第一章 3日目 danger
「えぇと次は何を買うんだったっけ…」
空を眺めながら、ぶらぶらと歩いていた。
明日じいちゃんの友人、ジレーオという人物の部下が訪問して来る。いきなりの事だったが、俺はこの話を受けるつもりでいる。丁度働ける場所を探していた…、この際何でもいい。
ニートになると、里音が悲しむからなぁ。
じいちゃんは茶をすすりながら相変わらず新聞を見ていた。そしてふとこちらを向き俺に話しかける。
「すまない、茶が切れてしまった…。買ってきてくれないかのぉ?」
お湯で我慢しろよ…。
「あと煙草も頼む」
俺未成年だよ、じいちゃん…。
「それと手紙を出しといてくれぬかの?」
…。
それで今、街中に居る訳だが。
茶は買ったから、後は煙草…だけど買えるかなぁ?まぁ先に手紙出しとくか…。
一息つこうと、公園のベンチに腰を掛ける。
「ここは平和だな…」
はしゃぐ子供たち、仲のよい老夫婦、通勤中のサラリーマン、ランニングしている男性…。
他の都市では失われた日常の景色が、ここにはある。
それを眺めながら、俺はコーヒーを飲み干す。
そろそろ行こうか…、時間を確認するため、ホログラフィー化された携帯電話の時間を確認する。時計の針は、丁度9時を回ろうとしていた。
「おっとっ」
手が滑り、茶の入った缶が転がる。が、そこにある女子高生が偶然通りかかった。礼を言おうと、俺は立ち上がろうとした。
その時だった。
「ぎゃああッ!!?」
聞こえたのは悲鳴だった。まさか…。
遠くで人が血を吹き、倒れる。またひとり、もうひとり。
そして、咆哮。
化け物とも言える生物がそこにいた。
「ちくしょう、何なんだよあれはッ!」
目の前にいる女子高生は萎縮して動けないでいる。俺は無理矢理その手を引くが、反応がない。
「早く逃げるんだ!早く!」
耳元で叫ぶと我に返ったのか、俺の顔を見て頷く。
だが、その化け物も逃げる人々を殺しながらこちらを追ってくる。
俺は辺りを確認すると左側に自動販売機が…、追い付かれる前に、そこの裏側に目をやる。
一人だけ、入れそうなスペースがあった。俺は女子高生をそこに追いやる。
「で、俺は逃げられない…、って訳か」
昔、じいちゃんに武術を学んだ事があった。そこら辺の人間よりは闘えるが…コイツは人じゃ無い。どこまで通用する?
その化け物は俺を見下ろし、雄叫びをあげる。
腕を振り上げる。
長く延びる爪は、20センチは有るだろうか?
鋭利な爪が眼前に迫るのを、バックステップでかわす。
それだけで終わる筈もなく、今度は噛み殺そうと突っ込んでくる。俺はそれを受け流そうと構えを取った…。
「グオオオオオオオ!!」
再び、咆哮が響き渡った。