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一歩  作者: マーベリック
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おはよう。

家に着きドアを開けると母が気付き

 「真広おかえり!ケーキ買ってきたよ!」

 無視。その程度で釣れると思っている辺り思慮が浅い。もう半年以上口をきいていないのにケーキで会話が発生するわけないだろ。心の中に嘲笑を浮かべながら二階の自室に向かう。

 布団に寝転がりスマホの電源をつけ「ツブヤイター」を見る。そこには何気ない会話が転がっている。

 「おはよう。」

 呟く。

 瞬時に返事が来た。

 「おそよう。」

 ほんの少しほっとする。ここでは僕は存在していいのだろう、多分。

 夜になるまでにやれるだけ遊んでおこう。そう思いゲーム機の電源をつける。どうせ今日もまた何かとやっかみをつけられて何時間にも及ぶお経のような父の説教を聞く羽目になるのだろうから。

 こうなるとどうしてあと一歩踏み出さなかったのだろうと後悔が生まれる。その一歩でこの面倒を逃れられたのに。ここまでが一連の流れ。後悔し、決断し、失敗する。

 原因は分からない。

 この世に未練なんてない。

 恋愛感情なんてもう捨ててるし幸せなことなんてどこにもない。

 社会貢献なんてクソ食らえだ。いや、むしろみんなの嫌われものは社会的にも害悪な立ち位置にいるからある意味社会貢献的にも終わらせる方がいいのかもしれない。

 悲しむ人なんていない。友人なんていないし、強いて言うならサンドバッグがいなくなって両親が悲しむくらいだろうか。

 全ての発端は二年程前。小4の夏のこと。友人と遊んでいたカードゲームで、友人が紛失したカードと僕がパックを剥いて当てたカードが偶然一致して、盗んだ と勘違いされたことに始まる。

 しかも厄介なことにその友人の連れは俗にウェイ系と呼称される面倒な奴らだった。

 瞬く間に広まった嫌なムードは瞬時にいじめと化し学年に広まった。この時点で人生詰みゲーだったのだ。

 学校は休まないようにした。調子に乗らせてはいけない。だがそれは僕の心を蝕む一方だった。

 一年耐えた。だが、限界が来た。僕は母を頼った。休みたい と。教師は何度か相談したが何もしなかったから。母は事情を聞き、飲み込み言った。「もうちょっと頑張ってみたら?何か変わるかもよ。」

 絶望しかなかった。母っ子だった僕は母ならなんとかしてくれると思っていた。それがこのざまである。

 父は昔から暴力が激しかった。揉めるとすぐ手が出る。だからあまり気は進まなかったが背に腹は変えられぬ。ありもしない勇気を振り絞って相談した。

 「俺も子供の頃いじめられてたけどな、おじいちゃんはいじめてきた奴殴り返すまで家に入れてくれんかったぞ。」

 知るか。いつの話だよ。

 その時親を親と思わなくなった。何かと聞かれれば「財布」というのが適切であろうか。

 こうして僕の人生は詰んだ。僕は誰からも見放されたことで承認欲求の塊と化した。

 全く醜いものだ。自分が嫌いになった。ヒトが嫌いになった。だが、人に認めて欲しかった。こうして僕はネットに溺れネットの向こうの人に頻繁に絡みに行った。

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