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剣の才能がないと侯爵家を廃嫡され追放された少年。破壊神の加護を手に入れ無双する。  作者: えぞぎんぎつね


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21 竜騎士

 騎士たちはフルフェイスの兜をかぶっているため、目は見えない。

 だから目が合ったというのは、俺の気のせいかもしれなかった。


 俺と目が合ったかもしれない騎士は他の騎士たちより頭一つ分背が低かった。

 だが、身のこなしが違う。最も腕が立ちそうだ。


 背の低い騎士と他の騎士の力量の差は少しの差ではない。

 頭一つどころか、三つぐらい突き抜けている。

 他の騎士が新人で、背の低い騎士が指導係に違いない。


 恐らくこの中で最も偉い、新人の教育係的な騎士なのだろう。

 背の低い騎士は、他の騎士に指示を出して休ませると、ゆっくり近づいて来た。


 そして、騎士は冒険者たちに向かって言った。

「待たせて、すまないな」

 その騎士の声は、意外にも若い女性のものだった。


「いえいえ、お気になさらず」


 どうやら騎士たちが訓練している間、冒険者たちは洞窟に入らずに待っていたようだ。

 ダンジョンの中は実は狭いのだろうか。

 それとも別の理由があるのだろうか。


 今度、俺もダンジョンに入って中がどうなっているのか調べてみたいものだ。


 そんなことを考えていると、

「で、そちらの少年は、こんなところでどうしたのだ?」

 なぜか騎士が俺に興味を持ったようだ。


「こいつは新人冒険者なのですが、一人で獣の山脈の方に向かうつもりらしくて」


 獣の山脈というのは俺が向かおうとしている凶悪な魔物が多く生息している場所だ。


「なんだと? それは危ないな」

「ええ。だからみんなで止めていたところです」

「ふむ。やめた方がいいだろうな」

「ですが、事情があって絶対に行くって聞かないんですよ」

「何か理由があるのか?」


 聞かれたので騎士にも先ほどの奴隷を解放したくて金が要ると言う説明をした。


「ふむ。なるほどな。事情は把握した。少年。少し待っているがよい」


 俺の返事を待たずに騎士は振り返ると、他の騎士に何やら指示を出す。

 そして、すぐに戻ってきた。


「さて、少年。行こうか」

「行くとは?」

「獣の山脈だ。少年を一人で死なせるのは忍びないからな」

「いや、獣の山脈は遠い。その鎧ではきついだろう」

「その心配はない」


 そういうと、騎士は胸から金属の笛を取り出して吹いた。

 だが、笛の音は全く聞こえない。


 耳を澄ましていると、笛の音とは別の音が聞こえてきた。


 ――バサバッサ

 巨大な羽ばたき音だ。


 音のする方に目をやると、大きな竜の姿が見えた。

 その竜は俺が倒したドラゴンゾンビよりも大きい。

 さらに、小柄な竜が五頭、その大きな竜の後ろを飛んでいた。


「竜か?」

 俺は思わずつぶやいた。


「ああ、竜だな」

 なぜか冒険者たちは慌てていない。来ることがわかっていたかのようだ。


「見事な竜ですな」

「ああ。自慢の竜だ」


 騎士は笛から口を離して、自慢げに言う。


「少年。竜は初めて見るか?」

「……生きている竜は初めてだ」

「そうか」


 竜は俺たちの近くの地面に降り立つ。

 そして大きな竜は騎士に甘えるように顔をこすりつける。


「があ、がああああ」

「よしよし。待たせたな」


 他の竜、五頭は他の騎士たちのところに降りる。

 大きな竜と同じように騎士に甘えていた。


「竜騎士団だったのか」

「ああ、そうだ」


 背の低い騎士が大きな声で他の騎士に言う。


「先にだした指示通り、帰っているように。到着したら今日は休みで良い」

「「「はっ」」」


 他の騎士たちはそれぞれ小さな竜の背に乗る

 小さな竜といっても馬や牛よりははるかに大きい。

 小さな竜はワイバーンと呼ばれる、二足の竜だ。


 大きな竜は四足の竜だ。恐らくエルダードラゴンと呼ばれる竜だろう。


 ワイバーンに乗った騎士たちが飛び去って行くと、

「少年、少し待つがよい」

 そう言って騎士はエルダードラゴンの鼻先を撫でる。


「この少年を背に乗せたい。よいか?」

「があぁ」

「うむ。いい子だな」


 そして俺の方を見る。


「少年。竜の背に乗るがよい」

「……いいのか?」

「ああ。我が愛竜の許可も得た。竜の背に乗る機会など、そうはないぞ」

「じゃあ、お言葉に甘えて」


 俺は竜の背に乗った。

 竜の鱗はとても硬い。まるで岩の上に乗ったかのような感覚だ。

 竜の羽の間には、鞍が取り付けられている。


「鞍には私が乗るからな。その後ろ辺りに座っているがよい」

「わかった」


 騎士が背に登ってきて、鞍に座ったので俺はその後ろに座る。


「私の腰辺りに掴まっていろ」


 俺が掴まったことを確認すると、騎士は

「飛んでくれ。目的地はあちら、獣の山脈だ」

「がぁ!」


 竜は一声鳴くと、ゆったりと羽ばたく。すると急速に上昇する。

 ゆったりとした羽ばたきからの、予想外な急激な加速に驚いてしまった。


「があああ!」


 上空にのぼった竜は一声鳴くと、一気に加速し始めた。

 加速も馬の比ではない。昔みた鷹の急降下を彷彿とさせる。

 竜は魔法で空を飛ぶと聞いたことがある。

 この竜はとても強大な魔力を持つ強力な竜なのだろう。


「竜の背はどうだ、少年」

「速いな!」

「ああ、そうだろう!」


 俺は騎士に気になっていたことを尋ねる。


「どうして、ここまでよくしてくれるんだ?」

「ん? 気づいていない振りではなかったのか? エクス・ヘイルウッド閣下?」


 騎士は前を向いたまま、つまり俺に背を向けたままそう言った。

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[一言] おっちゃん、涙腺緩んぢゃったわー えぞぎんサンの怒涛の安心展開開始っ!
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