神崎零序章
目が覚めると真っ暗な世界、閉じ込められた小さな世界に存在するような不安、宇宙のように無限に広がる闇のような静寂。
不安のような、安堵のような、自分が何なのかさえ分からない、暗い闇の世界。
無限の闇と静寂の中、どこまでも続くような耳鳴りが意識の遠くから鳴り響いてきた。
もうろうとする意識の中、体を起こそうとして手をついたその瞬間私は、「痛っ。」っと、声を出してしまった。
声を出してはっと我に帰った私は、思わず両手で口を塞いでしまった。
両手で口を塞いだままゆっくりと体を起こした私は、真っ暗な闇を確認するように恐る恐る周りを見渡した。
「誰かいませんか。」
真っ暗な世界はまた、静寂に包まれていた。
何も見えない暗闇と静寂の中、次第に目が慣れてきたのか、ぼんやりと世界が白い壁で閉塞されてきた。
この部屋には誰もいないとゆう安心感で少し気持ちが落ち着いたと同時に、私の記憶と意識はいっきに現実に戻され思い出した。
「また死ねなかった。」
誰もいない部屋で、誰にも聞こえないような声でそうつぶやいた瞬間、瞳の奥から涙があふれ出してきた。
遠くから聞こえてきた救急車のサイレンが、だんだん大きくなってきてすぐ近くで止まった。
右手で左手首をゆっくり確認するように触れると、いつものように、思った通り包帯が巻いて合った。