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悪い癖だぞ

 それからしばらくの間、学院は試験騒動の噂で持ちきりだった。マリア・アドラーの暴走と、それを見事におさめたアーネストの手腕。

 校内で生徒会役員たちを見かけることはたまにあったが、アーネストは相変わらず大勢の人間に囲まれている一方で、マリア・アドラーはひとりでいることが多かった。たまにレオナルドと二人でいることもあった。

 ビアトリスにはマリアに同情してやる義理はない。それなのに、悄然とした彼女を見かけるたびに、なにかもやもやとした思いが胸の奥からこみあげてきた。

 これは一体なんなのか。




「……なんだか最近浮かない顔だが、なにか悩み事でもあるのか?」


 いつものあずまやで会っているとき、カイン・メリウェザーが問いかけた。


「いえ別に、悩みと言うほどのものではありません」

「悩みというほどじゃなくても、気にかかることはあるんだろう? そうやって一人で抱え込むのは君の悪い癖だぞ」


 間近に顔を覗き込まれて、どきりと心臓が撥ねるのを感じる。

 この人は本当に整った顔をしている。


「……おかしな妄想じみた話なんです。人に打ち明けるようなことではありません」

「妄想かどうかは聞いてから判断するよ。とりあえず聞かせてくれないか」


 ビアトリスはしばらく迷っていたものの、結局今まで感じていた不安をカインに全て打ち明けた。


 アーネストにいさめられたときのマリアの表情、マリアの声。

 何か言いたげだったのに、口をつぐんだマリアの様子。

 あのとき彼女は何を言おうとしていたのか。


「……生徒会の手伝いをしていたとき、パーマーさまに聞いたことがあるんです。試験結果の順位表は、校内に貼りだされるのと同時に、縮小版が学校資料として生徒会室に届けられるんだそうです。だから生徒会役員は、一般生徒と押し合いへし合いしながら、貼りだされた順位表を確認に行く必要はない、大きな声では言えないが、生徒会役員の特権だと。つまりアーネストさまとマリア・アドラーには、今回の試験結果について、事前に話し合う機会があったんです」

「要するに、君はこう言いたいんだな。生徒会室で試験結果を目にしたマリア嬢が『これは不正だ』と騒いだ時、その場にいたアーネストは彼女に賛同していたのではないか。だからこそ、マリア嬢はアーネストにいさめられてショックを受け、不自然な様子を見せたのではないか、と」

「馬鹿げた妄想だって分かっています。それこそ、酷い言いがかりだと」

「いや、そうとも言い切れないだろう、……ひとつ確認してみるか」

「確認って」

「決まってるだろう。マリア嬢を呼び出して聞いてみるんだ」

「え、でも」

「分かっている。いきなり俺たちが呼び出したところで、彼女は警戒して応じないだろう。彼女と親しい人間に仲介してもらう必要があるな」

「彼女と親しい人間?」

「ああ、手頃な奴が一人いる」


 カインはいたずらっぽく笑って見せた。


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[一言] 短編から入り、どんでん返しの楽しさに全ての作品を読破してしまいました!この連載が最後です。続きが気になって落ち着きません!どうぞ早く完結させてください。 ご執筆頑張ってください。陰ながら応援…
[気になる点] 主人公の友人達にも悪影響が出始めた以上、さっさとクズを叩き潰すべきですよね。 まぁ、モラハラの糞が何を考えている等どうでもいいけど、廃嫡病死エンドがクズにふさわしいでしょう。挽回の機会…
[一言] なるほどねぇ マッチポンプたぁやることがみみっちい
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