8匹目 和食への道
短いです
結局、リュオンが起き出したのはレオナルドが帰る直前だった。
それを笑ってレオナルドは馬に乗って帰っていった。最初から最後まで彼は笑っていたような気がする。
ところで、気付いた人はいるのだろうか。
前回、夕食時にさも当然かのように酢飯が作られていたのを。
そう。今回も、料理回だ。
人魚要素が薄いどころではない。もはや人魚として何もしていない。居候らしく飯食ってるだけである。
次回は魔法回(予定)なので許して欲しい。
さて、今回のテーマは酢の話から分かるように、調味料だ。
料理のさしすせそとは、
砂糖、塩、酢、背脂、ソース……
ではなく、砂糖、塩、酢、醤油、味噌だ。
もちろん凜音はこちらで料理をするようになってすぐに探した。砂糖と塩は割高だったものの一応見つかった。酢は、米があるのだからと必死になって行商人に聞きまくったところ、それらしいものを知っていた者がいたのでどうにか手に入れた。
次の二つが問題で、この世界で、凜音はまだ大豆を見たことがないのである。
大豆。
畑の肉とかいわれるくらい栄養的にも優れちゃっている豆である。
醤油や味噌以外にも納豆や豆腐、豆乳にきな粉に加工できる。普通に煮ても美味しい。塩茹でした枝豆とか最高である。
もちろん凜音は必死で探した。しかし見つからない。
それに、見つかったとしても次の問題が立ちはだかる。
麹。
身も蓋もない言い方をしてしまえば菌。しかし使える子なのである。
これがないと味噌と醤油は始まらない。米酢が手に入ったことから麹自体は存在しているはずなのだが、米酢の入手経路も大分曖昧だし、そもそも大豆がない。
ただ醤油の方は途中から魚醤があるか、と思って漬け込み始めて数ヶ月が経つ。まだまだ完成には遠いし、リュオンから臭いと苦情が来ている。でも仕方ないので放置した。
しかし味噌だ。味噌がないと鯖の味噌煮が食べられない。朝ごはんも味噌汁が作れない。
ファンタジーらしく魔法でまるっと解決しないかとリュオンにも相談した。
無理だそうだ。
それだけではない。
みりん。こいつも麹メンバーのひとりだ。米と麹とアルコールでできてる。みりん干しが出来ないじゃないか、なんてこった。
料理酒と砂糖で代用できるとか聞いたことはあるが、料理酒ってあれ日本酒だよ?日本酒も立派な麹メンバーだよ?はい詰み。
どれもこれも麹がないと出来ない。
しかし凜音には世のチート転生者のように麹を作り出す能力など無い。作ろうとしても米をカビだらけにさせておわりである。
結論。
和食への道のりは、とても遠い。