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最終話 ハッピーエンド、だから俺はハーレムを作る!

 王都に平和が戻って数日後。

 俺たち勇者一行はレンデモール四世直々の命令により、再び王宮の謁見の間へと呼び出されていた。

 名目はもちろん「褒賞授与式」だ。


(キタ……! キタアアアアア! ついにこの時が来た! 長かった……本当に長かったぜ……! 異世界に来て、散々クソみたいな目に遭ってきたが、それも全てはこの瞬間のため! 王様が俺に深々と頭を下げ、『娘を……リイナを、どうか頼む』と涙ながらに懇願し、俺が『ええ、お義父さん。必ず幸せにします』と返す、感動のフィナーレが!)


 俺が脳内で、結婚式のバージンロードをリイナと歩いていると、隣から氷のように冷たい声が聞こえてきた。


「セイヤ。よだれが垂れているぞ。汚らわしい」

 

「へへっ、悪い悪い。未来の旦那様の晴れ姿に、見惚れちまったか?」

 

「死んでくれ」


 リイナとのいつも通りの痴話喧嘩に、アンナやカレンが「やれやれ」と肩をすくめ、レイラが「早く褒賞金が欲しいです」と目を輝かせている。

 謁見の間には今回の戦いで活躍した面々が勢ぞろいしていた。

 リュカ、ウッド、シルフィ、ミャミャ。エルグランド公爵一家に、なぜかギルド受付嬢のサリア。パーカッション爺さんと、今回の戦い最大の被害者フェリックスのおっさん。

 監視付きの第三王女マーサと母親のマリッサ、それと魔王アルディス、さらになぜかちゃっかり紛れ込んでいるサーシャとシャーロットが揃った。


 やがて玉座の王が厳かに口を開いて授与式が進む。

 

 アンナには「王都防衛隊・特別名誉師範」の称号!

 レイラには「王立教会・名誉聖女」の称号と莫大な寄付金!

 カレンには「王宮魔導師団・特別顧問」の称号!

 そしてリイナには「レンデモール王国姫騎士」の称号!


 どよめく中、アルディスとマーサに王の目が向く。


「アルディス……余の姪なのだ。遠慮は要らぬ。それに魔王として余と対等な立場でもある。ここに人と魔族の同盟を結びたい。……返答は今すぐでなくても良い。考えてくれぬか?」


「囚われの身に過分なお言葉……ありがとうございます」


「マーサとマリッサはアルディスを助け、人と魔族の架け橋となってくれ。リイナとマーマレードとよく相談するのだ。決して1人で抱え込もうとするな」


「はい……父上」

「はい……陛下」


 うんうん、感動だぜ。いい王様じゃねえか。俺のお義父様は。


 続いてリュカたちも次々と栄誉ある褒賞を受け取っていく。

 リュカ、ウッド、シルフィ、ミャミャは1級より上の特級冒険者に昇格か、良かったな、おめでとうだぜ!

 サリアの冒険者ギルド受付嬢最高顧問と、シャーロットの戸籍、永遠の17歳は納得できねえけど。

 レイラちゃん? 「20代のくせに」って小声で呟かないで!


「フェリックス殿、貴殿はそのお……無しでいい?」


「はは……ですよねえ。俺、身体乗っ取られただけですもんねえ」


 どんまい、おっさん。でも結界魔法の第一人者だと知れ渡ったのだ。これからいいことあるさ! ……多分。

 

 フッ、俺を大トリにするとは演出家だぜ、お義父様。


「勇者オオイシセイヤよ! 前へ!」


 俺はビシッと胸を張り、王の前に進み出る。


「貴殿の功績は計り知れない! まさに救国の英雄! よって貴殿には……この国で最も価値のある褒美を授けよう!」


(キタアアアアア! リイナ王女! 結婚! 初夜! ハーレム!)


 王は高らかに宣言した。

 

「それは……『生涯童貞の誓い』である!」


「はあああああああああああああああああああああああああああああああああっ⁉」


 俺の魂からの絶叫が、大勢の人間がいる謁見の間に木霊した。

 王は構わず真面目な顔で続ける。


「パーカッション殿が申す貴殿の力『リア充絶対殺すマン』とやらは、童貞である限りにおいて最強。この力が失われれば、いつまた脅威が現れた時に国が危うい。故に国家の宝として純潔を未来永劫守り通すことを命じる! これを授ける! 国宝『絶対不破の貞操帯』(作サーシャ)である!」


 サーシャがプークスクスする姿が目に入る。

 あんのビッチ処女百合サキュバスめ! 元々魔王軍の諜報員だったくせによおおおお!


「サーシャ殿は今後、王国への出入り自由とする!」


「ありがたき幸せだし!」


 カレンがブルルと身体を震わせたが俺はそれどころじゃない。

 衛兵が恭しく掲げ持つ金色の貞操帯を見て、俺は完全にブチギレたのだ。


「ふざけんなああああああ! 俺がなんのためにここまで戦ってきたと思ってんだ! 金か⁉ 名誉か⁉ 違う! 全ては可愛い女の子とイチャイチャアンアンして、最高のハーレムを築くためだろうがッ!」


 俺が正直すぎる欲望の暴露すると、リイナも顔を真っ赤にして叫ぶ。


「父上! それはあまりに酷ではないですか! セイヤは確かに下劣ですが、それでも……!」

 

「国益を考えれば合理的です。フフッ、セイヤさん、永遠にさようなら」


「でも、その方がセイヤさんらしいというか……面白いですね!」

 

「……まあ、なくても問題ないと思うけどな」


 仲間たちの反応は様々だ! ていうかレイラちゃん、俺の人生に別れを告げないで! アンナちゃん、面白くない! カレンちゃん、問題大アリだよ! それじゃ俺は、貞操帯なくても童貞のままってことじゃんか!


「そうだ! 非モテの星として、そのままでいろ!」

 

「我らの希望じゃ! なあに、童貞でも長生きできるわい。なあ、フェリックス殿」


「うっせええええええ! このひ孫何十人もいるジジイがああああああ!」


 フェリックスとパーカッションの、魔法の応酬が飛んでくる!

 ここ、謁見の間なんだが?

 ん? アルディスが頬を染めてフェリックスのおっさんを見ている……だと?

 こ、これはあれに違いない。グリーンウェルに乗っ取られて残り香でも残ってるから、アルディスもパパと勘違いしているに違いない!

 いくらフェリックスのおっさんでも、俺より先に恋する乙女の目を向けられるなんて許さんぞおおおお。


「ウケるし! 童貞のままとか最高だし!」


「セイヤ様、我が冒険者ギルドは童貞を拒みはしませんので、今後もご安心してご利用くださいませ」

 

「「ざまあみろ(にゃ)!」」


 サーシャとサリア、シルフィとミャミャの嘲笑が俺の心を抉る!


「セイヤ……君の気持ちは分かる……だが、それもまた運命だ」


「安心しろ、俺が君の分も子供を作ると誓おう」

 

 リュカとウッドの同情の眼差しが、余計に俺を惨めにさせる!


「うるせえええええええええええ!」


 俺は叫んだ。


「こうなったら、この場で俺の嫁を決める! 俺と結婚したい奴、この指とーまれ!」


 シーン……。


「誰もいねえのかよ! ならば力ずくだ! リイナ! お前はもう俺の嫁だ! 覚悟しろおおおおおお!」


 俺はリイナに向かって一直線に飛びかかった。

 その瞬間、謁見の間はプロレス会場もびっくりの大乱闘の舞台と化す。


「さあ始まりました。世界を救った勇者vs全世界の女性たちの操を賭けた戦いが! 実況は当然私、皆様のピッチピチの永遠の17歳、シャーロットがお送りします!」


 うるせえええええええ! 年齢詐称バニーガールがああああ! ぜってえ勝ってやる!


「この痴れ者が!」


 リイナの剣閃が走る!

 

「おっぱい触ろうとしないでください!」


 アンナの飛び蹴りが俺の脇腹を抉る!

 

「やれやれ」


 カレンの炎が俺の進路を塞ぐ!

 

「『闇よりもなお昏きもの……』」


 レイラの呪殺詠唱が始まる!

 

「面白そうだし!」


 サーシャの雷撃が、なぜか無関係なリュカに炸裂する!

 

「なぜ僕が!」


 リュカが叫ぶ!

 

「セイヤの気持ちは分かるが、それは違う! セイヤ、同意が大事だぞ!」


 ウッドまで俺に斬りかかってくる!

 

「勇者殿、落ち着かれよ!」


 エルグランド公爵が止めに入るが、ソフィとサファイヤが「リュカ様に近づかないで!」と父である公爵を羽交い絞めにする!


「あの! フェリックス殿を私に……いえ、魔王城の平和のためにください! フェリックス殿! わ、私は男性経験はありません!」


 騒ぎをよそに、アルディスが王様になんか言ってるけど無視だ無視! 他人の幸せなんざクソ喰らえだあああああ!

 顔を茹でダコにして気絶してるフェリックスのおっさん、おめでとうだぜこんちくしょう!

 

 もはや誰が敵で誰が味方かも分からない。

 ただ一つだけ確かなことがある。

 ……俺、全員にボコられてる!


 数分後。大の字で床に伸び、ピクピクと痙攣する俺の股間に衛兵が持ってきた国宝『絶対不破の貞操帯』が、カシャン! と冷たい音を立てて装着された。


「……うそ……だろ……」


 俺の視界は絶望の涙で滲んでいた。

 そんな俺の周りを、仲間たちが「やれやれ」と呆れながらも、どこか楽しそうに笑って囲んでいる。

 リイナがそっと俺の隣にしゃがみ込んで美しい顔を近づけてきた。


「まあ、なんだ。……鍵は私が預かっておいてやる」

 

「……え?」


「いつかお前が……その、なんだ。……真の勇者になったと、私が認めたら……だ。……考えてやってもいい」


 顔を真っ赤にしながら蚊の鳴くような声でそう告げると、リイナはぷいっとそっぽを向いた。

 あれ? レイラもアンナもカレンも顔が赤い?

 彼女の一言で、俺の心に再び希望の炎が灯った。


「リイナーーーーーーーーーーーーーーー!」


 俺は復活し、愛しのツンデレ王女に抱きつこうと跳ね起きる。

 だが、そんな俺の顔面にアンナの鉄拳がクリーンヒットした。


「まだまだ修行が足りませんね、セイヤさん!」


 意識が遠のく中、俺は最後の力を振り絞って叫んだ。


「うるせえ! 俺の戦いは、これからが本番だああああああああ!」


 俺の魂の絶叫が平和になった王都に、いつまでも響き渡っていた。


 愛は世界を救わないかもしれない。現実はクソで理不尽だ。

 だけど、それでも戦う価値はあるんだ。

 最高の仲間がいれば、どんな絶望だって笑い飛ばせる。

 そしてどんなに下劣で、どうしようもないクズでも誰かを守る勇者になれるんだ。

 こんな俺でもな!


 ――『リア充絶対殺すマン』 完――

 

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