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[4]癒やし系激痛パンチバグ

 ソニード王国軍司令官メガド・ライブル。彼はジン達を牢に押し込む仕事を部下に任せた後、王宮内のある部屋に向かった。


「やぁ、メガド。首尾はどうだい?」


 その部屋にいたのは年の頃20台前半くらいの精悍な顔つきの青年であった。彼はライフル銃を磨きながら、視線だけをメガドに向ける。


「はい、サターン様。このままいけばなんとか計画を当初の方向に修正する事が出来るかと」

 

 メガドはサターンという青年に恭しく礼をした後、そう報告する。


「そうか、それは良かった。いや全く、クレアが助かったと聞いた時にはまさかと思ったが」


「ですな。よもやこの世界に存在しないはずの治癒能力を使いこなす者がいたとは。ですがその者も今頃は私の放った魔物の餌食となっているはずです」


「ほぅ。それはどういう事だい」


 サターンはライフル銃を構えながら楽しげに聞き返す。


「奴らの入った牢の鍵は壊れております。まず奴らは間違いなく脱獄を図るとして、奴らを地下水路の方に誘導します」


「ふむ。どうやって誘導するんだい?」


「そこはぬかりなく。牢に配置されている兵は全て私の部下でございます。兵を避けて牢を脱しようとすれば地下水路に出るようになっております」


 それを聞いてサターンは笑う。


「なかなか面白いね。で、地下水路からはどうするんだ?」


「地下水路にまで行けば後は簡単です。私の魔法で操り人形とした魔物にて奴らを襲わせます。これで万事解決でございます」


「例の王女を襲わせた熊型の奴か。でもあいつは親衛隊長のバーバラに切られていなかったっけ?」


「傷は負っておりますが逃げ出したネズミを二匹狩る程度造作はございません」


「ならばよい。で、そいつらを殺した後はどうするのだ?」


 サターンの言葉に、メガドは用意していた封筒を取り出す。


「この中に王女暗殺の計画書が入っております。これを奴らの死体のそばに置き、しかる後にサターン様の手で魔物を殺せば」


「なるほど。魔物の制御に失敗した賊、そしてその魔物を討ち取った私という構図が出来上がるな」


 サターンの機嫌の良い言葉にメガドも笑みを浮かべる。


「はい。後は私にお任せいただければ民衆を操作しサターン様こそが次期国王に相応しいと情報を流します。そしてその機運が高まった頃、クレア王女を始末すれば」


「王位は手に入るべくして私のものという訳か」


 メガドは頷く。


「よし、メガドよ。手段は任せた。私の未来の為に、邪魔者を始末しクレアを抹殺するのだ」


 サターンの強い言葉にメガドは深々と礼をして、


「承知しております。このメガドにお任せを。……そして、サターン様が王位に就きし暁には、このメガド・ライブル。王の側近にてお役に立ちとう存じます」


 そう言ってサターンの顔色を伺う。


 その様子を見てサターンは笑う。


「分かっているさ。我が父は病でこの世を去るまで王の弟という身分に甘んじ続けていた。だがこのサターンは違う。この国の権力の全てを掌握し絶対の王となる。そうなればお前にもそれ相応に忙しくなれる権力をくれてやるさ」


 サターンが見つめるのはライフル銃の銃口か、はたまたその先に見える何かか。彼の視線は鋭く尖っていた。


「さて、この銃にも働いてもらうべき時がきたか」


 そう呟いた。


 次の瞬間だった。



 ドガンッ。というとにかく重苦しい破壊音が部屋に響く。


「な、なんだっ!」


 サターンはあまりの揺れに銃を床に落とす。


「わ、分かりませぬ。一体何が……っ」


 混乱する二人。そこへ、


 バキバキと音をたてて扉が破られる。


 そうして音の正体は姿を現した。


「き、貴様は……っ!」




「よう。その銃の出番は一生来ないから安心しな下衆野郎」


 天堂ジンと愉快な仲間達の登場である。





…………。

……。


 一体俺達に何があったのか。


 俺とファミは怪しいと分かりつつも鍵の壊れた牢屋から抜け出した。


 そして兵士のいない方、いない方へと進み、結果的に下水路へと出た。


 でもって俺とねつ造写真でツーショットをきめていた熊みたいな魔物と遭遇。


 これは万事休すかと思われたが、しかし俺とファミはその熊の様子がおかしい事に気付いた。


 怪我をしていたのだ。しかもかなり深い傷。


 熊は立っているだけでも苦しそうにしている。その上で俺達に襲いかかろうとしている。


 ファミは「あやつは魔法で操られているかもしれない」そう分析した。


 どのみちこのままでは俺達がやられるのは必然。


 逃げるか?今の奴からならそれも可能かもしれない。


 いや、もっといい選択肢がある。


 俺達も、そしてこいつもはハッピーになれる最高の選択肢が。


 決断するが早いか、俺は拳を握りしめ、奴へと向かっていった。


「……とまぁ、もっと説明がいりますか悪代官どもが」


 今俺は熊の背中に乗っている。ファミも一緒だ。


 そして、熊の傷は既に完治している。もちろん治癒したのは俺。


 それはつまり、そういう事だ。


「ば、馬鹿なっ!私の魔法は完璧だったはずだ!」


 メガドが目に見えてうろたえている。


「完璧じゃなかったからこそ今こういう光景が広がっているんだよおっさん」


 俺は熊から降りると、グルグルと腕を回し肩の関節を慣らす。それはいうまでもなくこれから俺を謂れなき罪に陥れようとしやがったくそったれに鉄鎚をぶち込むためだ。


「覚悟を決めな悪党どもが」


 俺は大きく拳を振りかぶる。


「ひ、ひぃっ!」


 サターンは手に持っていたライフル銃の銃口を俺に向けてくる。


「それ以上近づけば撃つぞ!いくら治癒魔法が使えるからと言って脳天を一発で撃ち抜けばひとたまりもあるまい」


「確かにその通りだ。今の俺じゃあ向かっていったところでやられるのがオチだな」


 俺は拳を開き、両手を上にあげる。降参のポーズだ。


「よ、よし。分かればよいのだ分かればな」


 サターンは額に脂汗を滲ませながらも安堵の微笑みを漏らす。


「という訳で切り札の出番だ」


 俺は両手を勢いよく合わせぱちんと音を鳴らす。


「何をっ」


 とメガドとサターンが俺の行動に疑問を抱いたかどうかというタイミング。


 彼らの背後の窓のガラスが盛大に割られた。


 そして現れた。


「クレア様の暗殺を企てるとはいい度胸です。メガド殿、サターン様」


 鬼神……ではなく親衛隊長バーバラ。剣を握りしめたその人が現れた瞬間、サターンの持つライフル銃が二つに割れた。


「ひょ、ひょぇぇっ!」


 サターンはその目にも止まらぬ攻撃に腰から崩れおちる。武器もなくなった。もう戦意喪失だろう。


「くっ、くそっ!」


 残されたメガドは腰から剣を抜こうとして、


「こっちだよおっさんがぁっ!」


 拳を握った俺。バーバラに気を取られている隙に奴の懐へと突撃する。


「安心しな。俺の攻撃はイコール回復なんだよ。つまり俺が何発殴ろうがお前は傷一つつかない。でも、その代わりな」


 俺は拳を握り、そして振りかぶる。


「痛いもんは痛いからその辺よろしくっ!」


 そしてぶち抜かれるおっさんの不細工な顔。俺は拳を振り抜く。


「ぐ、ぐぉぉ……」


 しかし流石軍人かおっさんは踏みとどまる。


 ここは格好よく一撃で決めたかったところだが、


「でもそんなの関係ねぇ!」


 という訳で追い打ちの一撃。


 からの追い打ち。そして追い打ち。やはり追い打ち。でもって追い打ち。しかし追い打ち。やめる、と見せかけて追い打ち。疲れた、でも追い打ち。これはペンですか?いいえ追い打ちです。


「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらっ!」


「ジン!その辺にしておけ!もうこやつの体力はゼロじゃ!あとその掛け声はやめるのじゃ!その掛け声だけはやめるのじゃ!」


 とファミに声をかけられて俺はそこで攻撃をやめた。目の前には無傷で倒れるおっさんの姿が。


「おぬし、容赦がないのかなんなのか。でもこれでこの者に好かれたらどうする気じゃったんじゃ」


「その心配はない。俺が傷を付けて俺が治しているんだから。効果は無いはずだ」


「ならいいがの。おぬしがこんな中年男にべったりとくっつかれている様子など想像するだけで吐き気がするわ」


 「うぇ」と本当に想像したのか軽くえづくファミ。しかし納得の反応だ。


「さて、これで一件落着かな?」


 俺は部屋を見渡し、気絶するメガドと股間を濡らしながら震えているサターン、そしてそれを取り囲む俺の他にファミ、あと熊とバーバラを見る。


「証拠もここにしかとある。これでクレア様暗殺などという神をも恐れぬ愚かなる狂罪を犯そうとした者達を断ずるのは容易かろう」


 バーバラがもはやラスボスレベルのオーラを放っている。なんか周りの空気がぐにゃりと揺れている気がする。


「本当なら今この場で極刑としたいところだが、法の下にはどの様な罪人も平等に扱われねばならぬ。連れて行け」


 バーバラの指示で兵士達がメガドとサターンを連れていく。


「これでお前達の疑いも晴れよう」


 言いながら、バーバラは熊を見る。


「その魔物についても魔法が行使された証が検出されている。クレア様がどう思われるのかは別としても、処分される事はないだろう」


「だそうだ。良かったな熊」


 俺は熊の頭を撫でる。


「ついでにだが、その魔物からはお前の治癒の力と思われる、なんといったらよいものか、魔力に似た痕跡が検出された」


「へー。そうなんだ」


 それはつまり俺の力が使用されたかどうかが分かるという事か。それは俺としては助かるな。もしかしたらそこを糸口に能力の制御を行えるかもしれないし。


 バグを制御する。そんな事が果たして出来るのかどうかは甚だ疑問だが。


「で、だ」


 バーバラが突然言いにくそうに、そして突然機嫌悪そうな顔になる。


「その検査はもちろんクレア様にも行われた訳だが」


「あ、て事は王女様からも俺の魔力らしきものが?」


 俺は当然の事と聞く。しかしバーバラの答えは、


「いや」


 否定だった。


「クレア様からは、お前のと思われる魔力の痕跡は、見つからなかった」


それは、本当に確かな否定の言葉。


「……は?」


 それがどういう事かと脳が答えに辿り着くのにはそう時間はかからなかった。


 つまり、そういう事なのか?


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