小さな家
ずぶ濡れの紅波を湖の脇にある小さな家につれて行き、手慣れた動きでライライトは暖炉に火を入れた
紅波は一連の動きを見つめながら思った
(ライライトさんはこの家になれてる)
紅波が見つめていることに気付いているのか?いないのか?ライライトは気にする風もなく戸棚からバスタオルらしきものを手に取ると紅波に投げてわたす
「温かくしてろ」
ライライトの言葉に紅波はバスタオルを羽織る
しばらくすると、ライライトがココアのような飲み物を持ってきた
コップからは温かそうな湯気と甘い匂いが立ち上る
「暖まるぞ」
「ありがとうございます、あのライライトさんはこの家によく来るんですか?」
「いや」
ライライトの素っ気ない言葉に話が終わると紅波は部屋の中をみわたした
キレイに整頓され掃除も行き届いていているように見える
「そのわりにはキレイですよね?じいちゃんの部屋がこんなにキレイなの見たことないですけど」
ライライトはようやく紅波が言いたかったことが分かったようだった
「状態維持魔法がかかってるからだ、本を出してもその辺におきっぱなしにすると自動的に本棚に帰る」
ライライトは本棚から一冊本を出すと床におく、するとフワリと本が浮かび上がり本棚に収まった
「おく場所とかにもよるらしいが床に置けば確実にもとの場所に戻る魔法だ」
紅波もう一度部屋の中をみわたした
「今日からこの家はお前の物だ、好きに使うと良い」
ライライトは口元をゆるませた
紅波はそんなライライトを見ながらコップの中身に口をつけた
まったりとした時間が過ぎる
ゆっくりとライライトはドアの方を見て言った
「俺はそろそろ帰るが一人で平気か?」
ドアから紅波に視線をうつした
紅波は急いでライライトに頭を下げた
「あの、今日はありがとうございました!ライライトさんが居てくれて本当に助かりました!」
しばらく頭を下げてからライライトに向き直った
顔を上げるとライライトは少し戸惑ったような困ったような顔をしていた
「頭を、…頭を下げる必要はない…女性に頭を下げられるとどうしたら良いか分からん」
そんなライライトを少し不思議に思った紅波だったが、次にライライトの言った言葉に納得した
「俺の回りにいる女性は、人に頭を下げたり出来る種類の女性は居ないからな…」
ライライトの回りには気ぐらいの高い貴族女子ばかりなのだと納得したら、笑みがもれた
「笑うな」
ばつの悪そうなライライトがなんだか可愛い気がして紅波はニヤニヤしてしまった
「笑うな」
そう言ってライライトは口角を少し上げて紅波の頭を乱暴に撫でた
「じゃあな」
そう言ってライライトは紅波の頭から手を放すと家を後にしたのだった
紅波とライライトにニマニマしていただけたら幸いです!




