2.妹の周辺を整理したいと思います
デスピナの記憶によると、妹のソフィアとの交流は皆無だった。夕食時に会うくらいなので、肉親の情を抱くことが出来ない。むしろ、母である王妃を独占するズルいヤツという印象。
第三者視点に立つと、王妃が意図的に会わせないようにしていたことが分かる。理由は分からないが、デスピナがソフィアを嫌うようになったのは王妃の責任だと思う。
これからのことを思うと、ソフィアとは仲良くなっておいた方が良いだろう。三歳年下のソフィアは、デスピナと対等な立場で戦える唯一の存在だ。国王は除く。
仲良くなるためには、直接会うことが一番だろう。次期女王としての教育の合間を見て、ソフィアを訪ねることにした。
「どうしてソフィアに会えないの?」
私は現在、デスピナの部屋に押しかけてきたソフィアの侍女から、ソフィアとの面会を断られている最中である。
「ソフィア様は体調がすぐれず、臥せっていらっしゃいます」
「だからこそ、お見舞いに行きたいわ」
「デスピナ様にうつるといけませんから・・・」
「ソフィアは風邪なの?」
「いえ、そういう訳では・・・」
「なら、うつらないわね」
嘘なら最後まで突き通せよ。女優になれないぞ?
「それとも、私をソフィアに会わせたくない理由があるのかしら?」
「いえ。そんなことは・・・」
「じゃあ、問題ないじゃない」
視線をさまよわせるソフィアの侍女。周りに居る私の侍女たちに助けを求めているようだ。しかし、彼女たちからの助けは無い。何故なら、彼女たちは記憶が戻る以前のデスピナの癇癪に振り回されてきた被害者たちだからだ。デスピナに意見するという考え自体が無い。申し訳ないです。今後、関係を改善していきましょう。
「もしかして、母上から私とソフィアを会わせないようにと言われているのかしら?」
ソフィアの侍女がビクッとした。おいおい・・・それでも王族に仕える者ですか?まあ、良いでしょう。本日、名女優デスピナが演ずるは推理ドラマの人情派刑事。犯人の心を揺さぶっていくタイプである。
「確か、貴女は母上が結婚した時に公爵家から一緒に来た侍女だったわね。なるほど、母上の命令は絶対でしょうね」
「・・・」
「果たして命令を守ることが母上への忠義かしら?」
私は椅子から立ち上がった。
「貴女は母上の傍で何を見てきた?母上が私からソフィアを遠ざける姿でしょう?その理由って何?」
「それは・・・ソフィア様のご病気がデスピナ様にうつらない様にと・・・」
「嘘おっしゃい。ソフィアが元気な時だって近づけなかったもの。母上はソフィアが可愛くて、私が嫌いだっただけ。私の為に行動したことなんて一度もない。全てはソフィアの為だった。でも、それって本当にソフィアの為になってるのかしら?」
「ソフィア様の為・・・?」
「母上のいない城の中で、ソフィアは侍女たちだけに囲まれて生きていくの?ソフィアが母上の実家に引き取られることは不可能だわ。だって、ソフィアには『能力』が目覚めるから。ソフィアは王家から決して出られない。父上はお忙しいし、四六時中一緒だった母上には会えなくなった。私にも会わせないとなると、ソフィアは城の中で孤立するだけよ?ああ、私の対抗馬として何処かの貴族が取り入ろうとすり寄って来るかもね。姉妹仲が悪いと誤解されて、王位の簒奪を勧めてくるかも。そうしたら、貴女どうするの?ソフィアを争いの中に突き落とす?もしかして、それが母上の望みなのかしら・・・?」
「け、決してそのような・・・!」
「母上の望みはソフィアの幸せなのでしょう?母上に従っているだけでは、ソフィアは幸せになれないわよ?傍に居る貴女が自分で考えてソフィアを守っていかないと駄目。それが母上への忠義ではなくて?」
「・・・はい」
「とりあえず、今日は戻りなさい。よく考えることね」
ソフィアの侍女は戻って行った。さてさて、今後どのように動くのかしら・・・っていうか、さっきの私は刑事というよりも、口の上手い詐欺師みたいだったわね。前世で詐欺師が主役のドラマとかあったし、その影響かしら?
ソフィア側の動きが有ったのは、それから三日後のことだった。面会時のお願いという名の条件が出された。
「場所はソフィアの部屋。中には私とソフィアと侍女である貴女、それにソフィアの乳母とその息子ってことね」
「はい・・・」
「まあ良いわ。ソフィアと二人きりにされたとして、もしソフィアが体調を崩しでもしたら私が毒を盛ったとか言われそうだし。ソフィア側の人間が多い分には問題ないわ。他の侍女も入れても良いわよ?」
「いえ、あの・・・」
「ああ、それとも私を暗殺するつもり?私の侍女は入れないし、ソフィアのことが大切な口の堅い人間だけ集めたということね。部屋の中で何があったかは分からないようにして、『いきなりデスピナ様がソフィア様に襲い掛かって・・・』とか言って始末する手筈なのかしら?」
「そのような・・・!」
「ふふふ。今のは『予知』ではなく、私の想像のお話。ええ、あくまで想像ですとも。今日の夕食で父上に貴方たちからのお願いを叶えることを伝えるわ。そうでもしないとソフィアに会えないみたいってね」
「こ、国王陛下に・・・」
「あら?何故伝えないと思ったの?私だって自分の身を守りたいし、もしも私が死んでしまったら・・・ソフィアの責任だと言われないようにしてあげる。ついでに、貴女たちの責任でも無いと・・・そう、全ては私の選んだことであるとね」
ソフィアの侍女は顔面蒼白だ。あら?本当に暗殺するつもりだったのかしら?次期女王として認められているこの私を。
「だから、ソフィアに会うのは明日以降ね。よろしく伝えて。さあ戻りなさい」
ソフィアの侍女を部屋から追い出すよう周りの侍女たちに目配せする。彼女たちは主人の指示に従った。そして、その日の夕食にて私は宣言した通りの行動をした。
「なので父上。私はソフィアに会うために一人で向かおうと思います。次期女王として咎められる行動だとは分かっておりますが・・・」
伏し目がちに話していたので国王の表情は分からない。しかし、絶句していることは分かった。ここで付け加えておくと、王妃が公爵家へと帰された後の夕食にソフィアが参加したことは一度も無い。体調不良を理由に部屋に籠城している・・・というよりさせられている。
「父上。ソフィアの侍女や乳母たちを責めないでくださいね。彼女たちは自分の仕事をしているだけなのですから」
「・・・デスピナ。私は王妃がソフィアを偏愛していることに気が付いていた。病弱に生んでしまったことへの負い目を感じているのだと。だからこそ、その行動に目こぼしをしていた・・・してはいたがな」
国王は大きな溜息をついた。
「デスピナ。ソフィアに会うのはもう少し我慢してくれるかい」
「父上がおっしゃるのでしたら」
こうして、私は国王を動かすことに成功した。
その後、国王直々の命令で、ソフィアの周りの人間の大規模な人事異動が行われることとなった。王妃の結婚の際に公爵家から連れてきた人間は、全員が城の外へ(公爵家へ返却。又は本人の実家へ里帰り)。その他の侍女や警護役も七割ほど配置換えになった。乳母も里帰りの仲間に入れられていた。ただ、乳母の息子だけは遊び相手兼護衛見習いとして残されたそうだ。
「乳母の息子ってことは、ソフィアの乳兄弟・・・それってアドニスでは!?」
なんということでしょう。私の目の前で、現実世界で、アドニス×ソフィアを拝めるかもしれない!思わず期待に胸が膨らんだ。
国王が私とソフィアの対面場所に指定したのは、なんと私の部屋だった。国王が私側に付いたという意思表示なのかもしれない。そして、驚いたことにソフィアは自分の足で歩いて部屋に入って来た。てっきり、移動用の車椅子にでも乗ってくるのかと思っていた。私は自分の前の席を勧めた。
「お姉さまと一緒にお菓子が食べられるなんて夢みたい」
ソフィアは嬉しそうに笑いながら腰かけた。
「具合が悪いと聞いていたのだけれども・・・」
「いいえ。元気なのに、みんながお部屋から出してくれなかったの」
「そうだったの・・・」
なんと、侍女も乳母もソフィアの意に反して閉じ込めていたらしい。彼女らが仕えていたのは、あくまで王妃だったということだろう。
「お部屋の中でしか遊べなくって・・・アドニスは一緒に遊んでくれたけど、お絵かきとか、静かなことしかダメだって乳母が言うの」
ソフィアの元気な声や遊んでいる音が部屋の外に響かないようにしていたのか・・・。
「これからは、私と一緒にお菓子を食べたり、遊んだりしましょうね」
「本当!?ありがとう!お姉さま」
「ただし、元気な時だけよ。具合が悪くなったらすぐに知らせること。約束よ」
「約束する!」
ソフィアは「あ!」という表情を作った。そして、モジモジし始めた。何?トイレ?
「あのね、お姉さま。アドニスも一緒に遊んでも良い?」
「アドニス?」
知っているけど、知らないふりをする。会ったことないし。
「アドニスは乳母の子供よ。乳母が時々連れて来てくれるの。一緒に遊ぶのよ」
「そうだったの」
「私、お姉さまともアドニスとも遊びたいわ」
「良いわよ。今度はアドニスと一緒にいらっしゃい」
「うん!」
座っているのに飛び跳ねている・・・王女としてどうなの?その辺の教育はしてたの?まあ、良いか。生でアドニス×ソフィア(幼少期バージョン)が見れるということで許しましょう。
ソフィアの周りの人間が入れ替わったのだから、ソフィアも夕食を一緒に取るようになる・・・と思っていたのだが、国王により一定期間の出入り禁止にされていた。
「ソフィアが悪くないことは分かっているよ。しかし、必要なことなんだ」
幼いとはいえソフィアも王女。ソフィアに対する罰も与えていると周りに見せるためなのだろう。
「今度、ソフィアの乳兄弟と会うと聞いたよ」
「はい。アドニスという名だそうです。ソフィアの希望で一緒に来ることになっています」
「そうか・・・デスピナは賢いから大丈夫だとは思うが、気を付けなさい」
「それは、アドニスを警戒した方が良いということですか?」
「そうだ。ソフィアと同じ年齢とはいえ、いや、子供だからこそ何をするか分からない。それに、乳母の息子ということは、王妃の影響を受けているだろう」
「ああ、母上の私に対する態度を知っているでしょうね・・・」
もしかしたら、ソフィアをイジメる悪いヤツ!とか思われているかも。徹底的に離されていたのでイジメる機会もありませんでしたが?
「当日は、部屋の中の護衛も増やそう」
「父上、それは・・・」
「デスピナ。お前はもう次期女王だと決まっているのだよ。ソフィアに能力が目覚めていない今、自身の身を何よりも優先しなさい。もちろん『予知』した通りソフィアに能力が目覚めることは信じているよ」
しかし、現状の正式な王位継承者は私だけ。実はこの国、一夫一妻制である。王妃を実家に帰したとはいえ、国王は離婚していない。王妃との間に次の子供を望めない状況でもある。
やっぱり、この人は父親というより国王なのだ。国王という立場で私の心配をしている。まあ、母親という立場を優先して、私をないがしろにした王妃よりマシか。
「分かりました。父上にお任せします」
広い部屋だし、気にならないだろう。そう思っていた時が私にもありました。
「・・・密集してるとまでは言わないけど、多いわね」
「陛下のご命令ですから」
私に答えたのは今日のために派遣された女性騎士のリーダー格。部屋の中には元々の私の侍女たちと警護役、そして追加の護衛として来た女性騎士たち。国王は一応配慮したようだ。威圧感を少なくするため女性騎士だけを指定したのだろう。
タラントン王国では職業と性別は結び付いたものではない。女児でも王位継承権があるし、女性でも騎士になれる。もちろん、文官にもなれる。原作ではソフィアが漁師の舟に匿われるシーンがあったが、船の持ち主は気の良い女性漁師だった。
そんなことを考えている内に約束の時間になった。扉が開き、ソフィアが入ってくる。
「お姉さま!」
「いらっしゃい。ソフィア」
「今日はアドニスも一緒なのよ」
「そう。紹介してくれるかしら?」
「はい!アドニス、こっちに来て」
ソフィアに促されて入って来たのは、警戒心バリバリですといった雰囲気の少年だった。少年はソフィアに並ぶと私を睨みつけてきた。敵意を隠そうともしない。女性騎士たちが心持ち位置を変えたようだった。
(メッチャ睨まれとる。しかし、あ~、推しカプの幼少期ゴチです。並んでいるだけで眼福です)
「アドニス。デスピナお姉さまよ」
「・・・お初にお目にかかります。アドニス・ヘーリオと申します」
「ソフィアの姉のデスピナよ。宜しくね」
二人に席を勧めて、お菓子を用意させる。色とりどりのお菓子に目を輝かせるソフィア。
「お姉さま!とっても美味しそうね」
「たくさん食べてはダメよ。お夕飯が入らなくなるからね」
「うぅ。分かりました」
「ふふ。日持ちするお菓子は持ち帰ると良いわ」
「!」
ソフィアは目を輝かせていた。今日は侍女ではなく女性騎士たちが給仕をしてくれる。
「さあ、食べましょう」
「はい!あれ?そういえば、今日はお部屋の中に人がいっぱいですね」
今、気付いたのかい!鈍いぞソフィア!
「ええ。父上がね」
「お父さま?」
「心配なんですって」
ちらりとアドニスを見ると目が合った。話を聞いていたのだろう。ようやく女性騎士たちが自分の行動に目を光らせていることに気付いたようだ。アドニス、あんたもかい!いや、七歳の子供なんてこんなものかしら?
その日のお茶会でソフィアはマカロンと小さなケーキを食べ、クッキーを大事そうに持ち帰った。
次のお茶会はソフィアが一人で来た。通りで今日は部屋の中が込み合っていない。ソフィアは怒っていた。そして、悲しんでもいた。
「アドニスったらヒドイのよ。私に隠れてクッキーを捨ててしまったの!」
「あら・・・」
「せっかく、お姉さまが用意してくださったクッキーなのに・・・」
なるほど。アドニスはクッキーに毒が入ってるとでも思ったんだろうね。
「だから今日はアドニスが居ないのね」
「はい。イジワルするから置いてきました」
ソフィアを思っての行動だろうに・・・報われないね。
「じゃあ、今日は二人でお菓子を食べましょう。大丈夫、クッキーもあるわ」
「本当だ!クッキー食べたいです」
私は侍女にクッキーを取り分ける様に指示しながら考えていた。一度、アドニスと一対一で話すかな・・・。
さっそく、アドニスを呼び出すことにした。もちろん、国王の許可は取ってある。報連相は大事。先日の女性騎士たちを派遣してもらった。そして、本来の私の侍女と護衛は退出させた。だって、部屋が狭く感じるから。
さて、今日の名女優デスピナが演じるのは小学校の先生。分かるまでお話してあげる。
部屋に入って来たアドニスからは、敵意と怯えが感じられた。そりゃあ敵地に一人だものね。ソフィアと一緒の時は「自分が守らねば!」って思ってたから大丈夫だったんだろうね。
「座りなさい」
目の前の椅子を示すと無言で着席した。女性騎士たちに給仕してもらう。
「食べたら?毒なんか入ってないわよ」
「!?」
疑いの目で見られる。
「貴方たちと違って、私は毒殺なんてしないわ」
今度は驚愕していた。やっぱりね。原作で王妃がデスピナに使った毒はソフィアの乳母が用意していた。だから、ソフィアの部屋でお茶会を開こうとした時に、私の殺害方法として毒殺も計画してたと考えてたんだよね。勘だったけど。
「そもそも毒なんて、たとえ王女だとしても十歳の子供が簡単に手に入れられるものでは無いの。だから、私より年下のソフィアや貴方が毒を用意したとは思ってないわよ」
言外に毒を用意したのは乳母・・・お前の母親だと疑ってますと言っているようなものだけど。
「貴方が私のことをどう言い聞かされて育ってきたかは想像がつくわ。それに、母上・・・王妃様やその侍女やら貴方の母親やらが城から出されたのも私の仕業だと思っているのでしょうね」
「・・・んたの」
「何?はっきり言いなさい」
「あんたの仕業だろう!知ってんだぞ!あんたがソフィア様を酷い目に合わせてるって!だから、俺が守るんだ!」
女性騎士たちの動きを目で制す。今、アドニスを確保されると困る。
「そう。では何故、知っているのかしら?」
「王妃様や母様が言ってたからだ!」
「言ってただけ?それで、それを信じているの?」
「当たり前だ!王妃様や母様が嘘をつく訳がない!」
「そうかしら?私は夕食の時以外に、いえ、夕食の時でも王妃様によってソフィアから遠ざけられていたわ。そんな私がどうやってソフィアを酷い目に合わせるの?貴方、私がソフィアの近くに居るのを見たことがある?」
「それは・・・」
無いだろうな。だから、原作で王妃が目撃したデスピナがソフィアに怪我させた瞬間は、デスピナに取っては滅多にない機会だったのだろう。
「そもそも、酷い目ってどんなこと?」
「・・・王妃様たちを城から追い出した」
「それを決定したのは父上ね。むしろ、私は自分が城から出て行くと言っていたのよ」
自分の母親が追い出されたことは言わない、言えないのか。きっと、私を暗殺する計画を知っていたのだろうな。
「貴方は母親が言ったことを全て信じる子供なのね。『あの人は泥棒だ』って言われたら、ただ歩いているだけの人に対して警邏を呼ぶのね」
「・・・そんなこと、しない」
「どうして?」
「本当に泥棒かなんて分からないから」
「貴方の母親は嘘を吐かないのでしょう?」
「・・・」
あらら。黙っちゃった。責めすぎたかな?でも、納得してもらうまでやるよ!
「私のことは悪い奴だと決めつけて、他の人は違うと思うのはどうして?私、何かしたかしら?」
「・・・何もしてない」
あ~あ。泣かせた。堪え切れない涙が伝っていく。
「アドニス。貴方はソフィアを守りたいのでしょう。だったら、自分で考えないとダメ。誰かの、例え母親だろうと言いなりになってはダメ」
「自分で考える・・・?」
「現に、ソフィアの立場を悪くしたのは貴方の母親たち。貴方の母親たちはソフィアを守ってない。逆に酷い目に合わせてる」
「そんな・・・」
「ソフィアはもっと自由になれるはずだった。でも、ソフィアは私とのお茶以外は部屋に閉じ込められている。これは酷いことではない?」
椅子から立ち上がり、アドニスの傍に立つ。
「自分で見たこと・聞いたことから考えなさい。貴方は聞いただけで決めつけていた。ずっとソフィアの傍に居たいなら考える力を身に付けなさい。ソフィアに取って本当に良いことなのか。それとも悪いことなのか。しっかり考えないとソフィアに嫌われるわよ?」
私は給仕をしてくれた女性騎士にお菓子を包むように言った。
「あとは自分で考えなさい」
包まれたお菓子をアドニスに渡し、ソフィアの元へ帰した。
次のお茶会には、またもやソフィアが一人で来た。曰く「アドニスからお菓子を分けてもらった。お姉さまと二人でお話したって言ってた。ズルいから置いてきた」そうだ。
アドニスは私が渡したお菓子をソフィアにも分けた。それが、彼の考えた答えなのだろう。小さい子は矯正できるわね。良かった。