祖父のかわりに帰りたい!
「粗茶ですが」
紅波はぬいぐるみ?にお茶とお茶菓子を笑顔で出している祖母をどんな顔して見たら良いのか複雑だった
「あ、お構い無く、すぐにおいとまいたしますので」
ぬいぐるみ?も流暢な日本語で遠慮している
「タイム、では、直ぐに帰って!」
祖父の言葉にぬいぐるみ?は涙をポロポロ流しながら必死に言った
「わたくしが、お迎えにあがるのが遅かったのはお詫びいたします!ですが、ハウロウ様を連れて帰らねば主は何をしでかすか、私には想像もしたくありません!」
少しの沈黙のあと祖父は言った
「だな…しかし、俺は妻と離れたくない」
紅波の祖父母は家族から見てもラブラブで二人で出かける時は手をつなぐのが当たり前なぐらいだった
紅波は祖父母が離ればなれになるなんて想像も出来なかった
「えーと、そのお迎えって、異世界的な?…じいちゃんの書いてる小説の中みたいな感じってこと?」
その質問に祖父は笑いながら言った
「俺が書いてる小説はそっちの世界で俺が実際に暮らしていた生活を書いてる…自伝的な感じだ!」
紅波は自分の中に沸き上がる期待でドキドキした
「それ、私が行ったらダメかな?」
紅波の言葉に家族全員が彼女の方を見た
「駄目だ!紅はわたさん」
一番最初に口を開いたのは紅波の兄の青時だった
「そうだよ!姫が居ないなんて無理」
「紅姫、行かないで」
続けて弟たちである、来夢と明斗が言った
ちなみに紅波の兄弟は、紅波命のシスコンである
「3人とも…」
内心紅波は面倒くさいと思っていたが3人を諭すように優しい口調で言った
「勿論、3人と離れるのはかなり悲しいけど私はじいちゃんとばあちゃんが一緒にいられない無いなんてたえられないよ!3人には可愛い彼女がいるけど、お陰様で私には彼氏も居ないし適任だと思うわけよ」
「「「なら彼女と別れる」」」○
3人がはもって言うと、紅波は3人を冷たく見つめ
「自分の彼女1人幸せにできないやつが私に何が出来る…お前らにはガッカリだな」
紅波の瞳が徐々に軽蔑の色に染まるのを敏感に感じ取った3人は一斉に謝ったが、紅波は3人を無視してぬいぐるみ?に話しかけた
「じいちゃん…ハウロウじゃないとダメなのかな?」
ぬいぐるみ?は少し焦ったようであたふたしていたが、困り顔で言った
「わたくしは、構いませんが…主は…ハウロウ様を崇拝していますので…」
その話を聞いた祖父は珍しくうんざりした顔をしていた
家族を説得するのは大変だったが、祖父母が加勢してくれたお陰様で紅波は異世界に祖父のかわりに帰ることが決まったのだった