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白狐物語  作者: 山上龍介
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第六話 月島彰






(あっぶなかった。本気で死ぬ所だった)



彰は能力を使いたくなかったのではない。



最初の攻撃を受けた時初めて己の死を感じ身体が硬直してしまったのだ。



(もう大丈夫だ。殴られたお陰か頭もスッキリした。でも最後の地面に叩きつける奴はマトモに食らってたら落ちてたかもな・・)



何故ボコボコにされていた彰が重蔵の攻撃からどうやって逃れられたからというとそれは彰の尾の一つの能力のお陰である。




その能力は《修羅艨艟》。



四本ある彰の尾の内の一つの能力でありこの力は、身体の中の妖力をガソリンとして、一時的に能力を上げることの出来る能力である。




聞いた感じだと中々強そうな能力に聞こえるかも知れないがこの能力には凄まじい欠点がある。



それは、文字通り妖力をガソリンとして消費してしまう為、能力を解放している限りガンガン妖力を消費してしまうのである。




しかも燃費の方も最悪で、数分維持するだけで先程の火の玉10個分相当の妖力を消費してしまうのである。


(・・・よし。取り敢えず3倍程上げるか)


全身に妖力が巡り、血、骨、筋肉を強化していくのがわかる。


白銀の刀を構えなおし、小細工などする事なく真っ直ぐに突っこむ。



一瞬にして重蔵の懐に入った彰は、下から上へ斬撃を放つと、重蔵は斬撃をずらすように自らの扇子を彰の刀身に当て斬撃を受け流す。




扇子で斬撃を受け流すと今度は重蔵が彰に扇子を使い斬撃を放ってくるのを必死に受け止める。


「相変わらずメチャクチャな力じゃな・・」



「じぃちゃんだけには言われたくねぇよ!!」



「たわけ!そんなメチャクチャなスピードで妖力を消費してたら速攻で妖力が無くなるわ!」



「しょうがないだろ!俺は美月や、父さんや、じぃちゃんと違ってこんな糞能力ばっかしか持ってないんだから!!」



会話を続けながらも互いに手を止める事はなく、道場には刀と扇子の斬撃の音が響く。




一見互角に見えていたりするのだが、実は彰は重蔵に少しずつ押されていた。




先程話した能力の説明はあくまで身体能力を2倍強化した状態であり、3倍強化だと数分で最初の重蔵の攻撃を20発くらい放っているのと同じなのである。


急速に減る妖力により、彰の動きは先程よりも明らかに鈍くなっていた。





この時点で勝負はもう決しているように思えた。


重蔵が、扇子で彰の刀身を受け流すと、身体を駒のように回転させ扇子を大きく扇ぐ。


「げげっ!!??」


扇子を扇ぐと同時唸るような突風が生まれ、彰はそのまま壁まで飛ばされた。




受け身をとって立ち上がると同時に三本の雷の槍が飛んで来る。




それを刀を使い叩き落とす。





「足元にも注意しなきゃダメじゃぞボン」




そう声が聞こえ思わず足元を見ると土でできた手の様なものが彰の足に巻きついていた。


咄嗟に振り解こうと足に力を加えるが、土でできた手に信じられないほどの妖力が込められているようでビクともしない。


その彰一瞬の硬直の間に彰の目の前まで距離を詰めた重蔵が必殺の一撃を彰の首に加えようとする。



今からこの土の手から抜け出して攻撃を回避するのは無理だと判断した彰は、右手に持つ刀で首を守ろうと刀を構えようとした所で、



ガクンと、身体から力が一気に抜けた。




それはまるでパンパンに空気を詰めた風船に鋭く尖った針を刺す様な感じで突如現れた。



(まずっ、妖力が・・・)



とんでもないスピードで妖力を消費し続けていた為遂に妖力が底を付き限界が来てしまったのだ。




身体が重い、先程まで振り回していた、刀が筋トレする為のダンベルの如く重く感じる。




彰の妖力が尽き能力が発動していない無防備な状態に重蔵の岩をも切り裂くであろう必殺の一撃が首に迫る。



彰の祖父でもあり、師でもある重蔵が、自らの孫の状態に気づかない訳がない。



それでもなお斬撃を止めようとしないと言うと言うことは・・・



(妖壺十門解放、修羅艨艟五倍!!!!)



重蔵の扇子が、彰の首に触れるか触れないかギリギリの所で、彰は自身の二つ目の能力《妖壺十門》を解放する。




この能力は彰が一本目尾の能力《修羅艨艟》を習得し、しかしそのコストパフォーマンスの悪さに嘆き悲しんでいた時に、二本目の能力として目覚めた能力だ。



生物の身体には必ず一つ宿ってると言われている妖力、魔力、霊力と言う三者には、様々な違いはあれど共通点も存在する。



それは許容量である。




生物は生まれながらに自分の力の許容量が決められている。





その許容量とは生まれながらに持つものであり、成長に従って容量が大きくなる事も無ければ小さくなる事もない。





生まれてから死ぬまで常に一定の量の力しか身体には保存できないのだ。



つまり例えると、生物は生まれながらに一つのの容器を貰う。



その容器は生物によって違っており、ペットボトルのキャップ程の者もいれば、プール程の容器を貰う者も存在する。



これらの容器に生物によって異なる《力》、妖力、魔力、霊力が満たされる。



そしてこれらの容器は、年を重ねる事によってペットボトルのキャップ程の容器の者がプール程の容器に進化する事は無く、逆にプール程の大きさの容器を持つ者がペットボトルのキャップ程の容器になる事も存在しない。



なので自然に、自らが持つ容器の大きさによって発動できる《力》も変わり、使った《力》は元持つ容器の器までしか回復ない。



しかし《力》は容器が満杯になったからといって回復しなくなるのでは無い。




回復しているのだが回復していないのだ。



降りしきる雨の中小さなペットボトルのキャップを持って立っているとどうなるだろうか?




否、ペットボトルのキャップ程度ならすぐに水で満たされてしまうだろう。



しかしそこで雨が止むと言うわけでは無い。




雨の水は満杯のペットボトルのキャップの中に入りそして溢れる。



プール程の大きさの容器を持つ者も、時間差はあれど必ず満杯になり、そして容器から溢れ、あふれる。



では、回復し続ければ?




こぼれ溢れる水を、ただひたすら海の様に貯蓄できれば?



これまでもそしてこれからも、生き続ける限り振り続ける《力》を永遠に貯蓄する事が出来れば・・・・??




(ふぅ、ギリギリ間に合ったけど本当に紙一重だった・・・。何時ものじいちゃんとの鍛錬の時ならこの能力を使わないで終わりにしてたんだけどな・・・)



彰は先程の重蔵の斬撃が届くギリギリの瞬間に、第二の能力《妖壺十門》を解放していた。



そして改めて《修羅艨艟》により体を強化し、強引に土の手を引きちぎり、道場の端へと跳んでいた。


「相変わらず馬鹿げた能力じゃのう・・。これじゃ何も見えんじゃないか」


そう言うと突如、強引に引きちぎった土の手による粉塵が舞っていた道場内に突如巨大な竜巻が現れ、粉塵を吸い込みながら彰に近づいてきた。



竜巻は彰の身長の二倍程の高さがあり、土の粉塵や道場の木の床の板を巻き込みながら近づいて来た為全体的に土色をしていた。




そして徐々に迫って来た土色の竜巻に向けて彰は刀を下から上に向け振る。


すると、彰の刀から真空の斬撃が飛び出し竜巻は、真っ二つに裂け中の木材と土を飛び散らせ消滅した。



竜巻が含んでいた木材が地面についた時には彰は、すでに重蔵に向けて走り出しており後数歩の所まで迫っていた。


斬撃を放つのでは無く、剣道の突きの様に刀を構えた彰は速度を上げると、まるで重蔵の喉を引き裂く様に突きを放つ。



(よし、じぃちゃんは俺の動きに付いて来れてない!!)



しかし、今まで目の焦点が彰と合ってなく先程の竜巻の部分を見ていた筈の目がギョロリと動き、彰と目と目があった。



「っっ!!!!????」


重蔵の顔は笑っていた。


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