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[25]連合軍誕生

「よう、久しぶりだな。テンドウジン」


セガールの戦艦内部、そのブリッジの、更に艦長席にクラッシュはまぁ偉そうに座っていた。


「久しいかな?別に収監されていたお前にも会ってはいるし」


「こういうのは気分なんだよ」


そう言ってクラッシュはケラケラと笑う。


「というか本当にこの戦艦お前達だけで制圧したのか?」


この場所に辿り着くまでの間、セガールの兵には全く、戦えるような状態の奴には一人として出会わなかった。


「まぁな。ていうかこの規模の兵力で一国の宮殿を占領しようなんざセガールは戦争ってやつを甘く見過ぎだな」


「逆に言えばそれだけあの魔術師の力が絶大だったという事でもありますけどね」


ジオネさんが付けたし、そして一同の視線がクレアに集まる。


「え?あの?わたくしがなにか?」


皆の視線の意味が分からないのか戸惑うクレア。


「まさかセガールも王女様一人にご自慢の魔術師がやられるとは思ってなかったみたいだな」


クラッシュは笑いながら言う。するとクレアは首を振る。


「いえ、わたくし一人の力ではありません。ミケちゃん達がいてくれたからです」


するとクラッシュは意外そうな顔で、


「へぇ、あの猫どものねぇ。そういえばタマの奴はお前らと一緒じゃなかったのか?」


「タマは、ウインドに捕まった」


という俺の答えに何か察するものがあったのか、クラッシュは一つ頷いて、


「そか。その言い方だと大方お前の力不足のせいであいつだけが捕まったとかか?」


それは、俺の心をえぐる言葉。そうだ、俺がしっかりしていればタマは、少なくとも奴らの手に落ちる事はなかったんだ。


「図星ってところか。お前、政治家には向かないタイプだな、表情でほとんど分かっちまう。で、どうするんだ?」


「どうって?」


「これからどうすんだって聞いてんだよ。今やこの大陸はセガール対ソニード、エニックの泥沼の戦争状態だ。俺はそこの王女様と契約しているから王女様の言う通りに働こうかと思うが、お前はどうするんだ?」


それは、俺の考えが間違っていなければ、一つの答えを期待されている問いに聞こえた。


そして、俺がこれから成し遂げなければならない事は一つ。


これからどうするかなんて、考えるまでもない。


「俺はファミとタマを助ける。その為にセガールに乗り込む」


「そうくる訳だ。だがお前一人じゃあの国を相手にするのはちとしんどいと思うがそこんとこどうだ?」


やっぱりクラッシュはこれから俺が何を言おうとしているのかを知っているようだ。


「分かっている。だからこそ、これから助っ人の依頼をしようと思っている」


そうして俺はクレアの方を向く。


「ジン様……」


「クレア。俺はこれからファミ達を助けにいく。その為の力として、お前の契約している傭兵を貸してほしい」


そう言って頭を下げた。


「頭をお上げになってください、ジン様」


とても優しい声。言われて顔をあげると、すぐに優しく微笑むクレアの顔が視界に入った。


「ジン様の願いはわたくしの願いも同然。どうぞ、存分にお使い下さい。よろしいですわね、クラッシュさん」


「こっちはちゃんと報酬さえ貰えれば万事問題なしだ。いいぜ、セガールとの喧嘩、上等じゃないか」


と、瞳に肉食獣のような妖しい光を湛えて笑うクラッシュ。本当に、分かりやすく傭兵なんだなこいつは。


「という訳なんだが、ジオネお前はどうする?」


クラッシュは自分の背に立つジオネさんに振る。するとジオネさんはまるで待ってましたと言わんばかりに、


「私はクラッシュ様の奴隷。主人の行くところどこまでも付いていく覚悟は出来ております」


と即答した。


「決まりだな」


俺は周りを見る。そして決意する。今度こそファミ達を助けだす、と。


程よい緊張感の流れるブリッジ。


しかし、その中でただ一人だけ浮かない顔をしている者がいた。


「……スーファ?」


ファミの姉、スーファ。彼女だけは、なぜか最後まで沈んだ顔をしていた。


その後、一同は一旦解散となった。クラッシュ曰く、戦艦の通信装置を利用してセガール側の動きを掴むとの事で、それまでは各自自由行動となった。


だから、俺は真っ先にスーファの姿を探した。どうしてもあの沈んだ顔の理由が知りたかったから。


スーファは戦艦の屋根の部分、甲板にいた。一人地平線を眺めながらぼんやりと佇んでいた。


「何一人で青春ぶってんだよ」


「どういう意味かしら、それ?」


スーファはゆっくりとこちらを向く。その顔は、やっぱり沈んでいるように見えた。


「なんとかファミを救えるかもしれないっていう光明が見えたっていうのに、なんでそんなにセンチメンタルな顔してんだよって言ってんだよ」


「だからなんなのよその言葉のチョイス。まぁなんとなく言いたい事は分かるけど」


そう言ってスーファはため息をつく。


「ねぇ、あんたは私が憎らしくはないの?」


「なんでだよ?」


「だって私がファミを誘拐してなければそもそも今の状況はあり得なかったのよ。まぁ裏切られはしたけど、でも原因の一端は確かに私にもある」


「そういう事か」


俺はスーファの隣、鉄の手すりに腰を軽く乗せる。


「それは俺だって考えもしたさ。でも、もし奴らが本当にファミをピンポイントに狙っていたんだとしたら、お前がいようがいまいが何かしらの手段を講じてファミを手中に収めようとした。と俺は思うんだがお前の意見はどうだ?」


「すごい考え方ね」


「まぁ現時点ではまるで根拠に欠ける考え方だけどな」


「根拠?」


と、スーファは首を傾げる。


「奴らがファミを狙う本当の理由だよ。あいつの犯した罪が云々っていうのが建前にしか過ぎないっていうのはさすがの俺でも薄々気付かざるをえないってもんだ」


「それは、まぁ当然の事よね」


「話してくれるよな?」


そう聞くと、スーファは目を閉じて一拍間を置いてから、静かに頷いた。


「ええ。そういう約束だものね、ちゃんと話すわ。私とファミの、いえ、リーコン家にかけられた呪いの話を」


そうして彼女は語り始めた。それは、俺とファミが出会う以前の話だった。



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