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「して、なんでワシらまで冒険者登録を?」


「だって宿無しはいやだろう?」


「わははは。ワシらは困らんがな」


「彼女がいるだろう?」


「そうだな。そうだったな」


これだからドワーフは旅仲間に向いてないといわれる。もしもパーティに過半数近くのドワーフがいたらあきらめた方がいいと言われる。理由は簡単。野宿結構!酒さえあればいい!それがドワーフだから。


「野宿も楽しかったわよ! 初めての体験だったもの」


「わははは。そりゃよかった」


「アゼリア。あれが何日も続くと結構つらいんだぞ?」


「私は大丈夫よ? どうせ食べ物には困らないもの」


「そうじゃ、そうじゃ! ミートは喰えれば何でもいいしのぉ。わはは」


 この編成では一理ある……質より量のミート、酒のリッカー、木の実フルーツのアゼリア。一昨日なんかなんか草食ってたし。まぁ、美味しかったけど。


「それでもな‥‥‥報酬もあるし、こうやって食事をとるのは楽でいいだろ?」


「ミートォ」


 といっても、ほとんどこのミートの食費でなくなりそうだけど。路銀も大分減ってきたし、ここらで一旦増やしておいた方が楽だろう。


「よし! さぁ、アゼリア行こうか?」


「はい」


「どこへいくんだ? お前さんたち、まさか昼間から」


「ちがうわい! まぁ‥それも、悪くは‥ないけど‥‥ねぇ? アゼリア」


 って、もうあんなとこまで。嬉しそうだなぁ。そうだよな。初めての街だもんな。


「じゃぁ、鍛冶屋に行ってくるよ」


「わははは。尻に敷かれるなよ? 旅人」


 リッカーは今でも、『旅人』とか『お嬢』とか言う。きっとクセなんだろう。荷物から槍を引き抜きアゼリアの元へ。


「綺麗なお嬢さん。私の手をどうぞ」


「あら、優しいのねウィル。ありがとう。うふふ」


 ほんと幸せ。森での一件は死ぬほどっていうか死にかけたけど……。今、敵はこの街のやつらだ。特に、


「ねぇねぇ、お姉ちゃん、エルフ?」


 おっと可愛い少女がさっそく食いつきましたよ。


「うん。そうね。貴方もエルフよね?」


「でも、お姉ちゃんみたいに綺麗な肌じゃない」


「あら? そうね‥‥‥朝の水浴びかしら?」


「水浴び?」


「そう。朝に誰もいないうちにね。お日様と一緒に綺麗な泉で水浴びをするの」


「寒くないの?」


「うーん。私はそう思わなかったけど」


 おっと、ここらで止めねば。この子が毎朝水浴びをして風邪でも引いたら大変だ。


「まぁ、ちゃんとお風呂に入って体を洗いなさいってことだよ? お嬢ちゃん」


「ふぅん。わかった!」


 とまぁ、こんな感じで絡まれては助けを繰り返しどうにか鍛冶屋まで辿り着いた。絡む子供、絡みに行くアゼリア。なんか思ってたデートと違う。もっとこう、腕組んで「あーあれキレイ」とか「かわいい」とか言いながら俺から離れないの想像してたんだけど、全力で動き回る彼女に俺は疲れた。


「あいよ? なんだい?」


 そう言って出てきたのは、ちょっと背の低めの出っ歯の三十半ばくらいの人間‥‥‥?の男。サンダルにまるで裸エプロンの状態の店主だ。


「初めまして」


「店主さん、こんにちわ! 私はアゼリア。エルフのさ――」


 ちょっとこの子また暴走。自己紹介は誰にでもすればいいってもんじゃない!


「んー!」


「おもひろい、人だね。よろひくね。俺はトンカ」


 その出っ歯のせいですか? 発音がちょっとおかしいのは? ご主人も十分面白いですよ。


「ほれで、なにひに来たんだ?」


「いや、この槍を使えるようにしてほしいなって思って。どのくらいかかるかな?」


「んー。おお、これは良い槍を使っちぇるね」


「ねぇ、ちょっといいかしら?」


 アゼリアがご主人の両あごを手で優しく包んだ。森にいた頃なら見慣れた光景で、何か起きるのを期待するんだが‥‥‥彼女は森を出てから魔法が使えない。主人を見つめるアゼリアに向こうもまんざらではないようだ。


「だめね。この飛び出た歯が治らないわ。ごめんなさい。そのせいで喋りづらいのかと思ったけど治せないみたいなの。出来るような気がしたんだけど」


 あちゃー。やっちゃった。鍛冶屋かえないとダメかな……


「あははは。おもひろいね。気に入ったっしゅ」


 あれ? ちょっと、今最後のいらなくない? それと意外に気にしてない。あんな至近距離で美人に見つめられたからかな? 顔もちょっと赤いし。


「特別に、いい『しょざい』がはいったからほれでひ上げてあげるよ」


 ごめん。ちょっと何言ってるのかわかんない。まぁ、やってくれるんだろう。アゼリアがこちらを向いて主人のすぐ横に座って、入口から見える景色を楽しむ中、俺は主人の後姿に驚く。


「じゃぁちょっとまっちぇちぇね」


 ちょ、ご主人!? お前ほんとに裸エプロンなの!? アゼリアが反対向いててよかった。振り向いたらすぐ奴の尻があるけど……美人の顔のすぐ横に汚い男の尻とかシュールだわ。


「いやぁ、熱いからね。どこいったかなぁ?」


 こいつ、こうやって女冒険者の時に楽しんでるな? やたら長いし、さっきから同じとこ探してる気がする。


「ああ、これでいいかな」


「今ある中でこれが一番硬くていいやちゅだからな」


「それひゃ、何日かひたらギルドに伝えておくよ」


「ありがとう。ご主人」


 さぁ、この変態主人からとっとと離れよう。


「行こう、アゼリア」


「はい」


「また来ておくれよ」


 さぁ、今日はこれでもうすることがない! あとはハゲからもらったカギを二人に渡して……


「どうしてそんなに嬉しそうなの? ウィル」


「え? そりゃもう、久しぶりのベッドだからね? 大好きなアゼリア」


「そういえばそうね! 楽しみ」


 意味は違うだろうけど、俺も楽しみ!

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