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[24]昨日の敵は……。

「という訳でファミの姉ちゃんと一緒に来たんだ」


ソニードの首都に到着し、いきなりもの凄くピンチだったクレアとバーバラを助けた俺達。とりあえずバーバラを近くの兵舎のベッドに横にした後、俺とスーファがここに到着するまでの経緯を説明した。


「では、ファミちゃんは……」


「奴らと共にセガールに、到着しているだろうな今頃は」


「そうですか」


俺の言葉にクレアは分かりやすく落胆する。


「でも、俺は全く諦めたつもりはない。その為に戻ってきたんだからな」


だからこそ、俺は多少でも無理やりにテンションを上げて言う。


「はいっ、ジン様」


クレアは力強く頷く。その様子をなんとも言えない複雑そうな顔で見るスーファ。


「だが、城内にはまだセガールの兵が多く存在している。まずはこの宮殿を奪還しなければっ」


「バーバラっ!気がついたのね」


ゆっくりと起き上がるバーバラに嬉しそうにクレアが声をかける。目じりには涙すら見えるが、まぁ無理もないか。この部屋に着いてからずっとバーバラの傍につきっきりだったもんな。


「はい。国が危急であるこの時に休んでなどいられません」


「と言いつつえらくしんどそうなのは突っ込み待ちか?」


起き上がるのもやっとといった感じで、息遣いも荒い。とてもじゃないがすぐに戦える状態だとは思えない。


「バーバラ。ジン様の言う通り、今は自分の体の事を考えて」


「しかしっ」


「この事態を乗り越えた時、もしあなたが無事でなければ私は素直に喜ぶ事は出来ない。だから、お願い」


クレアはバーバラの目を見て真摯に頼み込む。それを聞いたバーバラは、


「分かりました……」


と素直に引き下がった。さすがにここまで言われてはそうせざるを得ないだろう。


「とりあえず、当面の問題としてはこの国に入ったセガールの兵士共の一掃だが、大体どのくらいの数が来ているんだ?」


「あのサイズの戦艦であれば200人程度がいいところね。ある程度戦艦内の警護に人員を回したとして、150人くらいいればいいところね」


スーファがあっさりと答える。向こう側にいた事がある分ある程度詳しいのだろうか。


「一国の首都を襲う人数にしては少なすぎやしないか?ソニードなめすぎだろ」


という俺の言葉にスーファは首を振る。


「いえ、ここに来る前にも言ったけどセガールは事を起こす前に使者として魔術師ヒポリトをこの国に送り込んでいる。戦力としては彼女一人で十分で、兵士はその支援程度の認識なのよ」


「なんだそりゃ」


なんとも腑に落ちない表情をしていたのがスーファにも伝わったのだろう。彼女は言葉を続ける。


「でも事実ヒポリトは使者としてこの国に潜入し、そして国王をはじめとして国の幹部達を一挙に石像に変えてしまった。完璧な形の人質を作り上げた。その結果が全てよ」


「た、確かに」


「しかしそのヒポリトは倒され石像化は解かれた。私がいい証拠です。反撃するならばこの時以外にはありえません」


バーバラが強く言葉を繋げる。


「それはその通りだと思うが、正直こちらの戦力が心許なくてな」


バーバラは実質戦闘不能、クレアは癒しとしてはありだが戦力としては論外だし、スーファは強いけどあの言霊の術は体力の消耗が激しいと言っていた。一度きりの決戦ならともかく何度も戦う可能性の高い今の局面では戦術としては厳しいの一言だ。


そして俺はといえば攻撃力はマイナス。皆の傷を治すだけならくらでも出来るのだが。


「はぁ」


もし俺が得た能力が攻撃系のチート能力であったならば、こんな時率先して戦えるのに、と俺はため息をつきながら思った。


「あ、そういえば」


と、クレアがまさしく思いつきましたと言わんばかりにポンと手を叩く。


「クラッシュさんがいらっしゃいますわ!」


「クラッシュ?って、あのクラッシュ?」


「はい。わたくしクラッシュさんと傭兵の契約を結んだのです」


クレアはにっこりとした笑顔でそう言ってくる。


俺とてクラッシュが生きていた事は知っていたが、まさかそんな事になっていたとは。


「確かにあいつなら戦力としては申し分ない。武器持って地に足着いた戦いをするから戦略の幅も広がるしな」


なんとなく見えてきた光明。なのだが、なぜか俺の隣でスーファがむくれている。


「どうしたんだよ?」


「別に。私はそんなに頼りにされてないのかなって思って」


頬を膨らませてそっぽを向かれてしまった。こういう顔をするのは姉妹そっくりだな。


「違うよ。確かにお前の術は強力だし貴重な戦力だと思っている。でも他でもないお前の体が消耗してしまうんじゃいくら強かろうが駄目だ。お前はここ一番という時まで力を温存していてほしいからな」


「そ、そう?ま、まぁそこまで言われちゃ仕方ないわねっ」


ちゃんとフォローになっただろうか?スーファはさっきまでのむすっとした顔から一転して口元がうにょうにょ動いているよく分からない顔になった。あれって笑っているのか?それともくしゃみが出そうなのか?よく分からん。


「お前はファミを助けだすその時まで力を温存しとかないとな」


だから念の為付け足してみた。


「……まぁ、そうよね」


そしたらなんかさっきよりも大分分かりやすく複雑な顔をされた。あれ?俺余計な事言った。んな事ないよね?


「まぁ、あれだな、とにかくクラッシュの奴を味方に出来るのであれば早々に合流したいところだな」


「しかしあの方が今どこにいるのかは全く検討もつきませんわ」


「最悪、捕まっている事も考えた方がいいですね」


バーバラのその一言に、場に重い空気が流れる。


その重い空気はそれから間もなくして破られることになる。


それはとても大きな音だった。


『あーあーテステス。マイクのテスト中ー』


凄まじいまでに拡大された声。聞き覚えのある声。


「おい、なんだよこれっ」


「スピーカー音声?でもどこから」


驚く俺達をよそに、そのどでかい音声は続きを喋り出す。


『聞こえてるな?よし、よく聞けソニードの奴らとセガールのくそボンクラども。この戦艦は我らマイクロブラックボックスが乗っ取った』


機嫌良く響く大音量の声。


静まり返る我ら一同。


「マイクロブラックボックスって事は、あれだよな?」


「ええ、あれだと思いますわ」


「あれのはず、だな」


「え?え?あれってなんの事?や、やだ、皆目配せしないで私をのけ者にしないで!」


俺とクレアとバーバラは既に事の真相に辿り着き、なんの事やら分かっていないスーファはハブられるのを恐れて慌てふためいている。


なんとも言えない空気。重苦しくはなくなったが、しかしなんとも言えない微妙な空気が辺りに残る。


だから、そんな空気を打破すべく俺は一同を代表して言ってみた。


「クラッシュなにやってんのあいつ!!」


とね。


「え?クラッシュ?……あ、そうか、マイクロブラックボックスってどこかで聞いたことあると思っていたけど」


ここに至りスーファは情報がまとまってきたようだ。これで皆に置いて行かれないという安堵の様子がありありと見て取れる。


「……」


「な、何よ?」


この世界に来てからというもの俺の周りに現れる連中は皆マイペースな奴らばかりだった。あと変態ばかりだった。だからだろうか、スーファの普通の反応がとてつもなく眩しく見える。


「お前はそのままのお前でいてくれ」


「え、なにいきなり気持ち悪い」


こうして人の事を選ばれしゴミ虫を蔑むような目で見るところなどはファミにそっくりだな。さすがは姉妹か。今のは俺がよくないっていう自覚はあるけどね。


「さて、俺が気持ち悪いのはとりあえず置いといてだ」


「置いといていいのそれ?」


スーファの呆れ声が俺の鼓膜を揺らすがとりあえず話が進まないので無視だ。


「よく分からないけどクラッシュがハッスルしてくれたみたいだから我々も戦艦を目指してみようじゃないか」


「という事は私の出番ね」


「そう、あなたの出番なんですよジオネさん」


俺の隣にはミステリアスでグラマラスなメイド服姿のお姉さん、ジオネさんが立っていた。


ちなみにジオネさんはクラッシュの側近なんだよ。みんな覚えてるかな?


「じゃない!なにあんたしれっと再登場してんの!?」


「あら?こう見えてもあなた達の話がまとまるまで結構待ってたのよ」


「あ、そうなんですか。なんかすいません気を遣ってもらっちゃったみたいで。じゃなくて!」


久しぶりに突っ込みに回っている気がする。でもなくて、


「とにかくあなた達をこれから戦艦の方に案内するわ。クラッシュ様もあなた達と話がしたみたいだから」


ジオネさんは俺の言葉など聞いていない感じで言い切る。なんか寂しい。


「というかジオネさんも生きてたんだ、って話ですよ」


「ええ。奇跡的にね。でもそんな事はどうでもいいの」


割とよくないと思うのだが、まぁいいか。本当に話が進まなくなるし。


「さ、行きましょうか」


そうして俺達はジオネさんの案内でクラッシュの待つ戦艦へと向かう事になったのであった。


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