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第119話 ○○王の天敵?

「行ってきます、では皆さん、ご案内します」


 そうして、伯爵お姉さんに付いていく。


 応接室から出てすぐに······いなば、腹パンは無かったけど、お宝セットがあるかもやし、したいのかな?


「お姉さん、連れがいますので少しだけ待って下さい」

「はい、大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」


「いなば、腹パンは無かったよ」

「残念、お宝セットがあるかもでしょ?」

「可能性はあるね、一緒に行くか?」

「ん~次の腹パンにするね」

「了解、外まで一緒に行こうか」

「うん♪」


 冒険者ギルドを、いなばを、なでなでしながら出て、馬車が止まっているのを見て


「真ん前に停めるってあの使者ってバカやね」

「本当に、たかが男爵当主の弟が偉そうです」


 お姉さんがぷりぷりですやん。


「ん? なら貴族でもないって事?」

「爵位は持ってない平民ですね」

「平民が! とか言ってる本人が平民やん(笑)」

「クスクス、その通りです、何の権限もない、ただ王城で働く平民ですね」

「あはは」


 くいっくいっと、いなばが俺の袖を引っ張る。


「ユタ、私は帰るね」

「ああ、来てくれたのにごめんね」

「良いぞ、次の時にやっちゃいます」

「この後は、また釣りするの?」

「島でユグドラシルがね、大きなヒラマサ? が釣れるって! 私は負けない♪ 行ってくるね」


 そう言うと


 とてとてとてとて


 見えてる王城とは逆方向に、いなばは走り去った。


 ヒラマサ! ちょっ、俺も行きたいやん!


 いなばに着いて行きかけた俺を


「ゆ、ユタさんどこ行くつもりですか!」


 クシナダが手に抱き付き止める。


「はっ! すまん、もう少しで誘惑に負けるところやった」

「もう、お城行くのですよ、お願いしますね(笑)」

「うふふ、では参りましょう」


 歩いて5分、城門に到着。


 馬車で来る意味あったん? って俺は聞きたい近さだ。


 今は、門兵とお姉さんが話をしているのを横で待っている。


「はっ! 宰相様に先触れを走らせます!」

「はい、よろしくお願いします、では入りますね」

「はっ! どうぞ、伯爵様にお連れ様、すぐに馬車の用意を致します」

「いえ、このまま歩いて参ります、今は冒険者ギルドの職員ですので」

「あはは、では、お通り下さい」

「ありがとう、では」

「皆さん行きましょう」

「は~い♪」×3

「ああ、行こう」


 門横の、通用口をくぐり中へ。


 門の中は庭園になっていて、お城に向かって石畳が続いている。


 アモルファスのお城よりは狭そうかな? 庭師さん達が剪定(せんてい)作業中、なのにこっち見て頭を下げるのでこっちもペコリ、お疲れ様です。


 そんなのを横目に石畳を進み大扉横から小さな扉を開けて中に入った。


「はわわ~お城に入っちゃった」

「大きいね~」

「広いね~」

「クスクス、中々入る機会はありませんからね、走り回ると、メ! されちゃうから良い子でお願いしますね」

「は~い♪」×3


 何度か角を曲がったり、扉をくぐったりして応接室へ到着。


 中に入り、お姉さんは途中で捕獲したメイドさんにお茶と茶菓子を頼んで、俺達と一緒にソファーへ腰掛けた。


「まさかとは思いますが、ここで偽物が出てきたらこの国の貴族として恥ずかしいやら情けないやらですね」

「でも、宰相さんに言ってるんやし、大丈夫じゃないの?」

「そう信じたいですね(笑)」

「でも、びっくりしましたよ、伯爵さんが冒険者ギルドで受け付けしてるのですから」

「あはは、私は三女で1番下でして、家を出て冒険者をやってたのです、ところが父が悪さをしちゃいましてね、それも兄、姉達も関与していたらしくて、領地は剥奪されますし、公爵から伯爵へ下げられちゃいまして、こんなのでも王家の血筋ですからね、家名は残すって話になりました」

「公爵様の子供が冒険者ですか(笑)」

「これでもBランクに、到達最速記録と最年少記録保持者ですよ、10歳で成りました!」

「すご~い♪」×3

「うふふ、伯爵になっちゃったから辞めないといけないって言われましたが、ギルドは辞めずに続ける事を許してもらいました」

「休みの日に冒険一緒に行きますか?」

「ほ、本当ですか! それなら休みの日とか言わなくても、今からだって行きたいです! よろしくお願いします!」

「本当に好きなんですね」

「はい、Bランクになって一月くらいで、Aランクになる1歩手前でしたのに、家の騒動ですからね残念で仕方がないですよ」

「おお! それはスゴく残念ですね」

「はい、受け付けになって半年、冒険が出来なくて禁断症状が出ていましたので、どこに冒険行きましょうか!」

「ん? 11歳でBランク、そしてすぐに受け付けになって半年?」

「はい、そうですよ」

「今、11歳?」


 高校生くらいに見えるけど······


「いえいえ、そんなはずありませんよ、クスクス」

「ですよね、こんなに美人さんやしそれはないか、あはは」

「美人さんだなんて、お姉さんをからかわないで下さいね」

「スゴく美人さん~♪」

「綺麗だよね~♪」

「はい、美人さんです」

「も~、メイドさん、お菓子を追加でお願いします♪」


 お姉さんは、くねくねしながらメイドさんにお菓子の追加を頼み、スゴく嬉しそうだ。


「あはは、次は一応、魔族の国に行くつもり、行くなら歓迎するよ」

「隣国ですね、大丈夫です、いつでも冒険出来るように用意は完璧ですので♪ うふふ」


 スゴくご機嫌ですやん、アイテムボックスに全部入れてるんやろね。


 横を見ると、タキリとタキツもなぜかくねくねしてるが可愛いからオッケーだ。


 コンコンコン


 ノックされ、メイドさんが


「はい、どちら様でしょうか」

「私だ」


 誰やねん! 私私詐欺か!


「お開けします」


 カチャ


 メイドさんは、私私詐欺に引っ掛かった様だ。


「姫様、お呼び聞き参りました」


 姫様ですぅ~♪ ×3


「ありがとうございます、急にお呼びして申し訳ございません、どうぞこちらへ」

「では、失礼します」


 宰相さんなのだろう、白髪のダンディーさんだ。

 さぞかし昔はモテたであろう。


「でも姫様は何度もやめてと言ってますのに」

「あはは、仕方ありませんよ、現王にお子が出来るまでは、王位継承の権利を持つ中でも第1位ですので、殿下と呼ばないだけ気を使っておりますよ」


 は? 現状は次期女王?


 女王様ぁ~♪ ×3


「私は、冒険がしたいので無理です!」

「あはは、で話とは?」

「はい、こちらの方達が新ダンジョン2ヶ所の発見、3ヶ所のダンジョン完全攻略をしまして、報酬をいただきに参りました、残りは、黒貨21枚です」

「ま、まことですか! では早急に準備させます」


 宰相さんは、お茶を用意していたメイドさんに


「すまないが財務をここへ呼んでもらいたい、"急げ" とお伝えください」

「かしこまりました」


 メイドさんは、宰相さんの前にお茶を置き、退室していった。


「しばしお待ちを」

「はい、それでですね、私の勤めているギルドの報酬が偽物であることが分かり、城へ報酬を届けるように依頼をしました」

「何! 偽物だと!」

「はい、そして使いの者が届けてくれたのですが」

「それも、偽物だったと」

「はい、その通りです」

「しかし、今日は、その様な知らせは来ていません」


 ナビ、この国の全ての冒険者ギルドの黒貨調べて、偽装がかかっているものがあるギルドを紙に書いておいてくれる?

『は~い♪ すぐ出来ましたよ、13ヶ所のギルドが偽物の黒貨候補ですね、ポイントしますか?』

 せやね、それと143枚くらいの黒貨がある場所は?

『このお城と、もう1ヶ所です、数はバッチリ合うのはお城じゃ無い方ですね、当たりでしょうポイントしました』

 ありがとう、その場所の地図もお願いね。

『は~い♪』


「しかし、偽物を持った王城からの使者が来ましたから」

「そうだとすれば、怪しいのは財務だが······」

 ナビ、書いた紙を出せるかな?

『いつでも良いです』

 ありがと


「あの、鑑定で調べた結果がありますのでこれを」


 まずは冒険者ギルドの資料をテーブルに出す。


「これは?」

「偽物がありそうな冒険者ギルドですね、黒貨に偽装がかけられてますから見た目は黒貨ですね、偽装がかかっているものは、怪しいとチェックした物です」

「こんなに? 13ヶ所······143枚か」

「はい、それでですね、この国に143枚以上の黒貨がある場所はこのお城と、この地図の場所です」


 テーブルの上に地図を出す。


「ふむ、王都の貴族街だな、なっ! この場所は財務の!」

「声を小さく、もうすぐ来ますので、報酬を持ってくるように言ってもらえますか?」

「また、確かめるのですね、ではそこで偽物を持ってくれば犯人は」

「奴になるな」


 宰相さんは少し考えて


「奴にこれ程の大金があるのはおかしい、枚数的にはこの城にしかあるわけがない大金だぞ」

「なので、初めから問いただすのではなく、1度泳がせましょう」

「分かった」

 ・

 ・

 ・


 コンコンコン


「お連れしました」

「入れ」


 カチャ


 開いた扉から入ってきたのは、ブクブク太ったおっさんだった。


 メイドさんは扉を閉め、お茶の用意に向かう。


 ズシンズシンと音が聞こえそうな歩みでもう1つあったソファーへ行き、


 ズズンと効果音が鳴り響いた様な(笑)


 財務のおっさんは座った。


 座った後、メイドさんがお茶を置き、下がったのを確認してから宰相さんが話をし始める。


「急ぎ呼び出してすまないな」

「いえいえ、宰相様のお呼びとあらば、何を置いても駆けつけます。して、ご用件は?」


 揉み手の人って初めて見たよ(笑)


「うむ、こちらの冒険者殿達がダンジョンを複数攻略してな、王都のギルドだけでは(まかな)えん、残りの黒貨21枚の用意を頼む」

「ほお! かしこまりました、素晴らしい冒険者殿達ですね、むははは」

「しばし待つので、用意を頼めるか?」

「はっ! では少しお時間をいただきます」


 そう言うと、ニコニコ顔で部屋を出て行った。


 ナビ、黒貨の動きを見ておいてね。

『はい、偽物がアイテムボックスに入っているのもポイントしてますよ』

 ありがと、さてさてどうなるかな。


「これで、偽物を持ってきたなら完全に処罰対象だが、私や姫様の目の前でやりますでしょうか」

「そこはほぼ間違いなくやりますね、アイテムボックスに偽物が入ってましたから」

「なっ! まことか!」

「本当にですか!」

「はい、俺の鑑定はレベルが高いですからね」

「そうか、偽装が見抜けるのでしたね、ならば」


 宰相さんはメイドさんに


「すまぬが騎士団長を呼んできてもらいたい、何度もすまないな」

「はっ、かしこまりました」


 メイドさんはまた部屋を出て行った。


 ほんまに何度もごめんね。


『2階に上がりましたね、部屋に入る様です』

 ふむ


「宰相さん、2階の部屋に黒貨は無いと思うのですが、さっきの財務さんは2階の部屋へ入りますよ」

「はぁ、確定の様ですね、屋敷の方も人を回さなければ、そうですね、屋敷のどこにあるのか分かりますか?」

『地下のお酒の倉庫で鍵の掛かった部屋の中に、黒酒と樽に書いてありますね』

 ありがとう、完璧やん!

『うふふ、ほら待ってますよ』


「屋敷の地下にあるお酒の倉庫にありますね、それも倉庫内の鍵の掛かる部屋に "黒酒" と名打った樽の中にあります」

「分かりました、ありがとうございます、姫様、この方を城で雇うべきです、悪事を働くものを排除出来ます」

「ダメ~、冒険者は自由な者が冒険者なんです、だから私も冒険者に憧れ、冒険者になったのですから」

「はぁ~後継者候補で1番まともな、いえ、他の方はあまりにもな方々なので、無理です! 断言致します、そうです! 姫様、この方とご結婚なさいませ! そうすればこの国は安泰です! ではすぐに手配をせねば! 現王にも退いてもらいましょう!」

「えっ? 私が結婚♥️」

「そうです姫様! 歳は少し下の様ですがそれも良いではありませんか、姫様は可愛いもの好きなのですから」

「そ、そうですね、可愛さの中にも少し凛々しいところもあってスゴく良いですね! 一緒に冒険者も出来ますから!」

「そうでごさいましょう、ダンジョンをいくつも攻略出来る強者が一緒なら私も冒険の許可を出しましょう」

「分かりました、冒険する王! 冒険王に私は」


 ぺしっ!


「お姉さん暴走してますよ」

「痛いです~」


 両手で額を押さえる姿は可愛いけどね。


 コンコンコン


「騎士団長様をお連れしました」

「入れ」


 カチャ


 入ってきたのはイケメンさんだ。


「お待たせいたしました、ご用件は」

「うむ、実はな············」


「まことですか! すぐに隊を編成し向かいます」

「頼んだ、全ての者の取り調べもするのだ、あいつだけではここまでは出来まい」

「はっ! 失礼します!」


 部屋を出た騎士団長さんは早足で離れていく。


『動きだしこちらに向かっているようです』

 了解


「財務さんがこちらに向かっていますね、ここに来て、俺達に渡す前に俺達に見せるように言ってもらえますか?」

「そこで暴くのだな」

「はい、偽装のところに少しキズを付ければ皆さんの鑑定でも分かるようななりますから」

「分かった、やってみよう」

「頑張ってくださいね、私の旦那様のお願いなんですから」

「はい、式の準備も整えます」

「いやいや何を言ってんの! 誰と誰が!」


 コンコンコン


「戻りました」

「入れ」


 財務さんが帰ってきたのか、タイミング悪いやっちゃな!


 カチャ


「お待たせしました」

「うむ、まずは座れ」

「はい、失礼します」


 さてさてどうなるかな(笑)





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