桐乃
数週間後、無事幸は退院した。
「いや〜よかったよかった!何事もなく退院できて!」
「あき兄。なんかおじさんみたいですよ。」
「ひどいなあ、幸ちゃん。確かに一番年上だけどさ。」
「そう言えば、みなさん年いくつなんですか?私が12歳ってことは知ってるんですよね。」
「ああ。俺と巽とルイは15歳中3だ。あき兄は17歳高2。」
「葵は13歳!中1だよ!幸ちゃんの1つ上!」
仲間とか言いながら、全然みんなのこと知らないなぁ、と幸は実感した。
「なるほど。っていうか、どこに向かってるんですか?なんか私成り行きでついてきちゃってますけど。」
「今向かってるのは僕たちのアジトだよ。家でもあるけど。」
「みなさん一緒に住んでるんですか?」
「うん。色々あってね。みんな親がいないんだ。」
そう言う明博の横顔が、幸には少し寂しいそうに見えた。
けれど、すぐいつもの笑顔に戻った。
「まあ、幸ちゃんも住むことになるけどね。」
「え?」
「だって、帰る家ないでしょ?」
「あ、そうでした。」
「着いたぞ。」
と言われて見た先にはすごく大きな家。
「うわああ!おっきい!!」
「はははっ!そうかもね。」
「「ただいまー。」」
「おかえりなさい!」
「電話で話してた子連れてきたよ。」
「誰ですか?」
「葵たちの面倒見てくれてる人。」
すると、奥から20歳くらいの女性が出てきた。
「あなたが幸ちゃんね!わたしは桐乃!みんなのお世話係をさせてもらってるわ。って言っても、他のことは覚えてないんだけどね。」
「えっ…。記憶喪失ですか?」
「うん。だから桐乃っていう名前もみんなに付けてもらったの。衛のところに行ったことは覚えてるんだけど、その他のことはさっぱり。」
そう言いながら、やれやれという様に、桐乃は肩すくめた。
「じゃあ能力は?」
「まだわかってない。」
「そうですか…。大丈夫ですよ!きっと思い出せますって!あ、私の研究生かせるかも。」
「そういや、お前あそこで何の研究してたんだ?」
「組織に命じられてたのは、記憶を消す薬を作れって言われてたんです。でも、そんなの作るわけないじゃないですか。でも、何か研究してないと怪しまれるので、記憶の研究してたんです。」
「へえ。」
「ほんとにわかってます?すごく棒読みな気がするんですけど。」
「「わかってるわかってる。」」
幸は疑いの眼差しを向けた。
「ま、まあとにかく、幸の研究が役立つかもってことだろ。」
「まあ、そんなところです。」
「あっと、こんなところで立ち話してる場合じゃないわね。幸ちゃん、あなたの部屋に案内するわ。」
「あ、はい!」
桐乃は幸を部屋の案内に、真琴たちは自分達の部屋に行った。