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下心

三人称です


城から帰ってきた紅波は一番に『バーミリオン』に向かった

「ただいま~歌って良い?」

開口一番に店のなかに向かってそう、言い放つと、さっきまで賑やかだった店がシーンと静まり返った

紅波は泣きたくなった

「…クレハ、クレハちゃん…クレハちゃん」

カウンターのなかに居たルピナスが、目を涙でいっぱいにしながら紅波の所まで来ると抱き付いた

「あんなに血塗れで、死んじゃわなくて良かった」

ルピナスは紅波の背中をポンポンした

「そうだ、クレハちゃんのドラゴン、うちの店の竈に居るの」

「良かった、何処に行っちゃったのか、心配してたんです」

紅波はルピナスに笑顔を向ける

その時、店のドアが開いた

「クレハちゃん、復活したんだって!」

入ってきたのはラズナーだった

「祝い酒持ってきたよ!」

ラズナーは手に持っていたお酒の瓶を見せた

「この世界はお酒って何歳から飲めるの?」

「16からだよ、そっちは、違うの?」

ラズナーは不思議そうに聞いた

「お酒は20歳になってからなんだよ、だから、まだちゃんと飲んだこと無いんだよね」

ラズナーは嬉しそうに言った

「なら、今日がお酒デビューだね」

何だか断れない雰囲気だと、紅波は思った

「わかった、お祝いされます!ルピナスさん、ちょっと歌っても良い?」

ルピナスに許可をもらうと、紅波はステージに向かったのだった


「清々しいほどの、下心ですね」

ルピナスはラズナーに水を出しながら言った

「なんのことかな?」

「勇者様は確か酔うとキス魔になるとか…」

「…ライライト君のファーストキスを奪ったのはハウロウ君だってね」

ルピナスが若干引いた

「僕だって、卑怯だな~って思うけど、ちょっとぐらい良い思いがしたいわけよ、たぶん近いうちにフラれるだろうから…」

ステージに立つ紅波を見ながらラズナーが呟く

「…ラズナー様は最初からフラれてますよね?」

ルピナスの言葉にラズナーが青くなった

「どんなに口説いても振り向いてもらえないって、ようやく気がつきましたか?」

「ごめん、ルピナス、僕、そんなに可能性無かったかな?」

顔色真っ青なラズナーにルピナスは容赦なく言う

「はい、気がつきませんでした?」

「…もう少し、優しくしてもらって良いかな?」

ルピナスは笑いながら、棚にしまってあったワインボトルを取りだし、一杯つぐと、ラズナーの前に置いた

真っ赤なワインがグラスの中で揺れている

「店のおごりです」

「あからさまに優しくされると、惚れちゃいそうなんだけど」

「じゃあ、飲まないでください」

ルピナスがワイングラスをさげようとすると、ラズナーはそのグラスを手に取って飲み干した

「ありがとう、ルピナス」

「いいえ、私は最初からクレハちゃんにライライト様を押していましたので、そのお詫びです」

ルピナスの笑顔に、顔をひきつらせながらラズナーは項垂れた



紅波は酒が強くなかった

「ラナ、足、足元がフワフワ~」

ラズナーの予想以上に紅波はラズナーにくっついて座っている

「ラナ、はい、アーン」

紅波はお摘み用の野菜炒めをラズナーの口にはこぶ

「どうしよう、今日死ぬのかも」

ラズナーは嬉しそうに、それをかみくだす

「ラナ、…き…ても、良い?」

回りがうるさくてよく分からなかったが、ラズナーは来たーと思った

「もちろん」

「じゃあ、…目を閉じて」

ラズナーが目を閉じると、紅波はラズナーの胸ぐらを突かんで、頭を大きく振りかぶって、ラズナーの頭に落とした

ゴッツっと鈍い音とともにラズナーはイスから落ちて頭を押さえて悶えた

「痛ったー、あはは」

紅波の事を見ていたルピナスが哀れなものを見るようにラズナーを見ている

「ルピナスさーん、だーいしゅき」

紅波はルピナスの所まで来ると抱きついて頬にキスをした

ルピナスはニコニコしながら紅波を抱き締め返して紅波の頬にキスをした

「私もクレハちゃん大好きよ」

二人で笑いあう

「何で、僕だけ」

「頭突きして良い?ってきいたら、もちろんって言ったじゃん」

紅波は笑いながら言った

「あはは、あはは」

紅波は収支ご機嫌でいろんな歌を歌いながらくるくる店の中を動き回る

その時、新たな客が入ってきた

「ライライト様いらっしゃい」

ライライトは店の中を見て固まった

「誰だ、クレハに酒飲ませたのは?」

「ライライト様の足元に転がってる哀れな人が快気祝いに飲ませました」

ライライトはルピナスに言われて初めてラズナーが床に転がっている事に気付いた

「お前は何で、こんなとこに転がってんだ?」

「あっ、それ聞いちゃいます?クレハちゃんに頭突きされたんです」

「なぜ?」

ライライトがルピナスと話していると、紅波がライライトがいること気付いた

「ライライトさん!」

紅波はライライトに抱き付いた

「元気になったか?」

「はい、へへへ」

紅波は嬉しそうに笑う

「やっぱり、僕とライライト君の態度が違すぎる」

ラズナーの泣きそうな呟きに紅波はラズナーの所にふらふらと近付きラズナーの手を突かんで立ち上がらせる

「床は冷たいよ~起きて、起きて~」

紅波はそのままラズナーに抱き付いた

ラズナーが思わず固まると紅波はラズナーの胸ぐらを突かんで引き寄せた

また、頭突きをくらうと思ったラズナーが強く目を閉じると紅波はラズナーの頬にキスをした

「へへ~隙あり」

可愛く笑う紅波にラズナーは、がらにもなく赤面した

ライライトはラズナーにくっついたままの紅波を引き剥がすと言った

「お前は、酔うと達が悪いな」

ラズナーはキスされた方の頬を手で押さえて萌えている

ライライトは面白くなかったが、顔には出さないようにつとめた

「ライライト様、紅波ちゃんを送っていってあげてくれませんか?何だか、無駄に被害が出そうなので」

「わかった」

ライライトは紅波を小脇に抱えると店を出た


外に待たせていた馬に紅波をのせようと、持ち上げた時、紅波はライライトの首に手をまわした

「こら、大人しく…」

ライライトがもう一度持ち上げようとしたその時、紅波はライライトの唇に自分んの唇を重ねた

ライライトがフリーズする中

紅波はゆっくりと微笑んで言った

「好き」

ライライトは動けなかった

頭が理解できていない

紅波はさらにライライトの唇に自分のを重ねる

「大好きれす」

紅波は口がまわっていなかった

ライライトはそのまま紅波を抱き締めて馬に乗った

「ライ、さん、好き、」

腕の中では紅波が、うわ言のように好きだと言う

ライライトは馬を走らせた

「ヤバイ、顔がニヤケる」

ライライトは紅波の住む家に急いだ

(ハウロウと酒癖が一緒なら、明日には覚えていないだろう)

ライライトは可愛い紅波を誰にも見せたくなくて紅波の住む家に急いだのだった

次で終わります

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