生死の世界
幸は何もない真っ白の空間で目が覚めた。
「…ここは、どこ?私死んだの?せっかく新しい仲間ができたのに…。」
幸が泣きそうになっていると、どこからか声が聞こえた。
「死んでないよ。今のところは、ね。」
「!?誰?!」
「私は衛。この世界の…門番みたいな者だよ。決して怪しい者じゃない。」
「……どんな人かわからないのに怪しい者じゃないって言われても。」
「そりゃそうだよね。」
シュルシュルという音がして出てきたのは、仙人みたいな老人だった。
「サンタさんみたい…。」
「サンタさんじゃないよ。この姿はあくまで仮の姿だ。本当の姿は君には見せられない。というか、おそらく見れないだろう。」
「はあ。ところで、ここはどこですか?」
「ここは、生死の境をさまよっている者が来るところ、かな。」
「…はい?」
「つまり、君はここで生きるか死ぬかが決まる、という事。」
「どうやって決まるんですか?」
「なに、簡単なことだよ。君はまだ生きたいかい?」
「そんなの生きたいに決まってるでしょ!」
当たり前のことを聞かれて、幸は声を荒らげた。
「まあ、最後まで聞いてよ。ここから戻るには、少しおまけがついてくる。それでも、生きたいかい?」
「…そのおまけっていうのはどんな物なの?」
「戻ったら君の体に特別な能力が宿る。」
「意味が全然わからないんですけど。」
「君の体が他の人とは少し違う体になる、というだけさ。」
「それ、全然"だけ"じゃなくないですか?」
「さあどうする?」
少し考えてから、幸は言った。
「…私はまだ生きたい。だから特別な能力を持ってもいいから、戻ります!」
「了解した。目が覚めてから少ししたら能力が発動してくるだろう。最初は慣れないだろうけど、なんとかコントロールしてね。それと、もちろん能力を犯罪には使わないこと。わかったかい?」
「そんなことわかってますよ。それより何でこんなことするんですか?」
「…そのうちわかる。」
そう言う衛の顔はどこか少し寂しそうだった。
次の瞬間、幸の目の前が真っ白になった。