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人外人生謳歌

作者: 黒之 政桜
掲載日:2026/01/30

「う~ん……どうしよっかな~」

 私はある事で悩んでいた。

 この世界に転生してから悩み事ってほとんどなかったけど、今回の事に関しては”ピンっとくる答えが見つからない。

 なんて言えば良いのかな~。

 特に食べたいものがある訳じゃないけど、とりあえずお腹すいたから、ご飯食べに適当なお店に入ったはいいけど、特に”コレだ!”って思える物が無くて、中々注文が決まらないあの感じ?


「レイラ」

 うわ~、ホントどうしよう?

 コレだってのがホントに浮かばな~い。

 もういっその事適当に目の前にある物でもいいかな~?


「レ・イ・ラ!」


「ん!? どしたの?」


「はぁ、レイラ……君が出した課題の事だよ。

 きっと君の言う通り出来たと思うから、出来具合を確認してくれないかい?」


「ああ、ごめんね」

 ラースが私の出した課題に取り組んでいる間に、私は自分に出された課題について考えていたから、すっかりラースに出した課題の事なんて忘れていた。

 とりあえず一端悩みの事は置いといて、ラースが私の出した課題が上手く出来てるのかチェックする事にした。


「う~んと……おけおけ!

 コレだけ見事にど真ん中をぶち抜けたら、上出来上出来♪」

 ラースは見事に打ち出した魔法を巧みに操り、最も当てるのが難しいポイントに命中させている。

 見事に私の出した課題をクリアしたラースに「やったじゃん」と合格のサインを送ったら、ラースは嬉しそうな笑顔を私に向けた。

 のも束の間、ラースの表情は笑顔から直ぐに真剣な表情に変わると


「そんな事よりレイラ。君が心ここにあらずの状態なんて初めて見たよ!

 そんなに悩むほど深刻な悩み事が出来たのかい?」


 おー!

 流石に四年も一緒につるんでいたら、いくらラースが私と別種族であったとしても、私の様子が普段と違うのを察しちゃうのね。


「深刻って訳じゃないんだけどね……何て言ったらいいのかな。

 選択肢は沢山あるし、別にどの選択を選んでも後悔することは無さそうなんだけど、いざその”どれか”を選ぼうにも、何か”コレ”って思えるのがないから困ってる的な?」

 ラースに前世の感覚で説明出来たら楽なんだけど、この世界の人と前世の人じゃ感覚が違い過ぎるから、きっと私の”何となくご飯屋さん行ったら、ご飯を決め切れないあの感覚”って言っても伝わらないだろうし、そもそも私とラースじゃ種族だって違うからね~。

 だから、私の課題に関する悩みを説明しようにも伝えにくいのよ。

 何て考えてたら、今度は”ラースにどう説明したら上手く伝わるのか?”って事で、私は悩み始める。


「……さっきより更に難しそうな顔してるよ」


「えっ?マジで??」


「もしかして…私には話せない事なのかい?」


「いや、そうじゃないの!

 ただ今度は『どう説明したら、今の私の気持ちがラースに伝わるのか』って事で悩んでただけだから」


「だったら、とりあえず君の悩みの内容だけでも教えてくれないかな?

 悩みってとりあえず誰かに話したら、それだけでも気が楽になる時だってあるだろう。

 それに君は、私にとって大切な師でもあるけど、同時に数少ない気兼ねなく話せる友人なんだ。

 だから大切な友達が悩んでるなら、私は出来る限り力になりたい。

 だから何も遠慮せずに私に話してほしい!」

 うーん……確かにそう言われると変に考えるより、私の悩みをありのまま話した方が良い気がしてきた。

 よし、とりあえず今は友達に私の悩みを聞くだけ聞いてもらっちゃおうかな!


「実はさ~、パパから何かメンドイ課題出されちゃって」


「メンドイ課題というのは、つまり『面倒だと思う課題』を出されたって事で、いいのかい?」

 あ、やっちゃった。

 気を付けてはいるんだけど、時々前世で使ってた言葉がつい出ちゃうんから、ラースが意味を確認してくれるのって、ホント助かる。


「そうそう。

 実はね~、ドラゴンって15歳になったら最低一回は、別の種族と同じ目線で世界を観察しなきゃいけないんだって。

 だから『どの種族の目線で世界を観察するのか決めときなさい』ってパパから言われちゃって~」

 昨日、実は私はこの世界に来て15歳になったんだけど、そしたらパパから誕生日のお祝いとセットでドラゴンが”必ず一度はやらないといけない”課題を言い渡されちゃってね~」

 私が悩みをラースに打ち明けると、私の悩みを聞いたラースは何とも言えない表情を浮かべているけど、その気持ちは分からないでもないよ。

 そりゃー「世界の観察が課題」って傍から聞くと意味わかんないよね~。


 実はドラゴンって”この星で唯一この星で意図的に生み出した存在”だから、星の意思さんから「この世界の生き物を見守ってくれ」って使命が課せられているんだよね。

 って言ってもホントに見守るだけで、特に何かをする訳でもないから、コレと言って特に何かをやる訳でもないんだけど。

 定期的にやってる事もあるにはあるけど、それだって年一ぐらいの感覚で、たま~に”この星の意思さん”の所に行って、自分が今まで見て来た事を報告するぐらいだし。

 ソレ自体は、星の意思さんと話すのは面白いから私は好きだし、年一の楽しみ的な感じでやれてるから良いんだよね。

 それより問題は今度意思さんへの経過報告行く時は、只今絶賛お悩み中の課題を通して見て来た事を、星の意思さんに報告しないといけないから、課題に取り組まないと年一の楽しみだって奪われちゃうから、ちょっと困ってるんだよね。


 せっかく私がこの世界に転生してから得た順風満帆なスロードラゴンライフ。

 ソレにまさかこんな難問があるなんて……ああ、せっかく会社とかSNSとか流行り何かを追ったり、追われたりするような社会のめんどくささから解放されたのに、まさかこんな事で頭を悩ませる日が来るなるなんて予想できなかったな~。

 つまり、再び悩みの無いスローライフを謳歌する為にも、さっさと課題終わらないといけないんだよね~。


「そうか、ドラゴンにはそんな課題があるんだね!」


「そうそう、正直いきなりそんな事言われても……って感じでね~

 特に一番困ってるのが『この目線で世界を見たいな~』って思える候補が無いから困ってるのよね……はぁ~」

 私は盛大にため息を付きつつ、悩みをラースに打ち明けてはみたけど、悩みを聞いたラースは「言っている事は何となく分かるけど……」って感じの微妙な表情しちゃってるから、きっと私の悩みの本質を掴みきれてないんだろな~って思った。


「ごめんね。

 変な事相談しちゃって

 ドラゴンの事情に関する悩み相談されたって、返事に困るでしょ?」


「そんな事ないさ!

 さっきも言ったけど例えレイラと私が違う種族でも『大切な友達』が悩んでいるなら、私は出来る限り力になりたい思っているから、僕はレイラの悩みを聞いたんだ。

 だからレイラが謝る必要なんてないよ」


(おー、顔だけは前世の感覚ならイケメンなんだろうな~って思てたけど、遂に言う事もイケメンになってきたねー)

 思えば最初にラース会った時のイメージは、ザコザコで生意気王子様って感じだった。

 なんせ私とのファーストコンタクトの時、ラースは暗殺者に追われて死に物狂いに逃げ回っていたし、低レベルの魔法見せてドヤ顔してたぐらいだ。

(それが今はこんなに立派に成長しちゃって~)

 っ思えるぐらいラースは成長したのを実感しちゃった。


「まさかあんなヘッポコだったラースちんが、そんな大人なお気遣い発言が出来るようになるなんてね~

 うん、うん。

 お姉ちゃんは、立派に成長したラース君を見れて嬉しいぞ!」


「うるさいなー、今の私はレイラに散々鍛えて貰ったお陰で、今や『王国一の魔法使い』って呼ばれる程度には成長しているんだぞ!

 というかだな、姉ぶってるけど私とレイラは同い年だから、レイラが私の姉ぶる資格はない!」


「もう、細かいな~

 そんな細かい事気にするから婚約者が未だに決まらないんだよー」


「そ、それは……

 いいじゃないか、別に婚約者が居なくたって」


(あっ、話を逸らして逃げた! こうゆう所はまだまだよね~)

 せっかくちょっとは成長したかと思ったけど、王子のクセに見たくない現実から目を逸らしたよ!

 そうゆう所がまだまだまだ子供なんだよね~

 なんて思っちゃうのは、私が前世で20代の後半で生を終え、その記憶を引き継いでこの世界に転生してるからなんだろうなー。

 あれ?、って事は私の精神年齢って実質40台のおば……うん、これ以上余計な事考えるのは止めようと思います!


「そんな事より、さっきのレイラの課題の事で気になった事があるんだけど」


「何?気になる事って??」


「どうやって別の種族と同じ目線で世界を見るんだい?

 例えば君がもし鳥の目線で世界を見ようとしたって、そもそも君は鳥じゃないし、見るにしたって色んな意味で君と鳥が同じ目線で世界を見るのは、難しいんじゃないのか?」

 へぇ、中々鋭いトコ付くじゃん!

 実は私も昨日同じ質問パパとママにしたんだけど、そこはこの世界最強の種族であるドラゴン。

 そんな問題なんてパワープレイでヨユーで解決出来ちゃうんですよ! 


「うーんとね、そこに関しては変身魔法使って鳥に変身しちゃうから大丈夫!」


「…変身…魔法?」


「そっ!

 その名の通りその魔法でどんな種族にも変身出来ちゃう!

 っていうすっごく便利な魔法がドラゴンにはあるのよ」


「レイラには初めて会った日から何度も驚かされてきたけど、今日も驚かされるね。

 全く、コレだから君といると退屈しないし、だからこそ君と離れたいと思えないんだ」


「フッフッフ、我を敬いたまえ」

 そう得意げに言ってやると、ラースは「やれやれ」と言わんばかりの呆れた表情を浮かべる。

 なんかちょっとその顔見たらムカついたので、ラースなら避けれる程度の魔法弾をお見合いしてやると、ラースが


「ちょっと、殺す気か!」

 って本気で怒り出したので、軽く言い合いした後に、お互い「馬鹿だな」って感じになって許しあえる。

 そんなやり取りが異種族間で出来るのって、私とラースの関係が種族とかそんな”つまんない垣根”を気にしない気さくな関係だから、成り立ってるんだと思う。


「あ、そういえばレイラが使う変身魔法って、どんな種族でも変身する事が出来るんだよね?」


「うん、そりゃもちろん。

 この星の生き物全部いけちゃいますよ~旦那」

 私はふざけて悪代官のような口調で答える。


「そうか、じゃあ…人にも変身出来るのかい?」


「……モチロンデストモオウジ」


「じゃあ、是非とも人間に変身してみてくれないか!」


「え~……めんどくさいな~」

 ラースは見事に私に私の渾身の悪ふざけを二回もスルーしてくれたので、内心ちょっと不貞腐れた私は、ラースの頼みを素直に聞く気になれなかった。


「そこを頼むよ!

 今度この前あげたあのスイーツまた買ってくるから」


「うぅぅぅぅ……仕方がないな~

 ラースだから特別だよ~

 別にスイーツが食べたい訳じゃないんだからね?」

 結局私はラースのお願いを聞く事にしたけど、コレは決してあのスイーツに屈したからじゃない……でも、あの王家御用達とか言ってたスイーツ!

 ホント美味しかったからまた食べたいんだよね!!


「じゃあ、いっくよ~」

 そう言った後に昨日パパとママに教えて貰いたての魔法を使えば、私の体は淡い輝きを放ち始めると、徐々に魔法の光で私の体が人間に作り替れられていく。

 そう、私は前世ぶりに人間になる。


・・・

・・



「ちゃんと人間になったはいいけど…」

 どうにもこの世界でドラゴンとして生きてきたから人間になると違和感が半端ない。

 何て言うか、自分の体なのに自分の体じゃない?的な感じ?

 そして何より気になるのが、人間に変身してからの自分の体だ。


(アレ? 私ってこんなスタイルだった??)

 私が今の自分の体に違和感を感じたもう一つの理由は、私の体が前世と比べて()()()()()()ぐらいスタイルが良い!

 いや、もうコレトップモデルのスタイルを超えてるよね?

 こうなるともう変身した自分の顔も気になってしょうがないから、直ぐに近くに流れている川に私は向かうと、水面に映る私の顔をチェックすべく、水面を覗きこんだ。


「うわー! 超絶美人じゃん!!私!!!」

 思わずそんな言葉が口から出ちゃうのは、自然で綺麗なベージュに輝く髪と、とにかく整った顔立ちの所為だ!

 正直前世の自分の顔なんて、もう薄っっっすらとしか覚えてないけど、間違いなくこんな整った顔じゃなかった。

 うん、コレは気のせいじゃない。


 とりあえず上手く人に変身出来たので、私川辺から離れるとラースの元に駆け寄り


「ラース、変身上手く行ったけど今の私どんな感じ?」


「いっいや、あの…その」


(ププ、綺麗な女の子見て照れるなんて、一国の王子様とはいえ所詮はまだまだお子ちゃまなんだね~)

 そう思うと何かもっと悪戯しくなったので、ゆっくりとこのまま近付いてやる。


「ねぇ、ラース、今の私ってあなたから見てどうなのよ~

 ちょっと~、早くこ・た・え・て・よ~

 ねぇってばぁ~」

 私は体を近づけつつ、色気のある声をあえて出しながらラースとの距離を更にに縮め、問い詰めつつ近くに生えている大木にジリジリとラースを追い詰める。

 するとラースは益々顔を真っ赤にしつつ顔を必死に私から逸らすけど、その視線はチラチラ私の体に送っていた。

 そんなラースの姿を見ていると「益々この子を虐めたい」なんて悪い心が私に芽生える。

 だから私は更にラースのスケベっぷりを嘲笑ってやるべく、更にラースとの距離を詰めようとする。


「レイラさん、それ以上はご容赦ください!」

 突如私とラースの間に入ってきたのは、ラースの護衛兼、ラースと同じように私が鍛えている人だけど、私にとって大事な種族を超えたガールズトークが出来る女友達で、親友でもあるティナだった。


「ちょっとティナ~、せっかく面白くなってきた所なんだから邪魔しないでよ~」

 せっかくのラースを揶揄って楽しんでたのを邪魔された私は、ブーブーとレイラに文句を言ってやった。

 だけどレイラは私の文句を聞いても「それどころじゃないから」って言いたげな顔を浮かべながら頭を抱えつつ、私に向かって言ってきた言葉は


「……レイラさん、その格好はちょっとラース様にはあまりにも刺激が強すぎますので、お願いですからコレを羽織って頂けませんか?」

 そう言ってティナは私に自分のマントを渡してくるんだけど、私が「え?何で?」って顔を見せたら、ティナの体が私を指差すので、私は自分の体を見ながらどうしてティナがこんな事をするのかしばらく考える。


・・・


「あ、ごっめん!

 私裸だった!!

 コレはティナの言う通り、ちょっと15歳の童貞には刺激が強すぎる格好だったね」

 ドラゴンになって15年。私はすっかり忘れていた。

 そう、人間って服着て生きてるんだったね!

 いや~、ドラゴンに転生してから服なんて着た事もなければ、裸で生活するのが当たり前だったから、すっかり私は人間の感覚を忘れちゃってました。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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