しゃぼん玉
小説家になろう初の作品です。
面白いと思っていただけたら幸いです。
「しゃぼん玉はね。自分から割れに行っているのも、あると思うんだ」
あの子は何度、この言葉を言っていただろうか。
中一の一学期にはすでに、「1年C組には、誰とも口を聞かない『不思議ちゃん』がいる」と、噂になっていた。僕はその子に興味があった。
放課後は必ず屋上にいるらしいので、早速今日の放課後屋上へ行ってみることにした。
「うおっ」
僕は集まっている人の多さに思わず声を出してしまった。全員の視線が僕に集まる。なんだかいたたまれない気持ちになった。
屋上へ続く階段では、およそ20人ほどの男子が列をなしていた。僕は20番目。つまり一番後ろだ。そして前には、僕の幼馴染がいた。
「おい。お前も会いに来たのか?『不思議ちゃん』に。」
「そうだよ。」
「あの子可愛いのに、教室では一切口を聞かないんだよな。屋上では話してくれるかな。」
どうやら噂通りのようだ。
幼馴染の番になった。他の人達は入ってすぐに戻ってきたが、どうだろうか。
「それじゃあ、行ってくるわ」
威勢よくドアを開けて出ていったが、一分も経たないうちに戻ってきた。「どうだった?」と聞くまでもなく、明らかにしょんぼりしている。だめだったようだ。僕は気を引き締めて、ドアを開けた。
そこには中一とは思えないほど幼く見える、儚げな少女がいた。とても可愛い。
「君かもしれない⋯」
彼女はぽつりと、そう呟いた。
「え?」
僕は思わず聞き返した。何のことかさっぱりわからない。心当たりが全くない。この少女と会ったことすらないのだ。
「ううん。何でもない」
なんのことだったのだろう。
「⋯」
「⋯」
気まずい沈黙が流れる。何か話題を振ろうか。そう思ったとき。
「好きな遊びって何?」
唐突に、そう聞かれた。まさか向こうから話題を振ってくるとは思わなかった。僕は返事に困った。その時ふと、姉が好きだったしゃぼん玉を思い出した。
「しゃぼん玉」
僕はそう答えた。
「そうなんだ⋯私も、しゃぼん玉」
まずい。と思った。しゃぼん玉は姉が好きだっただけで、僕には、吹いたら丸いガラスのような綺麗なものができる。という幼いときの記憶しかなかった。
「しゃぼん玉はね。自分から割れにいっているのも、あると思うんだ」
「そうなんだ」
言っている意味がわからなくて、少しぶっきらぼうに返事をした。
僕が返事をしたとき、ちょうど帰りのチャイムが鳴った。
「それじゃあまた、1ヶ月後の水曜日に」
「うん」
「なぜ1ヶ月後なのか」とは聞かなかった。
僕はドアを開けた。
校門で先生に挨拶をした。
「さようなら」
「さようなら。気をつけて帰るんだぞ〜」
終わりかけの八重桜が舞っていた。
面白いと思っていただけましたでしょうか。
感想を教えていただけますと、励みになります!




