ゲームの始まり
都内でもハズレにあるその山は、十二月を過ぎ厳しい寒さが広がっていた。
しかし、今日に限るなら冬の寒さ以外にも得たいの知れない恐怖、緊張が広がっていた。
山頂には木々が伐られ、ポッカリと穴が空いてた様な更地があり、半径二m程の謎の円が描かれていた。それは、所謂『魔方陣』の様であった。
魔方陣の中心には白と黒のチェック柄のシャツと黒い短パンを身に付けた少年がいた。少年の体躯は中学生くらいなのだが見た目は褐色の肌に、白い髪、金色の瞳で日本人もとい人間離れをしていると云えた。
少年は満面の笑みを浮かべ、虚空に向かい大きな声で喋っていた。
「聴け!我が同胞、この星に封じられし神々よ。 遂に整ったのだ、この地に汝らを降ろす為の儀式が!」
声が山中に響くと同時に、風も吹いていないにも関わらず木々が揺れ、謎のざわめきが広がる。
まるで、何かがいて喜んでいる様だった。しかし、その歓喜に反するように少年は芝居がかりながらまた喋りだした。
「あぁぁ。 しかし、なんと言う悲しいことか、、、この儀式で封印を逃れ、自由に成ることが出来るのはたった一柱のみなんだ、、、」
言い終わると少年は顔を下げた。すると、先程の倍以上に木々は揺れ始めた。あまりの揺れにいくつかの枝が折れ地面に落ちたのを見て少年は宥めるように言う。
「仕方がないだろう? 『星辰』が揃うまでに儀式の材料に生け贄、何よりも肝心な土地の用意。余りにも、余りにも時間が足りなかったんだ、、」
しかし、少年の弁明は虚しく響くようだった。揺れは酷くなり、もはや山そのものが揺れていく。
少年は顔を上げると、その顔には悲しみや申し訳なさではなく、喜びが浮かんでいた。静かに嗤いながら、静かに、説き伏せるように、
「だから、、、ゲームを用意したんだ、平等に儀式で自由に成る一柱を決める為の。」
ピタリと。少年の声を聞き、何かが山を揺らす事を止めた。
それを確認してから少年は、嗤いを押さえる様にしてゲームの方法を高らかに説明し始めた。
二時間ほどして、 山頂から四つの光が飛び出すのが都内で目撃された。真夜中だった為に目撃者が少ないうえに、光が余りにも速く写真などに残ることは無かった。
しかし、その光が始まりの合図だった。誰にも理解できないままゲームは始まったのだ。