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頭脳派の苦悩

恋愛という名の精神異常に対する物理的考察

作者: 霧谷霧夜

だいぶ文の書き方が拙いかもしれませんが、ご了承ください。

それと、理系じゃない方には分かりにくいかもしれません。

 『恋はするものではなく、落ちるものだ』



 ――この言葉を初めに口にしたのはどこの誰だったのだろうか?

 いや、そんなことはどうでもいい。今考えておきたいのは、恋は落ちるものだと仮定したらどのような式が成り立つかということだ。

 まず、恋が単なる自由落下でならば、質量に重力加速度の9.8(m/s²)を掛ければ、恋に落ちる力の大きさを求めることが出来る。質量は適当にm(kg)とでも仮定しておけばいいだろう。


 ――だが、これは自由落下の場合の話だ。

 恋とは自由落下だろうか、人によって考え方は違うだろうが、僕は答えは否だと思っている。なぜなら、自由落下ということは、地面に引き寄せられているのであり、つまり最終的に地面に衝突して力を失っていってしまうのだから。


 ともに滑らかな斜面と水平面が繋がっている。そして、その斜面から球を転がすような感覚。これこそが、僕の考える恋だ。

 この考え方の場合ら自由落下の時とは異なる式を用いて恋の力の大きさを求めることになる。ここで用いられる式は、力学的エネルギー保存則の式だ。

 今回も、恋の質量をm(kg)、球を転がし始める高さ(水平面からの高さ)をh(m)、水平面上を進む速度をv、重力加速度の大きさを9.8(m/s²)と仮定する。

 ――これで材料は揃った。では、早速計算してみようではないか。

 初めに持っているエネルギーは位置エネルギーだけだから、9.8mh(N)。斜面を転がり終え、水平面上を慣性の法則により等速直線運動している状態で持っているエネルギーは運動エネルギーだけだから、½mv²(N)。この二つの式を等号で繋ぐと、9.8mh=½mv²となり、vを求めると、√19.6h(m/s)と出てくる。

 僕の考え方において、この速度は完全に恋に落ちた後での、恋愛対象に対する積極性である。

 この速度において、使用されている未知数はhのみである。このhとは、今までの恋愛経験によって左右されるのではないだろうか? ジェットコースターを想像してほしい。あの乗り物は、徐々に上に上っていき、上れば上っただけ位置エネルギーが強まり、後々の運動エネルギーとなる。

 それと同様に、恋愛も経験しなければしないだけ位置エネルギーが強まっていき、恋に落ちる瞬間に、今まで蓄えてきた高さh(m)に応じて対象に向かっていく積極性が上がるのではないだろうか? これが、僕が立てた仮説である。




 僕は、国公立の大学に入学し、講義でたまたま隣の席に座った女子大生に――一目惚れしていた。

 今まで色恋沙汰とは一切縁が無いながらも立ててきた仮説が、まるで走馬灯のように頭の中に流れてきた。

 そして、年齢=彼女いない歴で、コミュ力も低めで、女性に対する免疫なんて全くと言っていいほどに存在しない僕の口から、つい、言葉がこぼれてしまった……。


「す、好きです。付き合ってください」


 これは、完全に無意識だった。恐らく、今まで蓄えられてきた高さh(m)が他人よりも高かったのが原因だろう。とりあえず、一度だけではあるものの、僕の立ててきた仮説は立証された。

 だが、現在僕の頭を埋め尽くしているのは、仮説立証の喜びではなく、やらかしてしまったという後悔と羞恥心だけだ。



 さて、万有引力という力を知っているだろうか? これは、簡単に言うとすべての物体間に働く引力のことである。そして、この引力の大きさは距離の二乗に反比例する。

 今、僕と彼女の間の距離は1(m)未満である。重力のせいで感じることは出来ないが、遠くに離れているよりは少なくとも引き寄せられてはいるはずだ。

 まるで、僕を焦らすかのように、彼女の口はゆっくりと開かれ――、


「ごめんなさい」


 そう声を発した。


 今思えば、万有引力は物体間に働くだけであり、精神面には何も影響を与えない。

 つまり、僕は彼女に、急に告白してきた気持ち悪い男子だと認識されてしまったことだろう……。




 僕は自分が失敗したとは思わない。ただ、今回のような方法で失敗するということを知っただけだ。

 今回の告白は完全に無意識だった。故に、今後の人生においてこのような惨事が何度か繰り返されることがあるかもしれない。

 恋愛は、理屈では成立しない。

 計算によって人の感情を求めることは出来ない。

 そもそも、僕の見た目はあまり良くない。



 これらのことから導かれる一つの結論。


 それは――、


 ――僕には、恋愛が向いていないということだ。




 恋愛なんていう名前の精神異常は、もううんざりだ……。

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