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白狐物語  作者: 山上龍介
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第一話 月島家



・・・・西暦20××年2月9日




暗い暗い闇に包まれ街灯の灯りが微かに輝く夜の住宅街を、中肉中背の黒い髪をした少年が歩いていた。



少年がの足が止まった目の前には平成の日本では滅多に見ない様な木でできた、ニメートル近い門だった。




少年は門の端の方にポツンと付けられている違和感丸出しの白いインターホンを押すと門が少年の立っている反対の方向に向かい開いていった。




開いた門を少年は驚くそぶりも見せず、疲れた様な顔をしながら馬鹿みたいに長い敷地の道を歩き、小ぶりな引き戸の扉を開けた。



「ただいま〜〜」


何時もの様に声をあげると奥から橙色の鮮やかな服を着た女性が笑みを浮かべながら出て来た。



女性は20代と言っても違和感のない、雰囲気を身に纏っていて少年を見ると・・


「あらっ、お帰りなさい彰」



「うん、ただいま、母さん」



この少年の名は月島彰。



今年の春から高校生になるこの少年は普通な顔をし、男子として平均的な身長をしていた。



一見何処にでもいる様な感じがする少年には生まながらにして抱えている、重大な秘密がある。




「あらっ?・・そんなところに立ってないで早く中に入りなさい、ソーちゃんが話があるって、奥の部屋で待ってるわよ?」



目の前にいるのが彰の母親月島神楽だ。



40代前半な筈なのにどっからどう見ても20代の若者にしか見えない年齢詐欺筆頭の御方だ。




「・・あらっ、彰たら何を考えてるのかしら?

変なこと考えてるんじゃ無いんでしょね?・・」




「っっ!何も考えないよ!母さん!!」



先程の笑顔と一見変わってない様に見えるのだが、目がもう笑ってない・・。




こみ上げる悪寒と汗に、俺は反射的に頭を九十度に下げる。



本当は頭を下げる程でも無かったのだが、母さんの目が怖すぎて顔を直視できなかったのだ・・。



「まぁいいわ、さっさと行きなさいな」



この場を離れるお許しを得た俺は、残像が見えるのでは無いかと言うスピードで玄関を駆け上がり、ソーちゃん・・・もとい我が父、月島総司が待っていると言う広間に向かった。



「・・広すぎる」


父さんが待っている部屋の襖の前に立った彰は不意にそう言葉を溢した・・・。



何故ならこの家は、シャレにならない程広いのだ。




そして、それは明らかに一家族が住むような大きさの家では無い。




まず家の作りは大袈裟に言うと平安時代の時の寝殿造りの様な形になっている。



カタカナのコの字の様な建物を筆頭に周りに小さな小屋や、家がチラホラあり、極め付けにはコの字の中央の空いてる所に池がある・・・。



池だぞ?池、鯉を飼うためなどの小さな池ならある家にはあると思う。



しかし、俺の家程の大きさの池は日本中探しても多分、きっと、恐らく無いだろう。




大きさを大雑把に説明すると、中学校などにある50メートル6コースのプールが丸々4個は入る。



しかもヨユーで・・。



その馬鹿でかい池をグルッと囲む様にしてコの字の家があるのだ。




どれだけ馬鹿でかいかお分かりいただけただろうか?



なので玄関から2分程歩いてようやく目的の部屋に着いたのだ。


おっと・・話がずれてしまった。


「父さん、入るよ!」




襖からそう声をあげると奥の方から「おー入れ入れ」と言う声が聞こえたので襖を開けた。



襖を開けると沢山の畳がありそこの上座の所に胡座をかいた父が座っていた。


この部屋は大広間と言い500畳程ある部屋で俺の家の中で最も無駄に広い部屋だ。




「話って何?父さん?」



上座の近くに座ると彰は何自分を呼んでいたのかを聞いて見る。



「まーそんな焦んな、まずはおかえり彰、それで話と言うのはだな・・・」



父が立ち上がり彰の前に来ると特徴的な白い先の尖った三角の耳と6本の尻尾が目に入った。


尻尾と耳は上質な絹をも上回る様な毛並みをしており、色はシミひとつない真珠の様な輝きをしていた。




そう・・・・



我が家の誰にも言えない秘密と言うのは我が家はお化け屋敷ならぬ、妖怪屋敷なのだ。


しかも父だけではなく、



「総司様、彰様、お茶とお茶請けを持って参りました」



そう声が聞こえたかと思うと、襖があき、白い着物を着てそれに負けない様な白い肌をし、肩まである黒い髪をした、美しい少女が入ってきた。




「うむ、すまぬな美月」


父さんがそう言い美月からお茶を貰うとそれを啜った。


彼女は俗に言う雪女だ。



彼女は彰が生まれてから今に至るまでの彰のお目付役となっている。




とても少女らしく、非常に整っている顔立ちをしているが、歳は彰より遥かに・・「何を考えておられるのですか彰様?」


先程の母と同じ様な目だけが全く笑ってない顔をする美月だが、先程の様な汗が出て来る様な気配は全くない・・・。



何故なら美月が、微笑んだ瞬間辺りの空気が氷点下並みに下がり、汗を掻く真逆の状態になったからだ。




その証拠に美月が持ってきたお茶が凍り付いている(俺のお茶のみだが・・)。


「い、いえ!何も考えても想像して無いいよ!!」




「・・そうですか?なら別に良いのですが今彰様が女性の触れてはいけない部分に触れるのでは無いかと思いまして」


口に手を当て上品そうに笑っている美月だが、彰はその真逆で物凄い焦っていた。



(女性って心の中読めるのか!?!?)




と・・・・。





さて話を元に戻すが、彰の家は幽霊屋敷ならぬ妖怪屋敷なのだ。


しかも父だけではなく・・「総司様!!呼びましたか!!」



襖が物凄い勢いで開いたと思うと気付いた時には、襖が枠から外れ襖が外れ吹っ飛んできた。




そう、座っている彰の方に・・。



「・・・・・・」



「・・・・・・」



「・・・・・・」



「・・・・・・・・・あ」


ながーい沈黙。




果たしてどれぐらいの時が経ったのだろうか?



吹っ飛んできた襖に押し潰された彰は、復活すると何とも形容し難く複雑な心境をしていた。



簡単に言うとイライラしていていた。



「豪網、お前変なタイミングで入ってくんじゃねぇぇぇーーー!もうさっきから話が全く進まないじゃないか?!!しかも結構なスピードで飛んできたぞこれ!!!地味に物凄く痛いし!!!突っ立って無いでそこに座れーーー!!!この・・・アホォォォ!!」



溜まっていた何かを思いっきり吐き出した彰は、スッキリしていると、「彰様すんません」と言いながら彰の前に正座すると、後ろから・・・


「そうですよ豪網いつもいつも当主の総司様と、次期当主の彰様に不快な思いばかりさせて!!」



と、水を得た魚の様にギャーギャー説教を豪網にしているが・・・。




「お前もじゃぁぁぁーーーー、ボケェェ!!!自己紹介の途中で入って来やがってぇぇ!!何回おんなじ下りやんないといけないんじゃぁぁぁ!!!!!しかも俺は当主にならないって言ってるだろぉぉぉー!!」



火に油・・、もといガソリンをブッ込んで来た美月に彰は、修羅と言っても生温い様な顔で、迫ると、美月は顔色を変え、「彰様ごめんなさいー!!」と反省をし頭を下げ謝っているが・・・




「ノォ物凄く、さっっ、さ、さ、寒いんじゃけど・・・」



美月のテンションに比例して部屋の温度が物凄い勢いで急降下していた。それに先程から放置されていた父が真っ先に気づき、そう口にすると、美月は面白い様に又顔色を変え、部屋の温度を元に戻した。



さて、先程から、乱入者のせいで話が全く進まなかったので改めて簡単に説明しよう。



まず先程襖を破壊した、身長が高くそして、かなりガッシリとした体型をし、髪の先端から上だけを茶色く染め中間から下は黒い髪を不良の様にツンツンさせている髪型をしている少年・・、と言うか見た目青年は、豪網と言う。




豪網は天狗の妖怪で、彰の2人目のお目付役でもあり、幼い頃から彰と共に過ごして来た。



そして彰の前に座っている父、総司は妖狐の妖怪であり、日本全国の妖怪の総頭領でもある。

妖怪は自分より強いか、自分の認めた者にしか

仕え無いので、そう考えると彰の父は妖怪のトップにいると言っても過言では無い。



そして彰はその妖狐の妖怪の父と、人間の母の間に生まれた半分人間、半分妖怪の妖怪人間なのだ。



父は妖怪なので四六時中尻尾と耳が出ているが、半分人間の彰は自分の意思で尻尾と耳を出し入れ出来る(感情が高まったり、不安定になると自然に出て来てしまうし、出している方が楽なので家では殆ど出しているが・・・)。




妖怪の頭領である為父や、他の妖怪達は彰の事を次期当主にさせたがっているが、彰としては、産まれてから、ずっと普通で無い暮らしをして来た為、公務員になり普通に暮らすのが彰の夢なのだ。



そんな事を考えていると、三人が黙ったので父が冷めきったお茶を啜り、先程の話しの続きを話し始めた。


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