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アップルパイ

ライライト目線です

クレハがイライザに連れていかれてしまったため、俺は食堂に向かった

食堂につくと父と母が談笑していた

「クレハちゃんとイライザはどうした?」

父に聞かれ、席に座りながら言った

「クレハの衣装がえに行きました」

「何故?」

「俺の好みに合わせるより、クレハに似合うドレスの方が良いと思うと言ったら、連れていかれました」

「お前、クレハちゃんの事好きだろ」

思わずフリーズしてしまう

父も母も嬉しそうに見えた

「…万が一そうだったら、何だと言うんですか?」

「何時、嫁にもらうんだ?」

父をぶん殴ってやろうかと思ってしまった

「付き合ってもいないのに、嫁に来るわけないでしょう」

「じゃあ、いつ付き合うの?」

母が参戦してきて頭痛がする

「クレハは俺と付き合うとか想像もしていないですよ」

「想像してもらわないの?」

「してもらって、どうするんですか?彼女の負担になるだけです」

「そんなこと言ってたら、うちの副隊長とかにとられちまうぞ!」

父の言葉に焦ったりはしない

「そちらの副隊長どのにアシャティスにラズナー、店に来る客、モテモテですからね」

わかっている

彼女の回りが彼女をほっとかない

でも俺まで好きだなんて言ったら彼女は誰に頼ればいいんだ?

俺が好きだなんて知らないから俺を頼ってくれてる

「彼女がこの世界に来たのはつい最近なんですよ、しかも、ただでさえ好意を寄せてくる男ばかりで…俺はハウロウから彼女を預かっているんですから、彼女の支えになるのが先です」

父と母は柔らかく笑うと言った

「ライ君は優しいわね、お母さん誇らしいわ!」

「うちの副隊長には、悪いが邪魔するしかないな!お前はお前のペースで頑張れ!」

俺は二人に笑顔を作り、小さく頷いた


父はクレハとイライザが戻ってくるまでの間、ドラゴン事件について話してくれた

「まぁまぁ、クレハちゃんって癒しの力がすごいのね」

「ああ、癒しの力が凄まじかったと皆言ってたな」

父と母が癒しの力についてだけを言っていたのでさりげなく手首に紐で加工して着けていた魔法石を外して二人に見せる

「これは、クレハが作った魔法石です」

二人の視線が石に集まる

「なんて素敵な色なのかしら、始めて見ましたわ」

「こんな高値で取引されそうな物をクレハちゃんが作ったって言うのか?」

「ええ」

母が目を輝かせている

「あげませんよ」

「きゃう、駄目?」

「ダメです」

女性ってやつは光り物が好きだ、母も例外ではない


そこでようやく、クレハとイライザが戻ってきた

「兄様!クレハさんが美しすぎでなんで私は男性じゃないのかと思ってしまいましたわ」

「何を言ってる?」

イライザのテンションが尋常ではない

部屋に入ってきたクレハはさっきのドレスとは違って胸元が見えない控えめなドレスになっていて、髪の毛も高い位置で丸めている

さっきのドレスも良かったが控えめなドレスの方が似合う

「クレハさん、母様に後ろを見せて差し上げて下さい!」

クレハは恥ずかしそうにしながら後ろを向いた

前は控えめなのにも関わらず、背中が大胆に空いている

クレハの背中にあるステンドグラスのような妖精の羽根の刺青が神秘的に見える

「素敵!」

母が目を輝かせている

「兄様にクレハさんは背中が素敵だと聞いて良かったですわ!気がつかなければ後悔してましたわ!」

イライザの言葉に親二人が俺の方を見た

視線が痛い

「何でしょうか?」

「えっと、何故クレハちゃんの背中の事を知ってますの?」

「いかがわしい」

母と父の言葉にフリーズしそうになる

頭をふる回転させ言った

「彼女から聞いてましたし、ハウロウにもアレが有りましたから…何か?」

二人がようやく視線を外してくれた

「兄様、どうですか?」

どう?どうとは?

流石にフリーズしてしまう

「兄様!誉めて!」

「良いと思うぞ」

「兄様、ポンコツですわ」

イライザに言われた言葉にテーブルに突っ伏す

「お行儀が悪いですわよ、ライ君」

「少し、そっとしておいてあげなさい」

父の優しさがさらに傷をえぐる

すると横に気配を感じた

気配がした方を見るとクレハが俺の横に立っていた

「良いですか?」

「ああ、さっきのドレスより似合ってる」

俺の言葉を聞くとクレハは柔らかい、はにかんだような笑顔を作った

可愛い


クレハは母に勧められて俺の横に座るように言われていた

クレハはイスに座ると俺に笑顔を向ける

何だかご機嫌のようだ

(露出がへった、良かった!)

クレハはニコニコ俺に笑顔を向けながら食事を楽しんだ

「何だか、今日は食事の量が少なかった気がするんだが?」

父の言葉に母がウフフっと笑うと言った

「今日はクレハちゃんとアップルパイを作りましたのよ!料理長が味見をしてみたところ、料理の量を減らしてアップルパイを楽しめるように配慮して下さいましたの」

アップルパイは俺の好物である

母とイライザの手作りのアップルパイは少し物足りないが二人の作る料理の中で一番まともな料理である

クレハの料理の腕が想像付かないのが恐い

出されたアップルパイは何時ものアップルパイより綺麗に形作られていたが、何故か3ホールもある

「今年はいっぱいで良かったな!」

父がそう言うのと同時に父の前に1ホールが置かれる

「私が作ったものは旦那様に召し上がっていただきたいですわ!」

父の顔がひきつる

「私が作ったものは母様と私とクレハさんと味見用に料理長が食べた分ですわね!」

「何で私の作った物が主役に渡るのですか?」

さっきまでのニコニコがどこかに行ってしまったクレハが俺の顔を見る

「もちろん、一番できが良いからですわ」

イライザはさも当然のように言った

「口に合わなかったら、食べないで良いですからね!」

クレハが必死に言うものだから、どんな味であれ旨いと言おうと心に決めてアップルパイを口にはこんだ

「…旨い…物凄く旨い」

自然と口から旨いと言う言葉がもれた

クレハは不安そうに俺の顔を見ていて、俺が言った言葉に安心したような笑顔を作った

今日何度目だろう、可愛いと思わされるのは

「良かった…」

回りに誰も居なければ抱きしめていたかも知れない

「何だ!このアップルパイ旨すぎる!」

父が横で騒いでいた

「クレハ、ありがとな」

俺が笑顔を向けるとクレハは可愛く笑った

何か俺も返せれば良いのに

「そうだ、今日のお礼にそのドレス、プレゼントしましょうね!」

母は父がアップルパイを誉めたのがよほど嬉しかったのかそう言った

「でも、私、たいしたことしてないです」

「まあ、私は本当に楽しかったのよ」

母の言葉にクレハが今日一番の笑顔を作った

「私の着れないドレスはみんな持っていって良いわ!」

「ドレスはこれだけで大丈夫です」

クレハは俺の方を見る

「どうした?」

「ライライトさんにお願いがあります」

クレハからお願いなんて始めてだ

「なんだ?」

「ライライトさんの着なくなった服、譲ってくれませんか?」

その場にいた俺以外が驚いていることに、俺とクレハは気づいていなかった

「ああ、俺がお前ぐらいの背の時なんてあっという間に終わったからほとんど着てないだろうしな、良いんじゃないか?」

「ライライトさんのお古なら仕立ても良さそうなんで助かります」

「ちっちょっと待て、なんでライライトの服が欲しいんだ?」

父が慌てたように聞く

「仕事中に着ます」

クレハは迷うことなく言った

「あんな可愛い歌を歌うのに、可愛い格好をしないと駄目ではなくて?」

母の言葉にクレハが困った顔をしている

「クレハ、二曲歌え」

「了解です」

クレハは息を吸って女性の曲を歌い始め、それが終わると男性曲を歌い始めた

俺以外が驚いている

彼女は本当に嬉しそうに歌っていた

「こんな感じなので、クレハは基本男性服で舞台に立つので、着ない服ならあげても良いかと思ったんですよ」

クレハは、曲が終わると笑顔でお辞儀をしていた

「じゃあ、取ってくるから待ってろ」

「一緒に行っても良いですか?」

クレハが俺の部屋に?

こんなに抱きしめたくなっているのに俺の部屋に二人になんてなれるわけがない危険だ!

「いや、待ってろ」

「…ぼう伯爵婦人から頂いた手紙とかぼう未亡人から頂いたブローチとか、探したりしませんよ!」

「そんなもん、とっくの昔に処分したに決まってんだろ!…またハウロウか?よし、次あったら首の骨へし折って殺してやる」

彼女を俺の部屋に連れていくのは別の意味で危険だ

俺が彼女に知られたくないことを、彼女が人一番知っていると言う矛盾

俺は始めて、ハウロウに対して本気の殺意が生まれたのだった


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