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終わりの始まり
世界はすべてを拒絶している。
彼は素直にそう思った。
木々は折れ曲がりそうなほどしなり、河は茶色に濁った水が全てをのみ込もうとしているように見えた。
「ハウロウ、お前死ぬ気か?」
彼の親友は風ですでにまともに目を開けていられないようだった。
「俺以外に時空の穴を塞ぐことができる魔法使いがいるか?
しかも、この世界には俺の大事な人間が多すぎる。
助けない、守らないなんて選択し俺は持ち合わせて無いんでな…ライライト、お前が親友で俺は幸せだった…ありがとな!」
親友と呼ばれたライライトはハウロウの声が遠ざかっていくのがわかっていたが、すでに視界を突風に奪われていたせいか、ハウロウがどの方角へ消えたのかも分からなかった。
「バカ野郎…ちゃんと帰ってこい!」
ライライトはありったけの声で叫んだが、ハウロウの返事は返って来なかった。