君の悲しみ
僕は分ってるよ――
君の悲しみも。
君の苦しみも。
癒してあげられるのは、僕だけだよね――?
僕が彼女と初めて出会ったのは、6年前の春のことだった。
僕はすぐに君をみつけた。君はあの時から輝いていたね。
あの時の僕と君との距離は、今よりもずっと近かった…そして、気づけばどんどん遠くに行ってしまったんだ。
僕は悲しくて悲しくて、毎晩枕を濡らしたよ。でも、君も同じ気持ちだったんだよね?
僕等の距離がどんなに離れようと、心はいつも一緒だった。
そして3年前の秋――君は僕に話してくれたよね? 君の悲しみも、苦しみも。君は心の全てを打ち明けてくれたね。僕は嬉しかったんだぁ。
そして今日、僕等はやっと一つになれる――
「なこえちゃん…やっと二人きりになれたね? さぁおいで…君を抱きしめたい。僕が君を癒してあげたいよ」
取り替えられたばかりの蛍光灯が明るく照らす、控え室の四隅の一角――顔の引き攣りをぎこちない笑顔で隠そうとする小柄な男が、一方で、表情を凍らせながらも、必死に相手を触発させまいと冷静に振る舞う華やかな衣装を纏った少女へせまっていた。
「辛かったよね? 君を虐めていた奴等が憎いよね? いいんだよ。僕が全部受け止めてあげる…だから早く…おいでよ?」
宥めの言葉ですらも相手を今以上に興奮させ兼ねない。少女は言葉を失い――思考は停止してしまう寸前だった。
少女にはもう逃げ場がない――と、その時じゃわい!
巨大ロボがドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!
「フアッハッハ! 私は巨大ロボだぜっ!!!」
少女等が居るビルは揺れる揺れる!!! どうやらこのビルの屋上から突き抜けてきたようじゃわい!
「なっ!? なんなんだこれは!??」
男はびっくり仰天!!! ウルトラクライマックスじゃわい!
「これってドッキリなんですかっ!?」
少女は慌てふためいたんじゃっじゃ!!!
「えっ!? これってドッキリなの!??」
男もドッキリを疑ったのじゃ。
「ドッキリじゃないぜ。天丼食えぜ」
その時じゃわああああああああああああああああああああああああああ!!!
天丼がピカリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッキュッッピーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッ!!! 光おったわ!!!
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
少女等は吹き飛ばされて行きよった。衝撃のウルトラクライマックスじゃわい!!!
――それから2年後の夏――
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
少女等が吹き飛ばされてきよった!!!
綺麗な海の見える浜辺にドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!! うわおっ!!! 海めっちゃ綺麗ッ!
「どっ、何処なんだここは!??」
「これってドッキリなんですかっ!?」
「フアッハッハ! お前達には私のパイロットになってもらうぜ!!!」
「ぼっ、僕等が貴方のパイロットに!??」
「え!? 私免許とかまだ持ってないんですけど…」
「安心してください! 私を操縦するにあたり、免許は不要なんだぜ!!!」
こうして彼女等は巨大ロボのパイロットになったんじゃ…!
後のさほど重要でないことは簡潔にまとめるぞい。
彼女等は巨大ロボのパイロットになって敵と戦った。そして地球の危機を救ったんじゃわい。彼女等は英雄となりて、崇められたのじゃ。
そして、彼女等はやがて次の段階へと進んでいったんじゃ…つまり、上位生命体になったというわけじゃ。
「ぴろりろり? ぴろりーん☆」
「ぱろらろ。ぱろろどりーむ☆」
もうわしには彼女等がなにを言っているのか分らない。上位生命体じゃからな。
こうして彼女等の英雄譚は幕を下ろしたのじゃった…めでたしめでたし!!! ――終劇――