第一章 2日目 招待状
「じゃ、私もう行くからね?食器はさげておいて下さい。じゃね!」
「…おう」
俺は妹の里音を見送った。玄関で、おはようございますと挨拶が聞こえる。訪ねて来た人と世間話でもしているのだろう。
里音と入れ代わりでおじいちゃんが戻ってくる。
「で、誰だったの?」
俺が問う。
おじいちゃんの手には、一つの封筒が握られていた。
「あぁ、古い友人から…じゃよ」
………
「適合者は見つかりそうか?」
無機質な壁に、カタカタとキーボードをたたく音がこだまする。
相変わらずの反応だ、このオッサンは。
「問題は無い。いずれ、答えは出るだろう。それより私はこちらが忙しい、テストまでに予測数値を越えていなければ…」
はぁ、と溜め息をする。
「ま、邪魔するつもりはねぇや。頑張って下さい、博士さんよ」
そう片手を挙げて、一人部屋から出ていった。
………。
「ほぉ、懐かしいな」
おじいちゃんが手紙を開けて、そう呟く。差出人は…。
「誰このジレーオって人?」
話を聞くと、おじいちゃんがベルリン支部で軍の現役だったときに知り合ったと言う。根っからの研究者で、人が死なない程度の実験データをとるのが大好きだと…。サディスト…。よく言うセリフは、人は死ななければまた実験データが取れるからな、フハハ、らしい。
どっかのマッドサイエンティストの仲間かなんかなのか?
「あいつもわざわざ何用なんじゃろか?とりあえず読んでみるかの…」
<天笠拳造様>
元気にしているか?まぁ挨拶はこれくらいにして、単刀直入に言おう。
…と言うか書こう。
君の孫がいたな?何君だったか覚えてはいないが。
3月21日、私は君の住んでいるタネガシマシティに研究所を構えようと思う。国連じきじきの依頼で、とある研究をしていてね。良ければ、君とお孫さんに研究を手伝って貰いたいのだ。お孫さんももう18だろう?進路が無いなら、都合がいいのではないか?
勿論、給料も払おう。
21日の朝、私の部下が君の家を訪ねると思う。そこで、答えを聞かせてくれ。待っているよ…では。
ジレーオ・ブランアイゼン
「いきなりすぎじゃね?」
俺が呟く。それに21日って明日じゃないか?
「そういう奴なんじゃ…やれやれ」