも何で壊されたんだ?」
「そうなのか? スラムの孤児院は金がかかりすぎると言われあっという間さ、100人近くいた小さな子達は今でもテント暮らししている」
マジか
「冬には何人も亡くなった······」
「分かったよ、とりあえずその跡地に行っても良いか?」
「ああ、テントがあるならそこに滞在してもらおうか」
「ええ、あそこなら人もほぼいないですし広さはありますからね、瓦礫だらけですが(苦笑)」
「分かりました、その瓦礫とか、どけて建てても良いですか?」
「かまわないぞ、好きに使ってくれ」
「大きいの建てよ~♪」
「瓦礫をどけるの~♪」
「あはははは、怪我はするなよ」
「は~い♪」×4
「よし、お前、跡地に案内をしてやれ、その後は今日はもう来る者もいないはずだから休め」
「へ~い、家もそっちの方が近いから助かるぜ(笑)」
「明日は朝が早いから飲みすぎるなよ」
「へいへい、隊長もな」
「違いない、よし、行くぞ」
隊長さんと呼ばれたおっちゃんは去っていく。
「んじゃ案内するぜ」
「お願いしま~す♪」×5
「お願いします、仕事終わりに手間かけてすまんね」
「良いさ、ほら行くぞ」
おっちゃんに付いてスラムを進み、瓦礫の山がある場所に来た。
「ひでぇもんだろ、立派なのが建ってたんだ、俺もここに世話になってたから寂しいもんだぜ」
俺はおっちゃんの肩に手を置き
「そうなんや、再建は無いのか?」
ナビ、頼むね。
『は~い♪ どんな孤児院だったか確認完了です』
ありがとうね。
「今のところはな、ちび共が住める所は作りたいがな、んじゃ俺は帰るから好きな場所に泊まってくれ、テントになるだろうがな(笑)」
「ありがとな」
「ありがとうございました」×5
おっちゃんが立ち去り。
「さて、やっちゃいますか」
「そうだと思いました」
「夜にこっそりにしましょう! 朝起きて、えぇぇぇぇぇぇ~! ですよ!」
「「えぇぇぇぇぇぇ~♪」」
「ユタ、私も手伝おうか?」
「良いのか? そろそろ島なら朝になるぞ」
「そうだったの! ヒラマサ中々釣れないの、ロウニンアジが邪魔をするの!」
「いやいや、ロウニンアジ釣れるの! あいつはスゴく人気のある魚やで!」
「うん、スゴく引くから面白いけど、狙いはヒラマサさん! 行っても良いの?」
「良いよ、朝に戻ってくれる? 一応人数は揃ってた方が良いと思うし」
「分かった、行ってきます! 転移!」
パッ
「よし、ダンジョンだと思ったのだが」
「隠れてるよ~」
「かくれんぼ~」
「1人ですね」
「見に行きますか?」
「せやね、もしかしたらここに住んでるかもしれやんし」
こくこくこくこく
俺達は気配のある方に歩いていく。
「ゼェゼェ ゴホッゴホッ ゼェゼェ」
息苦しそうな息づかいと咳が聞こえる。
俺は皆に止まるように念話で
病気かな、皆はここで待ってて。
は~い。×4
俺は数メートル進み、瓦礫の向こう側を覗くと、頭から血が出たのか顔が乾いた血で汚れ、足も変な方向に曲がり倒れている少女を見付けた。
少女がもたれている大きな壁だっただろう瓦礫には上から滑り落ちた痕跡が残っている。
高さは10メートル近くあり、あそこから落ちたなら足も骨折するだろう。
俺はそっと近づき目の前で膝をつき声をかける。
「大丈夫か? 意識はあるか?」
「ゴホッゴホッ はい」
「もしかして上から落ちたのか?」
「そうです、何か残ってないか探してて」
「分かった、回復魔法かけるから、ポーション飲めるか?」
俺は少女の横にポーションをとりあえず20本出して
「飲んでくれた方が早く治るから行くよ、再生! ほいっと!」
徐々に足が元の位置に戻り始める、少女も
カチャ
ポンッ
ゴキュゴキュ
「はぁ、甘くて美味しい、ケホッ」
「ゆっくり、いっぱい飲んで良いからね、再生!」
「はい、ありがとうお兄ちゃん、こきゅこきゅ」
よし、内蔵は良さそう。
カチャ
ポンッ
こきゅこきゅ
ナビお皿にリンゴのすりおろし入れて出せるかな?
『出来ますよ、でもその子、魔王ですね』
あはは、良いやん現地の魔王だよ! 怪我した少女だよ、助けるでしょう、変な称号も無いし、年齢も見た目通りやし。
『うふふ、ですね、はい用意は良いですよ』
ありがとね。
「これも食べれるか?」
スープカップに入った、リンゴのすりおろしを少女に持たせ、スプーンも手渡す。
「良いの?」
「うん、足はもう少し時間がかかるからゆっくり食べてね」
「ありがとうです」
シャリ シャリ
「美味しい、こんなに甘くて美味しいのは初めてです」
「そうなのか? もしかして孤児院の子?」
「はい、私はなぜか、みんなに嫌われてるからここで1人で住んでます」
魔王が関係するのかな?
『その可能性はありますね、魔王の職に何かあるのでしょうか』
可能性か、神眼! はっ! 笑わせる
『どうしました?』
魔王は嫌われたり恐れられると魔力が上がるそうで、嫌悪感を他人に振り撒くスキルが隠されてる。
んなもん封印やわ、ちょうど服もボロボロやし、裁縫! サルエルツナギ! 黒&赤! エトリの糸で、ほいっと!
シュルシュルと糸が少女にまとわり付き、着ていた服は既に地面に落ち、エトリの糸が服を織り成し布に成り服へとなる。
ふと昔の魔法少女を思い出しながら服造りと再生をかけ続ける。
服が完成し、次は、ミスリルで良いか、邪魔にならないアンクレットを造り、嫌悪感と言うスキルの封印を付与、ほいっと!
足を治ったか確かめるために曲げ伸ばしその時にはめてしまう。
「あの、いつの間にか服が変わってますし、足も痛くなくなったし、その綺麗なのはなに?」
首を傾げ俺を見てくる。
あ、スラさんが入って行ったようだ、綺麗になった少女は······
めっちゃ可愛い子やん!
「これは、君の要らないスキルを出ない様にする魔道具だよ、これがあればもう意味もなく嫌われたりはしないよ」
「ほんと? お兄ちゃんも嫌わない?」
「初めから嫌ってないよ、可愛い女の子だよ」
「綺麗? なら私の事嫌いじゃなくて好き?」
「うん、可愛いから好きだよ」
なでなで
「にゅふふ、初めて頭撫でられた」
「そうなのか? ならいつでも撫でてあげるよ」
「やったぁ~」
少女は決して大きな声を出さない、喜んでいても小さく声を出すだけだ、もっと自由に笑えるようにしてあげたいと思ったのは仕方がないことだろう。
「よし、大丈夫だと思うけど立てるかな?」
「やってみるね、うんしょっ」
少女は立ち上がり裸足でぺたぺたと歩き、小さくぴょんぴょん。
「大丈夫、前より調子良いです」
「せや、初めまして、ユタです、冒険者のEランクで、パーティー "わーるどじゃんぷ" のリーダーもしています」
「初めまして、アンラです、冒険者のEです。パーティーは入れてもらえないからソロです」
「ちょうど良かったよ、俺達のパーティーに入らないか?」
「俺達? 仲間は私の事大丈夫?」
「大丈夫、皆! おいで!」
「は~い♪」×4
とてとてとてとて
皆は瓦礫の向こうから小走りにやって来た。
「初めまして、リュートです」
「初めまして、クシナダだよ」
「タキリ~♪」
「タキツ~♪」
「「よろしくね~♪」」
「アンラです、よろしくお願いします」
「んじゃ、暗くなってきたし、晩ごはんにしよう!」
「は~い♪」×4
「あの、私も一緒にで良いの?」
「もちろん♪」×5
アンラはガリガリだからあんまり食べ物も無かったのだろう、なるべく消化の良いのを作って食べてもらおう!
さて、うどんで行くか! ささみで肉うどんにすれば消化も良いよね、
「ツルツル美味しい♪」
「うっど~ん♪」
「うっど~ん♪」
「お出汁が優しい味です」
「こんなに美味しいの初めて、それにパーティーも初めて」
「ん? なら友達も初めてか?」
「友達······私の友達になってくれるのですか?」
うるうるしだしている。
「俺からお願いするよ、アンラ、友達になって下さい」
右手を差し出す。
アンラはおずおずと俺の手を両手で包む様にして
「よろしくお願いします」
ぽろぽろぽろぽろぽろぽろ
涙があふれ
タキリとタキツがアンラの手に自分の手を乗せ
クシナダとリュートもそこに手を乗せ
「よろしくね」×4
「はわわわ」
ぽろぽろぽろぽろと泣いているが笑顔になった。
この日、小さな魔王のアンラに初めて友達が出来た。
今回もお読みいただきありがとうございます。
初めての小説を書き始めて、あっという間に二ヶ月。
読み専門から書き出し123話も書けるとは思いもしませんでした。
この話も、もう少しで最終章に入ります。
お時間があればで良いので、最後までお付き合いしていただけたらと思います。
いな@




