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Summer Summer  作者: 梨音
1.Summer Songs
1/5

01

 なんだかとっても蒸し暑い。セミがみんみん鳴いている。

 夏だ。

 じいちゃんちだ。

 目を開けて飛び起きると畳の上だった。今日も布団から転がり出ていたらしい。それやからカナにはベッド買ってあげられへんねん。そうこぼす母の声が耳の奥でよみがえる。ずいぶんと遠い声。

 そうだ、ここはじいちゃんちだ。小言のうるさいお母さんはここにはいないのだ。

「お、カナ、起きたと。ラジオ体操行くね」

 その声に振り返ると、じいちゃんが入り口から部屋を覗いて笑っていた。ハゲた頭に麦わら帽子を乗せて、首に白いタオルを巻いている。

「うん!」

 返事をしながらパジャマを脱ぎ散らかす。洋服や宿題の詰まったダンボールを漁っていると、入り口から軽く叱る声音が飛んできた。

「ちゃっ。どげな格好ばしとっとね」

「パンツいっちょー」

 軽快に答えてワンピースをすっぽりとかぶる。全体にひまわりがプリントされたノースリーブのワンピース。いちばんのお気に入り。

「ちょっとトイレ!」

 宣言してトイレに行き、出てくるとじいちゃんはもうサンダルを履いて待っていた。私も慌ててサンダルに足を突っ込む。三つもついたマジックテープの一番上のものだけを外して、無理やり足をねじ込んだ。

「ばあちゃんいってきまーす」

 平屋の奥に向かい声を張り上げる。ガラガラっと豪快な音と共に戸を横にスライドさせて開ける。降り注ぐセミの声にアツアツの陽光。私は小学校のある方へと駆け出す。

「飛び出したらいけんよー、じいちゃんから見えるところでおらないかんばーい」

 追いかけてくる声に振り返って「分かってるー!」と叫び返した。じいちゃんは鷹揚に頷くと、日焼けした顔を白いタオルで拭い笑った。


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