表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/159

第106話 勇者と聖女

 白髪交じりのゴツいおっさんが闘技場に走り込んできた。

 

 数歩進んでとまり、武台があった場所を目がこぼれそうなくらい見開き見つめて動きを止め、口は半開きの状態でまた固まった。


 武台を除去し終えた後、冒険者達は武台を壊すために使った鈍器を、剣や槍、弓などに持ち替え階段へ近づいていく。


 準備をし終えた1組目のパーティーが、階段を下り消えて行った。


 1組目が入った後は、我先にと次々と武器を持ち替え、準備をし終えた冒険者パーティーが次々と階段を下り消えていく。


 冒険者ギルドの職員も、階段へ近づき数名が武器を持ち階段を下って行った。


 十数分後、戻ってきた職員により、ダンジョンだと確認され、アイテムボックスから木の杭を取り出し、階段脇に杭を打ち込み、立て札をくくりつけ立ている。


 その立て札にギルドマスターが、何かを書き込んでいる。


 たぶんどんなダンジョンだとか、何々系のドロップがあるとかだろう。


 そこでやっとフリーズから回復した、白髪交じりのゴツいおっさんがギルド職員に向かって


「何て事をやっておる! すぐに武台を元に戻せ! 明日の闘技大会に間に合わんではないか!」


 顔を真っ赤にして唾を飛ばしながら怒鳴り近づいていく。


「ここは冒険者ギルド管轄の土地であります、そこで新ダンジョンが発見されました、本日よりいや、先程よりこのダンジョンは冒険者達に解放され、既に中に攻略へ向かった冒険者達もおります、これはこの国の王でもこの事実は覆せません、宰相殿、闘技大会は、別の場所で開催して下さい、この建物も近日中に撤去をお願いします」


 冷静に対応する大人なギルドマスター


「なっ! そんな、そんなことが出来るはずがなかろう! 既に大陸全土より集まる同胞、他の大陸からも猛者達が既に······この地に来ておる者をどうせよと申すか!」


 だから唾を飛ばしすぎ、ギルドマスターが生活魔法の風さんで唾が自分に届かないようガードしている。


「さて、私共には関り合いが無いことなので、宰相殿が考える事ではありませんか? 私共はこれよりこの場の整理をいたしますので」


 そのとおりやね、整理するなら俺は


「ギルドマスターさん、この闘技場が邪魔なの?」

「ん? 君か、そうだな闘技場の建っている土地は全て冒険者ギルドが開拓した場所でな、この街の街壁の外にダンジョンがあるだろ、そこの為に沢山の冒険者達が集まり村を作り町になり街になった、そこに獣人達が住み着き王都になった訳だな、だからこの街の3/4ほどは獣王国に勝手に使われている土地だと言うことになるな」

「じゃあ、闘技場無くそうか?」


 ナビ、お願いね

『は~い♪ 階上にいるのは私達だけですよ(笑)』


「出来るのか?」

「俺の収納はデカいからね」

「ふむ、やってみてくれるか?」

「ち、ちょ、ちょっと待て! 明日の闘技大会に使えなくなるではないか! 客にもチケットを販売しておるのだぞ!」

「ふ~ん、収納!」


 待ちませんって


「おお!」


 おお、良い笑顔やね。


「なぁっ!」


 ちなみに落ちてる最中で


 スタッ


 俺達は着地成功!


「ギルドマスターこんな感じで良いかな? あっ、雨降ると中に水が入るから、東屋かな、ほいっと!」


 ダンジョン入口を囲むように、8本の柱を建て、屋根をつける、看板も建て直し立派なものを造ってあげた。


 驚いているギルドマスターと職員達。


「まだ要望あるなら言ってね」

「う、うむ、その東屋の脇に詰所を建てられるか? 2階建てで2階が4部屋あると助かるが」

「出入りの管理する詰め所?」

「ああ、外のダンジョンにも建ててある、交代で見ているからな、仮眠出来る場所があると嬉しい、目の前がギルドと言っても、こちらは別で管理するからな」

「了解、2階建てでかぁ~、ほいっと!」


 1階は受け付けと、トイレとお風呂、2階は、2階にもトイレは必要だよな、8部屋+キッチンと、リビングおまけでアイテムボックスになっている宝箱も置いておく。


 トイレは水洗、お風呂は全自動! キッチンはコンロから冷蔵庫も設置し、おまけで宝箱をもう一つ置いておこう。


 外観は、彫刻を施し、付与魔法をガチガチにかけた。


「完成、どうかな?」


 中々の力作だ。


「ふぅ~む、ギルド職員にならないか? いや、冒険者は自由が1番か、気が向いたら今の言葉を思い出してくれれば良い、今は聞き流してくれ(苦笑)、しかし、土魔法に付与、錬金術もか、多彩なもんだな」

「結構頑張ってるからな、戦闘もそこそこ出来るぞ」

「くっくっくっ、それは疑わんよ、先程2階の観客席より落ちたと言うのに、皆が簡単に着地するなど普通は出来んからな」

「あはは、んじゃ俺達はドワーフの国に行くから後は頑張ってね」

「ああ、仕事だからな(苦笑)」

「おい!」


 宰相のおっさんが、剣を抜き切っ先を俺に向け


「はぁ~おっさん剣抜いてどうするつもりだ?」

「宰相殿! 何を考えてる!」

「貴様! すぐに闘技場を元に戻せ! でなければ切る!」


 だから唾を飛ばすな!


「宰相殿、貴方には無理だ! 獣王ですらなす術もなく倒されたのだぞ!」


 いや、ギルドマスターさん、バレてるけどバラさんといてね(苦笑)


「ならば他のメス共を切り裂いてくれるわ!」


 ブチッ何かが切れる音がした。


 シュ

 ド

 シュ

 ドサッ


 パンツ以外裸のおっさんが、かろうじて意識を残して倒れている。


「ぐぅぅ~」


 俺はピンクの首輪を出すと


 シュ


 おっさんと、まだギルドで倒れてる獣王を含む11名にはめてあげた。


 シュ


「おい、おっさん······俺の仲間に何するって?」


 ナビ、お宝セット頼む

『はい、お城も貴族の家も全てポイントします、後は、一応で良いですが、地面に転移も忘れないで下さいね(苦笑)』

 収納! 転移!

「おい! おっさん! 答えろよ!」

「貴様、何だこの首輪は!」

「封印の首輪だ! 俺の質問に答えろ!」

「なんなんだ貴様は! すぐに外せ! 私はこの国の宰相だぞ! 獣王国に喧嘩を売るつもりか!」

「ったく、やっぱ俺は獣人国は合わないよ、個別ではスゴく良いのもいるけど、ああ! そうそうちなみにお城も、貴族達の屋敷もお前のせいで俺が徴収したから頑張って謝って回れよ」

「へ? 城? 屋敷も? この闘技場の様に?」

「そうだぞ、元々は獣王が絡んで来たからだけどな、普段から行いが悪いからそうなるんや、これからは真面目にこつこつ頑張れ、100年は封印は解けないからね、スキルも魔法も使えないから」

「では、どうすれば······」


 おっさんはそのまま黙ってしまったので、俺はギルドマスターに向き直り


「じゃあ、俺達は行くよ」

「詰め所助かった、気をつけてな」

「ああそっちこそね(笑)」


 俺達は広くなった周囲を、眺めながら路地裏を目指す。


「ユタさん八つ当たり、メ! ですよ、なでなで」


 まりあが撫でてくれたので、黒く、ぐるぐるしたものが薄れていく気がした。


「ありがと、まりあのおかげで落ち着いたよ」

「妻ですから当然です! 悪ノリするくらいなら私達も一緒にやりますからね、今みたいなのは次から止めてあげますね」


 ぐるぐるしていたのを、まりあは何かわかってしまったのだろう、敵わないな(苦笑)


「ああ、悪ふざけで止めてね」


 そして路地裏を見つけ、この大陸最後のドワーフの国へ転移した。





 路地裏から、夜の冒険者ギルドへ、食事処が仕事の終わった冒険者達で賑わっている。


 酒を飲み、今日は良かった、あそこはダメだったなぁ、とか話が繰り広げられている。


 俺達はダンジョン攻略依頼の木札を取り、受け付けカウンターへ。


 クロートーが今回は当番で依頼を受け登録完了。


 冒険者ギルドを出て


「ナビ、今回のダンジョンは?」

『ミスリル鉱山の(ふもと)の村に出来た若いダンジョンですね♪ 素材系ですので』

「人気がない! やね(笑)」

『はい、表示しますね』

「火事?」

『燃えてますね······祭り!』


 そこそこ太い木が、井の字に積まれ火が燃え盛っています。


「おお! デカいキャンプファイアみたいやん! 人の目の無いところへ、転移!」

 パッ


 村の少し手前の街道に転移し、赤く灯りが点る村へ足を向けた。


 少しあるき、村が街道の先に見えてきた は?


「あかんやん! 家に火が移ってるやん! 水さんお願いします! ほいっと!」


 俺が村に水さんを飛ばすと皆も


「水さんお願いします(にゃ)! ほいっと!」×7


 虎鉄とタマも一緒にやってくれる。


「走るぞ!」

「はい!」×5


 シュ


 着いたときには、既に村の20ほどの家に火が燃え移り、全焼半焼、無事な家が無いほどだ。


「どしゃ降りで! 水さん! ほいっと!」


 村だけに降る雨を、どしゃ降りで降らせる。


 まりあ達は火傷や怪我をした人達を回復させて回る。


『家の中にまだ人がいます! ポイントしました!』

「転移!」

 パッ


 転移させて来たのはまだ乳飲み子と、それを抱く、しわしわお婆さん、俺は全力で

「再生! 虎鉄も頼む! 再生!」

「はい! 再生!」


 お婆さんは、自分の足の先が炭化しても赤ちゃんを護るため、生活魔法の水を使い赤ちゃんを包んでいた。


 あかん! それだと空気が無くなる! 俺は風さんに水の膜に空気穴を空けてもらう、息を吸い込んだ赤ちゃんは


「ほぎゃほぎゃぁ~!」

「よし! すぐお婆さんも助けるからな! 再生! くそ! せや! ポーションや!」


 俺は虎鉄に大きくなってもらい、お婆さんから、赤ちゃんを離し、虎鉄の上に乗せ任せる、虎鉄がしっぽで赤ちゃんを落とさない様に囲っている。


 お婆さんは、全身火傷で無事な所がほとんど無い、皮膚呼吸がほぼ出来てない状況だ俺は急ぎポーションを

 カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ

 そのまま取り出しながら蓋を開け、口にふくみ口移しでお婆さんの喉に流し込む、口にふくみ流し込む、口にふくみ流し込む、口にふくみ流し込む······


 100本近く再生をしながら流し込み、スラさんもお婆さんに分裂して寄生させていた。


 やっとの事で再生で、足の炭化は無くなった。

 俺はお婆さんの身体中に貼り付いた燃えカスの服を収納するため浮遊させ収納、収納と同時に大きなタオルをお婆さんにかける、女性だしな。


 髪の毛も焼けて無くなり皮膚がひきつったようになっている。


「せや! ポーション風呂や! 土魔法! ほいっと!」


 俺は土魔法で、浅いお風呂を作り


「ナビ、薬草の良い奴から出して! ポーション作る!」

『はい! ポイントしました!』

「ありがと! 水さん! ほいっと!」


 空中に直径2メートルほどの水さんを浮かべ、中に薬草を放り込む、中で薬草を水流ですり潰し熱しさらに別の薬草や龍の血、いつ採取したのかわからない素材を放り込む。


 最後は魔力を込める!


 むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむ~!


 そして、一気に熱を加える。


 水蒸気爆発する寸前まで加熱し、一気に人肌まで温度を下げた。


「ポーションは、お風呂に、そ~と入れても半分以上残るな、収納! お婆さんはタオルのままで、水中呼吸を付与! 後はそ~と」


 お婆さんを、お風呂に全身沈める。


「よし! 後は再生!」

『勇大様、他の村人は大丈夫ですので頑張って下さい!』

「ああ! 再生!」


 再生を続けている時に、目のはしに皆が走り回り、家を片付け土魔法で造るのが見える。地面も水浸しになったのはタマが一舐め、地面に残っていたススも綺麗に無くなる。そして燃えカスや崩れそうな家々も収納して回っている。


 村人達も、燃え残った家財を掘り起こしたり、地下室を開け、食材を取り出し炊き出しの準備を始めている。


「魔物の気配だ! 虎鉄! 皆はまだ気が付いてない! 頼めるか!」

「任せて! 超極小ウインドアロー連射! ほいっと!」


 シュパパパパパパッ!


 その音に気付き皆も


「魔物が来ます! 超極小ウインドアロー!」


 シュパパパパパパッ!

 シュパパパパパパッ!

 シュパパパパパパッ!

 シュパパパパパパッ!

 シュパパパパパパッ!


「ユタ! 手伝いに来たぞ! 再生!」

「いなば! 助かる! 再生!」

「皆は向こうでスタンピードの対応しているから遅れるって、再生!」

「スタンピード? 大丈夫なん? 再生!」

「ん? 余裕だよ、玉藻が行ってるから、他の皆は待機、再生!」

「そうなんや、再生!」

「私は伝言ゲーム! 再生!」

「了解、だいぶ良くなってきたけど若くない? お婆さんやと思ってたけど、再生!」

「10歳だよ? 再生!」

「神眼! マジやん、火傷と髪が燃えて無くなってたからか再生! ってか聖女やん! 再生!」

 聖女率高くない?

「魔物多いな、私行った方が早い、行ってくるね! 再生!」


 シュ


 いなばは皆の所に入り魔法を連射しだす。


「······」


 目が開いたが眼球がまだ再生されてない。


 念話で


 気が付いた? まだ回復途中だから動かないでね、赤ちゃんは無事だから。


 へ? 私、生きてるのですか?


 大丈夫だよ、火傷とかしてたけど、だいぶ治ってきたから。


 赤ちゃんは勇者なの、封印の魔道具は持ってますか?


 なっ! 虎鉄頼む! ほいっと!

 虎鉄に封印の腕輪を渡す。


 任せて! 浮遊&風さんお願いします! ほいっと!


 浮遊でうかせた腕輪を、風さんで操作し、赤ちゃんの左手首にはめた、自動調節でピッタリだがデカいな、後で作り直そう。


 封印はしたよ。


 ありがとうございます! たった1人の家族、妹ですから。


 心配無いよ、スキルも光魔法だけだから、危ないスキルも無いし大丈夫。


 ああ、良かった、お父さんが死んで、お母さんも妹を産んで死んじゃったから。


 産まれてまだそんなにたってない感じやしね。


 2日目ですから、でもやっぱり火事になっちゃうしはぁ~消防車もこの世界にはありませんからね。


 消防車って! 神眼! 転生者!


 はい、良くわかりましたね


 召喚者なので、消防車って所で気が付きました。


 そうなのですね、私は妹が産まれて記憶が蘇りました。


 私は何度も転生を繰り返すスキルがあるみたいです、なので今回も妹が護れるならと頑張りました。


 あはは、スキルじゃなくて称号だね、転生神の加護と祝福がついているし、猫でも助けた?


 最初の記憶で養蚕(ようさん)を営む家だったので猫神様は(まつ)ってましたね。


 あっ、目が見えるようになりました。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ