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第109話 こっそり作戦完了

 路地裏を探しながら大通りを散策。


「ユタさん、次の大陸に行く前にソファーでしょう、ソファーの次はあの島にしませんか?」

「ん? 良いけど、出来たらお昼ごはんにしたいな、浜焼も一緒に出来るし!」

「やったぁ~! 私と一緒の考え! お昼は鰻で夜バーベキューって案も捨てがたいのですが(笑)」

「まりあ、それは俺も悩んでいた問題なんや、でも、鰻は続けて食べるものじゃ無いか、とも思ってたからな」

「そうなのですよね~悩ましい問題ですよ。そうだ! こっそり作戦の集大成をしたらお昼になりませんか?」

「せや! この大陸は制覇やんな!」

「そうなのですよ! 朝もまだまだ早くて、ラッシュの真っ只中! ぬふふ、盛大なのが聞けますよ!」

「まりあの立てたこっそり作戦、やっちゃいましょう!」

「おお~!」

「こっそり作戦とはどのような作戦ですの?」


 その一言で、まりあは皆に説明をしだした、この世界に来てのところから······


 路地裏を見つけ、イモータルの辺境へ転移。先に宿に寄りソファーの受け取りの打診をコンシェルジュさんに相談するとなんと、預かってくれていたようで、今はもう俺の収納に入っている。


 追加で、まりあがこしょこしょと何かを頼んでいたので教えてもらおうとしたところ、また今度です! と教えてくれなかった。


 宿を出て、冒険者ギルドへ向かう、商人ギルドにも寄ろうかと思ったが、時間が余ったらと言うことになり、冒険者ギルドへ。


 入口をくぐり中に入ると、受け付けが終了したようで出口に向かい歩いてくる。


「あっ! ルナちゃん! ジョン君! マールちゃん!」


 そう、3人が冒険者ギルドにいたのだ。


 あの後3人で色々と依頼を受け先日10件目をクリアし、なんと、Dランクになっていた······俺達もそろそろなんやけどな······


「ユタさんとまりあちゃんが来たってことは?」

「むふふ、ついにですよ~♪」

「あはは、やっちゃいますか♪ ジョン君マールちゃん! 言ってた作戦です」

「ついにですね!」

「まりあちゃん楽しみにしてましたしね、私達も一緒にいても良いですか?」

「うん! さぁ! 並びましょう!」


 朝のラッシュの列が、じわり じわりと、はけて行き、俺達の順番が回ってきた。


 カウンター前まで進み。


「おはようございます! これをお願いします!」


 まりあは木札を受け付けのお姉さんに渡した。


「お預かりしますね、ギルドカードをお願いします」

「はい♪」


 シュパッ!


 よし! 決まってるぞ!


「お願いします♪」


 お姉さんはギルドカードと一緒にダンジョンカードも受け取った。


 カタカタカタカタ


 魔道具へ依頼内容を打ち込み、ギルドカードを通そうとしてダンジョンカードに気が付いた、それも2枚あることに。


 びくっ!


 たぶんお姉さんは椅子から数センチ浮いただろう、ダンジョンカードをギルドカードの下から、そ~っと、ずらしながら確認していく······


 びくっ!


 さらに震えが大きくなり、ガタガタと震えながらギルドカードを魔道具に通す。


 何度も何度も失敗しながら、数度目でやっと通し終えた。


 次は、ダンジョンカード、1枚目で既に1つ発見と攻略がわかっている、ずらしながら確認······


 びくっ!


 お姉さんの座る椅子が


 ガタガタガタガタ


 鳴り出し周りの職員さん達が、お姉さんに注目しだし、同じタイミングで受け付けカウンターにいた冒険者達も同じく注目しだす。


 震えを必死に押さえながら1枚目を通し終え、2枚目も通し終えた。


 そしてお姉さんは、まりあや俺達を見て


「ひょうひょうおまひくらひゃい!」


 たぶん、"少々お待ちください" だろうなってわかるくらいのかみかただ。


 震える身体を、カウンターに手を突き支え立ち上がる。


 ガタン!


 椅子が倒れる、奥へ向きを変え歩き出すが、倒したその椅子に(つまず)きながらも踏ん張りこらえる、そして奥のギルドマスターの方に、カクカクしながら歩き向かっていく。


 受け付けカウンターにいた冒険者達も、ギルド職員達も自分の事は何もせず、お姉さんにだけ注目している。


 カウンターからギルドマスターの机までは、ほんの数メートルを、1分ほどかけ歩き、ギルドマスターの机に手を付き身体を支え、右手に持っていた2枚のダンジョンカードを前に差し出した。


 ギルドマスターはお姉さんとカードを見比べ、裏返しになっていたのかダンジョンカードの内容がまだわかっていないようだが、ギルドマスターはダンジョンカードを受け取り、裏返し


 ガタガタガタガタ


 ギルドマスターも椅子を鳴らし震え出した······


 来るか!


「何だこれはぁぁぁぁぁぁ~!」


 来たぁぁぁぁぁぁ~!×12


 ギルドマスターの叫びにギルド中が反応し、受け付けカウンター奥のギルドマスターに注目をする。


 その叫びに近付くおっちゃん職員と、お局様風の年配の職員、ギルドマスターの手元のダンジョンカードを見て


「し、新ダンジョン発見だと!」

「に、2枚ともよ! 攻略もしてるじゃない!」


 ギルドマスターもその声で我に返り


「2つの新ダンジョン発見! 及び、2つのダンジョンの完全攻略の達成だぁー!」


 一瞬の静寂の後、爆発したと間違えてしまえるほどの轟音、爆音、窓ガラスが割れ、食事処の食器が棚から落ち、依頼の木札が壁から落ちた。


 ギルドマスターは机の引き出しから何かを取り出し、震えはおさまりきっていないが机に手を突き立ち上がる。


 ガタン!


 ギルドマスターも椅子を倒してしまったようだ、それでも、椅子はそのままにして歩きだし金庫へ向かう。


 机から取り出したのは金庫の鍵なのだろう、それを手に金庫前で片膝をつき、取り出していた物はやはり鍵だったようだ、その鍵を鍵穴に差し込み金庫を開け、中から装飾の施された木箱を取り出す。


 金庫を閉じ立ち上がりこちらに向かって来る。


 一応、神眼! よし、本物やね。


 受け付けのお姉さん、とギルドマスターが並び、その後ろにこちらを眺める職員達、ギルド内の注目は俺達に集まる。


「新ダンジョンの発見報酬、黒貨1枚、ダンジョン攻略報酬、黒貨10枚、まずはお渡し致します」


 まりあは豪華な木箱を受け取り収納。


 続けてギルドマスターは


「2つ目の報酬だがここには無い、近い場所で保管しているところから輸送してもらうか、違う街に行った時に引き落とすかどちらかにしてもらえないだろうか」

「はい、大丈夫ですよ!」

「ありがとう、これから新ダンジョンの発表をするが」

「はい、私達はすぐに街を出ますが良いですよ、皆さん待ちきれない顔をしてますし、あっ、ギルドカードを返してもらえますか?」

「ああ」


 そう言い魔道具の横に置いてあった、まりあのギルドカードを手に取り、まりあに渡してくれた。


「ありがとう、サブマスこれを天井の地図に写してくれ!」


 ダンジョンカードをサブマスに手渡した。


「はい!」


 なんと、受け付けのお姉さんがサブマスだった。


 それには驚いたが、やることも終わり、えぇぇぇぇぇぇ~! も聞けたし、俺達はルナ達も含め冒険者ギルドを出ようと出入口に向かい歩き出す。


 冒険者のおっちゃんが


「おめでとう!」


 その一言が呼び水となり、俺達への賛辞が飛び交う、その中ギルドマスターが


「これが、パーティー "わーるどじゃんぷ" が見つけた2つの新ダンジョンだ! おめでとう! "わーるどじゃんぷ"! 冒険者ギルド発足以来初の快挙だ! この名は歴史に刻まれた!」


 また、静寂が訪れ。


 皆は天井を見上げる。


 点灯した2つを見て······大歓声と賛辞が混ざり会う轟音の中、皆が笑顔で笑い会いその中を俺達は歩き出す、朝のラッシュ時がいつもの数倍に膨れ上がったような人垣がスッと割れ、俺達が進む出口への道が出来た。


 俺達は進み、皆が賛辞を、そして拍手が。


 ゆっくりと俺達は進み、この世界に来て、初めて来た冒険者ギルドをでた。


 外にも沢山の人が集まっていた、その人達も俺達のパーティー名を叫び賛辞を送ってくれる、その声が広まり街を大歓声が包み以来、この日が毎年の祭りの日になったのは、後の話で触れるだろう。





「すごかったね~♪ お姉さんがサブマスだったなんて」


 そこかい! 俺も確かに驚いたけど!


「私の補助もしてくれる、良いお姉さんですよ」

「あはは、ルナはミスしないだろ」


 ジョン君、恋は盲目って言葉を覚えようね(笑)


「ユタさん、この街をって大陸制覇したから次の大陸に行くの?」

「ん? マールも連れていってあげたいけど、学校やろ?」

「夏休みまでまだあるう~補修も確定してるし······」

「補修? テストで悪い成績でも取ってしまったの?」

「猪鹿蝶騎士団のイベントの時、テストサボっちゃった! 苦手科目だったからラッキー! って思ってたのに·····マール公国から学校無くそうかしら」


 おい!


「あはは、皆の学校だからあかんからね、で今日は何するつもりやったの?」

「学校前に依頼を受けて学校終わったら依頼を実行よ!」

「私も2人のパーティーに参加させてもらってるの、だから今から転移で戻らなくっちゃ」


 そんな話をしていて見つけた。


「その路地裏良さそうやね、俺達は王都行ってくるよ」

「うぅ~ついていきたいけど、またね! 転移!」

 パッ


 マールが消え


「では、転移!」

 パッ


 ルナ達が消えたってか歩け!


 俺達も王都の路地裏へ転移した。


「そう言えば王都の冒険者ギルドは来たこと無いよね」

「そうですね、屋台で聞き込みしたい気持ちもありますが、今はお腹を空かせておきたいですからね、悩ましいですよ」

「ユタさん、まりあちゃん、冒険者ギルドはこっちですよ、そっちは屋台ですからね、お~い!」

「くっ、アトロポス、わかってはいたんだ! わかってはいたのだが、屋台がそこにあるのが悪いんや!」

「うふふ、ユタさん、諦めましょう」


 まりあが俺の左手に絡み付き


「あっ、私も!」


 アトロポスが右手に絡み付いた。


「ぶ~2人占め反対!」×4

「きゃっきゃっ!」

「ほらほら、キャリーが笑ってますよ」

「はぁ、仕方ないよね、報酬もらってちょっとだけね、ほんのちょっと、先っちょだけ」

「おっちゃん、セクハラやで(笑)、せやけど買い占めたらあかんからね」

「あはは、まぁ、そのつもりはしておくよ」

「つもり?」×6

「だぅ~」

「すいません」


 俺達は向きを180度変え歩き出す。20歩程で冒険者ギルドの入口をくぐりまっすぐ受け付けカウンターへ。


 まだ朝のラッシュの影響か、王都ならではなのか列をなしている。


 最後尾に並び順番を待つが、俺達のずっと前の方で、イベント発生のようだ。


「おらガキ共、俺達にそこを寄越せ」

「あぁん? オッサン寝ぼけた事は寝て言え、並んでるのが見えないか? ああ、悪いのは顔と頭だけじゃ無かったのか、あはは、すまんすまん、目も悪かったのか、あははははは!」

「良い度胸だなぁークソガキ!」


 オッサンパーティーが殴りかかる。


 若い兄ちゃんは


「あはははは! なんだ、弱すぎじゃないか!」


 ひょいひょいと避けていく、そして


「ゼェーゼェーゼェー」×6

「なんだ、もう息切れか? ちゃんと修行しろよ、ほらほら後ろへ並べ」

「ゼェークソガキがぁ」


 おっさんパーティーはついに剣を抜いたので


 シュ

 ドドドドドド

 シュ

 ドサッ×6


 お馴染みの腹パンパク、パンツだけのおっさんパーティーが気絶し倒れている。


「なっ! また間に合わなかった······」

「あっ、すまん、いなばお昼にまたあの海行くからついて来るか?」

「······うん! 釣りもするの!」


 なでなで


「えへへ~♪」


 俺達がこんなことをしていたが現場では


「は? どうなったんだ?」

「こいつら勝手に倒れたぞ? それに何で裸なんだ?」

「ねえ、そんなことより順番来たよ、早く早く!」

「は~い」×5


 あの女の子が仕切ってるのかな? 中々の強さやったね、まぁ、良いけどね。


 それからもちょっとずつ進み、俺達は倒れてるおっさん達の横にいる。


 タイミングの悪いことに


「うあぐっ」

「ぐあっ」


 おっさん達が起き出したようだ、そして自分達の状態を認識し


「何だこれは! クソガキの仕業か!」

「おいお前! 見てねえで服出せ! おラァ!」


 殴りかかってきたらもう1回寝てもらおう。


「なんとか言えや!」

「なんとか」

「ふざけんな! このクソガキ! 女ばかり侍らしやがって、カッコつけてんじゃねえぞ!」

「ふざけた服着やがって」


 シュ

 ドドドドドド

 シュ

 ドサッ×6


「まりあの服にふざけた服だと! お前ら服も着てねぇのにふざけたこと抜かすな!」


 俺は消えない墨を出し、顔に落書き。


「ユタさん、肉はダメですよ!」

「馬鹿って本当の事は書いたら可哀想です(笑)」

「眉毛は繋がる物ですわね(笑)」

「額に目ってどこの神様ですか(笑)」

「また男LOVEって(笑)」

「ピ~マークはあかんて! いやいやリアルに描いてもあかんから! それ消えへんのにあぁ~! 描いてもたわ」

「ユタ、おっぱいは?」


 描きましょう! リアルに影もつけて完成!


「あはははは!」×7

「きゃっきゃっ」

「よし! あんまりふざけてんなよ、おっさんども!」


 俺達の順番が来たのでおっさん達をそのままにして受け付けカウンターに向かい、まりあが


「全額引き出すのでお願いします!」


 お姉さんは


「へ? この流れでそう来るの? さっきの子達もそうだったけど、最近の若い子達にはこれが普通?」

「あはは、中々の特殊な例だと思いますよ」

「で、ですよね、それで、全額の引き出しですね、ではギルドカードをお願いします」

「は~い♪」


 シュパッ!


「お願いします」

「お預かりしますね」


 まりあからギルドカードを受け取ったお姉さんが、魔道具にギルドカードを通し、目を擦る。魔道具を見て、指差し数える。目を擦る。再度魔道具を見て、指差し数える······


「えぇぇぇぇぇぇ~!」


 来たぁぁぁぁぁぁ~!


「ぜ、ぜ、全額の引き出しですよね!」

「はい♪」

「ギ、ギ、ギ、」

「ギ?」


 首を傾げるまりあ。


「ギルドマスター!」


 叫ぶお姉さん、ギルド内が騒がしくなる。


「お姉さん、あんまり大きな声出すと目立っちゃいますよ」

「はっ! そうでした、申し訳ありません、すぐにお持ちしますので、少々お待ちください」


 お姉さんが椅子から立ち上がりこちらに来かけていたギルドマスターに合流し、耳元で話をしている。


 ギルドマスターが叫びかけたのかお姉さんがギルドマスターの口を押さえ、事なきを得た。


 2人は頷き合い金庫へ向かい、ギルドマスターは腰の鍵束から鍵を選び出すと金庫を開けた、装飾の施された木箱を出し、中身を確かめ蓋を閉める、金庫も鍵をしこちらへ向かって来る。


 神眼! 本物やね。


「お待たせしました、残高の全てになります」

「ありがとうございました、そうだ、辺境からダンジョンの情報が届くと思うからよろしくね」

「いえ、既に届き調査に向かっております」

「そうなんだ! 小舟しかたどり着けないけど頑張って下さいね」

「はい、早く公開出来るように頑張ります」

「では!」



 冒険者ギルド出て向かうのは······



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