once upon a time
お姫様になりたい女の子がいました。
何度も魔法を使って、何度も魔法を身に付けて、世界で一番美しい理想のお姫様になりました。
いつか、誰かが……。
物語のように白馬の王子様が現れると信じていたのです。
そうしてお姫様は何度目かの魔法の後、素敵な王子様に出会いました。理想的で、幻想的で、思い描いていた王子様そのものでした。
二人は愛し合い結ばれ、そして……女の子を授かったのです。
しかし女の子は王子様に似ていませんでした。そしてお姫様にも。
理由は簡単です。お姫様が魔法で姿を変えていたからでした。けれどもそれを証明する手段は何一つありません。魔法がかかる前の醜い姿は全て消してしまったからです。お姫様の周りの小人たちも本当の姿を知りません。
さぁ、ここからが大変です。
王子様は魔法がとてもとても嫌いな人でした。どれだけお姫様が尽くしても、王子様はお姫様のことを嫌いになり、二度と会うことはありませんでした。
お姫様は産まれてきた女の子をとても憎みました。この子さえいなければハッピーエンドで終われたのです。
しかし、それから直ぐにお姫様は新たな主役の座を手に入れました。
裏切ったのは王子様。捨てられてしまった可哀想なお姫様。ああ、なんて悲劇なのでしょう。本当にとても可哀想。一人で育て上げるなんて……。
お姫様はその物語にとても満足して、子供を育てることにしました。
子供は便利です。
それ一つ使えばあっという間に主人公になれるのですから。何をしても許されるのですから。
あとは子供も同じ魔法をかければ良い。それだけで幸せになれる。
お姫様はずっとそう考えていました。
けれども……世界はそう甘くはなかったのです。




