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とある学級の光景。 Other’s view

〜友視点〜



私には友人がいる。


無愛想でとっつきにくいらしい私には友人というものが出来にくい。


しかし、目の前のこの友人はそんなことは気にも留めないのだろう。


「ねぇ、星君。」


「何ですかです〜?」


妙に間延びした語尾になっているのが私の友人だ。


彼を見るたびにマイペースという言葉は彼のためにあるのだと思わされる。


「また教科書忘れちゃったからなっちゃんも星君と一緒に見せて。」


現在、友人に話しかけているのは通称なっちゃんこと、山田 花子だ。


本人はこの名前を心の底から嫌っているらしい。


友人は彼女の本名も知らずに通称で呼び続けている。


「いいですよです〜。」


「ありがとうっ。」


満面の笑みを浮かべる彼女はこの学校では有名人だ。


その可愛らしいに分類されるらしい容姿もそうだが、彼女の名を有名にさせたのは男付き合いが原因だ。


端的に言えば、徹底的に貢がせる。そして、使えない男は捨てる。


与えられた容姿を存分に活かし、男を惑わせる。


そんなわけで私の中での呼称は小悪魔となっている。


「あ、星君、ここ間違ってるよ。」


「え?どこですかです〜?」


「ここ。これはこうで、それでこうだからこうなるの。」


身を乗り出して、友人に体を密着させる小悪魔。


こうして友人を誘惑しているのはもはや見慣れた光景だ。


というか、こう何度も同じことが続いているのだからわざと小悪魔が教科書を忘れていることに常人なら気付けそうなものだが。


「ありがとうです〜。」


「ううん、気にしないで。」


まったく気付かないあたり流石というべきか。


「ところで星君、今日も駄目?」


「ごめんなさいです〜。今日も忙しいです〜。」


「そうなんだ・・・・・・。」


友人はいつも家族にこき使われ、家事のせいで遊ぶ時間も取れない。


友人の家族は友人から聞く限りでは酷いものだが、実際本人たちに会えば、友人のことばかり気にして色々と聞かれたり、話したり私が事情を聞けば何とも不憫な体質をしているものだ。


愛されて恵まれているのか、恵まれていないのか微妙なところだ。



昼になると友人と小悪魔と共に昼食を食べる。


いつものことながら小悪魔が友人に見えないように『あっちに行きやがれ』と友人には絶対に見せることのない目つきでちらちら睨んでくる。


もちろん、私は無視している。


友人から与えられたおかずをおいしそうに食べていることは嘘偽りはないだろう。


友人の料理の腕が素晴らしいことは私も十分に知っている。


「私も一緒にいいですか?」


「あ、委員長さんです〜。こんにちはです〜。どうぞです〜。」


「こんにちは、天川君。」


彼女もまた昼食をよく一緒にする仲だ。


最初は小悪魔に友人が誑かされないか心配でお節介を焼いて友人に忠告してきたのがきっかけだった。


まぁ、その忠告を友人はそんなことはないと聞き流したが。


友人は人を疑うことを知ったほうがいいと思う。


実際、今、委員長が来て小悪魔が舌打ちしたと友人に事実を言っても小悪魔が否定すればそれを信じるだろう。


忠告を受けてからも友人が小悪魔との付き合いを変えないことから委員長も監視と言って一緒にいることが多い。


今では目的が変わっているようだが。


「天川君、今日もいいですか?」


「はいです〜。僕ももらってもいいですかです〜?」


「もちろんいいですよ。」


委員長の絶品弁当とおかずを交換しあう友人は満足そうに食べていて、委員長も友人が作ったおかずを嬉しそうに食べている。


友人は彼女の弁当は本人の言うように自作だと信じきっているが、実はそれは彼女が作ったものではない。


彼女はさる有名な企業のお嬢様であり、その弁当は彼女の家で働いているシェフが作ったものだ。


彼女がお嬢様であることは有名なことなのだが、何故か友人はそれに気付かない。


小悪魔のことといい、友人は何か致命的なものが欠けているのではないだろうか。


委員長は他にも友人に特技と称して色々と見せているが、その大半が彼女の家に仕えるものの物である。


最初に料理を自分のものだと言ったのを皮切りに嘘に嘘を重ねていき友人の中での委員長の像は現実とかけ離れている。


「そういえば、弟君は元気になったですかです〜?」


「え、あ、はい。おかげさまで元気になりました。」


「それはよかったです〜。」


彼女は一人娘であり兄弟はいないが、何時の間にか大家族で彼女が病弱な母の代わりに面倒を見ていることになっている。


両親ももちろん健在で父親はたまに経済関係の番組でテレビにも出ているし、母親も元気そのものだ。


何故私が彼女のことをこれだけ知っているかというと、彼女も友人に嘘をついているのが心苦しいらしく友人と親しい私に相談をしてくるというだけだ。


「愛君も風邪は治ったですかです〜?」


「いや、あいつはまだ寝込んでるよ。どうもしつこいのにかかったようだ。」


私の家は店を経営していて友人はそこをよく利用するので愛とも顔を合わせたことがある。


「そうですかです〜。今度、お見舞いに行ったほうがいいでしょうかです〜?」


「・・・・・・君の都合がついたらな。家族がうるさいんだろ?」


あの人達は行かせてもいいと思っているのだろうけど表面的には否定的な態度をとってしまうのだろうな。


それと、彼女達の前で愛の話を振るな。


二人に睨まれて居心地が悪い。


それと愛は弟ではなく妹だ。


気付け、友人。


私はともかく妹は普通に女の子をやっているのだぞ?


この分では男装をしている私に気付くことは一生ないのだろうな。


ばれなくてホッとするような、寂しいような複雑な気分だ。


そんなことを常々感じる私の日常。





〜小悪魔視点〜



あ〜、疲れる。


ったく、男の視線が邪魔でしょうがない。


演技し続けんのも楽じゃないわ。


適当に笑いかけてやればだらしない顔になる情けない男共。


ま、そういう馬鹿が金づるになるから使えないわけじゃないけど。


ちょっと演技してやればすぐに貢いでくれる。


こういう容姿を与えてくれたことだけは蒸発した両親に感謝してもいい。


それ以外はふざけた名前も含め、借金や弟と妹のことなど恨みつらみしかないけど。


「ねぇ、星君。」


「何ですかです〜?」


最近の私の癒しになってるのがこの天然男。


最初はこいつも金づるにするつもりだったんだけどね。


「また教科書忘れちゃったからなっちゃんも星君と一緒に見せて。」


「いいですよです〜。」


「ありがとうっ。」


誘惑しても反応見せないのよね〜、こいつ。


私が必殺の笑顔を使っても可愛い笑顔で済ますし。


「あ、星君、ここ間違ってるよ。」


「え?どこですかです〜?」


「ここ。これはこうで、それでこうだからこうなるの。」


こうやってボディタッチをしてみても気にしない。


「ありがとうです〜。」


「ううん、気にしないで。」


だからこそ、癒されるんだけど。


男だといやらしい、女だったら嫌悪の視線で見られるからこういう何の悪意も感じない相手というのは貴重なのよ。


教科書を不自然なくらい忘れてることも疑わないし、私が言えたことじゃないけど何時か絶対に誰かに騙されると思う。


「ところで星君、今日も駄目?」


「ごめんなさいです〜。今日も忙しいです〜。」


「そうなんだ・・・・・・。」


だろうね〜。


あの家族、こいつに執着してるからね。


あんまり顔を合わしたことはないけど、会った時は明らかにこいつと一緒に居た私に嫉妬してたし、前に妹に呼び出されてこいつに近づくなって脅されたりもした。


貴重な人材を手放す気はまったくないけど。


というか、誘惑しても全く反応されないのも私のプライドが傷つくのよね。


ま、こいつなら隣にいさせてやってもいいかなって思えるしね。


簡単に言えば、悔しいけど今は私がこいつに夢中になってるのよ。


競争率は高そうだけど、そのほうが捕まえがいがあるかな。




昼休みになるとおかずを分けてもらう。


っていうか、こいつの料理うますぎ。


それもこいつのいいところの一つなのよ。


他にも聞いた限りじゃ家事も十分に出来るみたいだし、マジで優良物件なのよね。


で、一緒にいる男女は邪魔だから退場してもらいたいけど睨んでもそ知らぬ顔で弁当を食べてる。


何で男のふりしてんのかは知らないけど、気付いてるのって私だけっぽいんだよね。


姉妹そろってこいつのことを気にかけてるみたいだなんだけど、姉妹揃って男と思われてるなんて何ていうか面倒な状況よね。


「私も一緒にいいですか?」


「あ、委員長さんです〜。こんにちはです〜。どうぞです〜。」


「こんにちは、天川君。」


チッ、お邪魔虫がまた来た。


この女は私のすることに何かと文句を言いに来る。


私が一番嫌いなタイプの女。


自分はいい子ちゃんぶって周りにもそれを強制させようとするのよ。


その点だけで言えば、基本的に私に無関心な男女のほうがましなのよね。


「天川君、今日もいいですか?」


「はいです〜。僕ももらってもいいですかです〜?」


「もちろんいいですよ。」


そのくせ自分はこいつに嘘ばっかり言っている。


私のことを言う前に自分ことを正直にこいつに言ってみろっつうの。


お嬢様のこいつより弟達を養ってる私のほうが絶対に料理はうまいと思う。


「そういえば、弟君は元気になったですかです〜?」


「え、あ、はい。おかげさまで元気になりました。」


「それはよかったです〜。」


あんた、弟いないじゃん。


大体、家族養うってのがどれだけ大変かぜっっったいに分かんないでしょ。


家族が風邪なんかひいた日には学校になんか来てられないのよ。


近所の奴なんか信用できそうな奴がいないから私が看病して、病気じゃないほうの相手もしなくちゃならないし、病気じゃなくても子供の世話ってのはとんでもなく疲れるのよ。


「愛君も風邪は治ったですかです〜?」


「いや、あいつはまだ寝込んでるよ。どうもしつこいのにかかったようだ。」


「そうですかです〜。今度、お見舞いに行ったほうがいいでしょうかです〜?」


「・・・・・・君の都合がついたらな。家族がうるさいんだろ?」


男女の妹も話しに聞く限りこいつに好意を持ってるのよね。


何故かこいつは男だと思い込んでるみたいだからいいけど、それでもこいつに看病させるってのは納得がいかない。


そんな羨ましいことをさせてたまるか。



そんな感じの私の日常。





〜委員長視点〜




自慢ではないけど私の家はとても裕福です。


代々続く会社を父も受け継いで順調に経営をしています。


母も優しく聡明な方で私も将来は母のような人になりたいと常々思っています。


不自由のない暮らしをしている私ですが悩みがないわけではありません。


その一つが家のことです。


家のことが有名すぎて皆が皆、私を色眼鏡をかけて見ているのです。


皆との間に常に壁を感じ、どこかで距離を置かれています。


それが私には不満でなりません。


しかし、そんな中で私をお嬢様として見ない、というかお嬢様だと気付いていない人がいます。


「ねぇ、星君。」


「何ですかです〜?」


「また教科書忘れちゃったからなっちゃんも星君と一緒に見せて。」


「いいですよです〜。」


「ありがとうっ。」


視線を少しずらせばその彼、天川君と男性関係でいい噂を聞かない山田さんが机を寄せ合っています。


のんびりとした雰囲気を持つ天川君と話したのは山田さんのことで注意をしたのが最初でした。


私の注意をやんわりと否定されたときに『あれ?』と違和感を感じました。


そのときは何のことだか分かりませんでしたけど、何度か話すうちに彼が私をお嬢様として見ていないことに気付きました。


そのことが嬉しくて自然と彼と話す回数が増えていきました。


「あ、星君、ここ間違ってるよ。」


「え?どこですかです〜?」


「ここ。これはこうで、それでこうだからこうなるの。」


「ありがとうです〜。」


「ううん、気にしないで。」


山田さんが必要以上に天川君に体を寄せたりしましたが、彼は相変わらず何の変化もないようです。


いつものことですが毎回このような光景を見るたびに天川君が彼女にとられてしまうのではハラハラしてしまいます。


最近のもう一つの悩みが彼のことです。


私をちゃんと見てくれる彼に私は少なからず好意を寄せています。


そんな彼が女性に、特に山田さんのような方に迫られているのを見ると不安でしょうがありません。


「ところで星君、今日も駄目?」


「ごめんなさいです〜。今日も忙しいです〜。」


「そうなんだ・・・・・・。」


毎回、彼女の誘いを断っているのは安心できるのですが、それが彼の家庭事情によるものだと考えると素直に喜べません。


彼の話を聞く限り、彼の家族は彼にとても辛く当たっていて不当な扱いを受けているそうです。


私はその話を聞くたびに憤りを感じますが、彼になだめられています。


でも、いつかは彼のご家族と話し合いをしたいと思っています。



昼休みになると最近は天川君と彼の友達の早乙女君と山田さんと一緒に昼食をとります。


「私も一緒にいいですか?」


「あ、委員長さんです〜。こんにちはです〜。どうぞです〜。」


「こんにちは、天川君。」


天川君は笑顔で歓迎してくれて、早乙女君は私をちらっと見るだけで、山田さんはあからさまに嫌そうな顔をしていました。


天川君の視界に入りそうになると彼女はすぐにいつもの表情に戻しましたけど。


「天川君、今日もいいですか?」


「はいです〜。僕ももらってもいいですかです〜?」


「もちろんいいですよ。」


席に着くと早速、天川君とお弁当のおかずを交換します。


彼の作った料理は家のシェフが作ったものと遜色ない味です。


彼の手料理を分けてもらえるのはとても嬉しく、最近の楽しみの一つです。


しかし、同時にこのときが最近の一番の悩みです。


私からもらったおかずをおいしそうに天川君は食べています。


私が作ったものだと信じて。


初めて一緒に食べたときに誰が作ったのかを聞かれて、素直にシェフと答えると私がお嬢様だということを彼に知られて態度が変わってしまうかもしれないと思った私は咄嗟に自分だと言ってしまったのです。


母と答えればよかったのに私だと嘘をついてしまったのが始まりで、それからその嘘を隠すためにまた嘘をつき、その嘘を隠すためにまた、といった具合にどんどん嘘をついてしまったのです。


その嘘を信じて純粋に私を凄いと思ってくれている彼を見ると毎回胸が苦しくなります。


「そういえば、弟君は元気になったですかです〜?」


「え、あ、はい。おかげさまで元気になりました。」


「それはよかったです〜。」


弟なんて私にはいません。


しかし、何時の間にか私は大家族の中心ということになっていました。


この前も弟が風邪をひいたと嘘をついてしまいました。


そのことを純粋に気にしてくれていた彼には申し訳なさで一杯です。


「愛君も風邪は治ったですかです〜?」


「いや、あいつはまだ寝込んでるよ。どうもしつこいのにかかったようだ。」


早乙女君には天川君と親しい友人ということで嘘をどうにかする相談に乗ってもらっているのですが中々うまくいきません。


「そうですかです〜。今度、お見舞いに行ったほうがいいでしょうかです〜?」


「・・・・・・君の都合がついたらな。家族がうるさいんだろ?」


早乙女君には相談に乗ってもらってお世話になっているのですが彼の妹さんは天川君に好意を抱いているようですので、天川君をお見舞いに行かせるというのは賛成できません。


どうにかして一刻も早く天川君の誤解を解いて仲を進展させないと誰かに取られてしまいそうで焦ります。



そんな私の日常です。

片手間で書いたので質の低さはお見逃し下さい。

 男女比率が1:6(7?)なのは作者の趣味です。


ちなみに友人、早乙女 ゆう。小悪魔、山田 花子。委員長、富豪 夢。

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