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俺の誕生日

ライライト目線です

地味に紅波にメロメロです

俺はどうかしているのかも知れない

「ライライト様!お誕生日おめでとうございます!今日はクレハちゃんお休みですよ!」

『バーミリオン』に行くとルピナスが笑顔でそう言った

「いや、クレハに会いに来たんではなく、昼飯を食べに来た、いつもの」

ルピナスは、ハッとして苦笑いを浮かべた

「すみません、このあと、クレハちゃんとデートですか?」

「なぜ?今日クレハに会う予定はないが?このあとは、執務が終わったら実家に帰って家族と過ごす予定だ」

ルピナスは一気に怒ったようだった

「はぁあ?誕生日にクレハちゃんと会わないんですか?せっかくライライト様の誕生日だからクレハちゃんを休ませたのに、クレハちゃんと誕生日過ごす気無いんですか?」

ルピナスの迫力に気圧される

「たぶん俺の誕生日なんて知らないんじゃないか?」

俺の言葉にショックを受けてルピナスは奥に引っ込んで行った

俺の方がよっぽどショックを受けている

昨日まで何も反応が無かったから、俺の誕生日を知らないのは何となく気付いていた

だが、だからこそ今日ここに来れば彼女がいると思い込んでいた

彼女が居れば、おめでとうの言葉ぐらい貰えると勝手に思っていた

肝心の彼女にここで会えなければ今日はもう彼女には会えないだろう、今日は実家に帰って母と妹の作るアップルパイを食べる日で終わりそうだ

「…お待たせしました…」

ルピナスが持ってきた定食を食べながら心に小さな穴が空いたような喪失感に襲われたが回りには気付かれないようにつとめた

たった一人に祝われたいと思うのは始めてだ


隊に戻り少しだけ残ってしまった執務を片付けていると、隊員達が勢いよく執務室に入ってきた

「隊長!何やってんすか?クレハちゃんとデートする前に仕事とか、遅刻したら嫌われちゃいますよ!」

「今は、仕事よりも、クレハちゃんを優先しないと、ラズナー様やアシャティス様に捕られちゃいますよ!」

俺はゆっくりと立ち上がると隊員達に笑顔を向ける

隊員達が震え上がる

「どいつもこいつも、今日はクレハに会う予定はないと言うのに言いたいことだけ言いやがって、そんなにしごかれたいのか」

そのまま壁にかけてある剣を手に取る

「全員外に出ろ」

隊員達が青い顔をしているのを完全に無視した

「とくに、トマス、ジーク、お前らは特別に念入りに相手してやる」

俺は笑みを消すと怒鳴り付けた

「とっとと外に出ろ―」


ひとしきり隊員達をフルボッコにしてから時計を見ると良い時間になっていた

「みんな馬鹿だね、隊長は年中行事があるから朝仕事してたらデートとか無いって決まってんのに」

振りかえるとそこにいたのは副隊長のディランだった

「お前は何処にいた?」

「僕は少し遅い昼休みだよ」

同期入隊で仲良くなったディランも稽古に付き合わせているうちにかなりの腕前となりこうやって二人で上に立てているのはなんだか誇らしい

「隊長、そろそろ行かないとイライザちゃんに怒られちゃいますよ!」

「俺もそろそろ行かないととは、思っていた、ディラン後はお前に任せる」

俺がその場をはなれようと後ろを向いた瞬間ディランに肩をポンポンと叩かれた

「行ってらっしゃい!」

「ああ」

後ろの方から悲鳴が聞こえたのは気のせいだと思うことにした


実家につくとロビーに父が立っていた

「父様、どうしたんですか?」

「俺が帰って来たのにマリアが出迎えてくれない」

「ああ、どうでも良いです」

父に鋭く睨まれた所でようやく母がパタパタと走ってロビーにやって来た

「お友達を着せ替えて遊んでいたら旦那様のお帰りに間に合いませんでした、ごめんなさい、駄目な妻ですわね!」

母がそう言ってシュンっとするものだから父は笑顔を作ると母を抱きしめた

「息子の前でいちゃつくのはやめて下さい二人とも」

「お前だってこの世で一番守りたい者を見つければ抱きしめたくなる気持ちがわかる」

父は母を抱きしめたままそう言った

「どうでも良いです」

「どうしてライライトはこんな冷めた子になってしまったんだか」

「旦那様苦しいですわ」

母がもがきながら言うと、ようやく母は解放された

「ライ君、お誕生日おめでとうございます」

「ありがとうございます、母様」

母に笑いかけると母は嬉しそうにウフフっと笑った

「誰か客人が来ているのですか?」

「ウフフ、街でナンパしてしまいました」

「えっ!男じゃないだろうな!」

「私は旦那様が一番ですわ」

「勝手にしてください」

俺は親のイチャイチャにあきれて自分の部屋に行こうとロビーから階段をのぼり二階にむかおうとした

「お母様、完成しましたわ!」

妹のイライザの声に顔を上げるとそこには、イライザに背中を押されるようにして着飾ったクレハがいた

「く、クレハ?」

思わず口から彼女の名前がもれる

クレハは俺と目が合うと一気に真っ赤になり尻尾を踏まれたネコのように叫んだ

「フギャー!」

そして走って逃げようとするクレハをイライザが捕まえた

「かっ、帰る、いや、せめて着替えさせて」

クレハの慌てぶりに思わず吹き出してしまった

「わっ笑うな~」

「あっはははは」

とりあえず笑いながら階段をのぼりクレハを捕まえているイライザのもとへ向かう

イライザの頭を軽く撫でる

「なんでライライトさんがいるんですか?知り合いにこんな気合い入った格好見られるなんて、穴があったら入りたい」

クレハは俺がそばに居るのを、わかったうえで振り返ろうとはしない

「何言ってるんだ?ちなみに、ここは俺の実家だ!家に帰って何が悪い?クレハの方がなんでいるんだ?」

「街でマリアさんとイライザちゃんと知り合いになって…」

クレハはゆっくりと振り返った

いつもと違って完璧なメイクをして、色気のあるドレスがよく似合っているだが顔は今にも泣きそうであった

「実家って…じゃあ今日誕生日の息子って…」

あっ、やっぱり俺の誕生日知らなかったんだな

そんなことを思いながら頷く

「この家の息子は俺だけだからな」

クレハは怒ったような泣いたような複雑な顔になっていた

「どうして教えてくれなかったんですか?何時もお世話になってるんてすからお祝いぐらいさせてください、昨日会いましたよね!」

「いや、さすがに明日誕生日だとか言ったらプレゼントの催促してるみたいだろうが」

クレハはウーっと唸る

「お前は気にしなくて良い」

クレハは納得いかないようにまだ唸っている

俺がクレハの頭を撫でようとするとイライザに止められる

「兄様、髪型が崩れるので触らないで下さい」

「あ、そうか」

「兄様とクレハさんはお付き合いなさっているのですか?」

イライザの質問に俺がフリーズしかけるとクレハはきっぱりと即答した

「付き合ってません、むしろ保護者…お母さん」

「なぜ母親なんだ?やめろ保護者で十分だろうが」

「たまに、お母さんって呼びたくなるぐらい面倒見が良いですよね!」

「誉め言葉だと思っているなら間違いだ、お母さんはやめろ」

「…口うるさいとこもお母さん」

「…悪口だったか」

「だって…」

クレハは上目ずかいで目を潤ませた

可愛い

今、父の言っていた抱きしめたくなる気持ちがわかった気がした


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