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白狐物語  作者: 山上龍介
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第十四話 二度目の死闘



「クソ!間に合うか?」



駅から飛び降りた彰は先程視認した場所と、殺気が漂っている方向に向け走り出した。



「距離は恐らく500メートルくらいか・・。こういう時に能力を使え無いってのは本当に困りもんだなっ!!」


そう言いながら彰は、道路と森林を区切る垣根を飛び越える。


彰は何も他人にバレたく無い為に能力を使わ無いのでは無い、むしろ人命がかかっているのであればそんな些細な事は後回しにするだろう。


では何故能力を使わないのかと言うと、妖狐化し、天照や草薙剣を召喚している間には、数秒と言えどラグが生じてしまうからである。



なのでこの様な短距離かつ数秒の猶予も争う場合には妖怪の身体能力で駆け抜けた方が良い場合もあるのである。



(妖狐化出来れば、屋根を伝って行けるからもっと全然早く行けるんだがな・・・)


森林の中を駆け抜けると徐々に殺気の濃度が濃くなり、遂に黒い服達の人間達が見えてきた。



黒い服の人間達は恐らく全員男性なのだろう。黒いスーツを着込みサングラスを掛けているその姿はどこかSPの様だった。




そして、手前三人が銃を構え、残りの二人が辺りを警戒している。そして囲まれているのはよく見えないが女性の様な気がした。




「おい!!誰だ貴様は!!」



距離は残り50メートル程、そこで遂に警戒をしていた一人の男が彰に気づき声をあげる。




彰はその言葉の返答をする代わりに更に走るスピードのギアを上げそのまま声を発した男の懐に忍び込むと、二本の指を相手の喉に突き刺す。



「ぐふぅ!ガハッ!」


そして、腰を屈めて手を地面に付いた彰は足を駒の様に回転させ、急の攻撃に怯みながら喉を押さえている男の足を払い倒れこんでくる男の首筋に手刀を叩き込む。


あまりの早業に男は反応する事も出来ず倒れ込んだ。



他の男達も暫く呆気に取られていたが、やがて残りの四人とも銃口を彰に向ける。




「・・おいおい、クソガキが、てめぇ何してくれちゃってんの?まさか俺らが誰か知っててやってる訳?」



「ああ、知ってるともこんな場所で女の子一人を取り囲み銃口まで向けているゴキブリだろ?」



「てめぇ!・・殺す」


この中でリーダー格なのだろうか。



彰はゴギブリの様な黒い格好をした男をゴギブリ1つまりG1と心の中で名付け、残りもG2、G3、G4と名付けた。


そして、発泡される弾をジグザグに避けながら徐々にGグループに近づいていく彰。



もしこれがただの拳銃では無く、マシンガンなどだったら避ける暇も無く蜂の巣にされていたかもしれない。



しかし弾数も少ない小型のハンドガンなら弾は見えなくても避ける事は左程難しく無い。



そして、もっとも早く弾切れを起こしていたG3に彰は近づくと走っていた勢いのまま相手に頭突きをする。



「く!?・・グフォ!?」



そして頭突きを受け後ろに下がり怯んでいるG3に対し彰は拳を握り締めるとG3の腹に的確に拳をぶち込む。



確かな手応えが拳を通りして、彰に伝わると同時にG3は地面に崩れ落ちた。



「てめぇっ!!うおっっ!!」


又しても一瞬にして仲間を見たG2が彰が立っていた場所に銃口を向けるがそこには既に誰もいなくなっていた。



その代わりに彰は目の前の男の拳銃の銃頭を握り締めていた。



「バカが!そのまま蜂の巣にしてやんよ!」


そう言いG2は拳銃の引き金を引こうとするが動くはずの引き金が動かない・・。



(クソ!なんで撃てねぇ!どうなってんだ!)


先程まで醜悪な笑みを浮かべていたG2の顔が明らかに変わる。


「銃器を使う前にもっと銃の事を調べろよ」


そう彰は告げると銃を構えるG2の、手を捻り銃を奪うとグリップの部分でG2のコメカミを強打する。



「・・さて?後はお前だけだぜ?G1」



血の滲んだ拳銃を彰は地面に捨てるといつの間にかタバコを吸っているG1を睨みつける。


「銃頭を抑えてスライドさせず弾が出ない様にしやがったのか・・実戦でそんな事やってる奴初めて見たぞ、何処でそんな荒技学んだ?」



「悪いが質問に答えてやってる時間は無いんだ。拳銃持って殺気をガンガン飛ばしてる野郎なんかが見えたせいでこっちも時間が押してんだ」



彰がそう答えると、G1は吸っていたタバコを地面に捨てると眉を寄せた。



「見えただと?」




「ああ、丸見えだったぞお前ら五人」



さらっと答えた彰だったが男はその言葉に驚愕をあらわにしていた。



(そんな馬鹿な事があるか?!ここが何処だと思ってやがる!森の中だぞ!!)




彰が知るよしも無いが男達はその道のプロだった。



なので何度もこの様な事は何度もしてきたし何処で何を気を付けなければいけないなど常識の様に把握していた。




しかし、その中で人の目を気にするなど、この道の者どころか素人でもわかる様な事を自分らがミスるとは思わえなかった。



「一つだけ聞かせろガキ・・・お前この辺でなにしてたんだ?」




「・・え?この辺?俺この辺なんか来てねぇぞ?」



「・・は?」


なので恐らくこの近くに偶然いたんだろうと予想しての質問だったのだがその予報は呆気なく崩れ落ちる。




「いや、俺あそこから来たんだけど・・」



そう言って彰が指を指したところは先程彰が飛び降りて来た凱旋門の様な形をしたビルだった。



(あんな所からだと!!あそこからここまで何メートルあると思ってんだ!高層ビルから歩いてる奴の携帯を見る様なもんだぞ!!??)



G1はその事がにわかに信じる事が出来なかったが、それを可能にする技術は知っていた。



「・・そうか、やっぱりてめぇも魔術師だったのか。だったら話は早ぇ、お前ら二人を殺せばいいだけだ」



そう言うとG1は自身の上着を脱ぐ。




「なんだ?それは?」




黒い上着を脱いだ男が着ていたのは鉄色の鎧の様な物だった。



それは、G1の体に密着する様に付着していたが胴以外の部分は所々にしか鎧の鉄板は付いておらず殆どは剥き出しになっていた。



そして所々見える鉄板にはカラフルなコードが胴にある鉄板と繋がっている。



「・・・対魔術師鎮圧用駆動鎧アンチマジック



「・・何それ?」



「その名の通り暴徒と課した魔術師を鎮圧する為に開発した兵器よ。国が厳重管理していた筈なのに何でこんな所にあるのかしら?」



いきなり上着を脱ぎ始めて何故か勝ち誇った様な顔をしているG1に、困惑の色を示していた彰に背後で戦闘を眺めていた少女が解説してくれた。



「あっ、やっぱり君女性だったんだね」



「・・はぁ、そんな事今はどうでもいいでしょう?」



マスクをして黒い帽子を被り、更にその上からジャケットのフードを被っている為男性か女性か全く分からなかった少女がため息を吐いて女性らしい声でそう言った。



「・・ごめん、ちょっと気になってて」



「謝る事でも無いわ。ちょっと事情があって顔を隠してたの」



「そ、そうなんだ」



彰は視線をその子の下に向けるとサッカーの試合などでベンチの選手が着ている様な黒のダウンジャケットが目に入った。



(隠してるの顔だけじゃ無いと思うんだけどなぁ・・)



「余所見してるとはいい度胸じゃねぇかぁぁ!クソガキ!!!」



彰がそんな悠長な事を考えていると痺れを切らしたのかG1がこちら目掛けて突っ込んできた。



彰は少女を庇う様に立つとG1に向け構えをとった。




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