第114話 魔道学院 学院長との出会い
「そろそろ大丈夫かな」
俺は振り向き、誰か居ないか確認する。
道も少しカーブしていたため、森の木に遮られ向こ側が見えなくなった。
「久しぶりに歩いた気がするね」
『そうですね、たまにはよろしいかと(笑)』
「そうです、運動も大切です」
「そうだな、んじゃ戻るとしましょうか、やけど馬車が来たやん! もう少し後にして欲しいもんやでまったく」
俺は街道の端により、馬車を通りすぎるのを待つ。
馬車と騎乗した兵士さん達がこちらに向かい······
早くない? あちゃ~魔物に追いかけられてますやん!
『魔狼ですね、10匹ほどですので無視していましたが』
「俺も、森からも来るね」
『そちらは気にはしてましたが、少し馬車が危ないですね、兵士さんの数も25名ですから無理でしょうね』
「森からは何匹来るの?」
『239匹です』
「多いとは思ったけど、あはは、今から透明ローブも着れないしなぁ、よし、超極小ウインドアロー!」
シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ!
虎鉄と半分ずつ街道の魔狼を倒し、馬車が通りすぎるのと、森から魔狼が出てくるのを比較すると、馬車の方が少し速いかなと思ってたのに
「かたじけない、魔狼を倒してもらい感謝する」
馬から降り、しっかり頭を下げ礼を言ってくれたのですが
「いや~停まらないで駆け抜けて欲しかったのですがね(苦笑)」
「ん? どうしてだ、助けてくれた者に礼をせんなどドワーフの恥!」
ドワーフさん達だったので早めに手を出したのに。
「あのですね、もうすぐ追加が来ますので逃げて欲しかったのですよ」
「追加? まことか! おい馬は大丈夫か!」
「しばらくは無理です!」
「あはは、ほら、来ちゃいました」
森の切れ目から次々と走り出てくる魔狼達。
「姫様を護れ!」
「はっ!」×24
姫様が居るようです。
兵士さん達が馬車を背にして囲み、防御体制を取る。
俺はその前に歩み出て
「超極小ウインドアロー! 連射!」
「ぐるぐるにゃ! にゃ!」
虎鉄も合わせてくれた。
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
無色透明の矢が、風切り音だけを立て魔狼の眉間に小さな穴を開けていく。
魔狼が地に倒れきる前にナビが収納していく。
十数秒で風切り音が無くなり、魔狼が全て消えた。
『見てますよ(笑)』
どうしましょ~
『ああ~来ちゃいましたよ~(笑)』
「少年、此度は本当に助かった、名を聞かせてもらえないだろうか」
俺は振り返り
「初めまして、ユタです、冒険者をしてます」
「ユタ殿、我がドワーフの姫様が礼をしたいと申しております、少しのお時間をいただけませんか」
断われないよなぁ~
『無理でしょうね(苦笑)』
「はい、大丈夫ですが、言葉遣いや態度はどうしましょうか」
「そのままで大丈夫です、ではご案内します」
兵士さんの後ろを歩き着いていく。
ほんの10メートルほどなのに行きたくないっス! 帰りたいねん! 転移しちゃダメ?
『ほらほら、到着ですよ』
頑張れマスター!
「姫様、冒険者の方をお連れしました」
「はい」
カチャ
馬車の戸が開く音がすると、周りを警戒している人達以外が跪き、姫様が出てくるのを待つ。
俺はどうしたら良いの? 立ったままで良いの? 不経済とか違っ! 不敬罪とか言われへんの? あぁ~! 出てきてしもたぁ~!
「今回は本当にありがとうございます」
ほっ、立ったままでも怒られなかったみたいやね。
「いえ、偶々居合わせただけなので気にしなくても大丈夫ですよ」
「いえいえ、私達だけでは逃げ延びる事も無理な状況を、たった1人で覆してしまわれたのですから」
「では、礼をしてもらいましたから俺は行きますね」
さっと向きを変え歩き出そうとしたのに
「どちらに行かれるの? この後は次の街にいる父からも礼を言わせてもらわないといけないのですが」
「いえいえ、大層なことはやっていませんからお構い無く! では!」
シュ
振り返り走り出そうとしたのに兵士さん達が通せんぼ······
こうなったら
『また来ます!』
「チッ! 魔物がまた来るぞ! 姫さんは馬車ヘ! 兵士さんも馬車の防御を!」
「はっ!」×25
俺の指示に従ったみたいな返事は止めて~!
『オーク9051匹! ダンジョンが溢れました! スタンピードです! さらに追加がありますよ! まりあさん達を呼びます!』
頼んだ!
「スタンピードだ! まずオークから来ます! 約9千匹!」
「スタンピードだと! 魔道具で結界を張れ! 姫様だけは護り通すぞ!」
「はっ!」
「来ます! 超極小ウインドアロー! 連射!」
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
パッ
「応援来ましたよ~♪ 皆超極小ウインドアロー! 連射!」
「は~い♪」×12
まりあが皆を連れてきてくれた。
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
パッ
「俺も来たぞ! 超極小ウインドアロー! 連射!」
「私も! 超極小ウインドアロー! 連射!」
「だぅ~」
隊長家族まで、赤ちゃん抱っこしたままやん!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
『オークの次は、ゴブリンと魔狼、コボルトの混成9万85匹です!』
「次はごちゃ混ぜで来るぞ! 約9万!」
「なっ!」
「兵士さん達は姫さんの事だけ考えてて! こっちは大丈夫!」
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
足の速い魔狼が先に森から出てくる。
『勇大様、ダンジョンを蓋してしまわないと終わりませんよ! ダンジョン入口をポイントしました!』
そうやった!
「まりあ! 俺はダンジョンに行ってくるぞ、ダンジョンを攻略しやんとこのスタンピードは止まらん!」
「は~い♪ こっちは余裕だよ~! 皆が成長したから」
「了解! 転移!」
パッ
「転移だと!」
「おわっ! なんだ! 行きなり現れやがったぞ!」
「ダンジョンは無理だ! 引き返せ!」
ダンジョン前は冒険者が多数のパーティーいて、ダンジョン兵士向けて魔法を放ち少しでも数を減らそうと、している様だが、とりあえず放っておこう。
「虎鉄も頼む!」
「はい!」
「遊びに来たよ!」
「いなば! 助かる、頼むぞ!」
「は~い♪」
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
シュパパパパパパッ! シュパパパパパパッ!
俺達は入口付近の魔物を全て倒しダンジョン入口へ飛び込む。
入口からの階段も魔物が次から次へと登ってくる、全て消し飛ばし走り下りる。
1階層目フィールドだ多すぎるが
「虎鉄は先に2階層への階段へ! 上がって来る奴を止めてくれ!」
「は~い!」
シュ
虎鉄自身が風の矢になったようにまっすぐ魔物を吹き飛ばし進む。
「ユタ、あそこで戦っている冒険者達がいるぞ、私が行ってこようか?」
「頼めるか?」
「え~と、れっつらご~!」
おい、ゆるいな(笑)
『うふふ、いなばちゃんらしくて良いですね』
「ああ、焦りが消えたよ」
『この部屋は終わりました』
「ユタ終わったぞ、ありがとうって言われた!」
「偉いぞ、いなば」
なでなで
「えへへ、次!」
「ああ、行こう!」
9400階層
「ここだ! あそこの岩山に魔道具! 収納!」
収納後溢れていた残りの魔物と、ラスボスを倒し
「お疲れ様、虎鉄、いなば」
「お疲れ様です」
「はぁ~お疲れ様~」
「いなばが来てくれて助かったよ」
「え~と、なんくるないさ~♪」
誰が教えてるんだか(笑)
さぁ、戻るとするか
『誰か来ます!』
へ? こんなところに?
「何してくれてんだよ! 俺のダンジョンだぞ!」
ダンジョンマスターが現れた。
戦いますか? YES/NO
ってか?
「えっと、ダンジョンマスターだよね?」
「そうだ! 俺の異世界デビューを邪魔しやがって!」
「えっと、転生者だよね? 日本からの?」
「ん? お前もか?」
話を聞いてくれるくらいは、落ち着いてるみたいで助かったよ。
「俺は召喚者だけどね、日本から来てるよ」
「おお! 似たような人達も居るって女神様が言ってた! で何でこのダンジョンに来たんだ?」
「街道歩いていたら魔物が大量に溢れたから止めに来たんだよ、あの魔道具壊れてたぞ、あのままならこのダンジョン魔力不足になって機能しなくなるところやった」
「マジか! まゆみちゃん!」
『肯定です マスター 現段階で魔力残量が3%です早急な魔力の供給をお願いします』
まゆみちゃんなんや、好きな子のなまえか?
「ダンジョンに魔物達を放つだけのはずなのに······」
「魔力の供給は俺が出来るぞ、まゆみちゃんだったか? ここからでもいけるか?」
『端末を送ります』
パッ
目の前に小さい水晶玉が現れた。
「んじゃ、魔力供給!」
むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむ~!
『Lv MAX』
「レベルアップ! サンキューな! まゆみちゃん次は一気にじゃなくてちょっとずつ増やしていこう!」
『了解』
「はぁ~一件落着やね、外には出さないようにしとかないと、軍隊で突っ込んで来るかもしれないから気をつけてね」
「助かったよ、深い階層をもふもふ天国にして護りを固めるために増やしてたんだよ」
「それが壊れてたぞ」
「設置する前に落としちゃったからかな」
「そのまま設置するなよ(苦笑)」
「ユタ、こいつはやっつけないのか?」
「ああ、良いダンジョンマスターだから大丈夫だよ」
「そうか、じゃあ帰るけど、新しいルアーある?」
「ナビ、何か入荷してるか?」
『ありますよ、いなばちゃんの収納へ入れますね』
「いなば、収納に、入ったよ」
「どれどれ······やった~♪ いっぱい! ユタ、ちゅ」
ちゅ
「また呼んでね、転移!」
パッ
「あはは」
「今の子、テレポートしたぞ! すげー」
「魔法は使えないのか?」
「俺はダンジョンマスター以外はテイマーのスキルしか無いぞ」
「修行すれば覚えられるぞ、魔道書やろうか?」
「本当! 覚えたい! 候補が1番がダンジョンマスター、2番がテイマーだったし諦めてたんだ!」
「水晶玉の部屋に書棚はあるか?」
「無いぞ」
「ナビ、書棚の在庫ある?」
『ありますよ、魔道王国にあるダブり分を入れておきますね』
「書棚もあるから部屋に入っても大丈夫か?」
「おう! すぐそこだ」
水晶玉の部屋に入り、書棚の置き場を決め設置していく、何だかんだで5棚設置した。
「おお! こうしてみると図書館の壁に見えるな」
「だろ? 俺も家のダンジョンにあるぞ」
「ん? お前もダンジョンマスターなのか?」
「家のは俺のダンジョンじゃないけどね、この近くに10階層しかないダンジョンも俺のダンジョンだぞ、もふもふのダンジョンにしてる(ニヤリ)」
「おお! やっぱりもふもふは外せないよなぁ、生前は、ペット不可のアパートだったから飼えなかったかし!」
「ペット可のアパートって微妙に高くなったりするからなぁ、俺もアパート暮らしだったけど一時、猫とアパートに住んでたぞ」
「出る時の保証金とかあるし、ってかその猫さん良いな!」
「ん? 良いだろ良い子だぞ、お前も頑張れば出来るぞ」
「本当に! 頼む! どうすれば猫さんと仲良くなれるか教えてください!」
「良いぞ、まずは生活魔法を覚えていこうか、本は······これだな」
本を見ながら、身振り手振り、実践もかねて教えていく。
想像力はあったので、数十分でクリーンの猫を創造し終えた。
「師匠! ありがとうございます!」
「あはは、名前もつけて可愛がるんやで」
「おう!」
「んじゃそろそろ帰るよ」
「そうか、また遊びに来てくれよ師匠、それまでに魔法覚えて驚かせてやるから」
「ああ、またな、転移!」
パッ
勤勉なダンジョンマスターは、遠い将来に魔道学院をこのダンジョン上に建て、沢山の魔道士を育てていくことになる。
学院長室には師匠達と撮った写真が飾られている。




