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第118話 社長より偉い部下

 パッ


「ただいま······は?」

「ユタさんお帰りなさい! また沢山拾って来ましたね♪」

「あのね、まりあ、浮いてた子達は暗殺を仕込まれててね」

「あははははは! 皆良い子ですよ、奴隷でもない限り大丈夫です! クシナダちゃんもタキリちゃんとタキツちゃんも良い子だから、ユタさんの目は完璧です♪」


 暗殺班の子達は既に甲板へ下ろされ、転生組と、召喚苛められっ子組とできゃいきゃいお話し中である。


 クシナダ達がフェンリル達と、良いのかなぁって見てる。


 俺が帰ってきたのに気付くとこちらへやって来る。


「あのね、まりあちゃんとバステトちゃんが、12人の人を連れて帰ってきて、浮いてたあの人達を見て、ユタさんがまた拾ってきた子だぁ~って言って下ろしてあの状態です」


 説明ありがとう、思っていたことと同じやったけど······


「ありがと、あの子達は暗殺班で、フェンリルを狙ってた貴族の奴隷だったのを助けた形なんやけど、ちゃんと話をして制約かけてから下ろす予定やってん」

「あはは、まぁ何されてもここのメンバーなら大丈夫そうではありますが、ってか転移していきましたよ!」

「あはは、修行に行ったのかな······はぁ~湖の島のダンジョン攻略しちゃおうか」

「そうですね、範囲結界張っちゃいましょう」


 俺とクシナダは、タキリとタキツ、フェンリルと子供達をアスタロト大公爵の留守番を頼み、湖の島へやって来て、目の前にはそこそこ大きな池がある、中々の透明度で魚もチラチラと泳いでいる。


「よし、やっちゃいますか」

「はい、頑張りましょう!」

『島の真ん中の池の底です、表示しますね』

「ありがと、転移!」

 パッ


 階段を下り、1階層、フィールドタイプである。


「何階層?」

『250階層です、出来立てですね』

「ちゃちゃっと終わらせて帰ろうか」

「はい、全速力で行きましょう!」

「せ~の!」


 シュ

 シュ


「素材系やん! 色々出るし浅いけど当たりやん!」

「そうなんですね、私は食材系が好きですが」

「ああ、素材系って冒険者に人気が無いからいつも空いてて気兼ねしなくて良いからね」

「なるほど、そっちの当たり、自分達にとっての当たりなんですね」

「そうそう、よしラスボスだよ」

「は~い♪ 超極小ウインドアロー!」


「お疲れ様」

「あはは、あっという間でしたねそれにまた私がダンジョンマスターで良かったのですか?」

「ああ、俺は結構沢山ダンジョンマスターになってるからね、よし戻ってフェンリル達に知らせてやらないとね」

「はい、転移!」

 パッ


「ただいまぁ~!」

「お姉ちゃんお帰りなさい」

「ユタ兄ちゃんもお帰りなさい」

「ただいま、フェンリル、もうあの島には俺達以外立ち入れない様にしたから安心やで」

『うふふ、結界が張るのが分かりましたから、そうなると思ってました』

「タキリとタキツがたぶん遊びに行くから頼むね」

『あら、貴方は来てくれ無いのですか? うふふ、友達になったというのに』

「もちろん、今の仕事が終われば、仲間も連れて遊びに行くよ」

『お待ちしてますね』

「じゃあ俺達は冒険者ギルドに行くから下まで送るよ」

『はい』





 俺達はフェンリル達と別れ冒険者ギルドにやって来た。


 受け付けカウンターは午前中でもお昼前と言うことで閑散としており、そのまま並ばずに行けた。


「すいません、こっちの2人の登録をお願いします」

「はい、ではこちらの用紙に必要事項を記入して下さい」

「はい」

 登録用紙を2枚もらい俺が記入する。


 名前 タキリ

 年齢 

 武器 刀

 魔法 風


 名前 タキツ

 年齢 

 武器 刀

 魔法 風


「これで良いか?」

「「6歳だよ♪」」

「あはは、歳は記入しなくて良いんだよ」

「そうなの?」

「分かった♪」


 なでなで


 2人の柔らかな髪の毛を手櫛で整えるように


 なでなで


「これでお願いします」

「はい、お預かりしますね」

「パーティーも組むので一緒に出来ますか?」

「はい、ギルドカードをお願いします」


 シュパッ!


「シュパッ!」

「シュパッ!」

「あはは、はい、お願いします」

「お預かりしますね」


 受け付けのお姉さんは微笑ましくこちらを見て、魔道具は見ずに


 カタカタカタカタ


 ギルドカードを通し


 カタカタカタカタ


 2枚目のギルドカードも通した。


 カウンターに顎を乗せてお姉さんを見ている、タキリとタキツ


「早いね」

「カタカタカタカタ~」

「うふふ、次はパーティーの登録をしますね」


 チラッと魔道具を見ただけで、俺のギルドカードを通し


 カタカタカタカタ


 そして2枚のギルドカードを通して


「はい、タキリちゃんとタキツちゃんのギルドカードです、失くさないようにね」


 お姉さんは、朝日が(きら)めく水面(みなも)より綺麗な笑顔で2人に、ギルドカードを渡していく。


「ありがとう、お姉ちゃん! 失くさないよ♪」

「ありがとう、失くさないようにするね、お姉ちゃん!」


 お姉さんに笑顔を振り撒き、ギルドカードを(かか)げながらぴょんぴょん飛び跳ねている。


「可愛い」×3


 おっと見ているだけではダメやった。


「クシナダ、次は?」

「そうでした! これをお願いします!」


 受け付けお姉さんに、木札とギルドカード、ダンジョンカードを渡し


「あの、余り騒がない様にお願いします」

「はぁ、分かりました、お預かりしますね」


 お姉さんは預かった木札を見て


 カタカタカタカタ


 やはり見ないで打ってるね。


 次はギルドカードを通し、ダンジョンカードも通した。


 お姉さんの目線はずっとタキリとタキツに釘付けだ。


「ダメでしたか?」


 クシナダが、動きがないので心配になり、聞いたところ。


「はっ! すいません、あまりに可愛い子達なのでつい見てしまいました、申し訳ありません」


 ペコリ


「はい、スゴく可愛いんです!」

「うふふ、ギルドカード1枚であそこまで喜べるなんて、微笑ましくてね(笑)」

「分かります、この前なんて、トカゲさんを捕まえてきて大騒ぎしてましたし」

「うふふ、目に浮かびそうです。ちょっぴり羨ましいですね」

「えへへ、自慢の妹達です」

「うふふ、手続きを再開しますね」

「お願いします♪」


 さぁ、来るぞ······


「へ?」


 魔道具を見たお姉さんが止まる。


「え? 新ダンジョンが2つ、ダンジョン攻略が3つ······し、し、少々お待ち下さい」


 ぷるぷるぷるぷる


 お姉さんは震える身体をカウンターに手をつき支え立ち上がる、ダンジョンカードを持ち、奥の大きな机で書類とにらめっこしているおっちゃんを見て


「ギルドマスター、少しお時間取って下さい」


 奥の席で顔を上げたおっちゃんは


「分かった」


 そう言い立ち上がりこちらに向かって来た。


「どうしたのだ?」

「ギルドマスター、これから目にする事は騒ぎ立てない様にお願いします、よろしいですか?」

「ふむ、良く分からんが騒がなければ良いのだな」

「はい、こちらをご覧になって下さい」


 お姉さんはダンジョンカードをギルドマスターに渡し、ギルドマスターは視線をダンジョンカードへ落とした。


「なっ!」

「ギルマス! 静かに!」

「す、すまない、しかしこれは」


 カウンター内は、お姉さんとギルドマスターが何やら怪しい感じなので、少し勘違いした方向へ期待して注目している。


「魔道具にも通し、ダンジョンの位置もこちらに表示されております、そしてダンジョン攻略、最難関ダンジョンとそこに隣接する形の新ダンジョン、さらに魔族の国との間にある、湖の新ダンジョンを完全攻略しております」

「だとすると」

「そうです、黒貨32枚が報酬になります」

「しかし、うちには11枚しかないぞ······」

「他の街ならありますよね」

「近くなら王都と、魔族の国の港町か急げは夕方だな、連絡をして早馬を飛ばすように」

「はい、まずはうちにあるものだけでも」

「そうだな、すぐに持ってくる」

「あの、それってカードに入れてもらって違う冒険者ギルドでもらっても良いのですよね?」

「それは構わんが、良いのか?」

「ああ、俺達はこの後に、魔族の国に行くから別に良いぞ」

「それは助かる、手数かけて申し訳ない」

「あはは、大丈夫ですよ」

「では、うちの分はすぐに用意する」

「お願いします」


 ギルドマスターは一旦自分の席に戻り引き出しから鍵の束を取り出し金庫へ向かう。


 その様子を職員が見守る。


 ギルドマスターが金庫を開け、取り出した装飾された木箱を見て、職員達は息を呑む。


 カウンターまで戻って来たギルドマスターは

「依頼達成の報酬です」

 短くそれだけを言い木箱をクシナダに、手渡した。


 一応神眼! よし本物です。


「ありがとうございます♪」

「今後のご活躍も期待しておきます」


 そう言いギルドマスターは自分の席に戻り、受け付けのお姉さんはクシナダに、ギルドカードを返してくれる。


「あなた方がギルドを出てから新ダンジョンの発表をさせていただきます、ありがとうございました」


 そう言い微笑んだ顔は少し疲れたように見えたのは見間違いでは無いだろう。


「ユタさん、行きましょう」

「せやね、タキリ、タキツ、行くぞ」

「「は~い♪ シュパッ!」」


 2人もシュパッ! が気に入ったようだ(笑)


 ギルドを出てすぐにお姉さんの声が聞こえたが、俺達が路地裏へ入ると、その声は聞こえなくなった。



 王都へ転移した俺達は冒険者ギルドへ。


 王都だけあってこの時間でも受け付けカウンターは数組みならんでいる、その最後尾に並び


「ユタさん大変ですよ、偽物があります」

「ん? ああ、王城にあるから大丈夫(笑)」

『入れ換えて、21枚入れましょうか?』

 念話で

 いや、ここで偽物を暴こう♪ そしたら王城から本物が来るはずなんだけどなあ~♪

『偽物が来るのを楽しみにしてますね♪』

 あははははは! それも暴こうって事ですね♪ そうなったら一気に全部貰っちゃいましょう♪

 分かってきたな(笑)

 作戦は············


 ほら、順番が回ってきたぞ


 俺達はカウンターへ進み


「残高の半分を出したいのですが」

「はい、ギルドカードをお願いします」


 シュパッ!

 シュパッ!

 シュパッ!


 タキリ、タキツ、楽しそうだからオッケーや!


「あはは、みんなが出すのかな?」

「あはは、私だけです」

「シュパッ!」

「シュパッ!」

「すいません、登録をしたばかりで、あははは」

「クスクス、可愛いので大丈夫ですよ、お預かりしますね」


 お姉さんが魔道具にギルドカードを通し固まりはしなかったが


「は、は、は、は、は、は、」

「お姉さん、落ち着いて下さい、深呼吸です、吸って~吐いて~吸って~吐くぅ~、落ち着きましたか?」

「は、はい、なんとか、半分ですよね?」

「性格には、11枚ですね、ありますよね?」

「はい、もちろんです、少々お待ち下さい」


 このお姉さんもぷるぷるしながら立ち上がり、ギルドマスターかな、でっかい机に座ってるし、そこへ向かうがお姉さんは足元のゴミ箱を蹴飛ばし


 ガタン


「あわわわ、ご、ごめんなさい」


 慌ててゴミ箱を立て散らばったゴミを戻していく。


 職員が、大丈夫? など声をかけているが


「う、うん、大丈夫です、あはは」


 全然大丈夫に見えないが、立ち上がりギルドマスターの元までたどり着いた。


 こちらからは声は聞こえないが、ギルドマスターもぎょっって顔になり、こちらを見て顔を戻し、口の動きで、分かった、と言ったように見えた。


 ギルドマスターが立ち上がり、金庫へ向かい鍵も使わず開け中から、木箱を取り出し、金庫を閉めこちらに向かって来る。


 カウンターまで来たギルドマスターが


「お待たせしました、ご依頼の品です」


 差し出してくるが、


「え? 私は黒貨11枚を引き出しに来たのですが」

「ですから、これがその黒貨11枚の入った木箱になります」

「うぷぷ、開けて見せて下さい」

「はぁ、分かりました」


 パカッ

 シャッ


 誰も気付けない早さで黒貨(偽)にナイフでキズを着けた、偽装の部分だけを、パッと見ただけではキズがあるようには見えない。


「鑑定! ほら、偽物ですよ」

「え? 鑑定! なっ! こんなことが、すまない、すぐに王城へ手配をします、君、応接室で待ってもらいなさい」

「はい!」


 応接室へ通してくれるようだ。


「こちらへどうぞ」


 俺達は、お姉さんに案内され応接室へ。


 ソファーにとのことで俺達は中々のソファーに座った。


「ふっかふかです♪」

「ぽよんぽよんしますぅ~♪」

「あんまり暴れたらお姉さんに、メ! ってされちゃうぞぉ~」

「「やだぁ~♪」」

「あはは、大丈夫ですよ、今、お茶を用意しますね、後、お菓子あるかしら······」


 お茶を用意しながら棚を物色中。


「ありました♪」


 お菓子があったようだ(笑)


 お湯が沸き、ポットを持ってトレーにはクッキーを皿に乗せたものとカップが5つ、お姉さんの分もあるようだ。


 テーブルにセットし終わり、ちびっ子達はクッキーに夢中。


 お茶は中々の高級品のようだし美味しい。


 クシナダが


「あんな偽物なんてなぜあったのでしょうね?」

「私にはまったく、王城からの使者が持ってきた物ですので」

「初めから偽物だった可能性がありますね」

「はい、その通りだと、しかし今回も王城からの使者が持って来るはずなので、そちらも怪しくは感じますね」

「使者さんがすり替えた? とかが怪しいです」


『本物は動きがないですね、今馬車で出たのは偽装がされてますので偽物かと』

 お宝セットですか?

 今の段階ではやけどね、王様が知っててやってるのかどうかが問題やね。

『うふふ、お城が近いので到着しましたよ♪』

 さてさて、どうなるかな。


 数分後


 コンコン


「王城からの使者様がおいでになりました」

「どうぞ」

「立った方が良さげやね、皆立ってね」

「は~い♪」×3


 俺達はその場で立ち上がり、使者が入ってくるのを待つ。


 入ってきた使者は俺達を見て小さく


 チッ


 あははははは! 舌打ちをしやがりましたよ。

 あははははは!

 きゃははは!

 きゃははは!


 そのままずかずかと1人掛けのソファーにドカッと座り


「気が利かんな茶をだせ!」

「はい」


 お姉さんはこめかみをピクピクさせながら、カップを用意し使者さんの前に置く。


 一緒に入ってきたギルドマスターが


「君達も座って下さい」

「分かりました」


 俺達も座り俺が話しかける。


「忙しいところ来ていただいてありがとうございます、早速ですが、黒貨11枚を見せてもらえますか?」

「ああ、勝手に見ろ」

「いえ、開けて下さい、先程は偽物でしたので、私達が触る前に見せていただきます、触ってからだと文句つけられても嫌なので」

「チッ! 平民が、ほら見ろ」


 パカッ

 シャッ


「偽物ですね、どう言うことでしょうか?」

「偽物? 鑑定してみろ本物だ!」


 ギルドマスターが


「あの偽物ですが」

「何! 偽そ、いや、そんなはずは」


 偽装って言いかけてますやん!


「ギルドマスター、やはり全額を引き出します、黒貨21枚ですね」

「ああ、確かにそうだな、先程新ダンジョンを2ヶ所、攻略を3ヶ所の報告がありました、現地で黒貨11枚を受け取り他のギルドへ取りに行くと。今回のダンジョンは、湖が国境だから微妙だが、全てこの国の領地内、国が残りを払うことは間違いは無い、元々報酬が国から出る依頼だからな」

「ですよね? 使者さん持ってきたのが偽物でしたので貴方は信用が無くなったので、直接もらいに行きますね、ギルドマスター、案内って頼めますか?」

「構わんが、仕方がないか、報酬がある訳だ、ギルドは冒険者に支払う義務がある、すぐに行こう」

「ま、待て、私も付いていく」

「いえ、必要ありませんし、貴方は偽物を持ってきた訳ですからここでおとなしく待っていて下さい、衛兵を呼びますから」

「なっ! そんな······」

「ギルドマスター、拘束を、王城から持って来る時にすり替えたかもしてませんから、魔道具も外した方が良いですね」

「分かった」

「魔道具は、右の足首と、ネックレスを、攻撃系の魔道具ですので気をつけてください」

「なぁ!」

「動くな! 動けば使者と言えど切ります」


 逃げようとしたが、流石ギルドマスター、使者の肩に手を置き立ち上がれない様に押さえ付け、受け付けお姉さんが手錠の様なものを取り出し、素早く使者の右手と左手を背中側にひねり上げ


 ガチャ ガチャ


 拘束して(えり)から手を入れネックレスを、引き抜き


 ブチッ


 引きちぎった。


 その間にギルドマスターは足首の魔道具を、外し足も


 ガチャ ガチャ


 拘束した。


「おとなしく待っていて下さい」


 立ち上がると、お姉さんに


「サブマス、悪いが見張っておいてくれるか?」

「私が王城に行った方が話は早く進むと思いますが」

「そうか、そうだな、伯爵様(笑)」


 伯爵?


「ギルド内では、それは秘密ですからね!」


 お忍びでバイトか(笑)


「はぁ、なら俺がこいつを見ておくか、机からギルドマスターの代行のナイフを持っていけ」

「分かりました、王城からむしり取って来ますね」

「あははははは! ほどほどに」

「行ってきます、では皆さん、ご案内します」



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